No.675452

リリカル東方恋姫 第十話 『殺戮人形は無慈悲なり』

チャチャゼロ「今回ハ俺ノ出番ガイッパイダナ♪」

はやて「がんばってーな、チャチャゼロ♪」

一刀「…それに比べて、なんで俺だけ戦闘シーンが少ないんだ作者?」(ギッロ

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2014-04-01 20:28:41 投稿 / 全9ページ    総閲覧数:1745   閲覧ユーザー数:1685

闇の書から目覚めた守護騎士たち『ウォルケンリッター』。

そこへ、突如として現れた武装神姫『かぐや(01)』と『こまち(02)』、そして複数のミミックたち。神姫たちの武力によって騎士たちは劣勢を強いられ、ついには拘束されてしまった。また、闇の書さえも怪しげなお札によって、機能を停止させられてしまう。

そして、闇の書の主であるはやてにも、襲い掛かろうとしたミミックたちだったが、はやてのそばにいた最悪最低な人形『チャチャゼロ』によって瞬殺された。

その光景にはやては理性が飛んでしまい、また気絶しそうになったが、そこは我慢をしてこの状況を冷静に整理する。

 

「おちつけ私…いったんクールになろか私。冷静になった頭で、ことの順序を思い出そうか…。え~と、たしか、私が帰りのバスから降りて、青信号になった歩道橋を渡ってたらトラックが突っ込んできて、怖くて目をつぶっていたら、いつのまにか本とかに出てきそうな魔法陣の上に座っていて、ほんで変な格好をした人たちが空中に浮かんで、そのあと、気絶してうるさい声で目を覚ましたら、目の前で、魔法みたいなもんとロボットもんに出てくる武器で戦ったりして…。それで、最初の会った人がつかまって、金髪の人が逃げろっといわれて逃げたら、顔の無い娘(女性?)たちが私を襲ってきて、ほんで、顔のない人がなぜか体中に剣みたいなはやして。そこへ、抱いていたチャチャゼロが動き出して、顔無娘を腰にぶら下げていた剣でバラバラに斬ったんや。・・・・・・・うん、これは夢やな!」

「アホ」

 

バッチン!

 

「痛っだっ!?」

 

結論の結果で現実逃避をするはやてに、チャチャゼロは一瞬にしてはやてに膝の上に立って彼女のおでこに(バスでのことを含めて)デコピンした。足元にが下りると、デコピンが強すぎたか涙目におでこを抑えるはやてと顔を合わす。

 

「コノ痛ミデ解ルダロウ。コレハ、夢デモ、幻デモ、芝居デモ、オ前ノ頭ガイカレタワケデモネー。正真正銘、オ前ガ見テイルノ全テガ、幻想ノヨウナ現実ダ」

「う~、そんなこと言われてもな~。この短い時間にいろいろなことがありすぎて情報処理がオーバー、もう私の頭がマッハでパンク寸前やんよ~。さすがの美少女はやてちゃんも現実逃避したくなるのは、決定的明らかやで~」

「ソウ言ウ割ニハ、コノ状況下デ俺ト普通ニ会話シテルジャネーカ…。非常識ニ慣レテキタ証拠ダ。相当ナ肝が座ッテ、適応力ヲ持ッテイナイト出来ヘン事ダゾ。流石、未来ノ腹黒豆狸ハ器ハ違ッタ」

「それって、ほめてんの? 馬鹿にしてんの?」

「両方」

「ちっくしょう~;; ほんでもって原作のアホ~」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とある正史

 

 

「はっくしょん!! うぅ~リィ~ン。ティッシュ取って~」

「ハイ、どうぞ。風邪ですかね?」

「チ~ン! …う~ん、今のは私のうわさしたんやと思う。それも、エセ関西弁でしゃべる腹の中真っ黒な豆狸が、自分の非を馬鹿にされて、馬鹿にされたのは私のせいやって叫んでいる・・・・ような気がする」

「へー、そこまで、うわさした人の特徴がわかるものなんですねー…(それって、はやてちゃんのことじゃー^^;)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、空中でこまちの副腕で捕らわれたシグナムとヴィーダ。そして、こまちの側にいるかぐやは突如として参戦したチャチャゼロの存在に驚いていた。

 

「あの人形はいったい…?」

「オイ、あれもお前たちの仲間じゃねーのかよ!?」

「し、知りませんよ、あんな子は!」

「そうだっ、所有者の近くにあれほどの者がいたとは報告は受けてはいない。むしろ、お前たちの仲間ではないのか?」

「うちら(守護騎士)に、あんな、いかにも危険です、って威圧を出してるやつが仲間なわけあるかっー!」

 

ただの人形だと思っていたシグナムはチャチャゼロの行動に疑問し、かぐらとこまちは知らないと視聴し、ヴィーダもチャチャゼロを仲間ではないと否定する。

 

「だぁああああっ! こっちとら目覚めて初日だっていうのに、次からつぎへ変なのがおしよせてきやがってぇぇ…! どうなってるんだよ、今回の主様わよっ!」

 

あまりにも急な展開に脳は処理しきれず錯乱し、ヴィーダはウッガァー!、と暴れながら頭を掻き乱す。

 

