No.73418

亞莎と御遣い様 7

komanariさん

7話目です。

今回こそは亞莎の活躍ですw

そこを目指しました。

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2009-05-13 07:26:04 投稿 / 全4ページ    総閲覧数:10790   閲覧ユーザー数:8506

「亞莎。それは、あなた個人として言ってるの?それとも軍師として?」

 

私の言葉に、雪蓮様が少し考えた後にそうおっしゃいました。

 

「・・・」

 

私は少しの間目をつぶって、自分の中にある考えをまとめました。

 

「・・・わ、私が蜀と・・・いえ、一刀様とある程度の絆を持っているのは事実です。今回のけ、結婚・・・のお話はお断りさせて頂きましたが、それでも、まだ半人前ですが、わ、私は呉の軍師です。」

 

私の話を雪蓮様と冥琳様は黙って聞いておられました。

 

「先ほどのお話で、蓮華様が正使として蜀に赴くというお話が出ていましたが、その副使として軍師が必要だと思います。冥琳様もそうですが、隠様も呉にとってなくてはならないお方です。特に、現在の状況の中では、冥琳様と隠様のどちらかが孫呉から離れることは避けなければならないと思います。」

 

そこまで、話してから私は少し間を置きました。

 

(・・・やるんだ!少しでも早く大陸を平和にするために。少しでも早く一刀様が帰って来てくれるように・・・・・!)

 

私は袖の中で握り拳を作り、話をつづけました。

 

「なので、今回の副使として、わた、私を派遣して頂きたいのです。せ、精一杯頑張って、か、かかかか必ず・・・・呉、呉蜀同盟を実現させてみせ、見せますっ!!!」

 

そこまで言ったあとに、自分の言ったことの重大さに改めて気付き一瞬クラっとなりましたが、どうにか押しとどめて、雪蓮様と冥琳様のお答えを待ちました。

 

「「・・・・」」

 

お二人は考えこんでいらっしゃるようで、しばらくの間、雪蓮様の執務室を沈黙が包みました。

 

(あぁ・・・・やっぱり、私なんかがそんなに大それたことを言ってはいけなかったのでは・・・・)

 

そう思って、少し心の中で慌てていると雪蓮様が口を開きました。

 

「・・・・・驚いたわ。まさか亞莎がこんなに成長しているなんてね。」

 

雪蓮様の言葉の後に、冥琳様が続けました。

 

「まったくだ。これほど成長しているとは思っていなかったな。これも日頃の努力の成果というべきか・・・。」

 

「・・・・それもあると思うけど、きっと愛の力よ。ね、亞莎?」

 

冥琳様のお言葉に、雪蓮様がそう付け加えました。

 

「・・・・(///)」

 

私は思わず袖で顔を隠しました。

 

「まぁ、どちらにせよ。亞莎の話には我らを説得するだけの力があった。その力を見込んで今回の同盟の使者の任を任せようと思うが、雪蓮はそれで異存ないな?」

 

冥琳様が少し困ったように笑った後で、そう言いました。

 

「えぇ。私に異存はないわ。」

 

雪蓮様はそう笑って答えました。

 

「・・・・それでは、呂子明。そなたに同盟締結のための使者、副使の任を与える。正使である孫権様を支え、必ずやこの同盟締結を成功させよ!」

 

冥琳様の凛とした声が響きました。

 

「はっ、はい!!」

 

私はそう答えました。

 

 

 

~雪蓮と冥琳の会話・雪蓮執務室にて~

 

亞「し、失礼しました。」

 

・・・パタンっ。

 

雪「・・・亞莎ったらあんなに成長してたのね。正直驚いたわ。」

 

冥「それは私も同じだ。正直あそこまでとは思わなかった。」

 

雪「そうよねぇ。もともと天の御遣い君とのつながりを見込んで、亞莎のお母様と一緒に城に呼んだんだもん。まぁ、もともと武官としての能力も高かったみたいだけど・・・・」

 

冥「それを、強引に軍師に変えたのは、やはり戦場で亞莎を生き残らさせるためか?」

 

雪「う~ん・・・・。それも少しあったけど、なんて言うか・・・・勘ね。」

 

冥「勘・・・か。」

 

雪「そ。勘♪。」

 

冥「・・・・まぁそれはいいとして、早く蓮華様にこの旨を伝えなくてはな。」

 

雪「そうね。それに、あの子は堅いから、その辺が原因で話がこじれないように、しっかり言っておかなくちゃ。」

 

冥「そのあたりの仕事は雪蓮に任せるわ。」

 

雪「りょーかい。」

 

 

 

~亞莎視点~

 

私が副使の任を受けてから数日後に、私と蓮華様は蜀へと出立しました。

 

