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魔法少女リリカルなのは~原作介入する気は無かったのに~ 第百十六話 馬鹿が迎える鮮血の結末

神様の手違いで死んでしまい、リリカルなのはの世界に転生した主人公。原作介入をする気は無く、平穏な毎日を過ごしていたがある日、家の前で倒れているマテリアル&ユーリを発見する。彼女達を助けた主人公は家族として四人を迎え入れ一緒に過ごすようになった。それから一年以上が過ぎ小学五年生になった主人公。マテリアル&ユーリも学校に通い始め「これからも家族全員で平和に過ごせますように」と願っていた矢先に原作キャラ達と関わり始め、主人公も望まないのに原作に関わっていく…。

2014-04-06 23:48:32 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:19938   閲覧ユーザー数:17739

 「見えました!ラピュタです!!」

 

 地上本部からNice boatを発進させ、上空を移動する事約1時間。遂にラピュタを捕捉した。

 ゴリアテを沈めた時のロボット兵の群れはいない。どうやら一旦ラピュタへ帰還してる様だ。

 

 「滝島三佐を除く魔導師組は出撃準備を」

 

 「「「「「「「「了解」」」」」」」」

 

 「レスティアも頼む」

 

 「ええ」

 

 既にモンスターボールから出していたレスティアもシュテル達と共に待機して貰う。

 皆がブリッジから出て行った中、椿姫だけはまだこの場に残っているが。

 

 「艦長!!通信です!!」

 

 「繋いでくれ」

 

 通信担当の人に指示を出す。

 俺への呼び方が『艦長』となっていた。今回の作戦の総指揮官で艦長席に座っているのが理由らしい。

 ……悪くない響きだな艦長って。

 

 『はっはっはっはっは…』

 

 ピッ

 

 「か、艦長!?」

 

 「どうした?」

 

 「通信を切ってしまって良かったのですか?」

 

 「馬鹿の笑い声にはもう飽きた」

 

 艦長席でうんざりしていると再び通信が。今度は強制的に繋がれる。

 

 『いきなり通信を切るとは随分失礼な態度だね』

 

 「いきなり笑って出迎える奴は嫌いなんだよ」

 

 俺は心底嫌そうな表情を浮かべて画面に映る人物、ムスカに答える。

 ていうかコイツは何で毎回笑いながら登場するんだ?ラピュタの力に余裕と絶対の自信を感じているからか?

 

 『これは失礼』

 

 「……時空管理局局員の長谷川勇紀三等陸佐だ。元時空管理局員であり現ラピュタ王ロムスカ。アンタを逮捕しにきた」

 

 『これはこれは。地上(おか)の若きエースがお出ましとは。しかし私を逮捕?はっはっは。君は私に挑んだ愚かな局員達の末路を見ていなかったのかね?』

 

 「たかが次元航行艦1隻墜とした程度でよくそこまで余裕を持てるな。アホくさ」

 

 コッチは戦力の数こそ少ないものの魔導師の質で言えば圧倒的に上だ。ロボット兵に後れを取る程弱い魔導師はいない。

 

 「……言うだけ無駄だと思うけど、大人しく武装を解除して投降しろ。多少は罪が軽くなるぞ」

 

 『素直に応じると思うかね?』

 

 思ってねーよ。

 

 「…ならコチラとしてはミッドに被害を出させないために武力による鎮圧を宣言させて貰う」

 

 『私のラピュタを武力で鎮圧?はっはっは、地上のエースはジョークも一流だね』

 

 ……はぁ。

 

 「せいぜい笑ってろ」

 

 強制的に繋がれた通信映像を強引に切る。

 

 「さて……魔導師の皆はもう準備出来てるかな?」

 

 待機場所の映像を映すと、皆既にバリアジャケットを纏い、ストレッチで体をほぐしたり、目を閉じて静かに佇んでいたり、デバイスやカートリッジの再確認、点検を行ったりしている。

 これならすぐに出撃させても慌てる事は無いな。

 

 「あー…魔導師の皆さんとリンスにレスティア、もう出撃して貰いたいんですが宜しいですか?」

 

 『『『『『『『『『コチラはいつでも!!』』』』』』』』』

 

 映像越しに映る皆の瞳はコチラに向き、大きく頷く。

 何とも頼もしい。

 

 「ではこれよりラピュタ攻略戦を開始します!!」

 

 「ハッチオープン!!!」

 

 俺が大々的に宣言し、管制スタッフが戦艦のハッチを開く。

 

 「総員、出撃せよ!!」

 

 『まずは前線組の僕達からだね。大槻亮太、出撃します!』

 

 『暁澪、出ます!!』

 

 『レヴィ長谷川行きまーーっす!!暴れるぞーーー!!!』

 

 まずは前線組の3人が出撃する。

 

 『シュテル長谷川、敵は全て焼滅させます!』

 

 『ディアーチェ長谷川、出るぞ。木偶人形の塵芥など全て蹴散らしてくれるわ!』

 

 『ユーリ長谷川、頑張ります!!』

 

 『八神リインフォース、出る』

 

 『ティーダ・ランスター、行きます』

 

 『ユニゾンデバイスレスティア、華やかに舞うとしましょうか』

 

 残りの後方支援組も出撃した。

 と、同時にラピュタの方にも動きが。

 ゴリアテの時同様にラピュタ下部から出て来たロボット兵の群れが真っ直ぐコチラに向かってくる。

 

 「おーおー、大群だねぇ」

 

 相変わらずの物量作戦。

 

 「数はどれぐらいかしら?」

 

 椿姫が管制スタッフに尋ねている。

 

 「レーダーの反応を見る限り、およそ300体です」

 

 300体。対してコッチの魔導師は7人にリンスとレスティアのユニゾンデバイス2体。

 敵と接敵する前に一当てしておくべきか。

 とすればシュテル、ディアーチェ、リンス、レスティアの砲撃、広域殲滅、精霊魔術が妥当だな。

 俺が管制スタッフを通じて指示を出そうと思った矢先、澪からの通信が入る。

 

 『すみません。出だしの一撃の許可を貰えませんか?』

 

 「ん?澪がやるの?」

 

 『はい。新たな力のお披露目です』

 

 「んー……許可する。現場の各員は暁三佐の初撃後に迎撃の態勢を取る様に伝えて下さい」

 

 「はい!!」

 

 早速スタッフが俺の言った指示を皆に飛ばす。

 

 「ていうか良かったの?澪に先制攻撃の権利譲って」

 

 「お前は興味無いのか?澪の新たな力に」

 

 「あるわね」

 

 迷わず即答した椿姫はすぐ、現場を映している映像に視線を向ける。

 前線参加への立候補、そして神様に叶えて貰った願いは新たな武器らしいし。

 武器っつー事は宝具でも貰ったか?