「落ち着け、ヴィーダ! 下で主が見ているのだぞ」

「む~、へんなのものとは心外です!」

「こいつらの言葉に耳を貸すな、かぐら。それと、おまえたち私の頭の上でギャーギャー叫ぶのはやめてくれ。うるさくて、聴器が壊れそうだ」

「「だったら(ならば)、とっとと、あたし(私)たちを離しやがれ(離さんかっ)ー!!」」

 

騒いでる原因を作ったこまちにシグナムとヴィーダがつっこんだ。

そのやりとりをチャチャゼロが見上げて観賞していた。

 

「アレダケ元気ナラ、アイツラハ後デイイカ…」

 

と、言って、側でミミックに拘束されているシャマルとザフィーラに目を移す。

 

「オイ、顔無共…。イツマデ、オシクラ饅頭シテルンダー?」

 

干将『血』と莫耶『骨』の刀身を十字にクロスさせると、一瞬にして、シャマルの背後に回りこんだ。

 

「饅頭ノ中身ハ、ガキダケニシトキナ」

 

腕をひらいて双剣をバッテンの文字に切り裂き、そのまま、乱舞のごとく双剣を振りましてミミックを微塵切りに斬った。

シャマル!?×3、と仲間たちとはやてが彼女も斬られているのだと心配する。

だが、斬り終えると、そこに、無傷の体でシャマルが呆けて立っていた。

 

「・・・・・どこも斬られてない…?」

 

自分の体を調べるが、体にはミミックたちに付けられた痛みしかなく、どこにも剣で斬られた傷は無かった。

 

「「「「うぅぅぅきゃっぁぁぁぁあああああああああああ」」」」

 

前斜め上の空中から約13体のミミックがチャチャゼロに向かって襲い掛かる。

チャチャゼロは(飛ぶのに必要無いが)背中の黒い羽を広げようとしたとき、はやてが見ている前なので、ちゃっと嗜好を凝らしてみて、あるセリフを声高く叫んだ。

 

「ゲッタァァァアアアアアア・ウィィィィイイイイングッ!」

「「真ゲ○ターロ○っ!?」」

「かっこいぃぃ!」

 

国民的ロボットアニメをなぜか知っていた武装神姫の二人はチャチャゼロにツッコミを入れ、アニメのロボットと同じ羽を出し方を見て、はやては目を輝かせて喜んだ。

チャチャゼロはミミックに向かって空中へ飛ぶ。

ミミックたちはライフルと機関銃、ガトリングガンをチャチャゼロを狙って撃つが、

 

「ソノ程度ノ腕デ、俺ヲ殺スコトハ出来ネーナ」

 

あくびしたり、イナバウワーしたり、座布団に座ってお茶を飲んだりと相手をおちょくりながら弾幕の避けていた。

 

「次ハ、俺ノターンダ」

 

チャチャゼロは戦闘機顔負けの音速飛行でミミックの周囲を飛び回りミミックたちを翻弄させる。

ミミックたちは周囲に弾幕をはるがチャチャゼロの慣性の法則を無視した急旋回や方向転換で当たらず、弾丸が減るだけ。

対して、チャチャゼロ、ケケケケ、とあざ笑いながら、ミミックたちの真上上空から、干将『血』と莫耶『骨』を上に掲げた。

 

「斧ジェネーケド、ゲッタァァァアアア・トマホォォォォク・ブゥゥゥウウウメラン!」

 

干将『血』と莫耶『骨』の刀身を変化させて幅を広げ、ブーメランのように投げた。

干将『血』と莫耶『骨』は回転しながら、ミミックが持っていた武装を切り裂き、チャチャチャゼロの手元に戻ってくる。

射撃武器が破壊されたミミックたちは接近戦に変えて、チャチャゼロのスピードと居合いを縮めるために槍やダブルソードを転送させて装備する

 

「ウゥゥゥキャァァァアアアアアア」

 

ミミックたちはチャチャゼロを追い回し、一斉に槍を突いてはダブルソードを振り回して斬りかかる。

チャチャゼロは小さな体を生かして、攻撃をすり抜けて一体のミミックの懐に入った。

 

「マズ、一体…」

 

グサッ、とミミックの胸に干将『血』を突き刺し、莫耶『骨』で首を跳ねた。

後ろから三体のミミックが襲い掛かるが、干将『血』を突き刺したままのミミックを盾にして防御する。

盾にされた首なしミミックは三体のミミックによって串刺しにされ、チャチャゼロは、ステップダンスのように回転しながら、ミミックたちを斬って行く。

 

「二体、三体、四体、五・・・・・・・」

 

足、腕、股、手首、腹、首、とミミックたちを解体するチャチャゼロ。ミミックは残りの三体になり、このまま斬ろうとしたそのとき、ピタッと空中で停止した。守護騎士たちや武装神姫たち、はやては、?マークを浮かべ、頭を横に傾けると、

 

「・・・・・・キモチワリ~」

「「「「「「「だっぁぁぁああああああ!!??」」」」」」」

 

オッェ、と左腕で口を押さえて吐き気を抑えるチャチャゼロ。なにせ目を開けたまま、方向転換や急旋回を何度も繰り返せば、目を回して酔うのは当たり前だ。

そのことに、はやては車椅子からズリ落ち、シャマルとザフィーラはズッコケてしまい、こまちは危うく、シグナムとヴィーダを放して、かぐらといっしょに落下しそうになった。

