No.690313

九番目の熾天使・外伝 ~短編その⑫~

竜神丸さん

幽霊騒動その11

2014-05-30 17:20:54 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:2698   閲覧ユーザー数:1305

クレア・クレスメント。

 

彼女はかつて、俺を異世界“リィンバウム”へと呼び出した召喚師だった。

 

召喚事故で俺を呼び寄せてしまった責任を取る為に、行く当てのない俺の世話をする事になった。

 

その後は共に過ごして行き、気付けば俺達は相思相愛の仲にまでなっていた。

 

このままクレアと一緒に過ごしていけたら、どれだけ幸せだろうか。

 

そう思い始めていたある時……事態は急変した。

 

悪魔との戦争の勃発によって俺と彼女は引き離され、俺は戦争前に護衛獣として召喚したフィアや、戦争中に知り合ったシグマや親父と共に、攻めてきた悪魔達と戦った。クレアは戦えない人達や怪我人を連れて、後方の施設まで避難した。

 

何体もの悪魔を倒し続けた俺は、民間人が避難していた施設に悪魔の襲撃があった事を知り、すぐにクレアがいるであろう施設まで駆け付ける事は出来たが…

 

そこには、全身血塗れで倒れているクレアの姿があった。

 

駆け付けた時にはもう遅かった。

 

クレアは既に手遅れと言える程の致命傷を負っており、助かる見込みもほぼゼロだった。

 

そんな彼女が、俺の耳元で告げた。

 

 

 

 

 

 

『ありがとう……レイのおかげで……私、幸せだったよ…』

 

 

 

 

 

 

それだけ告げてから、クレアは俺の腕の中で息を引き取ってしまった。

 

恐らく、その時からなのだろう。

 

俺が、恋愛に対して臆病になってしまったのは。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――そこまでが、リィンバウムでの出来事だった」

 

支配人から過去の経緯を聞いていたげんぶ達。げんぶは目を閉じたまま瞑想しているかのように聞いており、凛は岩の上に座ったまま一言も話さず、ユイは暗い表情のまま話している支配人を心配しているかのような表情で見ている。

 

「その後はユイ、それにユリスやフレイア達とも出会い、管理局の連中と戦っていた最中にOTAKU旅団とも遭遇した。そして旅団に加わってからしばらくした後……闇の書の中で、クレアと再会した」

 

「!? まさかお前、闇の書に…!?」

 

「げんぶは知らなくても無理ないだろうな、お前がいないタイミングで吸収されちまってたし。そこでクレアに出会った時、あいつから盛大なビンタを喰らわされたよ…『自分の事を思い続けるのは構わないけど、それで他の女の子まで泣かせちゃってどうする』ってさ」

 

「うわぁ、その娘も器デカいわねぇ…」

 

「『他の女の子達も幸せにすれば許してあげる……クレアは俺にそう言って、背中を押してくれたんだ」

 

「そういう事だったのか……だが、それなら疑問になるな。その背中を押してくれた筈の彼女が、何で悪霊化した上でお前に襲い掛かって来たんだ?」

 

げんぶの疑問は最もである。闇の書で出会ったクレアと、この空間で悪霊化したクレアとでは雰囲気が違い過ぎるのだ。

 

「それが俺にも分からない。あいつに一体、何があったのか…」

 

「…ゴーストショッカー」

 

「「「!」」」

 

ユイが口を開く。

 

「…最初に飛び込んだ後、洞窟の先で奴等を見つけた。だから奴等の仲間のフリをして、奴等の目的について一通り調べてみた」

 

「! だからさっき、戦闘員に化けてたのか…」

 

ユイがその場に放り捨てたショッカー戦闘員のマスクを見て、支配人が納得する。

 

「ゴーストショッカーに加わってる怪人達は皆、かつて仮面ライダー達によって倒され、そして死亡した亡霊だった。本来ならどの怪人の魂も、そのまま冥界に送られる筈だったけど……そんな奴等の魂をこの空間に引き寄せたのが、あの騎士…」

 

「!? まさか、アザゼルが…!?」

 

ユイは小さく頷いてから、話を続ける。

 

「…奴は怪人達の亡霊を引き寄せてから、この空間内でゴーストショッカーを結成した。それから奴等が最初に行った事は……死者の魂を、この空間内に引き寄せる事だった」

 

