No.663039

義輝記 雷雨の章 その九

いたさん

義輝記の続編です。 よろしければ読んで下さい。

2014-02-14 01:05:05 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:2175   閲覧ユーザー数:1885

【 颯馬、信廉 第二の策 の件 】

 

〖反董卓連合軍側 大本営にて〗

 

諸侯が定時の刻より、かなり遅く集合するようだ……… 

 

本来の定時の刻よりも大分遅い、午の正刻(午後12時)の軍議予定だったのに関わらず…………だ。

 

理由は言わずとも分かる、董卓側の謀略! 

 

あの謀略で人心は大いに乱れ、兵の統括に支障をきたし、将達、諸侯達の間に疑心暗鬼が芽生えさせて、連合軍の足並みを大きく乱した。

 

定時丁度に来て見たが、諸侯の姿が数人のみ。

 

いつもは姉様と冥琳に任せて、私は留守番だったのだが。 

 

だけど、今回は…その…我が陣営内の不祥事で、二人が出席出来ず……私こそ『孫仲権』と軍師『陸伯言』を伴って、代理で出席していた。

 

少し経ってから、諸侯が出席し始めた。 体と精神の疲れから生気が抜け落ちている諸侯の多い事。 

 

だけど、幽州州牧の公孫伯珪だけは、体力、気力充実して『影が薄い』、『普通』と噂される人物とは思えぬ程、輝いて見える!!

 

華琳「失礼する! 貴女が、孫伯符の妹御で宜しい? 私は陳留州牧『曹孟徳』よ!  」

 

定時前より座っていた、数少ない諸侯の一人『曹猛徳』殿が声を掛けてきた。 冥琳に言わせれば、正しく『覇王』の風格を持つ者。

 

姉様が『江東の小覇王』で曹孟徳殿が覇王…………。 

 

体の一部を見て……うん……理不尽さを……感じた。

 

華琳「……今、とても不本意な事を、頭に浮かべなかった(怒)!?」

 

   フルフルフル!!!

 

華琳「そう……それならいいわ! 今回は孫伯符達は来ていないようね? まぁ、例の竹簡の策で、動きが取れない様子のようだし… 」

 

姉様なら、この曹孟徳殿と対峙しても、負ける事は無いだろう。 私だと簡単に打ち破られそうだと、考える……が!

 

華琳「貴女、良き目をしているわ! 碧眼にして澄んだ落ち着いた目……。 貴女のような妹が居れば、私も安心なのに……」フゥ…

 

曹孟徳殿は、そう言われると、一別して戻って行った。

 

あの曹孟徳に、声を掛けられると思っておらず、ソワソワしていたら、穏が心配そうに見ていたので、『大丈夫』と声をかける。

 

曹孟徳殿が、私に何を見たかは、わからない。 私に、どんな力があるのかも………。

 

だけど、一つだけ言えるのは、孫呉の為に頑張らければ!……という強い想いだけだ!!

 

★☆☆

 

大分遅れて、未の正刻(午後2時)より『軍議』が始まったわ。 

 

壇上に立つのは反董卓連合軍の副将格『袁本初』様。

 

麗羽「今度こそ! 今度こそ!! 汜水関攻略を抜きますわよ!!!」

 

 

『お前は、副将だろう? 何故そんなに偉そうに指示を出すんだ!』

 

 

諸侯達は、全員そう思っているらしく、苦虫を噛んだような顔を浮かばせるが、誰も突っ込まないみたい。 

 

一応、兵権は袁本初様と曹孟徳殿にと話になっているし、面倒な事にこれ以上巻き込まれたくないという思惑も見え………!

 

 ダッダッダッ! ダッダッダッ!! バッ!!

 

兵「申し上げます!! し、汜水関に…『得体の知れる者達』が!」

 

袁本初様及び諸侯は、首を傾げる。 

 

一部を除いて、ムサい髭のおじ様達が首を傾けるけど、はっきり言って可愛くないわよ……と思わず言ってしまい、慌てて口を塞ぐ!! 

 

……いけない、いけない! 

 

…昨日のお酒が、まだ残っているのかしら?

