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魔法少女リリカルなのは~原作介入する気は無かったのに~ 第百十五話 天空の城を攻略せよ

神様の手違いで死んでしまい、リリカルなのはの世界に転生した主人公。原作介入をする気は無く、平穏な毎日を過ごしていたがある日、家の前で倒れているマテリアル&ユーリを発見する。彼女達を助けた主人公は家族として四人を迎え入れ一緒に過ごすようになった。それから一年以上が過ぎ小学五年生になった主人公。マテリアル&ユーリも学校に通い始め「これからも家族全員で平和に過ごせますように」と願っていた矢先に原作キャラ達と関わり始め、主人公も望まないのに原作に関わっていく…。

2014-04-01 06:24:21 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:19875   閲覧ユーザー数:17527

 「やあ勇紀、澪。それにリンスさんも」

 

 俺達と目が合うと亮太が気軽に話し掛けてきた。

 

 「地上本部にまで来たって事はレジアス中将に呼ばれたって事だよね」

 

 俺と澪は同時に頷く。

 ムスカの宣戦布告後、すぐに俺達はレジアス中将からの緊急招集を受け、地上本部まで足を運んだ。

 リンスは呼ばれた訳じゃ無いけど着いて来た。まあ、一緒に来て困るって訳じゃ無いしな。

 

 「確か、集合場所は第4会議室だったよな?」

 

 「そうだよ」

 

 「私達以外には誰か来てるんですか?」

 

 「椿姫は既に来てるよ。シュテルさん達ももうすぐ来ると思うし」

 

 ああ、シュテル達は今日家にいる筈だしな。

 

 「私は行かない方がいいだろうな。地上本部に所属してはいないし」

 

 「いや、リンスも来れば?待ってるだけってのも退屈だろ」

 

 「無理だろう。本来呼ばれてもいない者がいくのは」

 

 「俺のデバイスって事で通るって」

 

 別に嘘は言ってない。リンスの主ははやてだが、俺自身も一応第二の主(セカンドマスター)として登録してるんだよ。

 まあ、基本はやてと一緒にいるリンスを使う事なんて滅多に無いんだけどさ。

 エレベーターで上階まで上がり、第4会議室まで着く。

 部屋の扉を開け、中に入るとレジアス中将、オーリス三佐、局員の姿になっているドゥーエさん、椿姫、シグナムさん、ティーダさんの6人の姿が。

 座る席は自由みたいなので俺達も適当な場所に座る。

 それから程無くしてシュテル、レヴィ、ディアーチェ、ユーリも会議室に現れ、後は徐々に地上本部の高官達が集まり、会議室の席はほぼ満席で埋まった。

 

 「……全員揃った様だな」

 

 レジアス中将が重々しく口を開く。

 

 「今、この場に集まって貰った者は皆、地上本部の高官や地上本部所属の高ランク魔導師達だ。諸君等に集まって貰ったのは他でも無い。先程、時空管理局に対して向けられた宣戦布告についてだ」

 

 ざわざわ…

 

 会議室がざわめく。

 あの時、画面に割り込んできたムスカの宣戦布告はあらゆる通信回線をハッキングして時空管理局だけでなく、各次元世界に配信されてたものらしい。

 …地上本部の通信システムも改善、強化する必要があるな。後でレジアス中将に進言しておこう。

 

 「宣戦布告してきた者は自分で名乗っていた通り、時空管理局本局所属の佐官であった。オーリス三佐、続きを」

 

 「はい」

 

 オーリス三佐が静かに立ち上がり、画面にムスカの姿とプロフィールを表示した。

 

 「時空管理局特務部所属ロ・ムスカ。非魔導師の管理局員だった者です。もっとも時空管理局に宣戦布告し、反旗を翻した今では『元』時空管理局員と言った方が正しいでしょうが」

 

 どうやら本局の方はムスカをもう広域次元犯罪者として手配済みとの事らしい。

 てかロ・ムスカて……。自分の本名を苗字と名前に分けて偽ってたんかよ。

 

 「ふむ。経歴を見る限り、これと言った成果こそ出していないものの出世スピードはそこそこのものだ」

 

 「その様なエリート街道を歩いていた男が何故今回の様な事を?」

 

 高官達が憶測を立てる中オーリス三佐は淡々と説明する。

 

 「本局の方に確認した所、ロ・ムスカは今回密命として『ラピュタを発見せよ』との命令を受けていた模様です」

 

 「「「「「「「「「「ラピュタ?」」」」」」」」」」

 

 皆疑問に思っている様だ。

 

