No.669924

リリカル東方恋姫 第九話 『神は死んだっていうが、実際、神にはろくなのがいないからべつに死んでも構わないでしょう』

一刀「作者ーーっ!! 三ヶ月も更新をすっぽかしやがってー! お仕置きとして崖下たちで重々詰めになったサウナにぶち込んでやるー!」

作者「ぎゃぁあああー!? ごめんなさーい!」

はやて「はははっ、作者ご愁傷さま♪ それではリリカル東方恋姫始まります♪」

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2014-03-11 18:51:05 投稿 / 全7ページ    総閲覧数:2163   閲覧ユーザー数:2073

「えっ、ぇ、ぇ?」

 

八神 はやては現在進行中の状況に混乱していた。

先ほどまでトラックに轢かれそうになり、反射的にに目を閉じたが痛みなど何もおきず、おびえながらも目をゆっくり開けると、自分は空の空中におり、テレビとかでみる魔方陣の鎮座していたのだ。白銀に光る三角形の幾何学文様の魔方陣に驚き、辺りを見渡す。

うしろに車椅子とチャチャゼロが横たわっていた。

 

「チャチャゼロ!?」

 

はやては両腕を使ってチャチャゼロのほうへ往復前進する。動けない足を引きずりながらもチャチャゼロを拾う。チャチャゼロにはコレといった外傷はない。

 

「怪我なくって、よかった~」

 

どこも壊れてないこと安心しチャチャゼロを抱きしめる。そのとき、うしろから黒い光が指し、うしろを振り向くと球体の形で黒い光を放つ本『闇の書』が上から降りてきた。

闇の書はドクンドクンっと、心臓の鼓動のように振動して巻きつけられた鎖を揺らした。

はやては呆然と闇の書を見るが、身の危険を感じだのかチャチャゼロを強く抱き、一瞬後ろに下がる。それでも闇の書は彼女に近づき、

 

 

バッキン!!

 

 

闇の書に巻かれていた鎖がいっきにヒビが入り、本が開いたとたんにあっけなくに砕け散った。

はやては独りでにバラバラとページをめくる闇の書に目を疑うように口をあけて驚愕した。心臓の鼓動が早くなり、肩を震えてたが闇の書に目を背けなかった。

闇の書は機械音なドイツ語で、

 

『封印を解除します』

 

「へっ!?」

 

はやては悲鳴に近い声で驚くと、闇の書はページをバッタンっと強く閉じて、はやての正面まで近づく。ちょうど本の表紙が彼女と向き合う形で。

はやては、今の状況といままで大切にしていた本が怪しく紫色で光ることに恐怖心でいっばいで硬直するほどおびえていた。

だが、闇の書はおびえる少女に構わず、無機質な冷いドイツ語で発した。

 

『起動』

 

金色の剣の十字架の表紙が紫色に発光した。

それは闇を表したように鈍い黒で妖しい光であった。

 

 

 

ところ変わって、海鳴町からはなれた廃棄工場。

この廃棄工場は外国系の男性たちが根城にしていた。男たちはただの一般人ではなかった。アメリカでワイロや麻薬、人身売買や殺害など裏の家業に身を潜める外道なマフィアである。そのマフィアのボスがどんなうわさを聞きつけたのかしらないが闇の書とその主を奪おうと、闇の書が覚醒する日まで半年ほど町に潜伏していた。

そして、実が熟した今夜、闇の書とその主であるはやてを誘拐しようと決行しようとした。

マフィアたちはかなりの武力を持ってきており、多くの重火器や戦車(どうやって密輸したかわ不明)などを持ち込んで、もはや軍隊であった。マフィアのボスや部下たちは闇の書の力を得たのも当然だと確信していた。

その、自慢できる軍隊は今や・・・・・、

 

「うわぁあああああああああ!! 来るなーっ!!」

 

バン! バン!

 

「・・・・・・」

 

男の顔面に正拳突き!

 

「ぐっは!?」

 

一人の女性に壊滅状態まで追い込まれていた。

男性たちの叫び声と銃声の音が工場内で響き渡る。叫び声というより悲鳴をあげるマフィアたちは一人の女性に向けて発砲するも、女性は長いライトグリーンの長髪をなびかせ、前進しながら飛んでくる弾丸をよける。

 

「く、くそ!? 何なんだアレは!? 化け物か!?」

 

マフィアのボスが混乱して叫ぶ(注:マフィアたちの言葉はすべて英語だと覚えてください)。軍隊といえるほどの部下たちを半分ほど失ったのだ。闇の書を入手しようと出撃を開始した瞬間、突如として屋根から一人の女性落ちてきた。それもメイド服を着たコスプレとみておかしな相手。だが、そんな馬鹿が一人で武装されて部下たちを壊滅状態にされている現状で頭がおかしくなりかけた。だが、長年手のつけられない部下たちを従えてきたボスだけはある。ボスはすぐさま部下たちに怒鳴り声で指揮をする。

 

「う、撃ってー! 囲んで殺すんだ!! 蜂の巣にしちまえー!!」

 

ボスの命令に部下たちは機関銃で撃つも、女性にはすばやく動き銃弾の雨をよける。よけた瞬間、男たちの視界から女性の姿が消えた。

 

「なっ!? どこへ――!?」

 

部下の一人が視線を下にやると、光がない緑色の瞳と目が合った。一瞬のうちに懐を入られた男は一瞬意識が止まり、体が硬直した。女性は部下の顔を鷲掴みにして、地面に叩きつけた。

 

「ブヘッツ!?」

 

地面にキスさせると、すぐさま横にいた男性に回し蹴りをする。

 

「グッは!?」

 

男性は蹴り飛ばされたが後ろから、マフィアの手下たちが一斉に襲い掛かった

 

「「「「「ハァァアアアアアア!!」」」」

 

四人の男たちは女性を囲み、ナイフで殺しに掛かる。

女性は両手を地面に着き、股を180℃開いて回転テーブルのように美脚を回して男たちを蹴った。蹴られた男たちは壁に激突して気を失った。

女性はそのままジャンプして空中で体制を整えて地面に着地した。

彼女は人間ではない、部下たちはボスが言った化け物の単語が浮かんだ。

 

「嘘だろう…これでもう三十人はやられたぞ…」

「ボ、ボス! 逃げたほうが…」

「バカ野郎! ここまで来て引き下がれるか!! オイ! アレを出せ!!」

 

ボスの掛け声にあわせ、壁を破いて何かが飛び出した。

それはキャタピラで中太の柱のような砲身がある戦車一台と二足歩行でメェ~と牛とセミの鳴き声が混じった声で鳴く全長5メートルの高さを持つ戦車二台の計三台であった。

 

「…アメリカのM1エイブラムスに無人機兵器の月光ですか…」

 

やっかいなモノを持って来ましたね、女性は冷静に相手の武装を解析する。

ボスは発狂したかのように女性に指を指した。

 

「はっははははは! ミンチになっちまえな!!」

 

二台の月光は奇妙な泣き声で壁をのぼり、女性に向けて機関銃で遠距離攻撃をはじめ、M1はそのまま動かず女性を狙おうとした。だが、女性は機関銃に撃たれ前に前方のM1に向かって走り始めた。

 

「あの女、バカ正直にこっちに向かってきやがる!?」

「舐めやがって…死ねー!!」

 

M1の操縦士が驚き、砲撃主は砲弾を装填し、狙いつけて連続で撃った。

砲弾は女性に直撃すると思いきや、女性は地面を強く蹴って前進しながら何発も砲弾を回避した。

 

「あ、当たらないだと~!?」

「やばい!? ハッチを閉めろ」

 

強固な装甲に覆っている戦車でも、扉から入られたらただの袋のねずみ。すぐさまハッチを閉じて一安心――とはいえなかった。

 

「それで身を守ったつもりですか?」

 

女性は地面をすべって戦車の下にもぐりこんだ。戦車はぐらぐらと揺れ、地面から離れた。戦車の下で女性が数トンもある戦車を持ち上げていた。その様子をマフィアたちは唖然する。

女性は戦車を数人固まっているマフィアの部下たちの上に放り投げた。

 

「うっわ!? ちょっっとぉぉぉおお!」

 

戦車が自分の地点に落下していることに気づき、手下たちはその場を離れ、戦車は逆さまに地面に墜落した。

 

「モウ~」

 

月光が牛の低い声を出しながら女性に向かって突進してきた。女性はとっさにガードするも後ろにさがられてしまう。その隙にもう一体の月光が高速で後ろに回りこみ伸縮できる人口筋肉の足で女性を蹴った。

 

「っく!」

 

蹴り上げられたが、体を回転して体勢を整えて地面に着地した。

月光はすぐさまワイヤー状のアーム『マニピュレーター』で女性を捕まえた。月光に搭載さてれいるコンピューターはこのまま引き倒そう女性を引っ張るが、女性は逆に月光を引っ張り上げ、一本釣りのように空中に引っ張り上げてそのまま地面に叩きつけた。

