「こうやって昼に休憩とって城内をぷらぷらするのも久しぶりのような気がするなぁ」
最近少し心に余裕が出てきたのと、桂花たちにくわえ、静里達3人が頑張ってくれてるのもあり、仕事にも余裕ができた。
というわけで城内を無駄にぶらつくことに。
「お……」
前を歩くのは桂花か。それをみてなんだかいたずら心が湧いてくる。
そっと背後に忍び寄って、ぽんぽんと肩を叩く
「────っ!!」
飛び上がらんばかりに驚き、声にならない悲鳴を上げてすごい勢いでこちらを振り返る。
「脅かさないでよ!」
「ごめん、……ていうか大丈夫?」
寝不足なのか、振り向いた桂花の目の下には濃いクマがある。
「何がよ」
「いや、だってそれ」
その目の下を指さすと思い出したようにフードを目深にかぶり、俯いて目元を隠す。
「……、あんまり見ないでよ。恥ずかしいから」
「何かあったの?」
「最近夢を見るの、その夢っていうのが戦の夢ばっかりなのよ。
危ない目にあって飛び起きる事もあるからろくに眠れてないのよ」
そういって深いため息、戦の夢、ねぇ?
「それってどんな戦なの?」
「割りと支離滅裂よ? 最初は黄巾党で、次は反董卓連合、その次は袁紹、それから曹操と戦って、孫権とも戦ってたわね
今朝みた夢では相手は関羽だったわ」
あれ? それって、前の世界で戦った順番通りじゃないか?
「私、ひょっとして血にうえてるのかしらね……」
自嘲気味にそういってもう一度大きなため息。
順番からいくと、この次は泰山か
「何なら添い寝でもしようか?」
「魅力的な提案だけど遠慮しておくわ、夜遅くに飛び起きて迷惑かけるのが落ちだもの」
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その夜、私はやっぱり夢を見た。
相手が何者なのか分からない、ただ今まで見た夢とも、現実で見た相手とも違う明らかに異質な相手だった。
白装束のその相手はただの3000ほど、あっと言う間に勝負はつく。
そしてとうとうその本拠地に乗り込み、霞、華雄、華琳、そして一刀がその大将を倒しに行く。
私はその勝負をじっと見ていた。
相手の大将の男は最初に鏡を投げて、それから訳の分からないことを言いながら3人同時に相手をし、その背後に一刀が回りこんでいく。
そして一刀が奇襲し、それが成功してその男が殺されたすぐ後……。
男が投げた鏡から白い光があふれだす。
胸が苦しい、その光に触れたら……。触れたら、どうなるの?
「逃げるで! なんかヤバイ気ぃする!」
霞がそう叫ぶと、我に返ったように皆が動く、その銅鏡から離れるように走る。
私は逃げる時一度振り返った。
隣で紫青も同じように振り返っていた。
後ろを見ると、一刀はその白い光に触れて徐々に体が消えて、いなくなってしまった。
思い出した、あの光に触れると……。
『全部忘れて、皆消えてしまう』
それを思い出したせいだろうか、次々にいろんなことを思い出す。
今までみた『夢』に感情が次々に当てはまって、記憶に変わった、そんな気がする。
『取り敢えず名前くらい教えてくれないかな? 俺は北郷一刀』
とても怖かったけど、この頃は、本気で仕える気なんて無かった
『だからあなたに真名を預ける。私の真名は桂花』
ある意味これが始まり、頭を撫でてもらえたのが心地よかった。
『馬鹿!? 家臣を庇って矢を受ける主がどこにいるのよ!』
覚悟はあったけど、そんなもの無かったものになってしまったようで。
現実味を帯びた一刀の死が、とにかく怖かった。
『私は一刀が好き、これが私の気持ち』
後悔なんて絶対したくなかった。だから気持ちを伝えた。
一刀は私を愛してくれた。私も、愛していた。
『私達が、一刀を天に帰したりしないから。どうやってでもここに繋ぎ止めていてあげるから』
本当にそんなことが起きるなんて、信じてなかった、信じたくなかった。
最後に襲ってきたのは、どうしようもない空虚と絶望……。あの時、一刀が光の中に消えてしまった時の……
───────────────────────
「いやああ!?」
飛び起きる、外は真っ暗で真夜中らしいことが分かった。
嫌な汗をかいて寝間着が体に張り付いている、誰かの息遣いがうるさい、それが自分の物だとしばらく気づかないぐらい、動揺していた。
心臓が異様なくらい早鐘を打っている。いくら空気を吸っても吸った気がしない
「一刀……!」
私の心を占領したのは不安と恐怖と喪失感。
気がつけば寝台から飛び降り、寝間着のまま、裸足で泣きながら走りだしていた。
一刀の部屋へ……。
ノックも忘れて扉を開ける。
一刀はいつもと変わらない様子で机に向かっていて……。
不安で、怖くてしょうがなかった私は、恥も外聞もなく、一刀に飛びついた。
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「……、慣れって怖い」
仕事に余裕出来たからたまには早く寝るか、って早く寝たのはいいんだよ。
普段の睡眠時間が短くなってるせいか真夜中に目が覚めて眠れないとか無いわ。
しかたがないので結局眠くなるまで仕事する事にして、仕事を始めて30分も経たないうちに、外を走ってくる足音が聞こえる。
誰だろうこんな時間に……。何か緊急の案件だろうか。
扉の方に視線を向けると、扉が勢い良く開かれて、そこに居たのは涙で顔をぐしゃぐしゃにした桂花。
何も言わずに俺に走り寄って思い切り抱きついてきた。
一体何があったのだろうか、とにかく落ち着かせるべく、抱きしめてその背を、髪を撫でて。
「消えないで……」
絞りだすようなその声にはっとする。
泰山の夢……。
あの時、最後に桂花と目があった気がする。
つまり桂花はこっちを見ていたということ。
俺が消える瞬間を、思い出しちゃったのか。
「ごめん、でも俺はちゃんとここにいるから」
抱きついたまま頷く。
「私も、忘れてた事……ごめんなさい……、でも、全部……」
うまく言葉が選べてないけど、それで俺には伝わった。
「桂花」
「……何?」
きっと、桂花は全部思い出したんだと思う。
「おかえり……桂花」
そう言うと、頷いてもう一度ぎゅっと背中に回した手に力を込めてくる。
そのあとしばらく抱きつかれていて、長いこと離してくれなかった。
「どうしてこっちで私と初めて合った時、寂しそうな顔をしたか分かった……。あんなの私じゃないもの……。
でも、私はきっと戻れたから、一刀の愛してくれた『桂花』に」
ようやくはなしてくれたかとおもったら、目の前でそういわれて気恥ずかしい。
そしてそのままゆっくりと目を閉じて……。
俺はそれに応えた。
「ねえ……、お昼に言ってたみたいに、添い寝してくれる?」
「今日だけだよ?」
そういって桂花をベッドに誘う。
当然のようにただの添い寝で終わるわけもなく、翌日は2人揃って寝不足となった。
あとがき
どうも黒天です。
今回ようやく桂花さんが全部思い出しました。
最期の時の記憶を思い出して、どうしようもなくなっちゃった、という感じです。
次回は誰かの拠点か牢屋の人々を何とかするか……。まだ未定ですがどちらかかな?
さて、今回も最後まで読んでいただいてありがとうございました。
また次回にお会いしましょう。
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前回の予告通り、今回は桂花さんオンリーの砂糖回のつもりです