 「ラピュタについてはドゥーエ二尉、説明をお願いします」

 

 「はい」

 

 ここで説明役をバトンタッチ。

 

 「ラピュタとは古代ベルカ時代に存在していた国であり、当時の国の中で最も巨大な軍事力と科学技術を有していたと言われています」

 

 「古代ベルカ時代だと?……私は歴史に多少の興味があり、ベルカ時代についてもかなり勉強した事があるが、その様な国名は聞いた事が無い」

 

 「それはそうでしょう。ラピュタについての歴史書や資料、文献等はほとんど残っておりませんから」

 

 「無限書庫にもか?」

 

 「ええ。私も以前古代ベルカ時代の事について無限書庫で調べた事がありますが、無限書庫にあったラピュタに関する情報は先程申した軍事力、科学技術が発達していたという事だけであり、どれ程優れていたのか、どの様な技術があったのか詳しく書かれていた物は一つもありませんでした」

 

 「むぅ…」

 

 「そもそもアレは本当にそのラピュタという国なのか?」

 

 「そうだな。あのムスカという男が言っているだけで真実かどうかを確かめる術がない」

 

 皆さんラピュタについては半信半疑。

 俺、亮太、椿姫、澪は前世での記憶と知識があるから『アレはラピュタだ』と断言出来る。

 

 「間違い無い。アレはラピュタだ」

 

 ……ここにもいた。ラピュタだと断言出来た者が。

 リンスの発言に皆の視線が集まる。

 てかあまり歓迎されてないね。リンスは呼ばれた訳じゃ無いから当然っちゃあ当然なんだが。

 

 「断言出来る理由はあるの?」

 

 椿姫がすかさずリンスに聞き返す。

 

 「ああ、闇の書としての私が古代ベルカ時代で覚醒した時に一度だけ……な」

 

 そこから語られる当時の出来事。

 闇の書が主を取り込み、覚醒した直後らしい。

 闇の書と争っていた一つの国がラピュタによって消された。……大陸ごと(・・・・)

 闇の書の頭上から降り、闇の書ごと大陸を消した一撃というのは絶対『ラピュタの雷』だろうな。闇の書完成=666ページ分の魔力を蒐集してる筈にも関わらず一撃でリンスを消滅させたのか……。アルカンシェルと同等……いや、ラピュタの科学力を考えるとそれ以上の威力があるのは明白だな。

 

 「私が消滅する直前に空を見上げた光景には確かに空を飛んでいたあの国が見えていた。忘れる筈が無いさ」

 

 「……という事らしいです。当時の生き証人が言う以上、アレはラピュタなのでしょう」

 

 リンスの証言後、椿姫が締め括る。

 

 「待て!闇の書の管制人格が何故ここにいるのだ?」

 

 「それに闇の書の主は本局所属だろう?」

 

 「その主自身はここにいない様だが?」

 

 別の意味でざわつき始める。

 

 「あー…ここいいるリインフォース……リンスは今は闇の書ではなく夜天の書の管制人格です。夜天の書が今ここに存在している理由は皆さん知ってると思うんですが?」

 

 「確か長谷川三佐。君が修復したのだったな?」

 

 「はい。で、皆さんが仰る通り夜天の書の主は本局特別捜査官の八神はやて一尉ですが、俺自身も一応夜天の書の第二の主(セカンドマスター)として登録してあります。管理局のデータベースにある俺のプロフィール蘭の『所有デバイス』の項目にも書かれていますよ」

 

 「つまりリンスさんは『勇紀のデバイスの管制人格』としてここにいるから何も問題は無いって事だね」

 

 亮太の言葉に頷く。

 

 「そういう事だったのか」

 

 「三佐のデバイスでもあるのなら問題無いな」

 

 アッサリと納得する高官達。

 

 「こんな簡単に納得して良いものなのか?」(ボソボソ)

 

 「ユウキは高官達からの信頼が厚いですから。プライベートの悩み事にも相談にのってあげ、解決に貢献してますし」(ボソボソ)

 

 「だからこそ出世スピードが早いにも関わらず、妬む奴はほとんどいないのだ」(ボソボソ)

 

 「…それは流石としか言い様がないね。ただ、年上の高官が年下の三佐に相談っていうのはどうかと思うけど」(ボソボソ)

 

 シグナムさん、ユーリ、ディアーチェ、ティーダさんがヒソヒソと会話している。

 

 「まあ、今はそんな事よりラピュタについて討議しないと」

 

 話が脱線しちゃいかんからな。

 