「…それがよく分からんな。亡霊の魂を引き寄せたところで、一体何になるんだ?」

 

「奴等の目的は……“鍵”を作り出す事」

 

「「鍵?」」

 

「亡霊達が持つ死のエネルギーによって作成される“鍵”……それはこの異界に存在している門を、強制的に抉じ開ける為の存在」

 

「異界の門? 俺達が地上世界からこの空間に来たんだから、その逆も出来るんじゃないのか?」

 

「死者である奴等は、異界の門を開ける以外の方法では地上に出られない……だから死者の魂と一緒に生きた人間も引き寄せ、悪霊達を操って殺害させていった……理不尽な死を迎えた者達の魂も、亡霊のエネルギーとして活用する事が可能だから…」

 

「!! ちょっと待てユイ、さっき言った異界の門って…」

 

「そう……かつて、兄さんの手で封印された筈の扉。それを抉じ開ける事で、奴等は再び地上世界に攻め入ろうとしてる…」

 

「ッ……アザゼルの野郎、やっぱりまだ諦めてなかったのかよ…!!」

 

かつて支配人は、自分の仲間達と共に異界の王が率いる軍団と戦った事があった。その時は支配人達の活躍によって異界の王は打ち倒され、残ったアザゼル達を異界に閉じ込めたまま、異界と地上世界を繋ぐ門の封印に成功。しかし今、その門がアザゼルやゴーストショッカーによって再び開けられようとしているのだ。

 

「けど、ただ亡霊を引き寄せるだけでは意味が無い……悲しみや憎しみ、そして苦しみ……そういった負の感情を持ち合わせた悪霊の魂は“鍵”を作り出す為のエネルギーとして、より効率の良い材料となる」

 

「!! じゃあ、クレアって人や他の亡霊達のほとんどが悪霊になってたのは…」

 

「…全て、ゴーストショッカーの仕業」

 

「…そういう事か」

 

げんぶは拳をパキポキ鳴らす。

 

「転生者の俺が言うのも何だが、死者の冒涜に等しい行為だ。野放しにしておく訳にはいかんな。早いところ奴等を一気に叩き潰し…」

 

「待って」

 

立ち上がったげんぶをユイが制止する。

 

「今は戦ったら駄目……かえって、ゴーストショッカーの思う壺になってしまう…」

 

「…どういう事だ?」

 

「ゴーストショッカーの怪人達は全員、仮面ライダーに対する憎しみという負の感情を持ってる……そんな奴等を倒してしまえば、奴等の魂が“鍵”の中に還元されて、余計に“鍵”の完成を早めてしまう…」

 

「はぁ!? じゃあ私達が悪霊を退治したのも、全部奴等の計画通りって事!?」

 

これには凛だけでなく、支配人やげんぶも驚きを隠せなかった。今まで退治してきた悪霊達が誰も成仏出来ていないどころか、自分達が意図せぬ形でゴーストショッカーの計画に加担してしまっていたのだから。

 

「だったらどうすれば良いのよ!? このままじゃどの道、奴等が“鍵”を完成させちゃうんでしょ!?」

 

「奴等の計画を止める方法はただ一つ」

 

先程まで自分達のいた洞窟を眺めながら、ユイが告げる。

 

「異界の“鍵”を、直接破壊する……それ以外に方法は無い」

 

「“鍵”の破壊…?」

 

「“鍵”は亡霊のエネルギーを蓄えるたびに、どんどん強化されていく……これ以上亡霊達のエネルギーが吸収される前に、何としてでも破壊しないといけない……けど」

 

「…ゴーストショッカーがいる以上、その方法は難しいだろうな」

 

「くそ、何か他に方法は無いのか…!!」

 

何も方法が思い付かず、げんぶが岩壁を殴りつけたその時…

 

 

 

 

 

 

-ズズゥゥゥン…-

 

 

 

 

 

 

「「「「!?」」」」

 

いきなり発生した地響きに、四人は思わず怯んでしまった。しかし今の四人に怯んでいる余裕などありはしなかった。何故なら…

 

『『『『『イィーッ!!』』』』』

 

『『『グルァァァァァァァァァァッ!!』』』

 

『ギギギギギギ…!!』』』

 