何デコレデ酔ワネーンダ、アノ汗臭い三人ハ…? 、と干将『血』を持った右手で頭を抑えていると、ミミックがチャチャゼロの両腕を片方ずつ掴んでいた。後ろには斧を振り下ろそうとするミミックがいた。

 

「チャチャゼロ、後ろ!?」

 

はやてが叫ぶ。その横でシャマルがチャチャゼロを助けようと指輪型デバイス『クラールヴィンド』でつかって斧を持ったミミックをバインドしようとした。だが、それよりも早く、チャチャゼロは首を180度回転させた。

人形なので間接は360度回るのは当たり前だが、いきなりのそんなものを見せられたらぎゃっぁああああ、と悲鳴を上げて驚くのとうぜんの守護騎士(娘)たちと武装神姫たち。

そんなことに構わず、斧を振り下ろすミミックに向かってチャチャゼロは、アー、と口を開けて舌を出す動作をした瞬間、

 

舌の代わりに『獣の槍』がミミックを突き刺した。

 

「「「「「「「口から槍が飛び出したー!?」」」」」」」

 

突如、体の収納を超える槍が口から飛び出したことに周りは仰天。胸から背中まで槍が貫通したミミックは、ガタガタと震えると、腕を垂れ流し、斧を落として機能停止する。

ペッ、とガムを捨てるように、槍を吐き出し、その槍に突き刺さったミミックは地面に落下し激突。激突の衝撃で体はバラバラ、『獣の槍』は縦に刺さったまま、あわれ、ミミックの墓標になった。

チャチャゼロは右腕を掴んでいるミミックに振り向く。左右にいるミミックたちは離れようと腕を離すが、逆にチャチャゼロに腕を捕まえられてしまい、逃げられない。

頭を左右に振るチャチャゼロに、ミミックは槍が飛んでくることを予想し、避けれるように身構えるが、

 

「チャチャゼロファイヤー!」

 

出たのは火炎放射だった。

 

「「「「「「「今度は火、吹いたぁぁあああ!?」」」」」」」

 

口から出た炎がミミックを火達磨にする。一同は驚き、チャチャゼロは反対側のミミックに振り向く。

そして、

 

「チャチャゼロブリザード!」

 

液体窒素を吹きかけた。

 

「「「「「「毒霧みたいに吹きかけたぁぁあああ!?」」」」」」

「あいつは怪獣かぁぁあああああ!?」

 

大道芸びっくりの口芸に大声で叫ぶはやて、シャマル、シグナム、かぐらとこまち。

ヴィーダはあまりにもハチャメチャな攻撃に我慢の限界になり、ツッコムだ。

液体窒素を吹きかけられ、装甲が凍ってしまい、慌てふためくミミック。だが、極悪人形のターンはまだ終わっていない。

両手に握ったミミックを握り締めて、その場を急降下。燃えるミミックと凍っているミミックを地面に叩きつけた。背中から叩きつけられ、地面には二つにクレーターが出来た。

 

「「ぅぅぅぅきゃっぁぁぁあ・・・・・」」

 

錆びたブリキ人形のように、間接をギギギギと鳴らして立ち上がろうするミミックたちだが、チャチャゼロは張り手でミミックたちの胸に押して、もう一度、地面に叩きつける。

 

「コイツデ寝トケ…。暗器「黒田坊の黒演舞」」

 

両腕と掌から、大量の刀剣が飛び出し、ミミック二体を串刺しにする。

零距離から放たれた刀剣は散弾銃の威力と同じ効果を出し、ミミックの体をこっぱみじんに吹き飛ばし、周辺にミミックの破片が飛び散った。

もし、これが人体であったならと周りは想像してしまい、ゾッとした。とくに、同じ機械仕掛けである武装神姫の二人は背筋に寒気を感じ、一緒に居ていたはやてはチャチャゼロの残酷さに顔を青くする。

そのことを気にせず、いつも通りやるチャチャゼロは、ミミックたちに山積みにされたザフィーラの方へ振り向く。

 

「オイ、犬ッコロ…。頭、引ッ込メネート、首ガ飛ブゾッ」

「なにを…っ!?」

 

ザフィーラの目に、一直線で突撃するチャチャゼロが写る。

両手には双剣ではなく、巨大な両刃の大刀『斬馬刀』をバットを扱うように構えながら持っていた。

なにをするか察したザフィーラは、即、頭を地面に押し付けた。

 

「見トケ、神姫モドキ共ッ。コレガ、ホントノ・・・・・・・・」

 

斬馬刀を刃部分の線ではなく、刀身部分の面で横に振った。

 

「テニスボール、ダァァァァァアアアア!!!」

 

スイングされた斬馬刀はザフィーラに乗っていたミミックたちに当った直後、ミミックたはザフィーラから離れ、バラバラに上空へぶっ飛んだ。

そのままはミミックの体は斬馬刀の衝撃と振動によってが散弾のように粉砕され夜空へ飛び散った。

 

「波動球~キッタっーーー!!!」

 