 …案外約束された勝利の剣(エクスカリバー)とか貰ってそうだな。もしくは乖離剣(エア)とか…。

 

 『それでは行きます!!』

 

 澪が取り出したのはダブルのアイスクリームにリボンがついた様な形状をした物。

 ……何か見た事ある武器。もしかしてアレって……

 

 『轟きなさい!!『雷公鞭』!!』

 

 「やっぱりか!!」

 

 思わず艦長席から身を乗り出して叫んでしまった。

 

 ピシャアアアアアンンンンンンンンンンッッッッッッッッ!!!!!!!!!!

 

 俺が叫んだのとほぼ同時に、ミッド中の上空を覆う様な雷が降り注ぐ。

 

 「「「「「「「「「「な……」」」」」」」」」」

 

 『『『『『『『『……………………』』』』』』』』

 

 管制スタッフも現場のシュテルも口をだらしなく開け、唖然としている。

 

 「……流石はスーパー宝貝(パオペエ)

 

 隣にいた椿姫も頬を引き攣らせ、小さく呟いていた。

 

 『雷公鞭』

 

 『週刊少年ジャンプ』で連載されていた『封神演義』に登場する道士『申公豹』が所有する宝貝(パオペエ)の中でも特に強力な部類になる『スーパー宝貝(パオペエ)』の1つ。雷を操る宝貝(パオペエ)で『最強宝貝(パオペエ)』とも言われる。その力は国土全体に及ぶ程凄まじいものである。

 

 「管制スタッフ、今の一撃で敵ロボット兵への影響は?」

 

 「……はっ!!?す、少し待って下さい!!」

 

 俺の声でハッとした管制スタッフはコンソールを叩き、確認する。

 

 「あ……暁三佐の攻撃で敵兵力の残存反応、48体……です」

 

 ……あの一撃で250体以上……約6分の5を屠ったか。

 雷公鞭の直撃を受けたロボット兵は黒焦げになってそのまま落下していた。座標で確認したがこの真下は海なのでロボット兵の残骸が落ちても問題は無い。

 宝具貰ったかなーとは思ったけどまさか『宝貝』と書いて『パオペエ』と読む方の武器だったとは。しかもスーパー宝貝(パオペエ)

 ……マジパねえ。間違い無く俺のアポロンより威力上じゃねーか。それどころかレスティアの精霊魔術……しかも上位のクラスに匹敵する威力かも。

 

 『意外と脆いですねロボット兵』

 

 画面の向こうに映っている澪はあっけらかんと言う。

 

 『……私達が出た意味はあるのでしょうか?』

 

 『…言うなユーリよ』

 

 『僕の元気が空振りに終わったんだけど…』

 

 『むしろ楽出来るんだから文句の言い様無いと思うんだけど』

 

 『同感ね』

 

 ユーリ、ディアーチェ、レヴィ、亮太、レスティアも画面の向こうで雷公鞭の威力を見て口にしている。

 

 「っ!!ラピュタ側から再び反応!!ロボット兵の増援です!!」

 

 まあ、流石に初期出撃の300体で打ち止めって訳は無いよな。

 

 『じゃあ2撃目を『待った待ったーーー!!!』…どうかしましたかレヴィちゃん?』

 

 『澪ばっかり目立ってズルい!!僕だって暴れたい!!』

 

 再び雷公鞭を振りかざそうとする澪をレヴィが止める。

 何もする事が無くなるのはレヴィにとって不服の様だ。

 

 『うーん……やり過ぎちゃってました?』

 

 『うん!!もう少し手加減して良いと思うんだ』

 

 『…しょうがないですね。じゃあ他の宝貝(パオペエ)を使いましょう』

 

 まだあるの!?雷公鞭だけとちゃうの!?

 雷公鞭を仕舞い、次に取り出したのは棒状の得物。アレも宝貝(パオペエ)だとするのなら絶対『打神鞭』だよな。

 

 『打風刃!!』

 

 棒を上段から振り下ろし、真空の刃をロボット兵に向けて放つ。

 

 ズバン!!

 

 咄嗟に回避行動を取ったロボット兵だが完全に回避し切れず、真空の刃はロボット兵の左腕を軽々と切り裂いていった。

 左腕を失い、飛行バランスが大きく崩れるロボット兵。

 

 『打神鞭』

 

 『週刊少年ジャンプ』で連載されていた『封神演義』に登場する道士『太公望』が所有する宝貝(パオペエ)。大気を操る宝貝(パオペエ)。棒状の形状で、振るうことで風を起こすことができる。 直接攻撃能力は宝貝(パオペエ)の中では決して高い方ではないが、真空状態を作り出したり、火を起こしたり、といろいろな用途に使えるため、応用性は高い。『打神風(だしんぷう)』や『打風刃(だふうば)』などの技がある。 『打神風』を最大出力にすると巨大な竜巻を起こすことができるが、長時間は持たない。

 

 何つーか……宝貝(パオペエ)の威力が強すぎてロボット兵が雑魚にしか見えん。

 可笑しいな。打神鞭ってそこまで強い部類の宝貝(パオペエ)ちゃうのに。

 

 『これならどうですか?』

 

 『うん。それぐらいの威力なら僕も許容するよ』

 

 打神鞭なら文句は無い様子のレヴィ。

 けど呑気な会話ですねお2人さん。

 

 『…ここで呆けていても仕方ない。私達も迎撃の準備をするぞ』

 

 『そ、そうですね』

 

 リンス、ティーダさんも戦艦からあまり離れない場所に位置取り、ラピュタの方向を見据える。

 