目の前に、多くのショッカー戦闘員や怪人達が現れたのだから。しかも怪人達の後方からは、鋏が四本も生えている巨大なバケガニが出現し、その上には十面鬼ユム・キミルが乗っていた。

 

『さぁ同胞達よ…ライダーに限らず、邪魔者は纏めて始末するのだ…!!』

 

『『『『『イィーッ!!!』』』』』

 

『『『グガァァァァァァァァァッ!!!』』』

 

十面鬼の言葉と共に、怪人達が一斉に四人に迫り始める。

 

「チィ、意地でも“鍵”を完成させる気かアイツ等…!!」

 

「じゃあ、今の地響きは…!?」

 

「…“鍵”の完成が、近付いてるという事」

 

「ッ…また来るぞ!!」

 

げんぶが叫ぶと同時に、戦闘は再び始まるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、廃病院では…

 

 

 

 

 

 

「「「「「おぉ~…」」」」」

 

「うんうん、上手くいって良かったぜ」

 

ディアーリーズ達が驚きの表情を隠せずにいる中、okakaだけは満足そうに頷いていた。そんな彼等の目の前には…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「凄い……まだちょっと動きにくいけど、本当に生き返ったような感じだ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

霊体であった筈の真司が、普通の人間らしき姿で存在していたのだから。

 

「いや~案外、やれば出来るもんだねぇ。うちの会社の支部が開発中だった最新アンドロイド、まさかここまで忠実に再現出来てしまうとは」

 

「お前の会社の支部、凄過ぎるだろ色々な意味で…」

 

そう。真司は現在、okakaがワームホールの能力で取り寄せたマネキン型アンドロイドに憑依していたのだ。しかも彼が憑依した途端に、ただのマネキンだった筈のアンドロイドが憑依した真司のデータを次々とアップデートしていき、何と城戸真司そっくりの姿に変形したのだ。容姿や髪型だけでなく服装まで丁寧に再現されており、これにはディアーリーズ達だけでなくokakaも想定外だったとの事。

 

『『『真司お兄ちゃん、生き返ったの?』』』

 

「少し違うな。今の真司は魂がアンドロイドに憑依してるだけであって、完全に蘇生した訳じゃない。だからアンドロイドが損傷したりすると、案外あっさり魂が抜け出てしまう」

 

「お、思ったより不便なんだなこれって…」

 

「まぁ、後は真司次第だ。この破壊者である俺に相乗りした以上、お前の覚悟もしっかり見せて貰うぜ」

 

「…あぁ」

 

真司は両手をギュッパギュッパ握り、自分が今は霊体でない事を改めて認識する。

 

「にしても、よくあんな誘いに乗ったもんだね真司さんも。いきなりあんなおかしな誘いを受けて、それを承諾しちゃう真司さんもある意味異常だよ」

 

「コラこなた、失礼だよ!」

 

「いや、良いんだ。俺も皆の役に立てないままでいるのも納得いかなかったし、一城には充分ありがたいって思ってる」

 

「そりゃ嬉しい限りだ。さて、後はお前が戦う手段についてだが…」

 

その時…

 

 

 

 

 

 

『『『『『イィーッ!!』』』』』

 

 

 

 

 

 

「「「「「!?」」」」」

 

病院内に、ショッカー戦闘員達が次々と侵入して来たのだ。その後方からは毒トカゲ男やシオマネキング、ガルドサンダーや武者童子、複数のラットファンガイアにライオンクラゲヤミーなども出現。そして…

 

『ンッン~……ほほう? こんな所で会うとはなぁ、氷の魔法使い』

 

「…うわぁ」

 

二本の角を持った黒ずくめの怪人―――ベルゼバブまでもが姿を現した。タクトを振りながらノリに乗って現れた彼を見たディアーリーズは、思わず嫌そうな表情になる。

 

「まさか、またお前の顔を見る事になるとは思いませんでしたよ……蠅の王、ベルゼバブ」

 

『フッフン、そういうお前は何故こんな所にいる? わざわざ我々ゴーストショッカーの為に、死にに来てくれたとでも言うかね?』

 

「寒い冗談だな……こなた!! ハルトさん!!」

 

「OK、いっちょ行こうかね…!!」

 

「こなちゃん、アンクのコアメダルだよ!」

 

「サンキュー咲良ちゃん!!」

 

『ふん、上手く立ち回れよ…?』

 

「「「変身!!」」」

 