 

「ハッ! ハッ! ハァッ!!」

「モウ~~」

 

そのまま、月光を何度も引っ張り上げては地面に叩き付け、最後にもう一体の月光に投げつけた。

月光は悲鳴?をあげるも、むなしく、もう一体の月光にぶつかった。女性は二機の月光が起き上がる前に月光の懐に入りこみ、右手を手刀で構えると、右腕が変形し長刀ほどの大振りの剣になった。女性の目には月光を切るための線が見えていた。線に沿って刃を走らす。

 

「はぁぁあああああああああああ!」

 

一閃、二閃、三閃、四閃…、高速で何度も硬い装甲をみじん切り、月光の胴体の足を細切れに両断した。バラバラにされた足は白い液体だ飛び散り、女性の髪と刃を白くぬらした。女性は無表情で緑の瞳で不気味に残りのエモノをロックする。その姿はまさに殺人マシーンであった。

その瞳を見た瞬間、マフィアのボスは背筋がゾッとした。

 

「た、助けてくれー!?」

「こら、まってぃ!」

 

部下たちは恐怖に耐え切れず、ボスを残して逃げていった。置いていかれたボスは手をのばして助けを呼ぶがだれも見向きもせず、力なく両膝を地面につく。

女性は右腕の剣をボスの首に置いた。

 

「ッヒ!? 命だけは助けてくれ!!」

「現在の状況であなたの命はとりません。なぜなら、あなたには二つほど質問しなくれはいけませんので…ただし、回答を黙秘するのならば…」

 

 刃を首の肉に当てる。肌から金属の冷たさで寒気さを感じながら、体中の血の気かが引き下がり、ボスの顔が蒼白した。

 

「わ、わかった! 質問に答えます! だから殺さないで~!?」

「…よろしい。では一つ目の質問です。あなたはなぜ闇の書とその所有者を狙うのです?たかが本一冊のためにこれだけの重装備…、いった、なにが目的なのですか?」

「…え、永遠の命だ…。闇の書っていう本を手に入れいれ永不老不死になれるってうわさを聞いてな、この日本に来たんだ。それにこここにある装備だって、その本を守っている騎士っていうやつらと相手をするために用意したんだ」

「そんな眉唾の話を聞いて信じるとは…、脳外科医にいって頭の中を調べてはいかがですか?」

「そりゃぁ、信じられない話だよ。俺だって最初は信じていなかったし…。だけどよ、うわさの流したていう白のフードを被った青年くらいの奴が俺の前に会われて、自分は魔法使いだっていって、俺に魔法をみせてくれたんだ。最初インチキだと思ったんだが、そいつは魔法で俺の手を石に変えたんだ。あのときは心臓が止まりそうになったわ。その後、元に戻してくれたんだな…。それで、魔法があるんだから永遠の命を与える魔法の本も存在するんだと、そのうわさを信じて、はるばるこんな小国まで来たんだ。それなのに~! こんな変な女にやられるなんて~。ちくしょう!」

 

歯を食いしばって悔しがるボスに、女性は刃に力をこめた。刃が肌に食い込み、肌から赤い血が刃に少し垂れた。

 

「ひっぇええええ!? 口が過ぎましたー!?」

「…今度、悪質な発言したら即座に斬首しますからそのつもりで」

 

無表情だが、声の質でボスの態度に怒っていることが伝わる。女性は質問を続ける。

 

「では、二つ目です。あの月光はどこで手に入れたのですか? M1ならともかく月光はまだ公式に発表されていない機体です。あなたのような子悪党では入手は不可能なはずです」

 

女性はみじん切りにされた月光に指を指す。

月光はある二足歩行型の兵器と同時に開発された機体で、今年の秋に世界で公式に発表さるため、現在は量産ラインはまだ作動していない。そのため、現在所持しているとすれば月光を開発した研究機関か試作品として保管している軍隊など、世界で数機しか存在しない。その数少ない月光をマフィアが、それも二機所持しているなど不自然であった。

 

「あ、あれは拾い物だ。たしか…この国に入る一瞬間ほど前だったな…」

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

一週間まえ、アメリカにあるマフィアのアジト。

ボスは武器庫になっている部屋で武器を磨いていた。

 

「よ~し、これだけの武器があれば、不老不死の本が俺のものに…ガッハハハハハハ」

「ボス! 大変です!?」

 

突然、出入り口の扉から部下が入ってきた。

 

「うわ!? 急に出てくるなよ。びっくりしたじゃねーか」

「すいません。ですが、一大事なんですよ。庭にデッカイへんなものが!」

「へんなもの?」

 

ボスは部下に連れられ庭に出た。そこには・・・・、

 

「…なんじゃこりゃ…」

「モゥ~」

 

ボスの目の前に、二機の月光が庭の中で徘徊していた。

 

「牛ですかね?」

「バカっか! こんな牛がいるかっての!」

 

ボスは怒鳴って、部下の頭を叩いた。

 

「痛って!? すいません。あと、あれと一緒にこんなものが落ちていました」

 

部下は分厚い本をボスに渡した。

 

「え~なになに…月光の取扱書?」

 

ボスは本を読み始めた。

 

「ふむふむ。どうやらあれは最新式の自動兵器らしいな。ちょうどいい、戦車と一緒に積んでおけ」

「え!? いいんですか、そんなことして?」

「いいだよ。所有者の名前なんか書いてねーし。それに俺の庭に転がっているから、法律上、あれは俺のもんだしな。これで、ますます不老不死が手に入るってもんだ…ガッハハ」

「モゥ~」

 

ボスは歓喜に満ちて笑いだし、月光は何も知らぬまま一声鳴くのであった。

 

 

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「つまり、あたなたは自宅の庭になぜか置かれていた自動兵器を勝手に持ち込んで、勝手に使用したということですか…(怒)」

「ハイ。そうです。ですから、首絞めないで(青)」

 

マフィアのボスの回想を聞いて、女性は呆れ、剣になった右腕をもとに戻して、裸絞でボスの首を締めた。

ギッギブ、苦しそうに顔を青くしてやめるようにいうが女性は聞かず、腕に力を入れる。グッキ! 、とボスの首から鈍い音が鳴り、女性は腕を緩めるとボスは地面に倒れこむ。ピクピクっと痙攣し、白目で口から泡を出して気絶していた。

 

「・・・・・・・・」

 

女性は顔色を変えず足元にある物体を数秒ほど見下ろすと、すぐさま目を逸らして次の行動に移した。手を空中にかざして横にスライドすると、ディスプレイが出現した。ディスプレイの画面には、藍色のジャケットと着てフードを深く被り、サングラスを掛けたレックスが映る。

 

「レックス様。たった今、廃棄工場に潜伏していたマフィアを撃退しました」

『ご苦労…。それでそっちでなにか情報をつかめたか? 茶々丸』

 

 レックスの質問に茶々丸は無表情で頷く。

 

「ハイ。マフィアもまた闇の書を狙った一員でした。それからマフィアの親玉は闇の書のうわさを流している方と面識があったようです。また、彼に無名の者から月光を送った者がおり、その者は例の組織の人間だと推測されます」

『なるほど。…月光については思い当たるところがあるから、のちのち分かるとして問題は闇の書のうわさを広めているヤツだな…』

「レックス様の後ろで伸びている方々もですか?」

『あぁ』

 

 

 

 

廃棄工場の反対方向にある山の奥。

その森の中、海鳴町を見渡せる崖の上にレックスがいた。彼の後ろには血まみれで、大火傷の傷を負った人たちが地面や木の枝の上で気絶していた。彼らの服装は魔法使いのような格好で、そばに機械仕掛けの杖が壊れて地面に散らばっていた。

 

「こいつらも白のフードを被った青年らしきやつから闇の書の話を聞いたらしい。こいつらの場合、アレ(闇の書)を手に入れれば、世界を支配できるとか…」

『真実としては否定はできませんね。闇の書を完成させれば大いなる力が入りますし。…私の足元で泡を吹いてる物体は不老不死というので釣られていました。ですが、魔導師だけでなく、魔法とは無縁のマフィアや裏の組織まで闇の書の力を教えるなど…、メリットどころかデリメットが見えません。彼らを炊きつけていったい何が目的なのでしょうか、その方は?』

 

魔法の本に関すること魔法使いにあり。闇の書の情報を売るにしては、魔法を知らない一般人に売るのではなく、その専門家である魔法使い、つまり魔導師に売るほうが筋が通る。彼らは闇の書の情報を聞けば、その力に信用性が増す。しかし、魔法を知らない者が聞いても信用してはくれない。また、闇の書の使用方法や条件など、専門家である魔導師なら調べ上げることができ、闇の書を扱いを熟知すること出来るが、専門家ではない者達が関わっても闇の書を扱うことなど不可能である。