 「うむ。アレがラピュタだとして何の情報も無いのは手痛い。……長谷川三佐。君のレアスキルで何か分からないかね?」

 

 レジアス中将の言葉を聞き、会議室中の視線が集まる。

 

 「ラピュタの情報ですよね?ちょい待って下さい」

 

 悪魔図書館を発動させた直後、俺の意識は図書館の中へ移動していた。

 さてさて……

 

 「検索言語(キーワードサーチ)…『ラピュタ』」

 

 キーワードを言うと無数の本が目の前に現れる。

 …多いなラピュタ。

 

 「もうちょい検索を絞らないとダメか……じゃあ『古代ベルカ時代』も追加……っと」

 

 こんな感じで少しずつキーワードを追加し、絞り込んでいく事によって最終的に1冊の本が手元に残った。

 これに書かれているのが『リリカルなのは』の世界に存在するラピュタの情報だろう。正直、前世の記憶だけじゃ不安だからな。

 ……一通り、読み終えてから自分の意識を現実世界に戻す。現実(コッチ)ではほんの一瞬での出来事なので特に周囲の様子が変わったりはしていない。

 

 「ラピュタ……古代ベルカ時代において空から大陸を支配していた帝国で、アルハザード程ではないにしろ、卓越した魔法技術と科学力、当時の騎士達では歯が立たない兵力を有していた最強の国ですね」

 

 皆、俺の説明を静かに聞く。

 

 「当時は今よりも空戦適性のある騎士がいなかったため、制空権を握られていた大陸の諸国にとってはほぼ抵抗できず、空からの攻撃は一方的な虐殺だったと言ってもいいと思います」

 

 「そうだな。あの時代の騎士達は確かに陸戦が主体だった」

 

 「だからこそ聖王教会で崇められている聖王……その初代であった人物はラピュタに対抗する手段として『聖王のゆりかご』を建造する事を決めたのです」

 

 「「「「「「「「「「ええっ!!?」」」」」」」」」」

 

 この言葉に様々な者が反応する。特に原作知識のある亮太、椿姫、澪の声は一際大きかった。

 

 「そ、それは本当か!?」

 

 流石のリンスもビックリのご様子。

 

 「ああ。聖王のゆりかごは『古代ベルカ時代の戦乱を終結させた戦船』として聖王の力の象徴とも捉えられているが、アレが本来造られた目的はラピュタと戦うための巨大兵器としてだ。もっとも、ゆりかごがラピュタと戦う事は一度も無かったがな」

 

 ゆりかごが完成したのとほぼ同時期、ラピュタ王家の者達はラピュタを封印し、地上へと降りたからだ。

 それから王家の者達は世界各地に散らばってひっそりと暮らしていた。

 もっとも、旧暦462年に起きた大規模次元震による世界の崩壊で王家の血を引く者達はほとんど死に絶え、唯一生き残ったのが『トエル』の名を継ぐ真の王家の末裔と『パロ』の名を継ぐ王家の分家筋の末裔という訳だ。

 この情報が出た時は俺もビックリした。まさかこんな形で『リリカルなのは』と『ラピュタ』がクロスしてるとは…。

 

 「ならばその『聖王のゆりかご』というのがあれば、ラピュタと戦えるという事ではないのかね?」

 

 「だが、それは一体どこにあるというのだ?」

 

 「聖王縁のものだというなら聖王教会が保管しているか、その所在を知っているのでは?」

 

 「なら聖王教会に連絡を取り、この件についての対策を早急に立てるべきだ」

 

 「無理ですね」

 

 高官達の言葉が飛び交う中、俺は告げる。

 

 「何故だ?それがあればあのラピュタにも…」

 

 高官の1人が尋ねてくるが俺は首を横に振る。

 

 「いくらゆりかごでもラピュタを滅ぼすのは無理です。技術面で劣っていますから。それにゆりかごは聖王教会でも見付けておらず、どこにあるのかは分かりません。仮にゆりかごを見つけたとしても今度はゆりかごを動かすのに必要な『聖王』の血を引く者が必要となります。次元航行船とは構造が全く違うのですから誰でも動かせるという訳ではないんです」

 

 俺含め転生者組はゆりかごの場所は知ってるがここで知ってると逆に可笑しいので敢えて知らないフリをする。

 またSts編で登場するヴィヴィオがこのタイミングで存在していればゆりかごを動かす事は可能。けどいないのが現実だ。

 それにヴィヴィオがいたとしてゆりかごに乗せる様な事をさせるつもりは無いけど。

 

 「長谷川三佐。君なら改造出来たりはしないのか?」

 