≪チェンジ・ナウ!≫

 

≪ランド・プリーズ! ドッドッドドドドン・ドンドッドドン!≫

 

≪タカ・クジャク・コンドル! タ~ジャ~ドル~!≫

 

『ほぉう…♪』

 

ディアーリーズはウォーロック、ハルトはウィザード・ランドスタイル、こなたはオーズ・タジャドルコンボへと変身。それを見たベルゼバブは面白そうにタクトを振り、怪人達も戦闘態勢となる。

 

「さぁ、断罪の時間だ…」

 

「ド派手なショータイムだ!!」

 

「ほんじゃ、レッツゴー!!」

 

『上等じゃないか……かかれ!!』

 

『『『『『イィーッ!!』』』』』

 

ベルゼバブの合図でショッカー戦闘員達が一斉に動き出し、同時にウォーロック達も駆け出し迎え撃つ。

 

「変身!!」

 

≪カメンライド・ディケイド!≫

 

『『『イーッ!?』』』

 

「さて、こっちも盛り上がろうじゃねぇか…っと!」

 

『グガァ!?』

 

okakaもプロトディケイドに変身し、ライドブッカー・ガンモードでショッカー戦闘員達を射撃。そのままライドブッカーをソードモードに変形させ、接近して来たライオンクラゲヤミーを斬り伏せる。

 

「俺達も戦った方が良さげ?」

 

「それが良いんだろう…なっ!!」

 

「あぁもう、いい加減しつこいわよアンタ達!!」

 

FalSigやaws、アスナの三人もそれぞれ武器を構え、ショッカー戦闘員の殲滅を開始する。

 

『アビアビー! オ前達モ全員、“鍵”ノエネルギーニシテヤル!!』

 

『『『ひ、ぁ…あ…!?』』』

 

「ッ…!!」

 

その一方で、シオマネキングが子供の亡霊達に接近していた。美空が子供達を守るように抱き締め、そんな彼女達にシオマネキングが左手の強靭な鋏を振り下ろそうとする。

 

「だぁっ!!」

 

『アビーッ!?』

 

「真司、さん…!?」

 

「美空ちゃん、皆を連れて早く隠れて!!」

 

そんなシオマネキングを、真司が渾身のタックルで突き飛ばす。シオマネキングが怯んで倒れた隙に、真司が美空や子供達を急いで別の場所に隠れさせる。しかしその間にも、シオマネキングはすぐに起き上がって真司に攻撃しようとする。

 

『オノレェ…邪魔ヲスルナ、死ンデル癖ニィッ!!』

 

「く…!?」

 

≪カメンライド・デンオウ!≫

 

「真司、伏せろ!!」

 

≪Full Charge≫

 

「うぉわっ!?」

 

『ナ、何…アビィィィィィィィッ!?』

 

その直後、プロトディケイド電王(以下PD電王)ソードフォームがデンガッシャーのオーラソードを飛ばし、真司が伏せると同時にシオマネキングがオーラソードに何度も斬られ爆散する。

 

「大丈夫か?」

 

「あ、あぁ! 何とか…」

 

その後も向かって来るショッカー戦闘員を、PD電王は真司を守る形で薙ぎ倒していく。そんな状況に、真司は俯いて拳を握り締める。

 

(畜生……また俺は…!!)

 

「おいおい、さっきの発言はどうしたよ真司」

 

「…!?」

 

ショッカー戦闘員を殴りつけてから、PD電王が語りかける。

 

「さっきの話の続きだが、俺はお前に戦わせる為の手段を持っている。後はお前がどうするかで、結果は変わるんだ…とっ!!」

 

「俺が、どうするか…?」

 

武者童子の振るった剣を、PD電王がデンガッシャーで受け止める。

 

「時間はあっという間に過ぎていく!! 戦うのか戦わないのか、今この場でハッキリ決めてみせろ!! 城戸真司!!」

 

PD電王が武者童子の剣を弾き返す中、真司は俯いていた顔をゆっくりと上げる。

 

「俺は―――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

『オォォォォォォォォッ!!』

 

一方、ウォーロックはベルゼバブと交戦していた。互いの剣が弾き合い、どちらも未だ大したダメージは負っていない。

 

「どうしたベルゼバブ!! 生前よりも弱くなったか!?」

 

