No.667456

島津一刀と猫耳軍師 2週目 第22話

黒天さん

今回は愛紗、鈴々の話しと、涼音さんの話しと、華琳さんの話しと、華雄さんの話しの4本立てでお送りします。

2014-03-02 19:24:59 投稿 / 全15ページ    総閲覧数:7535   閲覧ユーザー数:5408

相変わらず愛紗さんは牢屋から出てこない。

 

一度でも忠誠を誓ってしまったのが引っかかってるんだとおもう。

 

裏切ってしまった事を夢で見たせいもあるんじゃないかと思う。

 

多分、こじつけでもいいから裏切りじゃなくなればすんなり行く……ハズ。

 

「まだ悩んでますか?」

 

「朱里か、そうだな。中々答えは出ずにいる」

 

「……、ここでお仕事をしていて分かった事があるんですけど、聞きたいですか?」

 

「なんだ?」

 

「なんなのだ?」

 

横の牢屋に入っている鈴々ちゃんもこちらに反応を示す。

 

「あのですね、私達が捕虜になってからというもの、一度も劉備様から私達を返して欲しいという要求が来たことは無いそうです」

 

「!!」

 

「にゃ? どういうことなのだ?」

 

「つまり、私達は劉備様に見捨てられた、ということです。

 

捕虜に取られた場合、相応のお金、兵糧、もしくは相手方の捕虜と引き換えにかえして欲しいってお願いする事が多いんですけど……」

 

「そういう要求は全く無し、か」

 

愛紗さんがため息をつく。

「あの人は、口で言った通りに民を助けるような人じゃないです。大局的に見れば助けているといえるかもしれませんが……。

 

その方法には愛紗さんも鈴々ちゃんも納得いってなかったですよね?

 

何度も異を唱えたから、おそらく見捨てられたんだと思います。

 

もう、劉備様から見れば死んだ者、臣では無いと思いますよ?」

 

「だから、董卓にくだれ、と?」

 

まだ何だか思う所がありそうな愛紗さん。これじゃあまだ時間がかかりそう……。

 

ダメ押ししないとだめかな……。

 

「悩むのは自由ですけれど、正直に言いまして、愛紗さんに残された時間は多くないですよ?」

 

「何?」

 

一つため息をつく、出来れば言わないでおこうとおもったのだけど……。

「愛紗さん、最近太りましたよね?」

 

「……っ!」

 

「早く牢屋から出ないと、終わっちゃいますよ? 武人としても、女としても……。

 

前より顔の輪郭が丸くなって見えますし、そろそろ危険ですよ?

 

体型に出てくるということは、5斤や10斤は増えてるとみて間違い無いんじゃないでしょうか?」

 

「うわあぁぁ! 聞きたくない!」

 

自覚はあるんだ。ならば畳みかけるまで……

 

「一刀様の口から言われたいですか? 『あれ? 何だか丸くなってない?』って」

 

「朱里、頼むからやめてくれ!」

 

「にゃはは、この前服の胸がキツくなったってぼやいてたのだ」

 

「鈴々! よ、余計な事をっ!」

 

「知ってますか……? 一度太っちゃうと、そのあと痩せてもお腹の皮って縮まずに余るんですよ……」

 

「い、嫌だ! そんなのイヤだ!」

 

牢屋に愛紗さんの叫び声が響き渡る。顔は真っ青になってるし……。

 

「……、もし閨でそんなこと指摘されたら、私なら死にます。しかもですね……」

 

「し、しかも?」

 

「一度太ると、頑張って痩せてもまたすぐに太っちゃうようになりますよ……」

 

「いやああ!?」

 

この後、愛紗さんがぐったりするまで私は口撃を続けた。

 

───────────────────────

 

「え? 愛紗が?」

 

「はい、一刀様に下るって言ってます。鈴々ちゃんも一緒に」

 

「朱里が説得してくれたの?」

 

「はい。今あいさつ回りをしてるので、もうすぐここにも来ると思います」

 

そういって小さく苦笑い。……これは絶対何かあるな。

 

で、朱里の言う通りしばらくして愛紗と鈴々が現れた。

 

あれ? 何か違和感が……。

 

何だか顔色悪いし挙動不審だし……。

 

「うちの陣営に来てくれるんだって? よろしくね」

 

「は、はい、よろしくお願いします」

 

「よろしくなのだ」

 

「何か違和感あるなぁ、なんだろ」

 

俺の言葉に愛紗の眉がぴくりと動く。

 

怖い!? 超怖い!? 顔は笑ってるけど全然笑ってないよ!?