それなのに魔導師だけでなくマフィアや軍など物騒な輩に魔法という未知なる力を教える者の行動に茶々丸は疑問に思った。

 

「さぁーな。それは本人に聞くしかないさ。ただ、そいつは只者ではないのはたしかだ」

『只者ではないというのは?』

「やっこさんはワザと情報を流して、こちらをかく乱させているんだろう。ただでさえ、魔導師まで絡んできてるのにそこに何も知らない馬鹿が割り込んで来たんだ。そのおかげで騒ぎが大きくなり俺たちがその被害を抑えるハメになる。そのうちに闇の書に接触するつもりだろう。人の心理を利用して、魚不の利で、闇の書を奪うチャンスが伺いながら、自分は高みの見物ってところだろうな」

『その考えだと、相手は私たちの存在に気づいての行動なのでしょうか? 第一、その作戦では管理局にまで気づかれてしまう可能性があります。例え、闇の書の情報を流してる人物が例の組織の一員なら、組織はなおさら管理局相手に危険を犯してまでこんな回りくどいことをするとは、とうてい思いませんが?』

「ほぅ、お前もだいぶ人間と組織について知ってきたなー。まぁ、その人物があの組織と繋がっている話については置いとくとして。今、問題なのは実際にそいつの話に乗せられた馬鹿(マフィアなど)とアホ(魔導師)が動いたことだ。やつらがお互い争えば間違えなく海鳴町が火の海になるのはあきらかだ」

 

頭を抱えて、前方の景色を眺めるレックス。色鮮やかに輝く照明が町や大地を照らす。その反面、満開の星ぼしが輝くはずの空は、照明の光によって星の光が消え、紫色の雲が漆黒の夜空の下、悠々と流れていた。

もし、この町が戦場になれば、町を照らしていた照明が消え、その代わり星の光が輝きを取り戻すだろう。だが、それは真っ赤に燃える業火の色に染まった夜空になるだけのはなしだ。

 

「…闇の書の争奪戦はもう始まった。もう、これは俺たちだろうが管理局だろうがこの戦争はだれにも止められない」

『…文字通り、賽は投げられた…ということでしょうか…。ですがまだ希望がありますよレックス様。戦争を止めることはできませんが、終結することはできます』

「俺たちも争奪戦の参加者だってことだろう」

 

その言葉に茶々丸はうなずく。レックスは空を見上げ、サングラスに町の光に消えない輝く星が写る。そのとき、茶々丸との通信中に、別のディスプレイが現れた。

 

『レックス! 茶々丸!』

 

画面には宇崎の姿が映っていた。彼の後ろには白浜と海が見える。いま、彼がいる場所は海鳴町の海岸沿いである。三人はそれぞれ、海、山、町と闇の書を狙うものが町に侵入しないように待機していた。ちなみに宇崎はレックスたちと違って戦闘に参加できないため、今日つれてきた仲間の指揮をしていた。

 

「宇崎か、そんなに慌ててどうした?」

『実は沖のほうで潜水していた複数の機体を彼女たちと協力者たちで迎撃していたんだが、そいつらは囮で、本命は空からの進行だったんだ。今さっき、一個小隊ほど、町に侵入した』

「なんだと…!?」

『すまないが二人とも、闇の書の所有者優先で警護してくれ。あとの処理は俺たちがしておく』

『了解しました』

「めんどくさいが、しょうがないか」

 

レックスと茶々丸ははやてのもとに向かうことを承諾する。

 

『…それじゃ、健闘を祈――…ぐっは!?』

『拓也様!?』

 

通信を切ろうとした突如、宇崎の後ろで轟音が鳴り、砂が爆発して、映像が乱れる。映像が乱れる中、一瞬だけ金属の柱のような足が写った。

茶々丸は突然の事態に驚き、宇崎の安否が不安でオロオロと動き回る。

そんな茶々丸にレックスは冷静に彼女を落ち着かせようとした。

 

「おちつけ茶々丸。あいつはきっと無事だ」

『ですが…』

「あいつはこんなところで死ぬ玉じゃないのは知ってるだろ。それに今、俺たちがやるべきは宇崎の心配じゃなく、闇の書の護衛だ。気を引き締めろ」

『レックス様…わかりました』

 

レックスの言葉で落ち着いた茶々丸は近くで高い建物に登りた。そこから町全体を見渡巣ことができた。茶々丸はアンテナ状の耳からセンサーなどを展開し、探索モードになる。茶々丸の目には現在の海鳴町の様子が情報が見える。その中からはやてと闇の書を見つけた。

 

『闇の書とその所有者の姿を確認。敵と接触はまだの様子。数メートルに飛行中の敵機体をを感知。敵機体の速度から所有者の接触まで約7分43、3秒です』

「ここからだと、間に合わない…。茶々丸、悪いが先にお嬢ちゃんを保護してくれないか?」

 

レックスがいる山奥からはやてがいる場所まで、走っても30分ほどかかる。

敵がはやてを拉致する恐れがあるため、比較的距離が近い茶々丸にはやての保護を頼んだ。

茶々丸は周囲の情報を収集するためセンサーを広げた。センサーになにかが引っかかった。

 

『闇の書の所有者から数メートルほど離れた地点に結界らしきものを感知しました』

「結界? 管理局のものか? それとも、この前、町の中ドンパッチやった白の魔導師の嬢ちゃんのか…?」

『分析の結果、管理局が使うミッド式でもベルカ式でもありません。魔力パターンからみてあの子でありません。この魔力バターンは…一刀様のものです』

「あいつの…? 結界内の様子は見れるか?」

『私たちが知ってる術式とは違いますので解析するまで少々お待ちを…』

 

茶々丸は結界の構造を解析し、中の様子を見ようとするが、初めてみる術式と複雑な構成組織で組んでいるため、なかなか、解析ができない。

 

(私から見ても、結界の構成形式は芸術と言っていいほどすばらしいですね…。これほどの術式を使う一刀様はいったい何者なのでしょうか?)

 

一刀の結界を評価してほめていると、覗き穴ほどの範囲だけ覗けることが可能になった。茶々丸は結界の中を覗いた瞬間、無表情だった顔が驚愕した。

 

『あれは!?』

 

 

 

 

 

茶々丸が一刀の結界を見つける前にさかのぼる。

一刀はサイボーグの傭兵たちとの一戦のあと、電灯が暗い道を照らす中、はやての元へ向かって海鳴町を走っていた。

 

「ハァ~ まさか、闇の書がこんなにも早く目覚めるなんて…。あの、インチキ占い師、聞いた情報と違うじゃない。おかげで私が恥かいちゃったわ」

 

真紅は闇の書の覚醒は今夜の12時ジャストだと管路から聞かされていたのだが、4時間も早く覚醒したことに、あいまいな情報を教えた管路に八つ当たりをする。

 

「真紅、世の中そんなうまく事が運ぶわけないんだ。それに管路の情報だって、ぶっちゃけ、ほとんど占いで調べているから信用性が低いしさ」

 

一刀は真紅をなだめさせるが、管路をかばうきはない。

管路との長年の付き合いの中、彼女からの情報は裏で調べることもあるがたいていは占いで調べている。一刀は占いを信じないほうである。なにせ、管路は天の御使いの占いを広めたあげく、欠陥品だったからと、彼を災いだとして捨てようしたのだ。そのことを今でも管路をすこし妬んでいた。

 

――えっ!? まさか、貴方を災いの源なんてこといって自害させようしたこと、まだ根に持ってるの…;? あ、あれは仕方がなかったのよ! なんせ、はじまりの外史以来のイレギュラーだったから、私の占いの信用がさが―じゃなくて、予想を超えちゃって、外史が保てそうになかったから、めんどk―早めに終焉させて別の外史の種を蒔くためあえて貴方を死んでほしかっただけなのよ! かんちゃんは悪くないもん!

 

「…一刀、なにか聞こえなかった?」

「俺のログにはないも無い…が、管路に対する殺意が『ゆっくりしていってねっ♪』てほど芽生えてきた。この殺意、О☆HA☆NA☆SIでは収まることは無いだろう…」

 

ゴゴゴゴゴゴゴッ、と迫力あるオーラが一刀の後ろから立ち上がってくる。

再会することがあれば、フラワーマスター直伝の弾幕でピッチュさせる、と誓いを立てる一刀。そのとき、直感からなにかを告げ、一刀は走るのを止めた。

 

「・・・・・・・」

「どうしたの?」

「…なにか来る…」

 

体勢を整え、腰にかけた一騎当千の柄を添える一刀。

周囲の空気が張り詰める中、真紅も動物的直感が周囲の気配に気づいた。

 

(…なにこれ? まるで無数のなにかが地面に這い蹲って私たち向かってきてる…? それも、私の直感がひとつだけでも危険だって訴えてるっ!?)