 「じゃあ、私もそろそろ高みの見物にしゃれ込んでる王様の元まで行こうかしら?」

 

 「ん、よろしくー」

 

 椿姫も腑罪証明(アリバイブロック)を使い、俺の隣から瞬時に消える。

 さてさて…この光景を見た現ラピュタ王(笑)はどんな反応してるのやら………。

 

 

 

 ~~ムスカ視点~~

 

 「ば、馬鹿な…」

 

 私は目の前の光景が信じられなかった。

 最強の帝国ラピュタが誇るロボット兵達のほとんどがたった一撃…たった一撃で機能を停止し、海へ落ちていったのだ。

 ロボット兵達のほとんどを破壊したのは暁澪。私が知る情報ではかつて本局に所属し、そして力を失ってからは地上本部に異動させられた魔導師だ。

 それから地上で働きつつ、徐々に失った力を取り戻すかの様に成長していると聞いたが

 

 「こ…これで全盛期に劣るというのか!?」

 

 有り得ない!!我がロボット兵達を一撃で倒す魔導師。その実力が全盛期に劣るなどと。

 

 「ふ、ふん!だがあれだけの大規模な広域殲滅を行ったのだ。もう一度同じ威力で放とうにも時間が掛かる筈」

 

 私はロボット兵の第二陣を急いで出撃させる。

 奴等魔導師の魔力は無限という訳では無い。ならば物量で押しまくればいずれは力尽きる筈だ。

 そうだ。取り乱す事は無い。私のラピュタが負ける事など絶対に無い!!

 現に暁も今使用した武器を収め、新たな武器を取り出しているではないか。

 

 「ここがラピュタの中心部…ですか?」

 

 「座標位置を確認…間違い無い様だ」

 

 「っ!!!」

 

 突如、声が聞こえたので振り返るとそこにはいつの間にか1組の男女が立っていた。

 大男と呼ぶのに相応しい巨体の男と、腰まで届くストレートなロングヘアや服の上からでもハッキリと分かる巨乳が目を軽く惹き付ける。

 

 「……はっ!!な、何者だ!?」

 

 一瞬湧き上がった邪念を振り払い私は怒鳴る様に大声を上げてしまう。

 コイツ等も管理局員か!?いや、それ以前にどうやってこの中心部までやって来た!!?この部屋には転移の魔法で来る事は出来ないのに。

 

 「くまさん、目的の物は?」

 

 「アレだ」

 

 女は私の質問を無視し、巨体の男に話し掛ける。

 巨体の男が指差す先は我がラピュタの科学の結晶『飛行石』であった。

 

 「ではさっさと回収してドクターの元へ帰りましょう」

 

 「承知」

 

 「ま、待て!!」

 

 私が制止の声を掛けると、たった今私の存在に気付いたのかコチラを向く。

 

 「貴様達は何者だ!?どうやってここに来た!?」

 

 「お前に答える義理は無い」

 

 「私達の事はお気になさらず」

 

 そう言って飛行石に近付く男女。

 コイツ等、『目的の物』とか『回収』等と言っていたな。なら狙いは飛行石か!!

 私は黒い石板に飛行石の首飾りを翳す事により転移機能を発動させる。

 

 ヴヴヴヴヴンッ!!

 

 複数の転移魔法陣が足元に現れ、魔法陣の中からはロボット兵20体が。

 

 「何者であろうと私のラピュタに無断で立ち入って生きて帰れると思うな!!」

 

 ロボット兵が一斉に男女に襲い掛かるのと同時に

 

 「……お取込み中かしら?」

 

 またもや新たな人物の声が何処からともなく聞こえてきたのだった………。

 

 

 

 ~~ムスカ視点終了~~

 

 ~~椿姫視点~~

 

 やってきましたラピュタでーす……っと。

 腑罪証明(アリバイブロック)で転移し、最初に私の目に映ったのはロボット兵達を召喚するムスカと、その様子を何もせず見ている男女の姿が。

 …ラピュタ原作にはロボット兵の召喚機能なんて無かったわよね?

 『リリカルなのは』の世界にラピュタが存在してるからこの様な機能があるのかしら?

 けど、そんな事よりも今気になるのは1組の男女…その男の方なんだけど

 

 「(バーソロミュー・くまよねぇ…)」

 

 確か空港火災の時に勇紀が対峙し、逃げられたって言ってたけどまさかラピュタで出会う事になるなんて……ね。

 もう1人の女性はくまの仲間みたいね。

 

 「何者であろうと私のラピュタに無断で立ち入って生きて帰れると思うな!!」

 

 ムスカが叫び、ロボット兵が襲い掛かる。

 

 「……お取込み中かしら?」

 

 私は首を傾げ、小声で呟いたのだがどうやらムスカの耳には届いた様ですぐさまコチラに向き直った。

 

 「またか!!……き、貴様は!?」

 

 「初めましてロムスカ王。時空管理局地上本部首都防衛隊所属の滝島椿姫です。ここに来た理由は言うまでも無いでしょうけど」

 

 「ち、地上の若きエースの1人か。だが私を逮捕だと?出来ると思っているのかね?」

 

 「少なくともここまで苦も無く来れたのだから貴方を逮捕するぐらい造作も無い事よ」

 

 「ほざけ!!」

 

 ムスカが再び石板に飛行石の首飾りを当て、転移機能を起動させる。

 ロボット兵が新たに10体。

 

 「はっはっは!!1人で10体の相手は出来まい」

 

 「……………………」

 

 コイツ、本当に馬鹿なの?

 

 「向こうの人は1人で20体(・・・・・・)を相手にしているけど」

 

 「はっは……は?」

 

 私が指差す先には

 

 「邪魔ですよ」

 

 ズバン!

 

 一太刀でロボット兵を斬り捨てる女性の姿が。

 

 「《椿姫よ》」

 

 「《どうしたの?》」

 

 私のデバイス『めだか』が念話で話し掛けてくる。

 

 「《あの女が振るっている鋸だが、デバイスによって具現化された物ではないぞ》」

 

 「《………マジ?》」

 

 めだかの発言に間違い無いならあの鋸は本物という事。てかただの鋸でロボット兵を斬り捨ててるというの!?