 

「ま、まぁ、よろしく頼むよ、俺の真名は知ってるよね?」

 

「はい、私達の事も真名でお呼びください。それでは、あいさつ回りがあるのでこれで……。

 

行くぞ鈴々」

 

「はーい」

 

そういって愛紗は部屋から去っていった。大きくため息をついて、朱里に視線を向ける。

「朱里、愛紗に何言ったんだ?」

 

「同じ女として、これだけは教えられません……」

 

「……、そういえば何だか違和感あるとおもったら太……」

 

「そ、それ以上いっちゃだめでしゅ!?」

 

そういうことか。朱里、黒くなったな。

 

「まぁ、ろくに運動できない牢屋でこれだけの期間食っちゃ寝してたらそうなるわな」

 

食事の量は他の所に比べれば多目だろうし。

 

「あとは翠か」

 

「そうですね、翠さんは馬騰さんの死を乗り越えられるでしょうか……」

 

「なんとも言えないな、様子はどうだった?」

 

「最近食事もちゃんと取るようになりましたので、ずいぶん落ち着いてきていると思います」

 

「そろそろ見せるか……、日記……」

 

「読んでみても、納得するにはまた時間がかかるでしょうけどね……」

 

「なんとかなるといいんだけどな」

 

世間的には逆賊としてさらし首にもしちゃったし。

 

一応そのあと提案して首塚作ったけどさ。

 

表向きには、呪いや祟りがないようにって事でだけど、きっちり埋葬はしてあげたかったし。

 

「時間をかけていくしかないか」

 

「劉協様の協力があれば楽なんでしょうけどね」

 

椅子に深く座り直し、俺はため息をつくのだった。

───────────────────────

 

「えーい!」

 

「やあぁぁ────!!」

 

現在庭で鍛錬中。やってるのは涼音と天泣。

 

今回は天泣が優勢かなぁ……。

 

その直前に涼音は俺と勝負したから疲労があるはずだし。

 

……、まぁ、手抜きモードで互角だから普通に天泣のが強いんだろうけど。

 

ちなみに俺は負けました、はい。

 

いいところまでは行ったと思うんだけどなぁ……。まぁ勝ったり負けたりだからイイトコなんだろう。

 

2人の勝負をぼんやりと眺め、俺の横に優雨が座って2人の勝負をじっと眺めている。

 

新たに加入した3人は俺や天泣の通常時と実力が近いからよくこうやって鍛錬するようになっていた。

 

静里は今日は事務仕事の方が忙しいらしくここには居ないけど。

 

「これは、天泣の勝ちかしら?」

 

「多分次で決まるんじゃないかなぁ……。あ」

 

フェイントを読み違えた涼音が訓練用の剣でモロにどつかれるのを見てしまった。

 

あれは痛そうだなぁ……。

 

「まけた!」

 

「じゃあ次は私の番ね」

 

そういって優雨が立ち上がり、天泣の前に進み出て勝負を始める。

入れ替わりにやってきた涼音が俺の隣に座る。

 

「そういえばさ、一刀は霞や華雄にも勝てるって聞いたんだけど、実際どうなんだ?

 

さっきあたしに負けてたけど……。」

 

「まぁ、俺は正面切っての勝負は苦手だし、勝ったことはあるよ」

 

「一体どうやって勝ったのさ」

 

「俺が得意な場所は森だし、特に夜間。だから、森で決めた距離を歩く間に一撃でも当てれれば勝ち、っていう勝負でなら勝ったことあるよ」

 

逆に言えばそこまでお膳立てしてもらわないと勝てないってことなんだけどね……。

 

「暗殺者系かぁ、暗器使うからそうだろうとは思ってたけどさ」

 

納得したように涼音が頷く。

 

「てことは気配殺したりするのが得意とか?」

 

「まぁそうなる」

 

「じゃあ風呂とか覗くのも得意なのか」

 

「人聞きの悪いことを言わない」

 

木扇で軽く頭をはたく。べしん、なんていい音がするが本気ではたいてるわけじゃないし音だけだ。

 

ツッコミ入れてるだけだとわかってる涼音もそれを避ける事はしなかった。

 

……そういえばもう扇子も要らない季節になるなぁ。寒い季節は憂鬱だ。暖房器具のいいのが無いし。

 

ファンヒーターが恋しい。

 

あと風呂を覗いた事は無いとハッキリ明言しておく。

「それ、私もやってみたいなぁ」

 

「森で勝負?」

 

「そうそう。一刀の本気の実力っていうのを見てみたいしさ」

 

「まぁいいけど、今日は半休だし」

 

「面白そうじゃない、私も見に行こうかしら」

 

「じゃあ私もいきますねー」

 

そうと決まれば早速、ということで森に向かう。

結果は……

 