 

人でも動物でもない、気配に真紅は危険性を感じ周囲を警戒する。

不可解な現象は途方もなく起きた。

地面から黒紫の色でが台風のように集まって体を構成し、巨大な前足の無い白いトカゲが16体出現、いや創造させた。

巨大なトカゲを見た瞬間、一刀ははやてから読ませてくれた本を思い出した。

 

 

――化け物たちは異質な力で人や文明を食らい尽くし滅ぼしました。

 

――それでも彼らは食らい続け、ついには異界の世界までも食らい尽くそうとしました。

 

――人々は恐怖し、禁断に踏みこえた人に天罰を与えにきた神の化身として崇めそして畏怖しました。

 

 

「アッハハハハ…。確かに、人やら獣やら文明やら、なんでも食うな、この神様は。それも、いつも空腹で気性の荒いやつ…」

 

一刀は余裕の顔で苦笑して腰にかけた一騎当千をゆっくり抜く。真紅は周りに被害が出ないように結界を張った。

周囲の空間が変わり、結界内には一般人の姿が消えた。

神の化身といわれし化け物は、周囲の空間が変わったことに気にせず、目の前の食い物に興味を示す。一刀は自分だけに興味をもたれることに、好奇心がくすぐった。これでも、研究者の気を持っていた理由でもある。なにせ、自分が知っている生物とは違っていたからだ。

 

「ほんと、ここが外史だって思い知らされるよ…。…アラガミ、『オウガテイル』…」

 

目の前にいる神の名を口にする一刀。

この世界に来る前、一刀はあらゆる物質を捕食するなぞ生物がいる世界にいったことがあった。その生物は荒ぶる神と呼んで『アラガミ』。その生物は物質をなんでも捕喰するという特徴をもち、捕食したモノの特性を取り込み進化するという超生物である。その正体は一固体生物ではく『オラクル細胞』という単細胞生物の集合体である。

そのアラガミの仲間である、恐竜のような体格で腕がなく、頭部が頭蓋骨のようなモノで覆われ、鬼の頭のような巨大な尾を持つ白色の二足歩行するアラガミ『オウガテイル』。だが、通常、アラガミは小型、中型、大型とサイズがあり、オウガテイルは小型種で推定小型バスほどの大きさなのだが、目の前にいるのは全長10メートル以上ありそうな、家をまたぐことが出来る大型種顔負けの大きさであった。

 

「ガッォォォォォォオオオオオオオ!!!」

 

オウガテイルは足元にいる一刀を見下ろした。その瞳には獲物を狙う獣で口をグルグルと唸っていた。

一般人なら、とっくに失神して食べられるだけだが、一刀は余裕の表情で冷静であった。

一刀にとって弱肉強食の理は日常茶飯事である。

 

「サイズがでかくなろうが、中身が変わろうが、アラガミはアラガミ。カンタンに俺を食えると思うなよ。俺は怪獣バスターの資格を持っているので、光の巨人にならなくってもタイマンで負けたことはないし。星海坊主さんのお仕事を手伝ったことがあるのであんまり反応がなかった」

 

常識(正史)と非常識(外史)の違いに納得する一刀。むしろ、懐かしそうにこの状況を楽しんでいるようにニコニコと笑っていた。

 

「俺の知ってる神様なのか、ここで白黒(調査研究)つけたいのが錬金術の性(探究心)だけど…」

 

下段の構えから足を広げ、両手にもった一騎当千を地面すれすれまで下げ、飛びかかれるように腰を低くする。そのとき、笑顔が消え、真剣な顔つきになる。

 

「はやて(ついでにチャチャゼロ)が心配なので、おまえらと遊んでいる暇は無い。残念ならが腹ペコ神様は此処でカカカカッとご退場してもらいます(確定)」

「ガォォオオオオオオオオオ!!!」×16

 

一刀がジャンプしたのを合図に、オウガテイルは轟音と思えるほどの声を高く吼え、16体同時にに一刀に襲い掛かった。

 

「ハァアアアアア!!!」

 

一刀も負けずと声を上げて木刀を振るう。黒い夜空の下、白い衣を纏わせ鬼神の気迫で神を威嚇し、豪快ならが修錬された剣筋で神を断ち斬り、その剣に純粋なる信念と優しさと殺意を篭めて神を狩る姿は、夜叉そのものであった。

 

 

 

 

はやては呆然と目の前の本を見つめていた。

先ほどまであった恐怖心もない。むしろ、何もなかったように互いの間に静寂な静けさが漂っていた。

静寂なる空間は彼女の騎士たちにより、凜としった空間へと変わった。

 

「……闇の書の起動を確認しました」

 

はやての横にグレーのインナー?を着たピンクのポニーテールの女性がはやてと同じ三角形の魔方陣の上で、騎士が忠誠を誓うように片膝をついて座っていた。

はやては慌てふためくなか、騎士たちは語る。

 

「われら、闇の書の蒐集を行い、主を守る守護騎士にてございます」

「夜天の主の元に集いし雲」

「……ヴォルケンリッター」

 

続金髪の女性、犬耳?が生えた筋肉質な男性、赤毛の少女がはやてを囲んで最初の女性のように座って言うと、四人はそのまま沈黙をする。騎士たちは主であるはやての反応を待っているのだろうがいっこうに彼女からの反応がない。

そのうち、赤い髪の少女がなかなか反応のないことを不審に思い、ちらりと、目の前にいるはやてをのぞいた。

 

≪……ん? なあ、ちょっと≫

≪ヴィータちゃん、しっ!静かにして≫

≪けどさあ≫

≪黙っていろ。主の前での無礼は―≫

 

女性二人がいうが、赤毛の少女ははやてに近づいた。

 

≪……いや、無礼も何もさあ……こいつ、気絶してねえ?≫

「「「……え?」」」

 その少女の言葉に驚き、三人ははやてのほうを見ると・・・・・、

 

「……きゅ~」

 

急な展開に脳の処理能力が追いつけず、文字どおり、目を回して気を失っているはやてがいた。

ちなみに、彼女に抱かれたままのチャチャゼロはというと、

 

(俺、イツマデコーシテイレバイインダ?)

 

ア~暇ダー、と今の状況下で退屈していた。

 

 

 

 

日本のどこかにある施設というより秘密基地。

情報が大量に映る大型モニターで薄暗い部屋を照らし、スタッフたちが情報をまとめ解析していた。ここは司令室。中央の指令席で、片めがねで西洋貴族のグルグルの髪型をした老人が座っていた。彼の名は海道 義光。はやての恩人で祖父のような人であり、海道財閥の会長で同時に日本の先進開発大臣でもある大物人であった。しかし、それは表の顔でしかない。

 

「…とうとう、この日が来たか。なぁ、八神君」

 

「ハイ。海道先生…」

 

海道の後ろで立っていたボサボサの赤髪の男性が返事をする。はやての父の弟であり、叔父に当たる人物で名は八神 英二。警察庁でそれなりの地位があり、海道の右腕でもある存在であった。

二人は目の前に大型モニターを見る。そこには目を回して気絶しているはやてと困惑している守護騎士たちが映っていた。

 

「ホホホホ…、こんな状況下で小説のように目を回して気絶とは…君の姪は将来大物になるだろうな」

「あ、は~、お恥ずかしい限りです」

 

孫の顔をみる祖父のように微笑する海道に、しかめっつらではずかいそうになる英二。

海道は微笑をやめ、真剣な顔つきになる。

 

「しかし、10歳も満たないはやて君が、まさか世界の命運を背負っているとは、運命はひどいことをする…」

 

その言葉に英二は顔を伏せると、身を乗り出す。

 

「海道先生。やはり、このようなやり方は私は反対です! はやてには私から説明して、先生に協力してくれるよう頼んで――」

「八神君」

 

熱く語る英二に海道は鶴の一声で冷静になる。

 

「我々は地球と人類の代表として戦っているが、その本質はテロと同じなのだよ。そのテロ組織にはやて君を巻き込ませようと言うのかね、君は?」

「そ、それは…」

「我らが背負う業は重い。はやて君には我々に利用された被害者として協力してもらいたいのだよ。そのほうが彼女に責任は負わせないだろうし」

「しかし、はやてが管理局の偽善にだまされ、やつらの仲間になれば、すべては水の泡です!」

「そうかね? どちらにせよ、はやて君は世界に、いや、管理局にこう言われるだろう…災厄の魔女だとね」

「!?」

 

厄災の魔女という言葉に英二は一瞬微動し顔をしかめた。海道はさらに英二に言葉で攻める。

 

「闇の書…いや、夜天の書は神話に出てくる絶望と希望が詰まったパンドラの箱。その箱を開けたのはパンドラという女性…。そして、現在のパンドラは君の姪なのだよ」

「海道総司令。まもなく、『白騎馬』部隊、『黒阿修羅』部隊が闇の書の主とその守護騎士に接触します」

 