出立までの数日の間に、私は雪蓮様、冥琳様、隠様たちと綿密に話し合いを行い、こちらの要求を決めておきました。

 

また、出立前に思春様が蓮華様について行くと言っていましたが、雪蓮様と冥琳様の説得で、しぶしぶ了解したご様子でした。

 

その代りに、私が思春様に

 

「何があっても蓮華様を守れ!」

 

と強く言われました。

 

蜀に同盟の使者として行ってくると、お母さんに話したら、一刀様に、と手紙を渡されました。

 

 

そうして出立した私たちは、少しの兵を引き連れ、蜀の成都を目指して馬を走らせました。

 

 

 

~一刀視点~

 

曹魏が孫呉を併呑するために大規模な軍事行動を起こしたと聞いたのは、2週間ほど前だった。

 

(亞莎。お母さん・・・・。)

 

その報を聞いて、真っ先に気になったのは、呉に居る俺の大切な人たちのことだった。

 

(どうか無事で・・・・)

 

そう願いながら、俺はこれからのことを決める軍議に出席していた。

 

出席者は、蜀の主要な文官・武官すべて。

 

その人数は、幽州から逃げた時よりも格段に多くなっていた。

 

「そ、それでは。軍議を始めさせていただきますぅ。」

 

そう言った朱里の言葉で始まった軍議は、撤退の時の様な目立った混乱はなく、呉との同盟を組むという方向で話が進んでいた。

 

これは、「呉が併呑されれば次は蜀だ。」という考えと、前回の撤退戦での曹魏への不信感から言って当然の結果だった。

 

そうした方針を受けて、次は誰をその使者として派遣するかという議題になっていた。

 

「私が行くよ!」

 

そう言って勢いよく手を挙げた桃香を説得して、どうにか君主自らが行くという事態は回避した。

 

しかし、同盟に関して、こちらが本気であることを示すためにある程度の地位のある人物が行かなければならないのは事実だった。

 

そう言う都合のよい人物を俺は一人だけ知っていた。

 

「・・・・俺が行く。」

 

そう俺が言うと、愛紗たちが猛反対し、一時議場が騒然とした。

 

そんな中、伝令が来た。

 

「呉の使節。孫権様、呂蒙様がこちらに向かって来ております。」

 

そう伝えた伝令の言葉に、先ほどまでの議論は収まり、変わりにどのようにして同盟を結ぶか。また、同盟締結後は、どのように軍事行動を起こすかが話合われた。

 

亞莎たちが成都に到着したのは、それから数日後のことだった。

 

 

 

~亞莎視点~

 

私たちが成都につくと、すぐに議場に通されました。

 

(この中に一刀様が・・・)

 

議場の扉の前に立ち、そう思っていると、兵の方の声とともに扉が開きました。

 

「呉国使節、孫権様、呂蒙様ご到着。」

 

ギィィイィ・・・・

 

鈍い音とともに開いた扉の向こうには、文武百官、そしてその一番奥に、私があの日以来ずっと求めていた人の姿を見つけました。

 

(あぁ・・・一刀様・・・・)

 

そのお顔はあの時と変わらず、やさしい微笑みで私たちを迎えてくれました。

 

「孫権さん。呂蒙ちゃん。よく来てくれました!」

 

私がそんなことを思っていると、一刀様のお隣にいらっしゃった女性。おそらくは劉備様がそうおっしゃりました。

 

「今回は突然の訪問にも関わらず、このように迎えてくれたことに、感謝している。」

 

蓮華様がそうお答えになると、私たちは、議場の真ん中に設けられた席へと案内されました。

 

その席につく前から、なぜか私は視線を感じていました。

 

その視線は、他の人々から送られてくる好奇や疑いの視線や、一刀様の温かい視線とは違い、どこか冷たく、少し恐ろしいような視線でした。

 

「二人ともよく来てくれた。俺は北郷一刀。天の御遣いなんて呼ばれてる。それで、こっちが劉備。蜀の王だ。」

 

「よろしくお願いします。」

 

一刀様の声の後に劉備様がそう言いました。

 

私は先ほどまでの視線を感じつつも、久しぶりに聞いた一刀様の声に、うれしさを感じていました。

 

「私は、呉王孫策の妹、孫権。そしてこちらは我が孫呉の軍師、呂蒙だ。」

 

そう蓮華様がおっしゃったので、私は頭を下げました。

 

そして頭をあげると、一刀様が私の方を見つめてふっと微笑みました。

 

「・・・・(////)」

 

その優しいお顔に、私は思わず頬を染めてしまっていました。

 

「・・・さて、自己紹介も済んだし、本題に入ろうか。」

 

一刀様がそう言うと、蓮華様が口を開こうとしました。

 

「今回は・・・・」

 

でも、それを一刀様が手で制しました。

 