 「まあ、ゆりかごを見付けたらの話ですけど、出来るか否かと言われたら出来ると言えます。しかし1日2日で終わるとは思えませんし、その間にラピュタによってミッドは完全に支配されると思います」

 

 俺が言うと会議室は沈黙に包まれる。

 しばらくして沈黙を破ったのはレジアス中将だ。

 

 「……無い物ねだりをしても仕方ない。現状で状況を打破する策を考えねば」 

 

 ですねぇ。

 

 「長谷川三佐。ラピュタの情報……戦力や武装については分かるかね?」

 

 「そうですね。ラピュタの武装と言えば先程話題に出た当時の闇の書を一撃で消滅させた『ラピュタの雷』だけですね」

 

 「だけ?遥かに高度な技術力を持っているのだろう?」

 

 「これも先程話題に出ましたがベルカ時代は陸戦が主体……つまりラピュタと同じ、もしくはそれ以上の高度から攻められる事なんて絶対に有り得なかったんですよ。だからこそラピュタに住む人からすれば警戒するのは下方だけであり、攻撃する武装もラピュタの底部から放たれる『ラピュタの雷』しか無い訳です」

 

 「「「「「「「「「「成る程」」」」」」」」」」

 

 レジアス中将を始め、高官達のほとんどが俺の説明に納得する。

 

 「続いてラピュタが所有する兵力のロボット兵について説明します。まずこのロボット兵なんですが、全身に使われている装甲の材質…これは『形状記憶弾性セラミック製』という粘土と金属の中間の材質を用いられています。その硬さは折り紙つきで物理的な攻撃は勿論、魔法での攻撃にも耐性がありかなり厄介な存在と言えます」

 

 「硬いのかー。ユウ、どれぐらい硬いの?」

 

 「シュテルのブラストファイヤーを20発近く叩き込んでようやく撃墜できる程度だな」

 

 レヴィの問いに答えた直後『確かに硬いな』と皆が声を揃える。

 この会議室に集まっている者は皆シュテルの模擬戦やら現場で魔法を放つ映像を見ている事からブラストファイヤーの威力も容易に想像出来るのだろう。

 

 「20発ですか……面白い、血が滾りますね」

 

 何かシュテルが対抗意識を出して燃えている!?

 

 「けどそれはあくまで純粋な魔力砲撃の話だ。『武装色の覇気』を用いればもっと少ない数で撃ち落とせる」

 

 『そうですか…』と今度は静かに呟くシュテル。

 

 「次にロボット兵の武装だが、目の部分から放たれるレーザー兵器が主武装だな。もっとも亮太のレーザーと比べると攻撃力は劣るが」

 

 「じゃあ余裕じゃないかな」

 

 「「「「「「「「「「いやいやいやいやいや!!」」」」」」」」」」

 

 あっけらかんと言う亮太の言葉を皆否定する。

 亮太より攻撃力が低いというだけで決して弱くは無いんだよ。お前のレーザー攻撃が強すぎるんだよ。

 その後もロボット兵の詳細について説明していく。

 

 「……厄介な兵隊だな」

 

 「並の魔導師では歯が立たなさそうだ」

 

 一通り言い終えると高官達は皆腕を組んで『うむむ…』と唸る。

 

 「勇紀、ラピュタの攻略法は何かあるの?」

 

 椿姫が尋ねてくる。

 ていうかコイツ、知ってて聞いてるだろ。

 

 「当たり前だ」

 

 当然と言わんばかりに即答してやるとまた会議室がざわつく。

 

 「それは本当かね!?」

 

 「勿論です。多少苦戦はすれども、ラピュタ自体を墜とす事は出来ますよ」

 

 「「「「「「「「「「おお……流石は地上の切り札」」」」」」」」」」

 

 途端に会議室の雰囲気が明るくなる。

 

 「ラピュタ兵に対抗できるだけの戦力も揃っていますし」

 

 「ふむ……そこまで言うならワシは長谷川三佐に対ラピュタ攻略を一任しようと思うが反対する者はおるかね?」

 

 「「「「「「「「「「依存は有りません」」」」」」」」」」

 

 満場一致で可決。

 

 「では長谷川三佐…貴官には負担を強いて申し訳ないがミッドを護るためにその力、振るってくれんか?」

 

 「言われるまでも無いですよ。あの男には個人的に恨みが出来ましたし」

 

 「恨み?」

 

 「勇紀君、愛弟子の様に鍛えたミカヤちゃんの試合が見れると思った矢先に、ムスカの宣戦布告が入ったせいでDSAAを見れなくなったから怒ってるんですよ」

 

 高官の1人が聞き返した言葉に澪が答えてくれる。

 

 「「「「「「「「「「(……ムスカとやら、よりにもよって長谷川三佐を怒らせるとは……)」」」」」」」」」」

 

 澪の言葉の後に、高官達の顔色が青くなってるけど、どうしたんだろう?俺の顔に何か付いてるのか?