部下の一人が組織の部隊の進行状況を報告した。

二人はモニターに映るはやてに目を移す

英二は身を引き締め、海道は椅子から立ち上がりモニターに映ったはやてを見つめた。

 

「はやて君…。君がパンドラなら世界は管理局の魔導師どもは君を災厄の魔女として憎むだろう。しかし、今の地球には…人類には絶望と希望が必要なのだ」

 

この世界は箱庭

 

箱庭に生きる人は無限に広がる自由を奪われ、不自由がない環境で生活する動物

 

夢もなく、欲もなく、感情もなく、明日を想像することもない

 

同じことを繰り返す機械

 

人は箱の中で一生を生きるしかない

 

だから、きっかけが必要だ

 

絶望という環境が獣の生存本能を呼び起こし

 

絶望という狂気が人の技術を高めさせ

 

絶望という困難が願いという欲を持てる

 

そして、

 

絶望の先に希望というゴールがあるのなら、人は世界を壁をぶち破り

 

希望を手に入れようと、新たな世界へ足を踏み入る

 

それが、人が持っていたはずの法則

 

輪廻の環という名の真理

 

「君は人類に新たなフロンティアへ導く女神となるだろう。だから、どうか、我ら…イノベータに天の加護を与えてくれ」

 

右手を伸ばし、逆手で掴むようにこぶしを握る。

 

「我が夢、我が野望、…世界支配のために…」

 

その目に映るのは、己の野心であった。

 

侵略者(革新者たちのエゴ)による世界支配が静かに始動された。

 

 

 

 

「なぁ~ こいつどうする?」

 

あらたな主であるはやてが気絶して途方にくれ、赤毛の少女は仲間に相談する。

 

「この寒空の下では新たな主が風邪を引いてしまう。今は主の住まいに向かうほうがいいだろう」

 

車椅子を折りたたんでいたポニーテールの女性が提案した。

 

「しかし、我らは主の住まいを知らないのだが」

「あ、それだったら私が」

 

はやてを姫様抱っこで持ち上げていた犬耳の男性がいうと、金髪の女性が手を上げた。

金髪の女性ははやての額に自分の手にはめた指輪をかざした。指輪からはやての意識を少しばかり読み取って住所を聞き出した。そのとき、はやてに抱かれたチャチャゼロと目が合う。

 

「あら? この人形、すこし魔力を感じるわね…」

 

金髪の女性がチャチャゼロに触れようとしたそのとき、ポニーテールの女性は背後から殺意を感じた。

 

「!…散開しろ!!」

 

大声で仲間に言うと、犬耳の男性がはやてを抱っこして(闇の書ははやての隣に浮遊している)騎士たちはその場を離れると、彼らがいた場所に多くの銃弾が飛んできた。

銃弾は下にいるトラックの運転手の近くに落ちた。

運転手はあわててトラックに乗り逃げた。

 

「うっわ!? な、なんだ!?」

「敵かっ!!」

 

赤毛の少女は突然の奇襲に驚き、犬耳の男性ははやてを守るように身構える。

 

「シャマル、結界を! ザフィーラは主をたのむ!」

「わかったわ!」

「心得た!」

 

シャマルとザファーラは地上におりて、広範囲の結界を展開し、周囲の住人がいなくなる。

ポニーテールの女性と赤毛の少女は空中で待機状態のデバイスを起動し、剣と槌を構える。

女性が構えた剣先に空中を飛ぶ複数の集団の影。

とくに目立ったのは、集団の先頭に立っていた白と黒の二人。白のほうは飛行機を思わせるフォルムの武装をしたまじめそうな金髪の少女と、黒のほうは背中に二本のアームを背負ったクールな顔つきの水色の髪をした少女。二人の少女を取り巻く集団は二人が身に着けている物と同一で、体のラインから女性だと判断できるが、二人と違って彼女たちには顔がなかった。

 

「貴様たちはなにものだ」

 

空中で停止する複数の者たちに剣を構えて質問した。黒い少女は武器を構える二人に見下ろしながら答えた。

 

「悪いが、プログラム風情に名乗る名は――」

「夜分遅くすいません。私は対魔導師用人型機動兵器『武装神姫』、天使型アーンヴァルmk.2のかぐやです。 あっちは悪魔型ストラーフmk.2のこまちです。私たち、あなたたちを誘拐しに着ました。あと、つまらないものですがどうぞ」

 

ひねくれたことをいうつもりだったのに、白の少女が割り込んできて、 ヴォルケンリッターたちに挨拶し、剣と槌を構える二人に差し入れを渡した。

 

「あぁ、ご丁寧にどうも――って、なに物騒なこといって差し入れを渡しているんだ!」

 

差し入れを受けたとった赤毛の少女はかぐやにつっこんだ。受けたとった差し入れをかぐやの顔面に投げつた。ぶっは!? と箱はかぐやの顔面にぶつかる。

 

「うえぇぇん!? 怒らてしまいましたよ、こまち!」

 

かぐやは泣きならが、こまちのそばに戻るが、こまちは背中の右アームでかぐやの頭をチョップした。

 

「アッダ!?」

「お前はアホか。なに、任務中に自己紹介しているんだ? なにげに私の正体までバラして…。任務だというの理解しているのか?」

 

冷静にかぐやにつっこみをいれるこまち。かぐやは煙があがる頭を両手で抑える。

 

「イッタタタ、う~、初対面の相手には自分から名乗るのがマナーじゃないですか~」

「時と場合を考えろ。なに、フレンドリーに差し入れを持ってきてんだ貴様は。我々は兵器なんだぞ。多少、捕獲目標に手荒なことしても任務遂行するのが私たちのやりかっただろうが」

「そんな物騒なことはだめです。友好的に対処すれば仲良くなれば、無駄な血は流れずに作戦は遂行ができます!」

「そんな甘いことで任務が成功すると思うか!」

「できます! なぜなら、差し入れはケーキなんですから!」

 

かぐやのボケに冷徹に背中のアームで頭を連続で叩いてつっこむこまち。武器を構えたままの二人はこまちの背後に阿修羅が見えたとか。

 

「ケーキを渡して作戦を成功をさせる機動兵器など居ってたまるか。それと、任務中は02と言え」

「うぅ、は~い、わかりました02~;;」

 

何度も叩かれた頭を抑えながら、涙を流して返事をするかぐや。

こまちは呆けているヴォルケンリッターの二人に向く。

 

「すまないな、時間と取ってしまって」

「いや、別にかまわないが…。貴様らは管理局のものか?」

「いきなり撃ってどういう用件だ!」

 

ポニーテールの女性が警戒して冷静に質問する。赤毛の少女も警戒しながら武器を握りこまちたちを睨むだ。

 

「私から言えるのは二つだけ…、私たちは管理局と無関係、そして、用件は、お前らとそこで寝ている闇の書とその所有者を連れて行くことだけだ」

 

気絶してるはやてに視線をおくこまち。ポニーテールの女性はその言葉の内容にうんざりした気分で目を細めてこまちを睨む。

 

「闇の書の力の狙うものか…どの世界だろうが変わらんものだな」

「素直に連行されるきはないか?」

「そんなものはじめからない。どの世界、どの時代であろうと我らのやるべきことは多々一つ。闇の書の復活とその主を守ること。それが我らの使命だ」

 

剣先から殺意が自分たちに向けらているとかぐらがすこし怯え。

もとから、交渉の場はなかった。彼女たちの信念の硬さに無傷で連れて行くことはできないと覚ったこまち。

 

「騎士道というものか…。ならば実力行使あるのみだっ! ミミック!」

「「「「「「うぅぅぅきゃぁぁぁあああああああああああああああ!!!」」」」」」

 

こまちの合図にミミックたちが、武装を手元に転送して一斉に武器を構え、ヴォルケンリッターに襲い掛かる。

対して、女性と少女は名乗りをあげる。

 

「ヴォルケンリッターの将、剣の騎士、シグナム!」

「同じく、ヴォルケンリッター、鉄槌の騎士、ウィーダ!」

「「参る!(いくぜぇ!)」」

 

機関銃やバズーカー、ハンドガンを撃ってくるミミックたちにウィーダは障壁で銃弾を防御し、近寄った敵を『グラーフアイゼン』で殴り飛ばしていた。シグナムは『レヴァンティン』で、片剣や大剣、ダブルナイフで接近するミミックたちと斬りあう。

地上では、ザファーラは格闘技でミミックを倒し、シャマルは結界を張って、後ろで車椅子に座ってるはやてを結界を張って守りつつ、バインドでミミックを拘束する。

しかし、銃撃を防護されても、高速移動で死角から周りこんで撃ち、斬られても後ろから続けて襲い掛かり、技を見切って腕をクロスしてバリアを発生させて防御し、拘束されてものは相手もろとも攻撃するなど、ミミックも負けずと応戦する。

 

「剣の騎士!」 

 