 

 「(……いえ、よく感じたらあの女性(ひと)武装色の覇気(・・・・・・)を纏ってる)」

 

 本人はその事に気付いているのかいないのか…。いずれにせよ、鋸の攻撃力を底上げしてるのは間違いなく武装色の覇気ね。

 しかし、覇気があるとはいえ、ただの鋸で簡単に斬り捨てられるなんてラピュタ……本当に卓越した技術を使ってるの?

 

 「そ、そんな…我が帝国の兵が……」

 

 ムスカも信じられないと言った様ね。

 そういえばくまは?

 くまの行方を捜すと、くまは巨大な飛行石の側に近付いていた。

 

 「っ!!!?それに手を出すなぁ!!!」

 

 ムスカが叫ぶと私に迫ろうとしていたロボット兵は一斉に向き直り、くまに狙いを定める。

 

 ピュン!!

 

 「……ふん」

 

 プニッ

 

 ロボット兵の1体が放ったレーザーをくまは掌で弾き、レーザーは私の方へ……って!!

 

 「イージス!!」

 

 咄嗟に障壁を張ってレーザーの直撃を防ぐ。

 

 「やってくれるじゃない、くまぁ~…」

 

 ジャキン!!

 

 私は槍を構え

 

 「はあっ!!」

 

 腑罪証明(アリバイブロック)でくまの背後に回り、奇襲を掛ける。

 

 ズガンッ!!

 

 「っ!!」

 

 くまの背中を突いて吹き飛ばす事に成功した。すかさず周囲にも気を配るが

 

 「くまさんの邪魔をしないで下さい」

 

 高速移動でも行ったのか一瞬で間合いを詰め、私の眼前にいた女性が鋸を水平に薙ぐ。

 

 「アイギ……」

 

 ゾクリ

 

 「っ!!?『剃』!!」

 

 ビュンッ!!

 

 咄嗟に私は『剃』を使って、一気に距離を取る。

 危なかった…。もし今アイギスで受け止めようとしたら

 

 「(間違いなくアイギスごと私の身体は両断されてた(・・・・・・・・・・・・・・・・・))」

 

 そう確信してしまった。

 ツツーっと冷や汗が流れる。

 何なのこの人?とても普通とは思えない。

 女性を最大限に警戒しながら戦闘態勢を取る。

 女性の向こう側ではさほど、ダメージを負っている様子の無いくまがゆっくりと起き上がる。

 

 「ええいっ!!私の前で無礼を働く者共め!!死んで詫びるがいい!!」

 

 ムスカは更に増援のロボット兵を召喚する。

 …コチラもコチラで面倒臭いわね。

 先にムスカを止めるべきかしら?けどくま達を放っておいてもロクな事にはならなさそうだし。現状から察するにくま達は飛行石を奪おうとしており、何故飛行石を奪おうとするのか意図は読めないけど。

 

 「(まずは飛行石を奪い取る方が早いかしら)」

 

 ムスカの持つ飛行石の首飾りを取り上げないと増援をひたすら呼ばれるので千日手になる。増援の数にも限りはあるでしょうけど、鬱陶しい事この上ないし。

 …いえ、それよりもあの呪文(・・・・)を唱えた方が早いわね。ラピュタのロボット兵も崩せるし、巨大な飛行石をラピュタから放り出せればくまとあの女性の目的も妨害出来る。

 私はスゥ~と息を吸いこみ

 

 「バルス(・・・)!!!」

 

 滅びの呪文を大声で唱える。

 

 ……………………

 

 ………………

 

 …………

 

 ……

 

 しかし何も起きない。

 アレ?呪文を間違えた訳じゃないわよね?前世では何度も見た事ある作品だし、ネット上で行われていた『バルス祭り』にも参加してたし。

 

 「(もしかして……この世界では呪文自体違うというの!?)」

 

 もしそうだとしたら私はお手上げ…勇紀に調べてもらうほか手段が無い。

 

 「くっくっく……はっはっはっはっは」

 

 そこへムスカの高笑いする声が響く。

 

 「まさか君が滅びの呪文について知ってるとは意外だったよ。だが残念だね。その呪文は…いや、それを含む数々の呪文はラピュタ王家の者が唱えて初めて効果を発揮するのだよ。ラピュタ王家の血を引いていない君が唱えた所で何の意味も無いのさ」

 

 …ああ、そういう事。

 原作ではシータとパズーが一緒に唱えたけど、ムスカの言う事を鵜呑みにするならアレはシータというラピュタ王家の者がいたから効果を発揮出来たのであって、パズーだけだったら何の意味も無かったという事になる。

 

 「…ならラピュタ王家の者がいたら呪文の効果を発揮するという事ね」

 

 「その通りだ。もっともそれは叶わぬ願いだがね」

 

 どういう事よ?

 

 「この飛行石の首飾り……元々は『トエル』の名を持つ正統な王位継承権の者が持っていたのだが、彼女は我々に非協力的だったのでね。あの若さで心苦しかったが安らかに眠って貰ったのだよ」

 

 彼女というのはシータ…『リュシータ・トエル・ウル・ラピュタ』の事以外有り得ない。しかし『安らかに眠って貰った』って言うのは

 

 「…その首飾りの持ち主を……殺したというの?」

 

 私が発した言葉にムスカは笑みを浮かべるだけ。

 

 「首飾りを手に入れるためだけにその子を殺めるなんて……とんだ外道ね」

 

 私の槍を握る手に力が込もる。

 

 「ふふふ……まあ、そういう事だよ。最早ラピュタ王家の血をひく者はこの世界に私だけであり、私がバルス(・・・)と言わない以上…」

 

 カアアアアアァァァァァァァッッッッッッッッ!!!!