 

 「「「「(ユウキ(ユウ)、イイエガオを浮かべてるのに気付いて無いみたいですね(気付いて無いね)(気付いておらんな)」」」」 

 

 「あ、レジアス中将。ラピュタ攻略するのに1つ用意してほしいものがあるのですが…」

 

 「な…何だね?ワシに用意出来る物なら用意しよう」

 

 「では…ヘリや戦艦の様な空を飛べる乗り物をお願いできませんか?」

 

 座標さえ正確に把握すれば現地まで転移でいけるとも思うが、出来れば魔力の消費は僅かだとしても控えたい。

 

 「ふむ。ならば戦艦を一隻用意しよう」

 

 うおっ!!?戦艦あるの!?

 本命はヘリであって、戦艦は冗談のつもりだったんだが…。

 いや、『もしかしたら本局に交渉してくれるかも』と僅かに期待はしたけどさ。

 

 「地上本部用で転送ポートが無い時に使われていた物が…な」

 

 「…それ、動くんですか?」

 

 ユーリが尋ねる。

 

 「整備班に定期メンテナンスは行わせているから問題は無いだろう」

 

 マジか?

 

 「他には何かあるかね?」

 

 「いえ…戦艦さえあれば充分です。後、ラピュタ攻略戦に参加させる魔導師は自分が選んでも良いですか?戦艦の管制スタッフの選定はそちらにお任せしますので」

 

 「承認しよう」

 

 よし。

 と言っても参加させる魔導師は顔馴染みのメンバーだけになるだろうが。

 

 「ではこれよ『はっはっはっはっは…』……む?」

 

 レジアス中将が喋ろうとしてまたディスプレイが表示され、画面にはラピュタ王となったムスカの姿が映し出される。

 ……少しは空気読めムスカ。

 

 『御機嫌よう、時空管理局及び各次元世界で生きる民間人の諸君。ラピュタ王のムスカだ。実は今から君達に素晴らしい映像を見せようと思ってね』

 

 するとまた別の画面が映し出される。

 そこにはラピュタとラピュタに対し、攻撃を仕掛けている戦艦の映像が。

 ……ゴリアテやん。見た目完全にゴリアテやん。

 

 『この戦艦は時空管理局本局の次元航行艦の一隻でゴリアテという。私をわざわざラピュタまで運んでくれた戦艦だ。ちなみに今、あの戦艦には本局上層部の重鎮の1人であり、私にラピュタ捜索の密命を与えた張本人『ルガー提督』と、地上本部所属の『モウロ二佐』。更には本局の空戦魔導師と地上本部の陸戦魔導師が乗艦しているのだよ』

 

 ご丁寧にモニターに当人達の顔も表示してくれる。

 ん?このモウロって人どっかで…。

 前世のアニメじゃなく、この世界で会った様な…

 

 「「……………………」」

 

 僅かに怒気を感じたので視線を移すと、怒気を放っている張本人の椿姫と表情を歪めているティーダさん。

 あの2人の知り合いか?

 

 「《なあ椿姫…何で怒ってんの?》」

 

 「《勇紀、貴方忘れたの?以前ティーダさんに対して無能発言した上官の顔を…》」

 

 …………おおっ!!?

 そうだ!!あの時会ったんだった。

 いやー、あの時は髪の毛モッサモサだったし、この世界にラピュタがクロスしてるとは思わなかったし、何より前世のアニメでは『閣下』としか呼ばれてなかったから全然気付かんかった。

 

 『ルガー提督はラピュタ発見の功績とラピュタにある財宝の力で管理局内での権威を高めるため。モウロ二佐は地上本部内での権力を取り戻すため。2人共実に下らない私欲でここまでやってきたのだよ』

 

 ほうほう。つまり今回の一件の責任者という訳ですな。

 

 『しかし愚かな者達だ。さっさと逃げれば良いものを。私と戦うつもりとは』

 

 画面の向こうでは『はっはっは…』と笑うムスカ。

 このままやったら…

 するとラピュタ下部から大量の何かが投下され、ソレ等は空中で羽ばたき始め、ゴリアテに向かう。

 原作通り、ロボット兵だねぇ。

 ロボット兵達は一斉に攻撃を仕掛け始める。

 それに対し、出撃した空戦魔導師も必死に迎撃しようと奮起するが、全くもってロボット兵にダメージを与えられていない。

 むしろレーザー攻撃の直撃を受け、そのまま墜落していく。

 

 『素晴らしい…最高のショーだとは思わないかね?』

 

 画面越しからコチラに向けて語っているのであろうムスカ。

 

 「(しかし…)」

 

 一撃でバリアジャケットを貫く威力。ロボット兵の攻撃力も高いのだろうけど魔導師の防御力の低さも否めないな。

 どんどん空戦魔導師が墜とされる中

 

 ドゴオオオンンンンッッッ!!!!