こまちはリボルバー式のハンドガン『ジーラヴルズイフ』を撃ちならがシグナムに突撃する。

 

「そんな豆鉄砲、騎士には効かん!」

 

飛行しながら弾丸を避けて、逆にこまちに近づくシグナム。剣が届く居合いに入り、剣を振るシグナムだが、右のアームに付属された両刃の剣先とガトリング砲門を備えたパイルバンカー『ローク』ので受け止められる。

 

「いい剣筋だ。さすがは剣の騎士をいわれることはある。だが…」

 

太刀『グリーヴァ』を持った左のアームを振るい、避けられるも、両手に持ったダブルナイフ『コート&コーシカ』で斬りかかる。

 

「腕が四本ある相手を戦ったことはあるかなっ!」

「ぐっ!」

 

変則な四段同時攻撃にシグナムはあせりながらも剣で捌ききり、距離を取る。

だが、こまちは離れない。

 

「酔狂でガトリングガンにブレードは付いていないっ!」

 

ガトリングガンにブレードをシグナムめがけて突き刺す。シグナムは剣で受け止めるが、こまちは、フン、と口元を微笑する。シグナムは危険を察知し後ろへバックしようとした、瞬間、ロークの刀身が前方方向に向かって爆発。刀身は爆発の威力で跳びだしシグナムを貫こうとする。

 

「ぐっぁああああああああああああっ!!??」

 

レヴァンティンを盾にして防御するがパイルバンカーの威力にシグナムは吹き飛ばされた。

 

「シグナム!?」

「貴女の相手はわたしです!」

「っつ、このー!」

 

ヴィーダの前に、かぐやが立ちはだかる。

ヴィーダは接近戦を持ちかけようとするが、かぐやはヴィーダを軸に回転しながら飛行し一定の距離を保ちつつ、ハンドガン『アルヴォPDW11 』でけい制、すかさずライフル『LC5レーザーライフル』でダメージをあたえる。ヴィーダは的確な射撃によけられないと察して、魔法障壁を張って受身を取る。ハンドガンとライフルの威力は障壁を破るものではなかったが、全方向からの攻撃を防御しているため、身動きが取れなかった。

だが、その時間は長くは続かず、銃は弾切れを起し、すぐさまリロードをするかぐら。その瞬間をヴィーダは見逃さない。

 

(しめた!)

 

その場で急上昇して、一気に距離をとると、指の間に魔力で構成された三つの鉄球を精製し空中に浮かせ、

 

「行くぜ! アイゼン!」

『シュワルベフリーゲン』

 

アイゼンで鉄球を打ち出した。鉄球は無数の赤い弾丸となり、かぐらにめがけて飛ぶ。かぐらは飛行ユニットのバーニアを吹かせて、飛行して回避するも、追尾性の魔力弾のため、にげても追跡してくる。

 

「ココネット、リリアーナ!」

 

かぐらはバックパックの飛行ユニットの付属した、二つ二種類のビット『ココネット』『リリアーナ』をユニットからはずし、ビットは空へ自由に飛び、四方からビームを放ち、鉄球を落とす。ビットはそのまま、ヴィーダに狙いを定めて、上下左右からビームを放つ。

 

「ちっ! にゃんのぉおお!」

 

ヴィーダは舌打ちをして、四つビットのビームの間を潜り抜けてかぐら突撃していく。

 

「LC7レーザーキャノン 、発射!」

 

かぐやはキャノンを構えて撃った。青白い極太のレーザはまっすぐにヴィーダに向かうが、このレーザーまっすぐでしか撃てないためよけるのは簡単で、横にずらしただけであっさりよけられてしまう。

 

「これでも、寝とけっ!」

 

アイゼンのハンマーの部分が変形、先端が鋭利なスパイクが飛び出し、後方は三つの噴射口が現れた。噴射口から魔力が噴出し、ヴィーダは赤い弾丸となり、加速してかぐらの接近する。

 

「ラケーテンハンマーぁぁあああっ!」

 

スパイクをかぐらにめがけて振り下ろされた。

しかし、

 

「なにっ!?」

「ぐっうっううっ」

 

かぐやを撃ち抜こうとしたスパイクは、右腕に固定されたパイルバンカー『LS7レーザーソード』で撃ち出されたブレイドの先端で受け止められた。蒼の線と鋼の面が火花を散らし、両者は後ろに飛んではなれた。

 

「ふ~、うまくいってよかった~」

「ちっ!。運のいいやつ(黒いやつの似た武器で、それも攻撃のタイミングに合わせて放して、先端同士でアタイの技を受け止めやがった…!? こいつただものじゃねー)」

 

かぐらはとっさ行動にの安心し、ヴィーダはかぐらの行動力に内心驚き警戒する。

二人はにらみ合ったまま距離を詰める。

かぐらはパイルバンカーを外して大型ソード『LS9レーザーソード』に持ち替え、ヴィーダはアイゼンをもとのフォームに戻し、二人は剣と鎚を振りながら打ち合った。

一方、シグナムとこまちのほうでは、お互い飛行しながら接近戦でやりあっていた。

 

「また、落ちろっ!」

 

両手のダバルナイフでレヴァンティンを打ち合い、同時に左アームが持つ太刀で大降りに切りかかり、隙を突いてパイルバンカーを放とうとするこまち。しかし、シグナムは日本刀を紙一重で避け、パイルバンカーを放つ前にレヴァンティンの鞘で振り上げて払った。

 

「その剣は見切った!」

 

最初は四つの腕に戸惑っていたが、今は慣れてきて、剣と鞘でパイルバンカー、太刀(長刀?)、ダブルナイフをさばいて、こまちを攻める。優勢とはいいがたいが、剣の腕の差でシグナムが勝っていた。

シグナムはこまちたちと戦って三つほど疑問をもった。

一つ目は対魔導師用兵器という言葉。これは彼女たちが武装している兵器のことを指しているのだと考えていた。

 

(これほどの質量兵器なら、管理局の魔導師相手と互角以上に渡り合えるだろう。だが、解せないのは彼女たちのパワーとスピード、それに魔法障壁とは違うシールド…。これは彼女たちの武装から与えられた力からではないな)

 

質量兵器とは大雑把に言えば魔力を使わない物理兵器の現在兵器を指しているが実質は火薬や化学など魔力によらず大量破壊を生み出す兵器のことである。見た目、少女の彼女たちがシグナムたち魔法を使う格闘戦のスペシャリストであるベルカの騎士相手に渡り合えることができる魔力を使わない武装が質量兵器に入るものだとシグナムは確信する。

だが、戦っているうちに気づいた。

所有者の力を底上げする道具は存在することが、こまちたちの武装はあくまで戦闘の補助と相手を傷つけるための武器で、装着者に力を上げる機能などないと見抜いていた。

ならば、あのパワーやスピードなどの身体能力は彼女たち自らの力であることになる。

だが、シグナムはそれを否定する。

 

(戦いに集中して気づかなかったが、よく見ればあいつらの肩や膝、肘の間接が人形の間接になっている)

 

それが二つ目の疑問。武装神姫たちの間接が人形と同じ間接になっていること。シグナムはそれは義手などの類であり、彼女たちのパワーなどの身体能力はそれにあるのだと思ったが、それだけではないと直感した。

 

(なにより不可解なのは、これほど戦っているのもかかわらず、やつは息ひとつも乱れていないことだ)

 

四腕からの猛攻をさばいているが、歴戦の騎士であるシグナムでもさすがに息があがっていた。それに対してこまちは呼吸を整えないでで刃を振り回してシグナムを襲う。それが三つ目の疑問。

どれほどの武人でも所詮は生物、疲労はするし呼吸が困難になり、動きがに隙が生まれる。だが、こまちの動きに乱れがなく、これほど動いているのにかかわらず、息づき無しで機械的にシグナムに攻撃している。

 

(もしや…。…仮に私の推測がただしければ、容赦なく攻撃しても大丈夫だな)

 

シグナムは隙を突いてこまちの腹を蹴り付けて、こまちから離れると地上に降下する。

 

「逃げるかっ!」

 

こまちもシグナムを追って降下する。シグナムは地上すれすれで低空飛行して、道路を通り、こまちはシグナムよりも上の上空でロークのガトリングガンで銃撃する。

ガトリングガンの銃口が火花が散らして、弾丸の雨を降らすが、騎士のスピードに追いつけず地面に着弾する。

 

「っく!」

 

こまちは痺れを切らして、接近戦を持ちこもうと低空飛行でシグナムの後ろにつく。

それをまっていたごとくシグナムは急転換して、先方をこまちにむけた。

なにっ!?、とこまちはシグナムの瞳から発せられた殺気に危機感を感じて回避しようとしするも、バーニアをフルに吹かせているため急には止められず、横ににげようにも両側がコンクリートの壁ではさまれているため回避はできない。こまちはそのまま急上昇して上空に逃げる。それは誘導されたのだと後で知る。