 

 ムスカの言葉はそれ以上続かなかった。

 突然首飾りの飛行石が眩い光を放ったからだ。

 

 「っ!!」

 

 反射的に私は目を瞑り、自らの目を護った。

 あれだけの光、直視なんかしたら視力に深刻な影響をもたらす。失明も有り得るぐらいに。

 

 「《めだか。光が止んだら教えて》」

 

 「《分かった》」

 

 ついでに見聞色の覇気を最大限に用いてこの光の奔流の中襲われてもすぐ回避出来る様に体勢を取る。

 しばらくして

 

 「《椿姫、もう大丈夫だ》」

 

 めだかからの念話を聞き、私はゆっくりと目を開く。

 

 ビシッ…

 

 と同時に

 

 ビシビシッ…

 

 ラピュタの壁に亀裂が入り

 

 ボコボコッ…

 

 足元も不安定になっていく。

 ……コイツ、本当に馬鹿じゃないの?

 自分で復活させた帝国を僅か数時間…しかも自分の手で崩壊させるなんて…。

 

 「へ…へああぁぁぁーーー!!!目が、目がああああぁぁぁぁぁぁっっっっっっっっ!!!!!!」

 

 何だか今のムスカの姿を見て怒りの感情よりも呆れる事しか出来なかった。

 

 「くまさん、飛行石……いえ、オリジナルレリックは?」

 

 「この通り、確保した」

 

 「っ!!!」

 

 声のした方にはくまがラピュタの巨大な飛行石を抱えていた姿が目に映った。あの2人もあの瞬間、目を瞑って回避したのか失明したりはしていなさそうだった。

 

 「ま…待ちたまえ」

 

 声のした方にヨロヨロと近付きながら女性の肩を掴む。

 

 「……………………」

 

 「そ、その飛行石は私の物だ。私の…」

 

 ヒュンッ!

 

 ムスカが喋っている途中で女性は鋸を下から上に振り上げる。

 ムスカの片腕はゆっくりと離れ、床に落ちる。

 

 「ひ…ひぎいいぃぃぃぃぃっっっっ!!!!」

 

 悲鳴を上げるムスカ。だが女性は無言でそのまま、鋸をムスカの首筋に添える。

 

 「勝手に触らないで下さい。私の身体が汚れちゃったじゃないですか。私の身体に触って良いのは誠君だけなのに。私は誠君のモノなのに」

 

 無表情で淡々と喋る彼女の威圧感を前に私は…動けないでいた(・・・・・・・)

 動かないと…このままじゃムスカは…

 

 「帰ったらしっかり汚れを洗い落とさないと、誠君に会った時に嫌われちゃう…」

 

 ムスカは…

 

 「その前に…他人(ヒト)の身体に勝手に触る様な破廉恥な人は…」

 

 女性は首筋に添えた鋸をそのまま…

 

 「死んじゃえ」

 

 一気に引き戻した。

 

 「へ?…あ……ああ……」

 

 切れ目からツツーっと一筋の血が流れたかと思った瞬間に

 

 「あああああああ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っっっっっっっっっっっ!!!!!!!!!」

 

 ブシャアアアァァァァァッッッッッッ!!!!!!

 

 血が噴き出し始めた。

 

 ドサッ

 

 ムスカはそのまま崩れ落ち、一気におびただしい量の血で溢れ床が赤く染まっていく。

 

 「帰還するぞ」

 

 「はい。早く帰りましょう。帰ってお風呂に入らないと」

 

 「っ!待ちなさいっ!!」

 

 威圧感が消えた事で動ける様になった私だが、向こうの転移の方が早く逃げられてしまった。その上…

 

 バコオオンンンッッッ!!!

 

 床が抜け、ムスカもそのまま重力に引かれて落下していく。

 

 「くっ!!」

 

 すぐにムスカの身柄だけでも確保しようとしたが、足元が揺れた衝撃で身体のバランスを崩してしまう。

 すぐに体勢を立て直したがもう、ムスカの姿は見えなくなっていた。

 

 「……確かにラピュタをどうにかする事は出来たけど……」

 

 正直、良い結末で終われたと私は思えなかった………。

 

 

 

 ~~椿姫視点終了~~

 

 ※ラピュタ崩壊の少し前…

 

 「澪、打神鞭の出力を上げて竜巻を作る事って可能だったよな?」

 

 管制スタッフに頼み、澪に通信を繋げる。

 

 『えっ?はい、可能ですよ』

 

 「なら前方に大きい竜巻を3つ程作ってくれ。ただし竜巻と竜巻の間にはロボット兵が通れるだけの隙間を空けて」

 

 『分かりました!』

 

 澪は打神鞭を静かに中段に構えて

 

 『必殺打神風、最大出力!!!』

 

 澪は魔力を用いて強風を巻き起こし、風の流れを操作して巨大な竜巻を作る。

 続いて他のメンバーにも通信を繋げてもらい、指示を出す。

 

 『総指揮官より澪を除く各員へ。敵が竜巻と竜巻の間から進軍して来たら中・遠距離魔法で竜巻の中へ押し込め!!リンス、ティーダさん、レスティア以外のメンバーは武装色の覇気を用いるのを忘れずに!』

 

 『『『『『『『『了解!!』』』』』』』』

 

 前線で戦っていた亮太とレヴィもシュテル達が陣取っている距離まで後退し、竜巻と竜巻の隙間から来るロボット兵を迎え撃つ。

 

 『ブラストファイヤー!!』

 

 『光翼斬!!』

 

 『インフェルノ!!』

 

 『エターナルセイバー!!』

 

 『八尺瓊勾玉!!』

 

 『ヘパイストス!!』

 

 『ストームバスター!!』

 

 『暗黒の炎(イビルフレイム)!!』

 

 シュテルが、レヴィが、ディアーチェが、ユーリが、亮太が、リンスが、ティーダさんが、レスティアが、一斉に魔法を放ちロボット兵達を纏めて竜巻の中に押し込む。

 

 ゴオオオォォォォォッッッッッ!!!!!!!