兼テニス漫画の必殺シュートに、はやては兼宇宙飛行機ライダーのように両腕を上げて叫んだ。

隣では口をポカ~とあけて唖然するシャマルがいた。

 

「立テルカ?」

 

チャチャゼロは空中に浮きながら、ザフィーラに手を差し伸べた。

 

「・・・・・・かたじけない」

 

差し出された手を掴んで立ち上がった。ザフィーラは野生の本能がチャチャゼロから放たれる禍々しいオーラに危険を感じ、警戒していた。

チャチャゼロは上空にいる武装神姫二体に視線を移す。まるで、いまに獲物に飛び掛ろうとする、森林の覇者である虎を思わせる威圧であった。

 

 

「02~。あの子、こわいです~;;」

 

殺戮人形から発せられたプレッシャーにかぐやは涙目になり、こまちに擦り寄る。

 

「泣くな、01。こういうときこそ、動じず、冷静な判断を選ぶのが勝敗を決するものだ」

 

そう言って、落ち着いて、戦場の状況と自分たちの状況を把握し考える。

 

(ミミックは全滅。騎士との戦闘で活動エネルギーはかぐらと同じ半分を切った。私の手には守護騎士四機の内二機がいる。だが、あの三頭身の能力と戦闘力は情報不足で現状未知数…。そして、あと二機の守護騎士が救出され、二対三で確率は半分以下…。マジ(本気)でヤバイな・・・)

 

最悪の状況には変わらないことに額に汗を垂らす。有利であった戦況を覆した三頭身人形相手に自分たちが勝てるイメージできないのがもっともな理由であった。

 

「・・・・・01。プランBだ」

「了解!」

 

かぐやは頷き、二人は体を前かがみに倒れる。

来るっか…! 、とザフィーラとシャマルは捕まった仲間を助け出そうと構える。

チャチャゼロは、ただ、呆然とかぐらとこまちを見つめて構えず立っていた。

そして、ふたりは、同時に動き出し、

 

「「戦力的撤退!!」」

 

通り過ぎて、町の方へ飛んだ

 

「しまった!?」

「逃げるなんて卑怯よー!!!」

「二人をかえせー!」

 

後方でザフィーラとシャマルとはやてがわめく。

だが、二人は止まることはせず、町の方へ飛び去った。

 

 

 

「オイ! あたいらをどうする気だ!」

「仲間が張った結界は強固だ! 結界がある以上貴様たちは逃げられないぞ!」

 

シグナムとヴィーダが暴れるながら、こまちとかぐらに怒鳴りつける。

 

「任務が続行不可能ならば、せめてお前たちをサンプルとしてでも連れて行く」

「どんな強固な結界だって、完璧ではありません。貴方たちのベルカの結界だって構造さえ分かってしまえば、テコの原理と同じで攻略できるんですよ♪」

 

試合には負けたが勝負はまだついていないとあきらめずにいるこまち。

横で、かぐらは自信を持って結界から脱出可能だと断言した。

ぐっ、そこまで用意周到とは! 、とシグナムは悔しがった。今まで、騎士として、そして強者であった自分たちが、ここまで失態をしでかす事は初めてであった。

 

「それに、あなたちがいるので、あの人形もへたに手をださないと思いますし」

「な!? あたいらを人質にするきか!」

「それは違うな。人質という言葉は約束で支払う対価の意味だ。だが、私たちはやつらと約束をしていなし、私たちを攻撃する手段がなく攻撃しないだけで、その言葉をつかうのは間違いだ」

「減らず口を…!」

 

シグナムはこまちを睨むんだ。今すぐにでも、斬りかかりかったが、両腕が胴体ごとこまちの副腕で拘束されているため、剣を振り回すことができない。

 

「なんだ? まるで卑怯と言いたそうな顔だな剣の騎士…。フン、なら卑怯者で結構だ。生き恥をさらして失敗作の烙印を押されるが仲間に情報を伝えるためならよろこんでこの手を汚す覚悟はできている。なんせ、これから起きる戦いのためにはすこしでも情報が必要だからな」

「それはどういう…?」

「お前たちが知る必要はないさ…。…ん、そろそろだな」

 

高層ビルが多く並んだ街中。こまちたちは街中の十字の大道路に付くと、近くのビルの屋上へ着地した。

 

「貴様たちが使う障壁や結界は魔力というエネルギーを構成させて作った壁。空間の隔離や時間のズレも、時空と時空の間に壁を作り一時的に外界と遮断させたものだと、私たちの技術者がそう理論している…ちがうか?」

「・・・・・・・」

「???????」

 

こまちの魔法に対する知識に問いかける。

シグナムは無言でこまちの言葉を聞くが、ヴィーダは気軽に使っている魔法をどういうものか難しく説明されて、話の半分ほどはなしが分からなかった。

 

「簡単にいえば、壁の構成、つまりプログラムはいわば編み物と同じで、魔力という繊維で編まれているマフラーであり、編み方によて、時間のズレなどを発生させているということだ」

 

話についていけないヴィーダにこまちはため息をつき、分かりやすく説明した。

 

「へぇ…。そうだったのかシグナム?」

「私に振るな。…たしかに障壁や結界などはそういうものだとシャマルから聞いたことがあったよーなー…?」

 