シグナムはレヴァンティンを一回鞘に収めると、剣から薬莢が飛び出す。レヴァンティンを鞘か抜くと、刀身が連結鎖状刃となり、シグナムは剣をムチのように振るった。

 

「シュランゲバイセン・アングリフっ!」

 

連結鎖状刃はこまちの周囲に自在に舞わせて機動を阻害し、逃げ道をふさいだ。剣尖がこまちにむかって突き刺そうとする。

 

「こんなもの――っな!?」

 

剣尖を払おうとしたが、蛇のように螺旋を描いて武器に絡みついて進み、こまちはとっさにバリアを張るも剣尖はバリアを破く。ガラスが砕かれてようにバリアの破片が飛び散る中、剣尖は顔に刺さろうとしたしたが、こまちはとっさに避けたせいで頬を掠めた。バリヤが破かれた衝撃でこまちは吹き飛ばされる。

 

「がっぁぁあああああああっ!!!」

 

悲鳴を上げながら、住宅地の壁に激突、土煙が上がりる。

シグナムは地上に降りて凝視すると、煙の中からこまちがゆらりと立ち上がった。

頬には切り傷がなく、代わりにひび割れた亀裂と鈍く光る鉄色と緑の配線が覗いていた。体の所々にバチバチと青い電流が飛び出している。

 

「やはり、人ではなく人形だったか…」

 

それなら合点がいく、とシグナムは納得して、剣を構えてた。

こまちは顔をうつぶせていると、急に笑い出した。

 

「フフフ…ハッハッハッハッ! 私の顔に傷をつけるとは…これが油断と言うものか…」

 

歓喜に満ちて笑うこまち。シグナムは剣を構えてこまちを凝視する。

 

「だがいいぞ剣の騎士よ…。闇の書の守る守護騎士の力…もっと私に見せろ! 強ければ強いほど、私も本来の力を出せるというものだ …っ!!」

 

こまちはジャンプして上空へ急上昇する。

 

「殲滅するぞ。 ハーッハッハッハ!!」

 

高らかに笑い、刀身が青銅の光沢のように輝くグリーヴァを上段の構えからバーニアを全開に噴かせ、シグナムの頭上へと垂直に特攻する。

 

「っ!? レヴァンティン!」

 

レヴァンティンから薬莢が飛び出し、鍔から豪快な炎が噴射し、刀身を包む。

グリーヴァを振り下ろし、レヴァンティンは振り上げられる。

 

「紫電一閃!!」

「一刀両断・黒(いっとうりょうだん・こく)!!」

 

炎剣と輝刀が交差された瞬間、炎剣は輝剣によって叩き折られた。

シグナムは後ろ壁に吹き飛ばされ、壁を貫通するも止まらず住宅に風穴を開けと激突する。

 

「「「シグナムっ!?」」」

 

ヴォルケンリッターは自分たちのリーダーが、特にその場を見ていたヴィーダはシグナムのレヴァンティンが折られたことに信じられず驚愕した。

壊れた壁から、胸から右横腹にかけて斬られて血を流し、左手で傷口を押さえるシグナムが出てきた。インナーは泥まみれに汚れて布端は破けぼろぼろ。大きな切り傷以外は擦り傷だけ。右手には刀身の半分が折れ、多くの亀裂が入った愛剣を握り締めていた。

 

「くっ、なんていうパワーだ…」

 

傷口からポタポタと血を地面に落とすが、私は無事だと、仲間に言う。

重症だがこれでも浅いほうである。

紫電一閃でこまちの技の威力を半減させ、さらに折られる瞬間に眼前にありったけの魔力を注いで収束した小さな障壁を張ったおかげで、体が縦に両断されず、障壁が破られた衝撃で吹き飛ばれ深く斬られなかった。そのため、傷は骨や内臓まで届いてはいない。

 

「お前は大丈夫かレヴァンティン…?」

『s、損傷…率75パーセント…。ま、まだ、戦える…』

 

コアが点滅して戦闘続行可能だと答えるレヴァンティンだが、発音が掠れていた。

こまちは猶予を与えずパイルバンカーを構えた。

 

「これで終わりだっ」

 

一直線に突撃するこまち。シグナムは折れたレヴァンティンを構えると、二人の間にヴィーダを空から突っ込んできた。

 

「やらせるかーーっ!!」

 

アイゼンを地面に叩き付け、土砂を撒き散らし、爆風の壁がこまちを襲う。

 

「ぐっあ!?」

 

こまちが爆風で視覚ができないうちに、ヴィーダはシグナムを肩を背負ってを空に連れ出した。

 

≪大丈夫かシグナム…?≫

≪あぁー。だが、レヴァンティンが限界に近い≫

 

ヴィーダに刀身が折れたレヴァンティンを見せた。

 

≪シグナムの剣を折るなんて…、こいつら、一見アホだと思っていたけど、マジでギガつえー≫

 

ヴィーダは地上でもめているかぐらとこまちを凝視する。

 

「01~たしか作戦では一対一で片付けるときめただろうが…。なに鉄槌の騎士の相手に手を焼いているのだ!? 任務はすばや遂行するのが基本だというのに…」

「そういうこまちだって、なに、彼女にトドメ刺そうとしているんですか!? 私たちの任務は闇の書とその所有者と守護騎士の確保ですよ! 殺したらだめですよ!!」

「殺しはせん。ただパイルバンカーでやつの手足を吹き飛ばして、抵抗できないように無力化しようとしたでだけだ!」

「血生臭いことしないでください、この悪魔っ! やっぱり、こまちは悪魔です! デビルマンレディーです!! あたなたの血に良心と道徳が流れていません! この冷徹女! 拷問家! クールとみえて実はボケボケでマスターにデレデレのクーデレ戦闘狂女子中学生!!」

「悪魔型がから悪魔は認めるが、クールとみえて実はボケボケでマスターにデレデレのクーデレ戦闘狂女子中学生は無視できん!! むしろ、隊長にデレデレなのは、お前のほうだろうが! この愛の狂者堕天使二号がっ!」

「わたしをあんな駄目天使と一緒にしないでください! それに、わたしはデレデレではく、正真正銘、マスターと両思いなんです!! ですから、片思いのあなたはさっさと身を引いてください。…って、あたなはマスターに相手にされてませんでしたね。なら問題ありませんでした(笑)」

「あ~、今のはカッチっときた。よ~し、そこまでいうのなら、騎士の前に天使を狩るか。隊長の晩飯は天使のから揚げだな」

「いいえ。今晩はぷりっぷりの身が詰まった悪魔のしゃぶしゃぶ鍋ですよ(笑顔)」

 

趣旨がズレって、二人の間に一発触発な修羅場となった。笑顔でメンチを切るかぐやとこまちにミミックたちは、どうにかしてっ、とばかりに頭を抱えた。

 

≪…あいつら、ほんとに人型兵器かー…? 内容がドロドロだけど、中身がまるっきりガキじぇねーか≫

 

家政婦は見た! という心境で修羅場を傍観するヴィーダ。天使と悪魔のやり取りを見てシグナムは」胴体の傷の痛みを忘れてしまいそうになった。

 

≪私に言われてもなー…; だが、対魔導師用兵器という肩書きは伊達ではない。私たちを窮地に追い込むだのは事実なのだからな≫

≪騎士甲冑さえあれば遠慮なく戦えるのによー≫

 

事実を述べるシグナムに愚痴をいうヴィーダ。

騎士甲冑とは魔力で構成された防具のことで、管理局では防具服(バリアジャケット)という。そして、今の守護騎士たちは騎士甲冑を着ていない。魔力で障壁を張ることが出来るが、やはり防御に余裕がなく、被弾しないよういつもより神経をつかっているため、疲労がマッハである。

簡単に言えば、モンハンで防具無し(道具は閃光弾だけ無い)で上級クエストに挑むようなものだ。

 

≪致し方ない。我らの甲冑は主がイメージして下さなければ着ることができない。やつららはそこまで情報収集して、このときをねらったんだろう≫

≪向こうは完全武装でこっちはデバイスだけ。ズリーぜまったく≫

≪贅沢をいうな。とにかく、やつらが気を取られている間にに主を連れて逃げるぞ≫

 

現在の状況に不利だと判断し逃避する算段を念波で会話するシグナムとヴィーダ。

そのとき、二人の耳にシャマルの、キャー!?、と叫ぶ声が聞こえた。

 

「シグナムあれっ!」

「なっ!? シャマル!」

 

二人の目の先に複数のミミックに抱きつかれて拘束されたシャマルがいた。

 

「はなしなさい!」

「うぅぅきゃぁああああああ!!!」

 

シャマルは暴れれ離れようとするが、ミミックは奇鳴を上げて離れず、魔法を使おうとするが、両腕で体を締め上げて魔法を使わせない。

 

「っうぅうう…」

 