「どうってこと無かったけどなぁ、投げられた物は全部はじき返したし」

 

森の中ほどまで行って、そこから森の外までの間で勝負、ということになっていた。

 

まぁ勝負の性質上、天泣と優雨は森の外で待ってたわけだけど。

 

俺は笑いを噛み殺しながら涼音の後から森から出る。

 

「……涼音、あなたの負けよ」

 

「え?」

 

「これはー、実戦なら軽く10回くらいは死んでますねー」

 

「なっ、どういうことだよ!?」

 

「背中を見てみなさい背中を」

そう……、涼音の背中には『一刀両断』と、書き込まれていた。うん、書いたの俺だけど。

 

本当は『一撃必殺』にしようと思ったんだけど、画数多いからさすがに断念。

 

「―あ、ありのまま、今起こったことを話すよ。

 

董卓軍では下の方の実力のあたしでも、気配くらいは読めると思っていた……

 

でも、攻撃を全部はじき返したとおもって喜んでいたら、あたしの背中に『一刀両断』と書かれていた……

 

な、何を言っているのかわからないと思うけど、あたしも何をされたのかさっぱりわからなかった……

 

頭がどうにかなりそうだった……

 

気配を消すだとか、殺気を抑えるだとか、そんなチャチなもんじゃあ断じてない。

 

もっと恐ろしいものの片鱗を……」

 

どっかで聞いたことがある台詞だなぁ……。

 

まさかここでこれを聞くとは思ってなかった。

 

「あえて温めの攻撃をしかける事で油断を誘って、その油断につけ込んだ形になるのかしら?」

 

「優雨、正解」

 

「あー、悔しい!」

 

「さて、そろそろ帰ろうか、早く帰らないと晩御飯食いっぱぐれるぞ?」

 

「そ、それは困りますー」

 

その後、城に帰ってから背中の落書きを霞と星に見られ、からかわれている涼音がいた。

───────────────────────

 

現在紫青と桂花と朱里とで会議中。

 

議題は各国の動向について。

 

っていっても各方面動きらしい動きはないんだけど……。

 

ざっくりと説明すると。

 

大陸北東部が公孫賛……つまり劉備が影響力を持っている。

 

北部が袁紹の影響下、南東は呉が影響力を持っていて、西から南西にかけては漢が影響力を持っている。

 

華琳の所は……、一応どこの傘下にもはいってないけど、ハッキリいって弱小諸侯といってもいいレベル。

 

領地の大きさはそんなに変わってないし。今回は『魏』を作るところまで行ってない。

 

ようやく復活してきてはいるものの時既に遅しか。

 

報告によるときっちり政をやって治安維持等等、俺のやってた事もやってるようだけど。

 

ぶっちゃけいえば、このままだとどこかの勢力に踏み潰されて併呑されるのは必至と思えた。

 

「こうまで動きがないのも不気味よね。まぁ、反董卓連合で負けたから要らない手間がいろいろかかってるんでしょうけど」

 

「まず動くとすればどこだろうなぁ……」

 

俺のつぶやきに3人がしばし黙りこみ……。

 

「袁紹さんじゃないでしょうか」「袁紹だとおもいます」「袁紹じゃないかしらね」

 

ほぼ同時だった。あ、なんかデジャヴ。

 

「華琳さんと袁紹さんは仲が悪いですから。冬が終わった頃に動く気がします」

 

「んー、冬が終わった頃か」

 

確かに冬場の戦っていいことになる気がしないもんなぁ……。

「失礼します……」

 

会議もぼちぼちしめようかとしたときに、そういって入ってきたのは月。

 

まぁ、月なら会議してる所見られてもなんの問題も無いからいいか。

 

「一刀さんにお手紙です。中央宛の書状に混じってまして」

 

「俺に? 誰からだろう」

 

「華琳さんからですね」

 

「ぶっ」

 

予想外過ぎて吹いた。取り敢えず受け取って読んでみると、簡単な近況報告と、

 

元気でやっているようで何より、というような当たりざわりのない内容。

 

やはり、反董卓連合の後は相当苦労してるらしく、周辺諸侯から舐められたり、治安が悪化したりと色々あったらしい。

 

最後に非常に迂遠な表現ながら、俺に会いたい。と書かれていた。

 

「しかしこれ、華琳の字ってこんな字だっけ……?」

 

それに字が間違ってる箇所があるのが気になるし……。

 

「これどう思う?」

 

そういって軍師3人と月に手紙を見せる。

「もうちょっときれいな字を書いてたと思いますけど」

 

「確かに、ちょっときたない字ね」

 

桂花も紫青も容赦無いな……。

 

「これ、左手で書いてるんじゃないでしょうか?