 

 竜巻の中に押し込まれたロボット兵はグルグルと竜巻の回転に巻き込まれ、少しずつパーツがバラけ、分解されていく。

 

 「艦長、ラピュタに異変が!!」

 

 管制スタッフの言葉を聞き、ラピュタが映っている画面のズームをアップする。

 するとラピュタ底部の黒い球体部分が少しずつ崩れ、落下していく。

 

 「椿姫の奴、やったのか?」

 

 というかやったんだろうな。

 

 『ユウキ、ロボット兵がひとりでに崩れていきます』

 

 シュテルの通信を聞き、再び皆の戦っていた画面を見ると竜巻の向こうにいるロボット兵の大群が徐々に海に落下していく。身体をバラけさせながら。

 …原作通りの映像。

 これで終わったかと思った瞬間

 

 「…ただいま」

 

 椿姫も戻って来た。が、その表情はどこか暗い。

 

 「お疲れ椿姫。ムスカは?」

 

 「…詳しい事は後で話すわ。それより勇紀、私達も外に出てラピュタを止めるわよ。このままだとラピュタは落下する(・・・・)

 

 「はい?それってどういう…」

 

 少しぐらいは詳しい事を聞きたかったが、椿姫の表情…ただ暗いだけじゃなく若干の焦りも見える。

 ただ事じゃないと判断した俺は

 

 「悪いが滝島三佐と俺も現場に出ますので皆さんはNice boatをこの場で待機させつつ、俺の指示を待っていて下さい」

 

 「「「「「「「「「「はい!!」」」」」」」」」」

 

 スタッフの皆に後を任せ、俺と椿姫は互いに転移魔法で外に出る。

 突然俺と椿姫が出て来た事に一瞬、皆の表情が驚きのモノに変わる。

 

 「ユウキ、どうしたのだ一体?」

 

 「それについては私が話すわ」

 

 椿姫ディアーチェの言葉に割り込む。

 

 「時間が無いから手短に言うわ。ラピュタを浮かせていた動力源が無くなったせいで、ラピュタはまもなくここから真下に落下するの」

 

 「「「「「「「「「「えっ!?」」」」」」」」」」

 

 ラピュタが落下って…マジか!?

 

 「今はラピュタの予備動力が働いてるみたいだけど、ソレは飛行石じゃないから長く持たないと思うの。あれだけの巨大な物体が落ちたらどうなるか言わなくても分かるでしょ?」

 

 「???この下は海だろう?なら問題無いのでは…」

 

 「…いや」

 

 俺はリンスの言葉を否定する。

 

 「直接の被害は無いが二次災害……津波が起きるな」

 

 「「「「「「「「「っ!!」」」」」」」」」

 

 しかもかなり大きめの津波が。

 そうなるとこの海域から近い島は確実に津波に襲われる。

 そんな島々のいくつかに漁村があったのを俺は記憶している。

 

 「…でも椿姫のメティスならどうにか出来るんじゃないかな?」

 

 亮太の一言で椿姫に視線が集まる。

 確かに椿姫の持つメティスに『ハルキュオネ』というものがある。

 このメティスの能力は『水』を支配下に置く事の出来るもので、津波を凪にする事も当然可能である。

 

 「ええ、だから私がメティスを使うために今からこの下の海域に潜るわ。だからそれまでの間、皆はバインドや浮遊魔法でラピュタの落下を一時的に抑えていてほしいのよ」

 

 「…俺としてのプランはあのラピュタは完全に破壊するつもりだったんだが」

 

 「完全に破壊って…あの質量の物体をですか?」

 

 ティーダさんの言葉に頷く。

 

 「元々、ラピュタが空中に浮遊している間に澪のアレ(・・)で跡形もなく消し飛ばす予定だったんだよ」

 

 「私がですか!?」

 

 「ああ。俺と初めてコンビ組んだ時にお前に手渡した玩具があるだろう?」

 

 「……ああっ!!ありました!!確かにアレ(・・)ならラピュタぐらい吹き飛ばすのも可能です!!」

 

 「「「「「「「「「……………………」」」」」」」」」

 

 そんな会話を聞いて俺と澪以外の面々は『マジか?』みたいな目で見てくる。

 

 「でもユウ。椿姫に津波を止めて貰った方が確実じゃないの?」

 

 「まあな。けど、万が一ラピュタの力を悪用しようとする奴がラピュタを目指したらどうする?」

 

 「ラピュタ王家の者以外はラピュタを操るのは不可能でしょ?ムスカも言ってたわよ」

 

 「それが絶対とは言い切れないし、俺の悪魔図書館(あくまとしょかん)みたいなレアスキル持ってる奴が悪人だったらラピュタを改造して手に入れるのも可能だぞ?」

 

 「でも海の底に沈んでしまえば…」

 

 「魔法があれば海底に潜るのも可能だと思わないか?シュテル」

 

 「……そういう最悪の可能性を考慮し、後顧の憂いを今の内に断っておくという訳ね?」

 

 レスティアの言葉に頷く。

 

 「……若干予定が狂ったけど、俺は当初の考え通りにラピュタを破壊したい。何か異論があるものは?」

 

 「「「「「「「「「「……………………」」」」」」」」」」

 

 全員がフルフルと首を左右に振り、異論を唱える者はいなかった。

 

 「じゃあ今からあのラピュタを完全に消滅させる。澪以外のメンバーで椿姫が言った様にバインドや浮遊魔法が使える奴はラピュタの落下を阻止する。澪はラピュタの真下でラピュタ破壊の準備をしてくれ。真下には俺が転移させる」

 

 「「「「「「「「「「了解!!」」」」」」」」」」

 

 元気良く返事したのと同時にラピュタはゆっくりと落下し始める。どうやら予備動力が切れたのだろう。

 俺達は慌ててバインドの準備をし、俺だけは同時に澪を真下に転移させる準備も。

 

 「「チェーンバインド!!」」

 

 「ルベライト!!」

 

 「雷光輪!!」

 

 「本来は魔法を打ち返すのと同時に放つモノなのだが……まあ良い。王の威光!!」

 

 「ジャベリン!!」

 

 「封博!!」

 

 「リングバインド!!」

 

 俺、椿姫、シュテル、レヴィ、ディアーチェ、ユーリ、リンス、ティーダさんでありったけの魔力を込め、ラピュタを縛る。

 あれだけの巨大な質量の落下を食い止めるために使用する魔力が半端無い。

 

 「転移!!」

 

 すかさず澪をラピュタの真下に送り、

 

 「なら私は」

 

 レスティアは浮遊魔法と障壁の同時展開。ラピュタを浮遊魔法で抑えつつ、崩れるラピュタの残骸から澪を護るためにだ。

 