絞められるたびに骨か軋み、首や胸、腹を絞められて呼吸困難になり苦しむシャマル。

 

「まってろ、いま助けに…!?」

 

ザフィーラがシャマルの元に駆けつけようとしたと、横から右手にドリルを装備させてミミックが飛び出した。すかさず、上空にジャンプして回避するも、後ろの背中にミミックがハンマーを振り下ろしていた。ザフィーラは気づいたときには遅れてしまい、背中に衝撃が走り地面に激突する。

 

「ぐっわぁああ!?」

 

陥没をつくり、クレーターの真ん中にザフィーラが埋もれていた。起き上がろうとするが、その上から複数のミミックが圧し掛かる。

 

「ザフィーラっ!?」

 

仲間を心配してミミックを振り払おうとするシャマル。ミミックに下敷きにされたザフィーラは、わ、我は大丈夫だ…、と言うが、先ほどの攻撃とミミックたちが上に乗っかっているため身動きができなかった。

仲間の窮地に集中していたせいで、はやてを守っていた結界が解けてしまった。そのため、目覚まし時計並のミミックたちとの騒音が、はやての耳に入ってしまい、今まで気絶して寝ていたはやては起きてしまった。

 

「ふへぇ~なんや、さわがしーな~」

 

眠たそうに目をこすり合わせて、眼前の光景を見た瞬間、困惑した。

 

「…え、なんやこれ?」

 

状況が理解できず、頭が真っ白になって唖然とするはやて。ミミックたちは唖然とするはやてに一歩ずつ歩いて近づき、手をのばす。

 

「ひっ!」

 

暗闇の中でマネキンの人形たちがゆっくりと近づくのはホラーのように恐ろしく、少女であるはやてには刺激が強すぎで、ビビッていた。

怖がるはやてに闇の書がミミックに立ちはだかる

 

『現状の状況と守護騎士の損傷、所有者の危険を把握。所有者の安全を最優先とするため、自己防衛を実行します』

 

禍々しい黒い光を放ち、光ははやてを包むと、はやての周りに白い魔法障壁が張られた。

 

「闇の書自体でも行動可能か…。だが、対策はしている。01!」

「はいっ!」

「あ、まちやがれ!?」

 

かぐやはこまちの返事にうなずくと、闇の書に向かって飛行し、ヴィーダはかぐらを止めようとするが、抜けられてしまい、一瞬にして闇の書の前に移動した。胸の谷間から一枚の札を取り出す。

 

「少々強引ですが、勘弁してくださいね。えい!」

 

バッシン! とお札を叩くように闇の書に貼り付けたとたん、お札から真っ赤な電流が流れ出て、電流は闇の書を包むように走った。

 

『aigu・huzだがd??a@agaみいm!mmm.dade・????』

 

意味不明な言葉の配列を並べて、プシュー、と煙を上げると、闇の書は地面に落ちた。

そのため、闇の書が張った結界が消えた。

 

「うわ~、闇の書専用につくられた封魔符…効果抜群だけど、これって大丈夫かな…;」

 

札を張った本人であるかぐらは、闇の書の状態に心配して、指でツンツンとさわり掴んだ。

 

「…はっ! 私の本、返せー!」

 

状況が飲めこめず唖然としていたはやてであったが、大切にしていた本を乱暴されたことに気がつき、車椅子でかぐらに近づいて闇の書を無理やり取り上げた。その瞳には先ほどの恐怖もなく大切なものを傷つけられて心から怒った母の瞳であった。闇の書をチャチャゼロと一緒に胸に抱きかぐらから離れるはやて。かぐらは怒っているはやてに謝罪する。

 

「ごめんなさい! まさか、あそこま威力があるとは思いもよらなくて…。お札をはがせばもとに戻るから、心配しないでください」

「なっ!? ばっか! なに封印の解除をバラしているんだ…!?」 

「あっ! しまった~!!」

 

闇の書の停止の解除の仕方をうっかり口で滑ったかぐやにこまちはつっこみをいれた。かぐやはヘマをしたことに自覚して頭を抱え、その隙に、はやては闇の書に貼られたお札をはがそうとする。

 

「この札を剥がせばいいんやな…うぅぅんんんー!!! …ハァハァ…だめや~、破けへーん」

 

だが強く引っ張っても破こうとしてもお札は剥がれない。

 

「ミミック! 今のうちに闇の書と所有者を捕らえろっ」

「「「「「ウッキョァァァアアア!!!」」」」」

 

こまちの指示に何処かの悪の戦闘員のようにミミックたちははやてに近づく。

 

「主っ!」

「おっと、行かせはしないぞ」

 

はやての元に行こうとするシグナムだったが、こまちは勝ち誇った笑みをして右副腕でシグナムをつかまる。

反対の左副腕には、こんにゃろ~! はなしやがれ~っ!! とヴィーダが腕から抜け出そうと暴れていた。

 

「シグナム! それにヴィーダちゃんまで!」

「ぐぉぉおおおおおおおおお!! 動けぇぇえええええええええええ!!」

 

仲間で一番の戦力である二人を捕まえられたことに驚くシャマルと、仲間と主を救おうと立ち上がろうとするザフィーラ。だが、ミミックたちの体を張った拘束に身動きが取れず、助けに行くことも出来ない。

 

「早く、逃げてください!!」

「あぅわわわわ…!」

 

シャマルは困惑しているはやてに叫び出して、はやては慌てて車椅子の車輪を動かすも、ミミックたちは一斉に飛び掛った。

 

「きゃっぁああああああああああ!!!」

 

はやては悲鳴を上げ、目をつぶって闇の書とチャチャゼロを強く抱きしめ身を寄せ合った。

ミミックたちがはやてを触る直前、

 

――出現「三流マジシャンの悪意ある刀剣串刺しマジック」

 

どこからか、なぞの言葉が発せられ、後頭部や背中などミミックたちの体中に無数の剣が生えた。

 

「「「「「「「・・・・えっ?」」」」」」」

「「「「「「「「「「?????????…!!??」」」」」」」」」」

 

ヴォルケンリッターの四人と武装神姫の二人、目を開けたはやては突如のミミックの剣が生える現象に唖然。剣を生やせたミミックたちは何が起きたの理解できず、その場を硬直するがそれはいけなかった。

はやての懐から緑の物体が飛び出し、ミミックたちの体に白の閃光と黒の閃光を走らせた。緑の物体は地面に着き、ミミックたちの体に閃光が消えた途端、閃光が走った線通りに体がバラバラに切断された。それにはやてとヴォルケンリッターたち、武装神姫の二人は目を丸くした。

 

「いったいなにがおきたんだ…?」

「!? 02! アレー!」

 

かぐやが指差した方向にこまちは目を移すと、三頭身の小さな殺戮人形『チャチャゼロ』が立っていた。

 

「ヨーヤク、俺ノ出番ッカ。全ク人形ノフリハ、モウ、コリゴリダー」

 

干将『血』と莫耶『骨』を両手に持って愚痴をいうチャチャゼロ。

すると足元に、うっきゃぁぁぁぁ…、とまだ停止してないミミックがスカートを下から見るような体勢でチャチャゼロの左足を右手で握った。その瞬間、右足でミミックの頭を踏み潰した。

 

「俺ノ下着ヲ見ルトハ、相当ナ根性シテルナーオ前…。ソレト、耳元デウキャウキャウルセーダヨ。コギャルカーテメー? アァン…!」

 

まるでヤンキーが格下の野郎をいびるように、ぐりぐりと右足でミミックの頭をすり潰す。

その姿に周り(はやては怖くなって目をつぶっている)は顔を青くして引いていた。

 

「サーテ、退屈シテイタ分、オ前タチノ体デキッチリ払ッテ貰オウカ。俺ヲ失望サセルナヨ…自称姫様」

 

チャチャゼロは両手にもった双剣を振り回し、自分を見ている二人の機械仕掛けの姫に目を移し、莫耶『骨』を肩に乗せた。

 

「サァー…俺ト楽シク遊ボウゼ。刺激的ナ…」

 

――コロシアイヲヨウ

 

このとき、神の名を持つ二人の天使と悪魔の姫は、小さき殺戮者の声と瞳に魅了され、同時に悪寒を感じた。

殺意や悪意ではない。純粋で残酷的に楽しむ心意気であった。

のちに、このときのチャチャゼロの姿を見た烈火の将は、こう語った。

 

 

――あれは、魔性そのものだ

 

 

「元闇ノ福音ノ従者事、馬鹿(一刀)ノ相棒ノ殺戮人形チャチャゼロ…。斬ッテ、廻シテ、殺シマクルゼ。戦争、始メマショウ!」

 

アンティーク(古い)な歯車仕掛けの殺戮人形と超テクロノジー(最先端)な機械仕掛けの神姫

 

相反する二つの存在が、今、出会った。

 

 

 

 

 

 

つづく!

 


 
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