『ほざけ、魔法使い如きが…!!』

 

ウォーロックの攻撃を回避したベルゼバブはそのまま後方に飛び、空間転移で姿を消す。それでもウォーロックは焦らずに立ち止まってからウォーロックソードを背中に持っていき、真後ろに転移したベルゼバブの剣をガードする。

 

「そのパターンはもう慣れた!!」

 

『ヌッ!?』

 

剣を弾かれたベルゼバブの腹部にウォーロックソードの一撃が入り、そのままウォーロックの右足がベルゼバブを蹴り飛ばす。

 

『クククク…やはり一筋縄ではいかないようだなぁ、氷の魔法使い…!!』

 

「褒め言葉どうも!!」

 

一旦ウォーロックソードを床に刺し、ウォーロックが指輪をドライバーに翳そうとしたその時…

 

 

 

 

-ズガガガガァンッ!!-

 

 

 

 

「ぐぁぁぁぁっ!?」

 

ウォーロックの背中に火花が飛び散った。膝を突いたウォーロックが振り向いた先には、マグナムショットを構えたアポロガイストの姿があった。

 

「チッ、卑怯な…!!」

 

『馬鹿め……我々ゴーストショッカーにとって、ライダーは一番の障害!! 如何なる手段を使ってでも、貴様等を排除してやるのだ!!』

 

『そういう事だ……さぁ氷の魔法使い、大人しく絶望に染め上げられるが良い…!!』

 

「誰が!!」

 

≪ゲイザー・ナウ≫

 

ウォーロックの周囲にいくつもの魔法陣が出現し、鋭利な氷柱を発射。しかしアポロガイストは巨大な盾ガイストカッターで防御し、ベルゼバブは空間転移で別方向に飛ばす。

 

「え…のわわわわっ!!」

 

「ぬぉ、く…!?」

 

「うぉ危なぁ!?」

 

しかもその飛ばした氷柱は次々と、ショッカー戦闘員を倒している真っ最中だったアスナやFalSig、awsにまで当たりそうになった。

 

「あ、ごめん三人共!?」

 

『隙ありぃっ!!』

 

「あ、しま…ぐぁぁぁぁぁっ!?」

 

アスナ達に謝っていたウォーロックの背中をアポロガイストがアポロフルーレで斬りつけ、そのままガイストカッターの刃で彼を吹っ飛ばす。

 

『さぁ、ここからが盛り上がり所だぁ…!!』

 

『ギャォォォォォォォォォォンッ!!』

 

ベルゼバブがタクトを振るった瞬間、ビッグ・ティーレックスが壁や天井を突き破って出現。病院内のあちこちを破壊し始める。

 

「うわ、またデカいのが来たよ!?」

 

オーズはビッグ・ティーレックスの出現に驚きつつも、飛びかかって来るガルドサンダーを火炎弾で弾き飛ばす。そこに咲良がジャンプして駆け付ける。

 

「こなちゃん、次はこれ!」

 

「へ!? …まぁ、これしか無いよね!」

 

オーズはベルトから三枚のコアメダルを抜き取り、代わりに紫色のコアメダルを装填。そのままオースキャナーで読み込ませる。

 

≪プテラ・トリケラ・ティラノ! プットッティラ~ノザウル~ス!≫

 

「う、く…グルァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!」

 

恐竜のような特徴を持った、凍てつく古の暴君―――プトティラコンボとなったオーズ。彼女は野獣のように高く吠えてから翼で宙に舞い上がり、ビッグ・ティーレックスに迫る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『さぁ集まるのだ、ファンガイア達よ!!』

 

『『『キシャァァァァァァァ…!?』』』

 

「!? 何だ…!?」

 

アポロガイストが両手を高く上げると、ウィザードと戦っていたラットファンガイア達がライフエナジーと化して、一斉にアポロガイストの下まで吸い寄せられていく。するとアポロガイストの顔に装着されていたパーフェクターが変化し、青いステンドグラス状のパーフェクターとなったのだ。

 

『クハハハハハハハ……我が名はスーパーアポロガイスト!! 貴様等ライダーにとって、とてつもなく迷惑な存在なのだぁっ!!!』

 

「く…がぁぁぁぁぁっ!?」

 