「いや。その話はそちらから言うべきじゃないよ。」

 

少し、蜀の方たちの中で動揺見られましたが、上座の方に座っていらっしゃる、おそらくは蜀の主要な将軍や軍師だと思われる方たちは、静かに次の言葉を待っているようでした。

 

「孫権さん。私たち蜀と同盟してくれませんか?」

 

「なっ・・・・・」

 

劉備様のおっしゃった言葉に、蓮華様が少し驚いた様子で声をあげました。

 

「同盟はどちらが申し入れるかという、要はその国の面子の問題です。ですが、私たちはそんなことは気にしていません。同盟というものは、お互いにお互いを支えあうってことです。ですから両国の関係は対等じゃないといけないんです。」

 

劉備様の近くにいた小さな女の子がそう言いました。

 

「申し遅れました。私は諸葛孔明と申します。」

 

(あの方が、神算鬼謀でしられる諸葛孔明さん・・・・)

 

私は少し驚いていました。

 

すると今度は、一刀様の近くにいた女の子がしゃべりだしました。

 

「そして、今回は孫呉の方々が、私たち蜀の成都まで来てくれました。そうして示して頂いた誠意に対して、私たちが答えてこそ、孫呉と蜀は対等な関係になれるのだと思いますぅ。」

 

そこまで言ったあとに、その女の子は帽子のつばを持ち恥ずかしそうに顔を隠すと、

 

「あわわ。わ、わたしは、龐士元ですぅ・・・・。」

 

と言いました。

 

(このお二人が蜀の2大軍師・・・・)

 

私はまた少し驚いていました。

 

呉の間諜から入ってくる情報で、この2大軍師が蜀内の改革などを行い、現在のような強国としての基礎を築いてきたということは知っていましたが、それがこのような小さな子だとは思っていなかったからです。

 

「と、いうことでもう一度言う。俺たち蜀と同盟してくれないか?」

 

一刀様がそう言いました。

 

「・・・・・」

 

蓮華様は少し驚いていらっしゃる様子で、黙ってしまっていました。

 

私はそんな蓮華様に少し目配せをして、発言してもいいかを尋ねました。

 

すると蓮華様は私の意図をくみ取ってくれたらしく、頷いて答えました。

 

「あ、あのっ!」

 

そう声を上げた私に、蜀の皆さんの注目が集まりました。

 

自分から言い出したことですが、すこし緊張してしまいました。

 

(が、がんばれ私!!)

 

そう思って自分に気合を入れてから私はつづけました。

 

「ど、同盟の申し入れ。本当にありがとうございます。我ら孫呉としましても、そのように対等な同盟関係になれることを望んでいます。」

 

そこまで言ってから私は少し息をつきました。

 

「しかし、肝心なのはどのように曹魏を討ち倒すかです。孫呉は現在、曹魏から侵攻を受けており、我らはそれを退けることを第一の目標としています。蜀の方々が同盟してくださるというのでしたら、まず、我らに援軍を送っていただきたいのです。」

 

私がそう言うと、一刀様、劉備様は頷きました。

 

「さらに、曹魏を退けた後、今後我らの脅威とならぬように、曹魏の戦力を削りたいと考えています。蜀の方々もそのことについては、同意をしていただけると思います。そこで、蜀の方々には、援軍として、北方の魏との国境を守る兵も含めて、そのほぼ全兵力を送っていただきたいのです。」

 

私の言葉に、議場が少しどよめきました。

 

「現在、曹魏の軍はそのほぼ全勢力、全武将を持って孫呉に当たっています。それでも、魏は国境に相当数の兵を配置していることでしょう。しかし先に述べましたように、魏の主たる武将はすべて孫呉に当たっています。つまり、兵がいても、それを的確に指揮し、こちらに隙があればそれを突こうとするような将は、もう残っていないと考えらえます。」

 

私は、呉で綿密に話しあったこちらの要求を続けました。

 

「そこで、魏との国境には通常の半分ほどに、必要最小限の人数だけ残し、それ以外はすべて孫呉にいる魏軍に充ててほしいのです。」

 

 

 

私の言葉に、議場は静まりかえっていました。

 

(私は、私の選んだ道を最後まで歩くんだ。)

 

そう思いながら、私は返答を待ちました。

 

 

 

あとがき

 

どうもkomanariです。

 

前作に多くの支援・コメントをいただきまして本当にありがとうございます。

 

 

さて、今回やっと主人公である亞莎が活躍させることができました。

 

きっと亞莎は出来る子なんだと思いながら、出来ない作者が必死に考えた要求を言っていただきましたw

 

 

さてさて、物語の終わりまでもう少しですが、それまで、応援してくださる皆様のご期待に添えるように、がんばって行きたいと思います。

 

それでは、今回も読んでいただきありがとうございました。


 
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