結界に対して専門であったのは、彼女たち守護騎士のサポーターであり、癒しと補助の使い手である『湖の騎士・シャマル』であった。戦時中、もしもの場合を備え、彼女から結界魔法について勉強させられたことがあった。

もっとも、勉強が進むにつれ難しくなっていくため、運動系のシグナムとヴィーダは理解できず、基礎程度の知識しか習わなかった。ちなみに、ヴィーダはシャマルの授業中、よく居眠りをしていたので、常に糸状のバインドで縛られて木に吊るされていた(縛り方がアレだったので、嫌な記憶として授業の記憶と一緒に抹消した)。

 

「鉄槌の騎士が脳筋の幼女なのは置いといて…」

「だれが脳筋の幼女だこら~!!」

 

気にしていたことを言われ、アルトを振り回し暴れるが、長い副腕につかまっているためこまちに当たらない。

うるさいやつめ、と副腕を上下に振って、ヴィーダをシェイクさせてた。

副腕を止めると、

 

「う、う~うえ~ん」

 

ヴィーダは気持ち悪そうに目を回して黙る。

 

「…魔法の勉強を教えるために私を捕まえたのか?」

「まぁ聞っけ。どんな複雑な構造でも、必ず全体を支える基礎土台という要が存在する…。そこさえを失えは、あとは簡単だ。物体は存在を保てなくなり、分解され崩壊させることができるのさ。…かぐや、まだが?」

「ん~と、もうすこし・・・・。あっ。あった、あった…!」

 

空を見上げていたかぐらは、なにかを見つけた。かぐらの視界には複雑な幾何学文様が写り、赤い点のマークに『ブレイクポイント』と表示されていた。

右手にレザーライフルを、左手に深緑の弾頭で出来た弾丸を一つ転送させた。

 

「あれは、カートリッジ!?」

 

弾丸の形状にシグナムは驚いた。

ウォルケンリッターたちが使う魔法はベルカ式という術式で、特徴的なのはベルカ魔法に合わせた機種『アームデバイス』に搭載されているカートリッジシステムという機関だ。機関に魔力を圧縮させた弾丸を装填させ、機関内で弾丸に圧縮された魔力を開放し、瞬時に爆発的な魔力で攻撃力を上げるための専用の弾丸である。

だが、シグナムは弾丸をよく見ると弾丸には魔力が感じなかった。

しかし、魔力の代わりに弾丸から怪しげで危険な気を感じた。

 

「その薬莢はいったい…?」

「まぁ、見とけ」

 

かぐらが弾丸をレーザーライフルに装填するのをうかがうこまちとシグナムの二人(ヴィーダはまだ、目を回している)。

レーザーライフルをブレイクポイントにあわせて、空に構えた。

そして、

 

「発射っ!」

 

引き金を引いたとたん、銃口から深緑に光る弾丸が発射された。弾丸は緑の粒子を撒き散らしながら一直線に空へと飛んでいくと、夜空に穴を開けて貫通した。

その瞬間、穴から白い亀裂が生じて、周りの空間が緑色に点滅しながら広がり、最後には、バッリン! とガラスが割れたかのように結界が壊れた。結界が壊れたことにより、ビルの下に、多くの人や走っている車などが出現する。

 

 

 

 

「嘘だろう!? シャマルの結界をあんな弱そうな一発で、簡単に壊しやがった!?」

 

気がついたウィーダは、目の前の現象に驚きを隠せなかった。仲間の中で結界魔法に優れていたシャマルの結界は自分たちで指折りで、高い性能をもっていた。しかし、その結界はあっさりと破壊されたことに信じられず目を疑った。

この、ヴィーダの反応にかぐらとこまちは、どうだい♪、とうれしそうに胸を張った。

だが、自信満々な彼女たちに一人、怒るものがいた。

 

「貴様ら、先ほど撃ったものはなんだっ! あんなもの魔力でなければ、質量兵器類のものではない!! もっと、それ以上に危険なものではないのか!!」

「シ、シグナム…?」

 

シグナムはものすごい剣幕でこまちたちを怒鳴り、ヴィーダは彼女がここまで怒鳴りつけるなど不思議に思った。

シグナムは銃口から放たれた弾丸を見た瞬間、騎士の直感が身の危険を感じて叫んだ。

 

――あれは、この世にあってはいけないものだ、と。

 

これまでにない具体的な直感の叫びに、冷や汗をながすシグナム。騎士である自分が弾丸一発で危険を感じるなど初めてであった。

対して、こまちは町の景色を見渡しながら微笑する。

 

「フ・・・・。悪いが企業秘密だ。それに、アレがどういうものなのか、私たちもはっきりいってわからない代物だ。…まぁ、やばいものであるのは確かなのだがなー…」

「そんなものを街中のど真ん中で使ったのか貴様たちは!?」

「大丈夫だ。あれぐらいのモノなら、結界が消えた同時に消滅するから生物にたいした被害は出ないさ。・・・・たぶん」

「たぶんだと!? ふざけるなっ! あれで、もし関係のないもの者たちになにかあったら、どうするつもりだ!!」

 

曖昧で自信のない根拠にシグナムはさらに目を鋭くして怒鳴る。今まで、闇の書と主のために、他人を傷つけることがあったが、無関係なもの達には手を出さない。それが、彼女の騎士道という誇りであった。

