第十五話 獅子とまほら武道会―第一回戦第一試合&第二試合
「それでは!ただ今より、まほら武道会本戦、第一回戦第一試合を開始いたします!」
ワアアアア!!と大歓声が本戦会場の龍宮神社に響き渡る
「第一試合のカードは村上小太郎選手VS中村達也選手!両選手共に昨年の本戦出場者という事で、その実力は十二分に証明されております!」
「なァ、あんた」
小太郎が舞台の対面に立つ中村に声をかける
「なんだい、坊や?」
「坊やちゃう、俺は犬がm…村上小太郎や。あんた、去年の大会で楓姉ちゃんに負けた人やろ?」
「…ああ、そうだよ。それがどうかしたかい?」
「俺は、楓姉ちゃんと一緒に修行しとる」
その一言に、中村の米神がピクっと反応する
「せやからあんたに負けるわけにはいかれへん。俺はいつか楓姉ちゃんよりも、ネギよりも強うなるんや!」
「…なるほど、だったら俺も君に負けるわけには行かないな」
中村が空手の猫足立ちの構えを取る
「俺はあの子に負けた。だからこそ今回の大会では前大会の雪辱を晴らす」
「はっもはや言葉はいらん、拳で語れっちゅうことか?良いで、俺もそっちのが好きや」
小太郎も実践の中で磨いた、己独自の構えを取る
二人とも、やる気は充分。あとは火蓋が切り落とされるのを待つのみだ
「両選手共に気合は充分!それでは―――」
「(こんな相手に時間はかけてられん、一発や。一発で決める!)」
「…フゥ~~~…」
小太郎は先手必勝を狙い、足に気を込める
開始と同時に瞬動で背後を取り一撃で決めるつもりだろう
大して中村は気負わずに、以前構えたままで深呼吸し目を閉じる
「第一試合、Fight!!」
「ふっ!」
考えどおり、小太郎は試合開始と同時に瞬動で中村の背後を取る
「(獲った!!)」
そして気を込めた手刀で首筋を狙い、小太郎は勝利を確信していた
―そう、確信『していた』
バシィッ!!
「なっ…!」
「気づいてるぜ!」
中村は背後の手刀に反応し左手で受け止める
そしてそのまま、右腕で小太郎の胸に正拳突きを叩き込んだ
「ぐっ、な、何で気づいたんや。一般人に反応できる速度や無かったはず…!」
「言うと思ってるのか!裂空掌!」
言うや否や中村は掌に戻した右手で気弾を放つ
それを小太郎は瞬動で回避し、一度距離をとる
「(何でや…。俺の瞬動が一般人に見切られた?いや、んなあほな事が有るかい。きっと何かタネがあるはずや)ちっ、考えてても埒アカンわ!」
小太郎は瞬動で近づく事をやめ独自の格闘術で中村に勝負を挑む
中村も空手で応戦するが、なぜか先読みをされているかのように拳を打ち込む場所、蹴りを入れる場所に的確に中村の防御がある
それを何度も続けているうち、小太郎は違和感を感じた
明らかに反応できないはずの死角からの攻撃にも、中村は反応しているのだ
「…わかったぁ!」
「ぐぅっ!?」
声を上げると同時に小太郎は強烈な蹴りを放ち、ガードの上から中村を吹き飛ばす
「やぁっと気付いたでぇ…。おかしいと思ってたんや。俺の瞬動に反応できたこと、先読みしとるみたいな防御、明らかに死角の場所から打ち込んでも素早く防いだこと…」
小太郎は指をビシィッ!と中村に突きつける
「あんたは!自信の周囲を自分の気で覆ってたんや!差し詰めそれは気のレーダー!自分以外の気がその中に入れば、あんたはそれを感知できる!」
「あいててて…参ったな、君みたいな子供に見破られるとは思わなかった」
頭をかきながら中村は肯定する
しかしその顔には自信に裏付けされる笑顔が見えていた
「だが、それを見破ったところでどうするんだ?俺の『制空圏』は生半な格闘じゃ破れないぜ?」
「はっ、確かに悔しいが今の俺じゃあ『格闘』でそれの上を行くのは難しい…。しかしなぁ?」
小太郎は不敵な笑みを浮かべて今までとは異なる構えを取る
「何も格闘で破る必要はないんやで?」
―我流犬上流『
「なっ、気だnもぺっ!?」
小太郎が発射した、牙を模した気弾
それは狙いを過たず中村の顔面に直撃、中村は気絶してしまった
『なぁんとぉ!なんと村上選手、中村選手の十八番である気弾を使用!さらに中村選手は気絶してしまいました!つまり…』
小太郎は拳をバッと宙に突き上げ、笑いながら神社の屋根の上で観戦していた楓を見やる
『村上選手が二回戦へと進出でーす!』
龍宮神社に大歓声がワァァァァアァアア!!!と響いた
「凄いじゃないですか、小太郎さん!」
「舐めんなや、ウル。俺はラカンのおっちゃん相手に数十秒持たせたんやで?あの理不尽の塊に比べれば戦いようはあるわい」
「…否定できないですね」
試合を終えた小太郎は、選手控え室でウルと話していた
「さあって、次は明日菜姉ちゃんとネギの試合や。早よ行くで」
「あ、はい!」
二人は急いで試合を観戦に向かった
★
『それでは、第一回戦第二試合を始めたいと思います!第二試合の対戦カードは神楽坂明日菜選手VSネギ・スプリングフィールド選手!』
和美の声と同時に明日菜とネギの二人がリング上に上がる
『またも両選手共に前大会の本選出場者!しかもネギ選手は麻帆良の誰もが知る前大会の準優勝者です!前優勝者のクウネル・サンダース選手が出場していない今大会のトトカルチョで一番人気は間違いなくこの少年でしょう!かたや―』
和美の視線が、フリルの付いたメイド服のような衣装を着ている明日菜に向けられる
『神楽坂選手は昨年の武道会の一回戦で惜しくも敗退してしまいましたが、その試合で見せた動きは素晴らしい物でした!今回の試合でも同じようなモノが見られることを期待している男性陣も多くいることでしょう!』
「こらー!!朝倉、余計な事言うんじゃあないわよ!!」
ハリセン状態の『
それを間近で見ているネギは苦笑している
「あはは、悪い悪い…『それでは!第二試合…Fight!!』
「よぉっし!行くわよ…ネギ!!」
裂帛の気合を込めて、ハマノツルギを構える明日菜
しかし―
「あ、明日菜さん…それ…」
「へ?何よネギ。そんな間抜けな顔しちゃって」
「あ~…明日菜、あんたやっぱりバカレッドだわ」
「あんたまで何のことよ、朝倉!?」
「オイオイ」「アレッテホンモノ!?」「ハンソクジャナイノカ?」
ネギと和美どころか司会席、観客席までもがざわついている
よく見れば、その視線はすべて明日菜が持つハマノツルギに向いている
「ったくなんな…の…よ」
そう、観客席や司会席がざわついていた理由はただ一つ
『え~只今の試合ですが…』
持ち主の闘志に反応したハマノツルギが勝手に姿を変え―
『刃物を所持している神楽坂選手の、『反 則 負 け』とさせて頂きます(汗)』
大剣の状態へと変化してしまっていたからであった
おっかしいなー。主人公の筈のウルが三言しか喋ってないなー…?
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第十五話 まほら武道会一回戦―第一試合&第二試合