 

こことか、鏡文字になっちゃってますし……」

 

「華琳さんは、元々左利きだったとおもいますけど……」

 

朱里と月の意見に考えてみれば、確かに武器はいつも左手に持ってた覚えがあるなぁ。

 

でも、左利きを矯正したら鏡文字を書くようになったって話も聞いたことあるし……。

 

右手で書いたんだろうか。あ。

 

「もしかして……」

 

「どうされました……?」

 

あの時思いっきり左肩を殴ったけどひょっとして……。

 

「すごいヤな予感がするんだけど……」

 

と、虎牢関での出来事を話す。

 

「つまり、一騎打ちの時の負傷が元で後遺症が出ているかもしれない、と」

 

「うん。そんな気がする。一騎打ちの後すぐに陣営を離れたから、分からないんだよね……どの程度の負傷だったか」

 

「これだけでは、推測の域から出ませんね」

 

「でも、そうなってくるとますます華琳さんの領が心配ですね……。

 

最近は中央に税を収めてくれるようになっていますし、何とか助けてあげたい所ではありますけど……」

 

そう。最近華琳は、月のいうように中央に税を収めて来るようになってる。

 

そういう意味ではあるいみ漢の傘下に入ってると言えなくも無いか。

 

ハッキリ明言してきたわけではないけど。

 

しかし思わぬ所から悩みが増えてしまった……。

 

この後、会議が終わってから華琳に返事を書き、俺と華琳の文通が始まった。

───────────────────────

 

「主、居るか?」

 

「開いてるよ」

 

俺が居るのは、新しい方の私室。なんだかんだいって、慣れた部屋の方が落ち着くのもあったりして時々コッチを使っている。

 

月と詠にはほんとに感謝しないとなぁ……。

 

返事をすれば入ってきたのは華雄。用事があるから待っていて欲しい、と言われたのだ。

 

用件はなんとなく分かってる。

 

「まあ座りなよ、真名の事、話しに来たんでしょ?」

 

わざわざこっちの自室を指定してくるぐらいだし。

 

「まぁ、な」

 

やっぱりそうか。

 

結局こっちに来てからも中々時間なかったからなぁ。

 

俺にそこまで余裕がなかったっていうのもあるんだけどさ。

 

「実は、私は字が無いんだが、真名も無いんだ」

 

「ええ!?」

 

「普通は生みの親がつけてくれるものなんだが、私には親がなくてな

 

育ての親にはこう言われたのだ。

 

親より大事な者につけてもらえ、主君でも、友人でも、伴侶でもいい。お前がコレと思った者に。とな」

 

「……、で、何で俺なの?」

 

「みなまで言わせるか?」

 

やれやれと華雄がため息をつく。

 

「最初は月に頼むつもりだったんだが、頼む前に反董卓連合が起きてな。

 

霞には頼んだことがあるんだが、ウチに頼んだら後悔する、と断られたし

 

恋に頼むのは酷だろう?

 

それに前回の連合軍が終わった後、しばらくして考えたんだ、月ではなく主に頼もうかと。

 

月を助けてくれた主にな。結局、期を逃して今までズレこんでしまったが。

 

それにな」

 

「それに?」

 

「心底主に惚れ込んでいる自分がいるんだ。」

 

「んー、ちょっと今すぐには思いつかないし、思いつきで決めるものでもないと思うから、少し日数もらってもいい?」

 

「ああ、そうしてくれ。私の用事はこれだけだ」

 

そういって華雄が立ち上がり、部屋から出ていこうとする。

 

「ああそうだ」

 

そういってゆっくりと振り返りる。顔を真っ赤にしながら。

 

「惚れ込んでるのは、将としてもだが、女としてもだからな?」

 

そういうと逃げるように去って行ってしまった。

あとがき

 

どうも黒天です。

 

牢屋の人々の話しと拠点と色々一気にやってみました。

 

朱里のいう5斤10斤とは、重量の単位で1斤220グラムぐらいなので。

 

「1キロや2キロは太ったんじゃないの?」といってるわけです。

 

華雄さんの真名についてはこんな感じになりました。

 

中々いいのが思い浮かばないのでいいのが無いか募集します。

 

涼音さんがポ○ナレフしてますが、最後の選択者の方でもやってたのでコレはやっておくべきかなと……。

 

追伸:お気に入りが930人を超えました、ありがとうございます。

 

何とお気に入りクリエイターランキングの総合ランキングにはいってしまいました、

 

これもみなさんの応援のおかげです。

 

これからも頑張るのでよろしくお願いします。

 

さて、今回も最後まで読んでいただいてありがとうございました。

 

また次回にお会いしましょう。


 
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