 「僕も何もしない訳にはいかないよね」

 

 亮太もレーザーを放ち、大きい残骸を消滅させていく。

 真下に着いた澪は

 

 「では…行きます」

 

 俺が渡した玩具……神様お手製の水鉄砲を取り出す。

 

 「安全装置(セーフティロック)解除。エネルギー充填開始」

 

 澪が上に向いて構えた水鉄砲に凄まじいエネルギーが溜まり始める。

 

 「(まさかこの世界であの武器を本当に使う事になるとはな)」

 

 出来る事なら俺が持つ宝具同様、使わずに済ませたかったけど致し方ない。

 管理局…特に本局の追及とか五月蠅いだろうし澪に迷惑掛ける事になるからその辺は俺が対応するか。

 

 「充填率…30%……50%……80%……100%!!!」

 

 来るか!!おそらくこの世界において間違いなく最強チート武器!!

 

 「『イデオンガン』発射!!!!!」

 

 究極の一撃が今…放たれた!!!

 

 ビーーーーーッ

 

 誘導式ビームが真っ直ぐに伸び

 

 ズゴゴゴゴ……ギュオオオオオォォォォォォッッッッッ!!!!!!!

 

 暗灰色の超重力渦巻きが放射状に広がって行き、影響範囲内の全ての物質を崩壊させていく。

 イデオンガンは俺達のバインド魔法ごとラピュタを呑み込んでいき

 

 「ふぅ……任務完了、です」

 

 イデオンガンの放射が終えた時、射線上には何一つとして残っていなかった。

 

 「「「「「「「「「「……………………」」」」」」」」」」

 

 俺以外のメンバーは今日何度目なのか分からない程の唖然とした表情。

 まあ、分かるけどね。あんな威力のある一撃見ちゃ…ねぇ。

 こうして俺達は『ムスカ事件』もしくは『ラピュタ事件』と呼ばれる事になる大規模事件を事前に食い止める事に成功したのだった………。

 

 

 

 「で、話ってのは?」

 

 俺達はNice boatのブリッジにて集まっていた。

 集めたのは椿姫。内容は

 

 「これを見てくれる?ラピュタ内での私の交戦記録なんだけど」

 

 ラピュタ内での出来事だった。

 そこにはロボット兵を鋸で斬り伏せる女性の姿に飛行石を奪おうとする大男、バーソロミュー・くま。

 そして滅びの呪文(バルス)発動後、お約束の行動を取るムスカと

 

 『死んじゃえ』

 

 躊躇する事無くムスカの首を斬る女性。

 この光景に思わず目を背ける者が大半を占める。

 

 「この直後、飛行石は奪われたんだけど…」

 

 椿姫は『ふぅ…』と一息ついてから

 

 「この女性は飛行石の事を『オリジナルレリック』と言ってたわ」

 

 「レリックだと!?子鴉達がちょくちょく任務先で見付けるあの宝石か!?」

 

 「しかもオリジナル?どういう事でしょう?」

 

 ディアーチェとシュテルが若干驚いていた。

 

 「その事だけど勇紀…」

 

 椿姫が俺を呼ぶ。

 

 「貴方、地上本部でラピュタの事について悪魔図書館(あくまとしょかん)で調べた時からアレが『レリック』だという事、知ってたんじゃないの?」

 

 「……まあ、知ってたな」

 

 その言葉を聞いて皆ざわつく。

 

 「あの場で言わなかった理由は何かあるの?」

 

 「元々あの時点で俺はオリジナルレリックごとラピュタを消滅させる算段でいたんだ。イデオンガンならオリジナルレリックが爆発を起こす間もなく消滅させられるしな。だから言う必要は無いかもと思ってた。まさかアレを奪いに来る奴がいるなんて思いもしなかったから」

 

 「そう…。まあそれはもう済んだ事だから良いとしてアレが『オリジナルレリック』と言われてるのは?」

 

 『その辺りについても知ってるんでしょ?』と椿姫の目が訴えてきている。俺は軽く息を吐いてから

 

 「それは言葉の通りだ。はやて達が任務先で回収してたのは古代ベルカ時代、地上に降りたラピュタ人の貴族が『オリジナルレリック』を真似て作った複製品。あのラピュタの動力に使われていた巨大な飛行石こそラピュタ王家が作り上げたオリジナルのレリックだ」

 

 オリジナルレリックの製造法は王族しか知らず、複製品については貴族の連中が本物を真似て作った物にしか過ぎない。

 もっとも、複製品と言ってもレリック内に込められているエネルギー量はかなりのものだが。

 

 「正直、内包してるエネルギー量の桁が違うだけでオリジナルも複製品もあまり変わらないがな」

 

 「他には何か無いの?」

 

 「ん」

 

 俺は頷く。

 

 「なら良いわ。私が聞きたかったのはそれだけ」

 

 「結局今回の事件の首謀者、ムスカは死亡したって事で良いのかな?」

 

 「アレは結構深く斬られてるだろうし、あの高さから落ちたら助かるのは無理じゃないか?」

 

 「ムスカは飛行石の首飾りを持ってた筈だけど…確かにあの出血量じゃねぇ…」

 

 いくら飛行石でゆっくり降りていっても下は海だしな。

 

 「それよりあの大男と女についてはどうなんだ?」

 

 リンスが口を開く。

 

 「空港火災で俺が出会った奴と同一人物なのは確かだな」

 

 「ならあの男はレリックを集めているって事?」

 

 「十中八九そうでしょうね。そうじゃなければこうレリックのある現場に出くわすとも思えませんし」

 

 レヴィは首を傾げ聞いてくるが俺の代わりにユーリが答えた。

 レリック集めて何する気なんだか?

 

 「あの…済みません。少し良いでしょうか?」

 

 管制スタッフの1人が話に割り込んでくる。

 

 「何か?」

 

 「実は艦長達が現場に出た後、転移反応があったんですけど」

 

 転移反応?