 

私がお酒に酔うとどうなるか、試したのだけど…記憶が曖昧で…

 

思春と穏から『対陣中は呑んではいけません!!』と叱られたけど。

 

………えっと、話を戻して………っと。

 

先程の報告があったのが『得体の知れない者達』なら分かるわ。 自分達の知らない者達が居る事だから間違いない。 

 

だが、兵士が訴えたのは『得体の知れる者』達……。 

 

この言葉に何を意味するのか、私と穏は顔を見合わせ悩みこむ。

 

華琳「そこの兵よ! 具体的な名前を挙げなさい! 」

 

兵「はっ………! 実は…………『袁本初様』達が………」

 

それを聞いて、私を含め一斉に袁本初様に視線を向ける諸侯達!!

 

麗羽「????」

 

諸侯達は、袁本初様が居る事を再度確認すると、各々の陣営内に戻り

汜水関に向かう。 

 

★★☆

 

私達も陣営に戻り、寝込んでいる姉様や冥琳に知らせると………

 

雪蓮「何それ!! そんな面白い物、いつ見るの!? 今でしょ!!」

 

冥琳「全く元気な奴だ………。 だが、軍師としては、非常に興味を抱かしてくれる! 穏! すまないが軍の編成を……!」

 

穏「はいぃぃぃ!! 既に準備出来ています!! 董卓軍の新たな策が……私を呼んでいるのです~~よ!!」クネクネ

 

祭「やれやれ、また悪い癖か……。 思春、また穏の子守りを頼みてくれんか! 抑えきれないなら、何時ものように処置をしてくれ!」

 

思春「わかりました」

 

 

◆◇◆

 

【 笑みを浮かべし者 の件 】

 

〖汜水関 門前にて〗

 

反董卓連合軍が近付くと……壁の上に……………!

 

十数隊の藁人形『袁本初』が、こっちを見て『笑って』いた。

 

麗羽「何ですの!? あの人形は──────!!!」

 

『藁人形』は、普通の人間大の大きさ、形は『†』な具合。

 

…普通の藁人形なら『この時代』でもある。 

 

だが、この策最大の特色は、藁人形の頭部に貼られた『似顔絵』!

 

しかも、『この時代』高価な代物である『紙』が惜しげも無く使われ、更にその似顔絵が、かの『袁本初』と瓜二つ!!!

 

まるで、間近かで確認して書いたように………………。

 

華琳「見事よ! あの筆使い、力の強弱、表情の描き方! どこを取っても一流以上の絵師が描いた物…。 

 

それを麗羽の顔で並べるなんて……才能の無駄使いだわ……」ハア-

 

麗羽「ちょっと!? 華琳さん! あの麗しきも素晴らしい絵画に向かい美を冒涜するなんて、失礼じゃありませんこと!!!」

 

★☆☆

 

雪蓮「わあぁぁぁ…………『喜色満面』って、こういう事言うの?」

 

冥琳「……雪蓮。 誰が面白い事を言えと言った!? だが、これで袁本初は、どう動くのか………。 面白い企みだ!」

 

蓮華「冥琳、この策の意味判るの?」

 

冥琳「あぁ! この策は…………………」

 

★★☆

 

一刀「………どういう策になるんだい?」

 

朱里「反董卓連合軍で、最大の権力者である袁本初様の姿を立て、汜水関攻略を阻止する為の策略だと思われます!」

 

雛里「………ですが、幾ら御自分の似姿があるとはいえ、攻めなくては汜水関攻略は出来ません!! 