だが、こまちは副腕の腕力を強め、シグナムを締め上げる。

 

「おまえの言い分はよく分かる。だが、今のおまえは私につかまっていることを忘れていないか?」

「ぐっわぁぁああああ!!!」

「シグナムになにすんだ! このやろうっ!」

ヴィーダが怒鳴り、こまちは副腕の力を緩めた。

 

「捕獲された獲物は黙っておとなしくしとくんだな」

 

緩めると、ガックッ、とシグナムは肩を落とす。

くっそう~! と反対側でヴィーダは悔しく歯を噛んだ。

 

「さて、そろそろいくぞ01」

「うん♪ …ところで02。私たち、これからどうするんでしたっけ?」

「ハ? 何言っているのだ01? ミーティングで打ち合わせしただろう…。目標の捕獲をしたら海岸線で待機している部隊を合流すると…。騎士との戦闘で、記憶回廊が損傷したのか…――」

 

後ろにいるかぐらのほうを振り向くと、武装を外され、口と体を縛われ芋虫になって横たわっているかぐらがいた。

 

「フゴフムゴフゴブムム(助けて、こまちー!!)!!??」

 

荒い縄での亀甲縛りで、口には拷問で口を塞ぐボールなど、成長期な中学生体形のかぐらの今の姿はとってもエロい。

 

「なっ!? かぐやーっ!!??」

 

相棒のあわれな姿に、こまちは思わず名前で言ってしまった。

急いで、かぐやを助け出そうとこまちは近づく。だが、フト、疑問に思い立ち止まった。

 

――かぐやが口を縛われているのなら、先ほどの声はいったい? 

 

・・・・・・・・・・・ぷにゅ♪

 

「へっ?」

 

突如、後ろからほっぺたを指で指され、まぬけな声をだすこまち。指を刺した後ろへ、ゆっくりと振り返ると、

 

「ね~、こまち。私の声、似てるカナ~…? ケケケケケケケケケケケ♪♪♪」

「きゃっーーーーー!!!」

 

顔面ゼロ距離からの弩アップのチャチャゼロの顔が目に映り、かぐやの声真似をして、背中に乗って、体を揺すりながら笑うチャチャゼロ。兼ホラー人形並みの恐怖に、悪魔型であるこまちでさえ少女のように悲鳴を上げ、絹が裂けた声を空に響き渡らせた。

 

「いっやー! 誰かっ、取ってー!!」

 

クールキャラからいたいけな少女キャラに変わって、必死にチャチャゼロを振り払おうと悲鳴をあげて、暴れ牛のようにジタバタとその場を暴れまわる。

その、暴れ牛を、ヒィッハァー! とチャチャゼロはカウボーイ気分で楽しみながら乗りこなしていた。ちなみに、こまちの背中に副腕付きのユニットであるリアパーツ『FLO17リア+グリーヴァ』は、身体の電気神経と繋がっているため、擬脳の演算機から伝達信号を受信し自分の腕と同様に精密な動きが可能する。そのため、無意識な行動は電気信号と連動され反射運動をとってしまう。

つまり、

 

「オィィイイ~! 私たちまでふりまわすな~!!」

「また、目が回る~!?」

 

両副腕に捕まった二人も振り回されてしまう。

 

「いいいい加減に、離れろうぉーーーっ!!」

 

チャチャゼロの頭を掴み上げて、投げ捨てた。

 

「ヨット!」

 

空中で二回回転して、見事にビルの端に着地した。

こまちは地面に両手を置いて息を整えて落ち着こうとする。

機械のため息遣いは不要だが、精神的なダメージでせいで荒い息になり、先ほどの恐怖でまだ体が震えていた。

 

「はぁはぁ、き、貴様!? いつから私の背後に…!!??」

「『任務が続行不可能ならば、せめてお前たちをサンプルとしてでも連れて行く』ノアタリカラ」

 

怖がっているのをお構いなく、チャチャゼロはケロッとした顔で、こまちの声まねをして質問に答える。

さ、最初っからいたんらさっさと助けろよ~;、と振り回されて、また酔ってしまったヴィーダが、ぐったりしながら力を振り絞ってツッコンだ。

チャチャゼロはこまちに向かって一歩歩く。

 

「まてっ。それ以上近づけば、こいつらの命はないぞ」

「ぐっ!」

 

手を突き出して、副腕に握り締められて苦しむシグナム見せて脅迫した。

だが、チャチャゼロは、ケケケケ、と笑う。

 

「ヤッパ、アホ、ダナ」

「なんだとうー!!」

「脅迫ッテイウノハ、肝ガ小ーサナ奴ヤ賢ク無イ奴、自称正義ノ味方相手二スルモンダ。人質ダッテ、自分ヲ守ル盾当然。ソレヲ捨テル奴ハ、三流ノ格下カ狂ッタ確信犯クライナモンダ。…ソレニ、互イノ手元ニ交渉材料ガアル場合ハ、フェアーデ行ワネートヨー」

「ウゥゥ~;;」

 