 

 「いつごろですか?」

 

 「暁三佐がラピュタの真下に転移する直前だったのですが」

 

 「???それ、ユウが澪を転移させた魔法の反応じゃないの?」

 

 「やっぱりそうなんでしょうか?ほとんど誤差もないので正直、艦長が使った転移魔法か別の転移魔法なのか確信が持てなかったんですけど」

 

 「そうですか」

 

 あの時は俺以外誰も転移魔法なんて使ってなかった筈だし

 

 「椿姫と出会った男女という線は無いのか?」

 

 「わざわざ現場に戻ってくるとは思えないぞ」

 

 「…それもそうだな」

 

 尋ねてきたリンスに言い返すと本人も納得する。

 

 「……《あの、勇紀君。少し宜しいでしょうか?》」

 

 ん?

 今まで口を開かなかった澪が念話で俺を呼ぶ。

 何故に念話?

 

 「《実はあの女性に心当たりがあるのですが、前世に関係する事ですので亮太君と椿姫ちゃんを含めて後で話をしても良いですか?》」

 

 っ!!?前世の事!!?

 

 「《マジで!?》」

 

 「《はい》」

 

 それが事実なら確かにこの場で言う訳にはいかんな。

 俺は『了解』と返事し、この場の会話に耳を傾けるのだった。

 あの後、レジアス中将に報告。首謀者ムスカの死亡とラピュタの消滅について。

 ムスカは『大規模次元犯罪の可能性がある広域指定特級犯罪者』と認定されており、身柄については『生死問わず』との事だった。出来れば生きて捕まえたかったが仕方ないか。

 次に澪の所有する武器だが…宝貝(パオペエ)については暁家の家宝っていう事、イデオンガンについては地球で俺の父さんが見付けた武器って事で話を通した。

 本局の連中は『自分達で管理する』と言い張ってきやがったが『個人の財産を渡す義務はない』と言って突っぱねてやった。

 何でもかんでも『強力な物は自分達が管理すれば安全』という考えには共感出来ん。だから断った。

 そもそも今回の事件は『元』本局所属の管理局員が起こした事件なのに当の本局は全く動き無かったし。

 その辺はレジアス中将が『本局に抗議する材料』として有効に使ってくれるだろう。

 そんな報告や何やが終わり、少しして転生者だけで集まった俺達にもたらされた情報。

 何でもあの女性は前世の頃発売されてたゲームのヒロインで『桂言葉』というらしい。

 ヤンデレの代表格キャラで、彼女が登場するゲームのエンディングでは他の女を殺したりマンションから飛び降りたりするのだとか。

 何それマジ怖い。

 それとあの異常な戦闘力もキャラとしての設定なのか尋ねてみたが彼女自体は居合の達人というぐらいしか無いらしい。

 なのにあんなに強いとかホントに怖いんですけど。

 ……けど『桂言葉』っていう名前、前世じゃなく今世のどっかで聞いた事あるんだけど、何処だったっけなぁ?

 

 

 

 ~~???視点~~

 

 「ご苦労だったね言葉君、くま」

 

 「いえ、それよりお風呂に入っても良いですか?」

 

 「ああ、自由にしたまえ。それから君の探している誠君についての情報だが、言葉君が言う容姿と似てる人物が別の管理世界で見かけた事があるという人物がいたのだよ」

 

 「それは本当ですか!!?」

 

 「ああ、詳しい事は後で話そう」

 

 「はい。お風呂上りに教えてください!!」

 

 言葉君はそのまま浴室へと向かう。

 

 「…本当に見付かったのか?」

 

 「失敬だなくま。私は確かに見付けたよ。言葉君の想い人に似てる(・・・)人物を見掛けたという人を」

 

 その人物が誠君本人かまでは知らないがね。

 

 「…まあ俺の関知する事では無いからどうでもいい。それよりこのオリジナルレリック…どうするつもりだ?」

 

 「そうだねぇ…彼、彼女等の様な強い人造魔導師を生み出す物として使うのも良いし」

 

 そう言って私は地上のエース達がラピュタのロボット兵と戦ってる姿を映し

 

 「この様な強力な武器を作るのも良いかもしれないねぇ」

 

 次いで映したのはラピュタを跡形もなく消し飛ばす映像。

 

 「まあ…まずはこのエネルギー量を維持しつつ、オリジナルレリックの小型化に取り掛かる事にするよ」

 

 ああ…本当に楽しみだよ………。

 

 

 

 ~~???視点終了~~

 

 ~~???視点~~

 

 「若様若様~」

 

 「何だ?どうした?」

 

 「空から男の人が降って来たよー」

 

 ……………………

 

 ………………

 

 …………

 

 ……

 

 あ?

 

 

 

 ~~???視点終了~~

 

 ~~キャラクターステータス~~

 

 NO.0010

 

 八神シグナム

 

 LV   86/ 999

 HP 8900/8900

 MP  680/ 680

 

 移動力     6   空  A

 運動性   140   陸  A

 装甲   1400   海  B

 照準値   150   宇  -

 移動タイプ  空・陸

 

 格闘 228 命中 214 技量 222

 射撃 177 回避 215 防御 200

 

 特殊スキル 援護攻撃L2

       底力L6

       闘争心

       インファイトL7

       戦意高揚

       見切り

 

 

 

 ~~あとがき~~

 

 ラピュタ攻略完了ーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!

 ほとんど澪のお披露目話でしたが。

 澪が神様に願ったのは『『封神演義』の『宝貝(パオペエ)』及び『スーパー宝貝(パオペエ)』全てを所有したい』ですが、本作内で全ての『宝貝(パオペエ)』『スーパー宝貝(パオペエ)』は多分出ません。出すのは無理そうですので。

 この願いと神様お手製のオモチャ所有により、広域殲滅に限定すれば澪はこの作品内最強のキャラです。

 いくら勇紀が天地乖離す開闢の星(エヌマ・エリシュ)を放てると言ってもイデオンガンと比べたら……ねぇ。

 まさしく武器チート。

 ちなみに水鉄砲がイデオンガンである以上、懐中電灯が何の武器かは言うまでもないですよね?ソードの方ですから。

 本作ではイデオンガンやソードは全て遠き理想郷(アヴァロン)でも防げません。次元の干渉を突き破って攻撃出来ます。

 


 
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