 

 遂にゴリアテが爆発し、空中で炎上する。

 

 『おおっ!!見ろ、人がゴミの様だぁ。はっはっはっはっは!!』

 

 歓喜に打ち震えているムスカ。

 空を飛べない陸戦魔導師は墜ちるしかなく、生きている空戦魔導師は戦意を失い、逃げるだけで精一杯の様だ。

 そんな空戦魔導師の背後から無情にもレーザーで攻撃するロボット兵。

 もうあそこにいる魔導師達の生存は絶望的だな。

 

 『いかがだったかな?ラピュタの力は堪能していただけたと思うが。この映像を見てまだ私に挑む者がいるなら遠慮なく攻め込んできたまえ。諸手を挙げて歓迎しよう。まあ、無駄死にするだけだと思うがね。はっはっはっは』

 

 ムスカはそう言い残し、笑った後でディスプレイを切った。

 

 「………凄まじい戦力だったな。ラピュタのロボット兵は」

 

 「ああ……ベルカ時代最強の帝国というだけはある」

 

 そんな呟きが会議室に漏れていた。

 

 「しかしあのムスカという男…宣戦布告するにしても、もう少し空気を読めば良かったものを」

 

 「そうだな。空気を読んでいれば…」

 

 再び皆の視線が俺の方に向く。

 

 「「「「「「「「「「(長谷川三佐の逆鱗に触れずにすんだものを)」」」」」」」」」」

 

 だから何で俺の方を向くんでしょうかねぇ?

 

 「ゴホン!!と、とにかくだ。長谷川三佐は至急、ラピュタ攻略に取り掛かってくれんか?オーリス、彼と彼の選んだ魔導師達を戦艦のある場所へ案内しなさい」

 

 「は、はい!!」

 

 その言葉を合図代わりに1人、1人と会議室を出て行き、俺は顔見知りの面子を引き連れてオーリスさんの後を追うのだった………。

 

 

 

 「これが……戦艦なんですか?」

 

 「ええ、そうです」

 

 オーリスさんに連れられ、転送ポートを使ってやって来たのは地上本部からちょっとばかし離れた海岸。

 そこに停泊している『船』を前にして戦艦だと言われた。

 

 「……ただの船にしか見えないんですが?」

 

 「言いたい事は分かりますが本当にこれが戦艦なんです。かつて地上本部の局員達を乗せていた地上本部専用運用母艦……『Nice boat』です」

 

 未だに信じられんがオーリスさんが嘘言う様な人じゃないのは知ってるしな。

 この際、見た目は気にしない様にしよう。それより今は…

 

 「「「「Nice boat」」」」

 

 何故か言わなきゃいけない様な気がしたから俺は口にしたのだが、亮太、椿姫、澪も同時に口にしていた。

 

 「…皆も感じた?謎の電波を」

 

 亮太の問いに頷く俺と椿姫。澪は

 

 「懐かしいネタですね」

 

 と感慨深げに言っていた。

 ネタ?何の事だろう?

 

 「……あれ?勇紀君、亮太君、椿姫ちゃんはひょっとして何も分かってません?」

 

 「「「うん」」」

 

 「そうですか《知りたいなら後で教えますよ。前世でのちょっとしたネタですから》」

 

 む?前世のネタなのか?

 

 「ていうか4人共いきなりどうしたのさ?」

 

 「ネタとか聞こえたが?」

 

 レヴィ、リンスが声を掛けてくる。

 

 「気にするな」

 

 とりあえずラピュタ攻略に関係無い事言っても仕方ない。

 地上本部で選定された管制スタッフの到着後、オーリス三佐に礼を言って俺達は戦艦に乗り込む。

 中に入り込むが、個室は普通に客室っぽいし、食堂とか娯楽室とかあるし、本当に戦艦とは思えないんだけど?