チャチャゼロは後ろ下から、いまだに縛われて涙目になっているかぐやを右手で持ち上げてこまちに見せた。じつは、こまちが息を整えてたときに、こっそりと、かぐやをビルの壁に吊るして置いていた。そのため、地上では、吊るされた少女の姿が目に留まり、注目されて人だかりが出来ていた。隣の高いビルでは騒ぎ聞きつけ、窓から屋上にいるチャチャゼロたちの様子をケータイで撮るなどして見る者が多く集まってきた。

 

「ホラホラ、早クシネート、此処ニ人ガ来ルゾー♪ ケケケケケ♪」

「フッェェェエエ(回すのやめて~);;!!」

「ぐうぅぅっ」

 

片手で縄を持って、空中にぐるぐるとかぐやを回す。

まさに八方塞に状態に追い込まれ、こまちは顔をゆがませて悩む。

 

(ここで騒ぎが起こっても組織が情報を隠蔽してくれだろうが、総統と隊長の信頼がガタ落ちになる…。それに、かぐやを置いてしまったら隊長への高感度がさらに下がってしまう――…いやいや、そうじゃなくて。かぐやの体から組織の情報を漏らしてしまう恐れがあることだ…。…私たち武装神姫を解析できる人物はそうそういないが、こいつを作った人物ならあるいは…)

 

こまちは顔を俯いて頭のコンピューターをフル稼働させて、どうするか考えた。

考えた末、博打の作戦にでた。

 

「・・・・・ならば・・・・・」

「ン?」

 

顔を上げたとき、眼光がキッラン! と光ると、

 

「受け取ってみせろー!!」

 

シグナムとヴィーダをチャチャゼロに向けて投げた。

 

「ぎゃっぁぁああああああああ(うっわぁあああああああ)!!??」

 

いきなり200㌔の並のスピードで投げられてしまい、騎士二人はなすすべがなく、豪速球のボールになる。

その刹那、チャチャゼロはかぐやを上空に投げ捨てて、お父さんのキャッチボールのごとく、両手で騎士二人をキャッチする。

だが、

 

「オット?」

 

推進力が掛かった騎士二人分の威力と衝撃は、チャチャゼロの小さな体では抑えられず、反動で後ろのビルへと吹き飛んだ。ビルとビルの間を飛び、後ろのビルの屋上の着地するが止まらず、両足を地面を引きずってようやく止まった。

ちなみに、上空に投げ捨てられたかぐやは、空中浮遊するも、次第に重力に引っ張られ、

 

「ふっぁぁああああああああ(いやっー! おちる~)!!!???」

 

そのまま落下。口を塞がれながら、悲鳴を上げた。

地面との距離がビル十階を超えたとき、かぐやの目に、手を伸ばすこまちの姿が映った

 

「くううう~!」

 

こまちは必死に両手を伸ばし、かぐやを捕まえて抱きしめる。

 

「ぐっぉぉおおお!!」

 

地面すれすれのところで力いっぱいバーニアを上げて、縦にUターンの文字で、急上昇した。人に見られる中、ビルよりも高く飛んだ。

 

 

 

「大丈夫か01!?」

「フゴフゴゴ!!?」

「? …あ~、これを取れってか」

 

口をふさいでたボールを取った。

 

「ブッハ! …ふえ~ん~! こまち~!」

 

かぐやは泣いてこまちを強く抱きつく。

こまちはかぐやの頭を撫でる。

 

「あ~よしよし…。よく、がんばったな~」

 

他人から見た感じ、まるで、妹をあやす姉である。

それでも、かぐやははずかしさのあまりおお泣きする。

 

「こわかったよ~! はずかしかったよ~! お嫁にいけないよ~! マスタ~に責任とって奥さんにもらわないと~! え~ん~!」

「・・・・・・・・」

 

訂正。まだ、煩悩という名の恋敵は健在であった。

こまちは無言で、かぐやを縛っている縄の先を持って、かぐやを空中にぶら下げた。

 

「それだけ、煩悩全快なら、一度、卵みたいに煩悩が詰まった頭を高いところから落として地面に叩き付けて割ろうか、この堕天使?(怒)」

「きゃっぁーー!! やめてーこまちー! 今、体が縄で縛られているから武装転送が出来ないからー!! …ちょっ! 揺らさないでよ! 落っこちちゃう~! わわわわ!?!? 」

 

いまの状態では飛べないこと悲鳴を上げるかぐや。

武装神姫が武装を転送するさい、武装を粒子変換させて武器や防具の転送させているのだ。そのため、粒子変換させた防具を再構成させるのに、防具の装着部分に別の物質があると再構成の邪魔になり、もしくは防具と縄が分子サイズで混ざってしまう恐れがあるのだ。

一分ほど、ようやく許してもらい、こまちに縄を切ってもらい、かぐやは武装を転送させて、その場を空中浮遊する。

 

 

「エネルギーが少なくなった以上、恥をしのいで、帰還するぞ。ベルカの騎士との戦闘データと、少ないが三頭身の人形のデータがあれば、隊長も許してくるはずだ」

 

こまちのエネルギー残量が5分の1まで下がり、かぐやは新たに武装を転送した分のエネルギーが消費され残量が6分の1しかない。もはや、一刻の猶予がなかった。チャチャゼロに捕まって、組織の情報が漏れるより自爆する手段があるが、愛する隊長(マスター)のために、データだけは持っていく。自爆はそのあとだと、こまちは覚悟を決めた。

 

「ウン! はやく帰よっ! すぐ帰よっ! 今すぐに! もう、はずかしくて、ここにいるのはもういっや~!(赤面)」

 

かぐやは首を縦にブンブン振る。煩悩がある彼女でも羞恥プレイはさすがに堪えていた。

すぐさま、バーニア全快にして、海鳴町から離脱しようとしたそのとき、

 

パッチン!