ライフエナジーの力でパワーアップしたスーパーアポロガイストの射撃がウォーロックを狙い撃ち、数発でウォーロックを吹き飛ばす。壁に叩きつけられたウォーロックは変身が解けてディアーリーズの姿に戻ってしまい、ウォーロックリングも床に落ちてしまう。

 

「く…!!」

 

『おっと残念』

 

「!? ぐぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

倒れた状態のままウォーロックリングを掴み取ろうとしたディアーリーズの手を、ベルゼバブが容赦なく踏みつける。踏まれながらミシミシと骨の軋む音が鳴り、ディアーリーズの悲鳴が上がる。

 

『さぁ氷の魔法使いよ。孤独に死に行く恐怖で、絶望するが良い……それで新たなファントムを、この世に解き放つのだ…!!』

 

「「ウルッ!!」」

 

アスナとウィザードが叫ぶ中、ベルゼバブはディアーリーズの背中に剣を突き立てようとしたその時…

 

 

 

 

 

 

「やめろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」

 

 

 

 

 

 

『ムゥッ!?』

 

駆け付けた真司が飛びかかり、ベルゼバブを蹴りつけた。しかし所詮はアンドロイドでしかないのか、彼の飛び蹴りはベルゼバブにとって大したダメージにはならなかったようだ。

 

「ッ…真司さん…!?」

 

「…なぁウル」

 

ディアーリーズを起こしながら、真司が口を開く。

 

「俺さ、初めて仮面ライダーになった時に決めてたんだ……モンスターから人を守る為に戦うって」

 

「真司さん…」

 

「俺はもう、こうして死んじゃってるけど……今を生きてる人達はたくさんいる。そんな人達を死なせようって言うんだったら、そんな事はさせる訳にいかない…」

 

ディアーリーズと真司が立ち上がり、ベルゼバブやスーパーアポロガイストと正面から対峙する。

 

「俺も戦う……今を生きてる人達を守る為に……もう一度、俺は戦う!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よく言った、城戸真司!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

≪Gun Form≫

 

『『何…グォワッ!?』』

 

ベルゼバブとスーパーアポロガイストを銃撃が襲い、その隙にPD電王ガンフォームが真司とディアーリーズの下まで駆け付ける。

 

「ほれ、ディア」

 

「あ、どうも」

 

PD電王は落ちていたウォーロックリングをディアーリーズに投げ渡してから、真司と改めて向き合う。

 

「俺と相乗りした覚悟……確かに見させて貰った」

 

「一城…」

 

「そんなお前に、戦う手段を与えよう」

 

PD電王はプロトディケイドの姿に戻り、ワープホールから取り出した拳銃プロトディエンドライバーに一枚のカードを装填する。

 

≪カメンライド・リュウキ!≫

 

プロトディエンドライバーの銃口から放たれたカード状エネルギー“ゲート”が等身大サイズへと変化し、真司の目の前に留まる。

 

「そのカードを潜れ。強く望む事で、お前は戦う為の力を得る」

 

『させるかぁっ!!』

 

ベルゼバブが何本もの鋭い針を飛ばすも、プロトディケイドはそれをライドブッカーで一閃し掻き消す。

 

「行け、真司!! ライダーとなって、守る為に戦え!!」

 

「真司さん!!」

 

「ッ…おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

真司は出現したゲートに向かって駆け出し、そのままゲートを潜り抜けていく―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――!」

 

 

 

 

 

 

気付けば真司は、真っ暗闇の空間に存在していた。

 

『グォォォォォォォンッ!!』

 

そんな彼の下に、深紅の竜が飛来する。

 

「お前と一緒に戦うのも、何時ぶりだろうな」

 

『グルゥゥゥ…!!』

 

「…もう一度、力を貸してくれ。ドラグレッダー」

 

『…グォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォンッ!!!』

 

真司の意志を汲み取ったのだろうか。深紅の竜―――ドラグレッダーは真司の周囲を回転し、そのまま彼と一体化していく―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ヌゥッ!?』

 

『何だと…!!』

 

目の前の光景を見て、ベルゼバブとスーパーアポロガイストは驚愕する。何故なら真司の姿が、先程までとは異なる姿に変化したのだから。

 

「すぅぅぅぅぅぅぅ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この時、城戸真司は復活した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

人々を守る為に戦う、ミラーワールドの戦士―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…しゃあっ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――仮面ライダー龍騎として。

 


 
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