 ただ、艦橋や管制室なんかはアースラの内装と似た様な感じだったので嫌でもこの船が戦艦だと認識せざるを得なかった。

 俺達は艦橋に集合する。

 

 「えー…レジアス中将に一任されたのでこれからラピュタを墜としに行きます」

 

 この場にいるメンバーに宣言する。

 俺が招集した魔導師メンバーはシュテル、レヴィ、ディアーチェ、ユーリ、リンス、ティーダさん、亮太、椿姫、澪の9人。

 俺を含めて合計10人が魔導師の搭乗員である。あ、レスティアも戦力に加えておかないと。

 サウザーは今回お留守番かなぁ。だってアイツ……飛べないし(・・・・・)

 かといって俺とユニゾンしたら俺も飛べなくなるし。

 

 「勇紀よ。何故シグナムを同行させなかったのだ?」

 

 リンスから質問が飛ぶ。

 今回の任務にはシグナムさんは同行させていない。何故なら

 

 「シグナムさんは地上本部で働いていても本局の所属だから俺個人の意思で勝手に同行させられないんだよ。許可取るのにも時間掛かるし」

 

 「成る程な」

 

 納得してくれたリンス。

 リンスは俺のデバイスとして連れて来たので問題無い。夜天の書も今持ってるし。

 けどシグナムさん、俺達と別れる前凄く不機嫌そうな表情浮かべてたなぁ。

 別に仲間外れにしたくてした訳じゃ無いんだが…。

 

 「(……もし戻って来た時も不機嫌だったら機嫌直して貰うために模擬戦にでも誘おう)」

 

 うん、そうしよう。

 

 「それでユウキよ。ラピュタを墜とすというが、具体的にはどうするのだ?」

 

 「そうだね。何か作戦は有るのかい?」

 

 ディアーチェと亮太からの問いに俺は答える。

 

 「作戦はシンプルだけどねー。この戦艦と俺達空戦魔導師が囮になってる間に椿姫が腑罪証明(アリバイブロック)でラピュタ内部に侵入。で、ムスカを確保する算段でいく」

 

 所詮ムスカは非魔導師であり、銃の腕前が良い以外は民間人とほとんど変わらん。椿姫なら余裕で逮捕出来るだろう。

 

 「大役ねぇ~♪」

 

 余裕を感じさせる声色で椿姫が言う。

 

 「前線で戦うのは俺と亮太かな。後の皆は後方支援と戦艦の守りに徹してくれ」

 

 「ええ~~!!?僕も前線に出たい!!!」

 

 早速レヴィが不満を露わにする。

 

 「あのなぁ。会議室の時にも言ったけど、ロボット兵は魔法攻撃にも強いんだってば」

 

 「僕だって武装色の覇気使えるよ!!」

 

 「私も使えますね」

 

 「我もだ」

 

 「私もです」

 

 レヴィに続いてシュテル、ディアーチェ、ユーリも順に口を開く。

 ここにいる面子で覇気を使えるのは俺、亮太、椿姫、澪、シュテル、レヴィ、ディアーチェ、ユーリの8人。

 リンスとティーダさんは使えない。

 

 「知ってる。けど、覇気使える奴全員を前線に出したら戦艦の守りが薄くなる。そうしたら撃墜されかねん」

 

 「ていうよりも何で長谷川三佐と大槻三佐は前線に?魔法が効きにくいというなら僕達と条件が同じなのでは?」

 

 「敬語使わなくても良いですよティーダさん。俺の方が年下ですから。それと質問に対する答えですが、俺の天火布武(テンマオウ)と亮太のレーザー攻撃、それに椿姫のメティスは魔力に分類されない能力ですからロボット兵にも普通に通じるんです」

 

 もっとも椿姫はムスカの方に向かわせるから戦力としては除外。

 

 「ブーブー!!前線に出ーたーいーよー!!」

 

 駄々こねるな。

 

 「ユウキ、レヴィも出してあげたらどうですか?」

 

 「けどレヴィは防御力低いしなぁ。ロボット兵の攻撃食らうと結構ダメージ受けるし」

 

 「当たらなければどうという事は無いよ」

 

 確かにそうなんだがね。いつまでも避け続けられる体力があるのかが心配なんだよ。

 

 「ユウキ、我等が戦艦の護衛をしつつレヴィのサポートをしてやるから前線に出してやれ。ユウキと亮太だけというのもキツかろう?」

 

 俺は亮太と目を見合わせる。

 実際には余裕だと思うけど

 

 「僕は勇紀の判断に任せるよ。今回の総指揮官は勇紀なんだし」

 

 「……………………」

 