 

ドッカン!

 

「あいったっ!?」

 

どこからか、指パッチが鳴ると、なぞの見えない壁に勢い良くぶつかった。

大の字で見えない壁に張り付き、ズルズルと落ちるかぐやを無視して、こまちは見えない壁を手で触った。触ったところがローマ字や漢字、数字などが、ランダムに配列された文様が浮かび上がる。

 

「これは、結界!? …もしや、あのとき結界を張った騎士がまた…?」

 

結界を壊されたことに気づき、仲間を連れ去られまいと、また、結界を張ったのだとこまちは推測する。

 

「…ちがう…」

 

顔を手で擦りながら、起き上がるかぐやがそれを否定した。

 

「この結界、騎士たちの…ベルカの術式じゃない。それも、管理局のミチルダの術式でも…。こんな複雑な結界、今までのデーターになかった!!」

「なんだとっ!? ならば、ブレイクポイントは…?」

「解析だけでも、一週間以上…それ以上か出来ないか…。それに、解析が出来たとしても、魔力以外の未知のエネルギーで構成されているから、アノ弾丸で壊せるどうか…」

 

こまちがいう『ブレイクポイント』とは魔力で構成された物体に、弱点になるに部分を専用の武装で突いて破壊することである。

そのため、過去の構造パターンをもとに、ポイントをみつけるため、データにない、構造パターンは一から解析しなくてはいけない。まだ、組織が持っているデータはすべて、魔力によって構成されたものでしかなく、複雑で、ブレイクポイントも一つだとは限らないもの、または、未知のエネルギーで構成された物体には結界破壊用の武装が通用するどうかなど、テストしてないため、どうなるかわからないのだ。

 

「いったい、誰が結界を…、…まさか…!」

 

こまちは足元の地上に目を移す。ビルの屋上に、騎士ふたりが膝を着いて座り、端っこのほうで、右手に一本の剣を肩に乗せて、驚いた表情をしたこまちたちをケケケケ、と笑って見上げていた。

 

 

 

「何時、俺ガ結界ガ張レネーテ、ログ二書イタ? コノ結界ハ御主人ガ昨日カラ設置済ミダカラ、…俺ト御主人ノ認証デ、何時デモ簡単ニ対象ヲ結界二入レルコトガ出来ルノサ」

 

一刀が張った結界は、はやてを狙うものだけを自動で閉じ込める設定されており、逆に一刀やチャチャゼロの操作で対象だけを閉じ込めないことができるのだ。

シャマルが結界を張ったとき、一刀の結界も発動したのだが、もしものときを考えてチャチャゼロが勝手に一時的に解除していた。

 

「な、なら…、結界を破壊したとき、なぜ、すぐに発動させなかったのだ…?」

「ソンナモン、決マッテンダロ?」

 

 

――希望ヲ目ノ前ニ与エテ、絶望ニ叩キ落サレタトキノ顔ガサイコーダカラジャネェカ

 

 

素敵な笑みでの最低の一言であった。

武装神姫は顔から大量の冷や汗を流し、うしろにいる騎士たちは顔を青くしてドン引きでチャチャゼロからさがる。

 

「マダ、遊ビ足リネーケド、オマエラツマンネーカラ、コイツデ極楽ニ送ッテヤルヨ…。俺ノゴ機嫌デ、コノ試合、早クモ終了デスネ」

 

剣を両手に持って、天にかざすと、刀身に魔力が集まって、黄金に光る剣を作る。

人の手でなく、星の光で鍛え上げられた聖剣の輝き。暗い夜の空と地上を黄金の光が照らし、いままで見たことのない魔力量と神々しさに後ろにいる騎士は、ただ、唖然と口をあけた。

 

「ねぇ、こまち…」

「…なんだ…」

「こまちのこと悪魔って言ってごめんなさい…。私が言ったモノがどういうものなのか、今、分かったよ…」

「気にするな…。私も、上には上が居ると実感したところさ…」

 

空に居る武装神姫は人外(人形だけど)な魔力量と、剣の危険さに呆然とする。

チャチャゼロは腰を低くし、輝き続けるその聖剣を後ろ下に下げて下段の構えを取る。

 

「エックス(約束された)―――」

 

聖剣をゆっくりと上段へ移動させると、輝きは天を突くほどまでに膨れ上がり、黄金の一柱になる。そして、

 

「「あいつ(あのこ)が、一番、最悪最低の…―――」」

 

天を貫く黄金の柱は、無慈悲に可憐なる神姫の頭上へと・・・・・

 

「―――カリバー(勝利の剣)ァァアアアアアアア!!!」

 

振り下ろされた。

 

「「悪魔だーー!!!」」

 

二人の姫は絶叫して、黄金の光へと包まれた。

 

 

 

つづく

 


 
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