 レヴィの方に向くと、両手を合わせ頭を下げる。

 

 「……危なくなったらすぐに下がってくれよ」

 

 前線での戦いに許可を出す事にした。

 

 「うん!!」

 

 満面の笑みで返事するレヴィ。

 

 「しかし勇紀よ。総指揮官のお前が前線に出るのはどうなのだ?」

 

 リンスがそう言うのももっともだ。けどさっきも言った様にロボット兵にまともにダメージ与えられるのは俺、亮太、椿姫だけなんだよ。

 

 「あのー…」

 

 そこへ小さく手を上げながら澪が声を上げる。

 

 「私が勇紀君の代わりに前線に出ましょうか?」

 

 「澪がか?うーん…」

 

 どうしよう?コイツも高ランク魔導師だけど…

 

 「実は先日、新たな力を手に入れまして」

 

 「「「「「「「「「「新たな力?」」」」」」」」」」

 

 「我が家に代々伝わる家宝の武器を使いこなせる様になったんですよ♪」

 

 え?コイツの家って何か古い伝統とかあったっけ?

 俺が疑問に思っていると澪から念話が飛んでくる。

 

 「《以前から保留してた神様への願い事が決まって叶えて貰ったんです》」

 

 あー…そういう事ね。

 俺とコンビ組み始めた時にそんな事言ってたし、時折何を叶えて貰うか真剣に考えてる姿も見かけた事あるし。

 しかし神様に叶えて貰った願いによる新たな力なら信用は出来る…か。

 

 「じゃあ前線は亮太、レヴィに澪でよろしく」

 

 「って、そんな簡単に決めて良いんですか!?」

 

 「問題無い」

 

 ユーリが叫んだが、俺は構わず容認する。

 

 「じゃあ皆の役割確認するぞ。前線でロボット兵とやり合うのは亮太、レヴィ、澪。後方支援及び戦艦の護衛はシュテル、ディアーチェ、ユーリ、リンス、ティーダさんの5人。特にリンスとティーダさんは覇気が使えない分、魔力を多めに使うと思いますから魔力が少なくなったらすぐに戦艦に戻って来て下さい」

 

 「「「「「「「「了解」」」」」」」」

 

 「後方支援組が突破される最悪の事を想定して俺は戦艦に留まり、イージスをいつでも展開出来る様にしておくから。椿姫は腑罪証明(アリバイブロック)でラピュタ内部へ侵入。ムスカの身柄確保と余裕があるならラピュタ内部の制圧も任せた」

 

 「ええ」

 

 「管制スタッフの皆は常に状況確認を怠らず、地上本部及び現場の魔導師達との連絡を取り合って下さい」

 

 「「「「「「「「「「はい!!」」」」」」」」」」

 

 「以上。何か質問は?」

 

 シーン……

 

 特に何も無い様なので

 

 「ではこれよりラピュタ攻略戦に取り掛かります」

 

 俺達は全員持ち場に着き、『Nice boat』を浮上、発進させた………。

 

 

 

 ~~???視点~~

 

 「ラピュタ帝国……まさかこの目に拝む事が出来るとはね」

 

 「ドクターはあれについて何か知ってるんですか?」

 

 「少なくとも管理局の連中よりはね。………言葉君、くま」

 

 「何ですか?」

 

 「……………………」

 

 「君達に今からラピュタに向かって貰いたいのだが構わないかね?」

 

 「私は別に良いですよ」

 

 「問題無い」

 

 「そうか。ならラピュタの中枢部に向かい、そこにある『ある物』を回収して来てほしいのだよ」

 

 「『ある物』?一体何ですか?」

 

 「それはね、ラピュタの科学の結晶であり、あの空中帝国の動力源。彼等が『飛行石』と呼ぶ超高エネルギー結晶体……『レリック』、そのオリジナルをね」

 

 

 

 ~~???視点終了~~

 

 ~~キャラクターステータス~~

 

 NO.0009

 

 八神はやて

 

 LV   79/ 999

 HP 6900/6900

 MP  710/ 710

 

 移動力     6   空  A

 運動性   125   陸  A

 装甲   1200   海  B

 照準値   155   宇  -

 移動タイプ  空・陸

 

 格闘 186 命中 203 技量 192

 射撃 206 回避 199 防御 184

 

 特殊スキル 援護攻撃L2

       援護防御L2

       指揮官

       ガンファイトL5

       連携攻撃

       気力+(命中)

 

 ~~あとがき~~

 

 今年はエイプリルフールネタは無しです。

 それと次回、もしくは次々回でラピュタ攻略します。

 


 
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