 

そうなれば、御自分の似姿の人形を御自分の兵権を持って壊さなくてはならない! これは、そんな恐るべき企みの策なんでしゅ!」

 

桂花「あの自己顕示欲が強い女が、それを出来るか見物だけど…。 

 

だけどね……懸念材料があるわ! 『袁本初』だけしか似顔絵が無いのか? それに、最初に矢を打ち込み者は誰か……?」

 

★★★

 

雪蓮「それなら、袁術ちゃんのがあれば、私自身が、最初に数発打ち込んであげるわよ!! 」

 

冥琳「……それだ。「へ?」 その顔の藁人形に矢を打ち込む、当然本人達も見ている。 

 

……これが後の禍根となり、矢を放った我らや諸侯に向かってくる可能性がある……非常に厄介だ!!」

 

蓮華「それなら、袁本初は大丈夫というの? 冥琳!?」

 

冥琳「いえ、確かに領土は離れていますので、直接の被害は無いですが、我らは袁術の客将。 袁術が、どのようなふっかけを言ってくるか…孫呉が最初に矢を放つ訳には行きません!!」

 

穏「そうすると、誰も矢を放つ事が無くなり、汜水関攻略は不可能ですぅ~~!!  あぁ~凄い、凄い策ですよ~!!」

 

雪蓮「……思春、やって!」

 

思春「はっ!」スゥ   

 

トン! 穏「はぅ!?」バタッ!

 

◇◆◇

 

【 均衡を壊す者 の件 】

 

〖汜水関 門前にて〗

 

麗羽「ああぁぁぁ─────!!! 美を破壊しなくては汜水関を攻略出来ず、逆では美を守れても漢を守れず! 美の守護者である私に天は何度過酷な道を示すのでしょう!!」

 

兵「─をお持ちしました!」 トン!

 

華琳「──ご苦労様。 ………それじゃ、狙いを定めて───!」

 

麗羽「? 華琳さん、何を…!!!」

 

華琳「─────────!」 シュッ!!

 

 

矢は、華琳の手を離れて、汜水関の藁人形頭部の額に……!!

 

      ブスッ!

 

麗羽「アッ! 命中しましたわ!! ………じゃなく!! なんで射るんですの?! 私の美しい顔に!!! 」

 

華琳「麗羽! いい加減になさい!! 諸侯が集まった理由は何? 現漢王朝の粛清と『天城颯馬』達の排除でしょう!!

 

あの似顔絵なら、董卓軍の中に絵師が居るはずだから、その者に先の似顔絵より、更に良い物を描いてもらえば済むのではないの!?」

 

麗羽「───! 成る程、その絵師に更に絵画を描かせて、私の絵を売り出せば、大陸中に私の人並み外れた美しさの風評と巨万の富が入る寸法ですのね!? 素晴らしいですわ!!」

 

華琳「そこまで言っては無いけど……今は、攻めて汜水関を抜かないと! まだ先には、此処より遥かに攻めがたい『虎牢関』が待ち受けているのよ! こんな場所で立ち止まっている場合じゃない!!」

 

麗羽「─────仕方ありませんわ! 全軍! 特別に許可します!! あの似顔絵に構わず、攻めなさい!!!」

 

諸侯『オオオォォォォ───────────!!!』

 

**************

 

諸侯1(仮)「射てぇ───!! 日頃の恨みだ!!」

 

諸侯2(仮)「出来るだけ顔だ! 駄目なら体を狙え!!」

 

諸侯3(仮)「冥琳! 矢を沢山持って来て! この機会に!」

 

冥琳「おおぉいぃ!! 折角名前を伏せてもらっているのに、バレてしまうじゃないか! 」

 

***************

 

汜水関は怒号、命令、叱咤と大騒ぎとなり、壁の『袁本初』藁人形目指して、矢をいかける!! 

 

ものの四半刻(約15分)もせずに針鼠と化す『袁本初』(藁人形)!

 

だが、その藁人形は直ぐに外され、新しい藁人形が用意される。 しかも、表情も変わっていて、今にも高笑いしそうな顔で……!

 

華琳「……(怒) 私も再度射るわ! 矢を準備して!!」

 

麗羽「華琳さん? 目的がズレてないですわよね?」

 

華琳「大丈夫よ、麗羽? 目的は変更無し! ただ……あの藁人形に恨みがあるだ・け・よ!!」シューン   バン!!

 

★☆★

 

美羽「七乃! 妾の隊も全力であの藁人形を狙うのじゃ!!」

 

七乃「流石お嬢様! この機会に恨みを晴らそうなんて、その軽い性格単純その物。 よっ! お調子者!!」

 

美羽「うっはっはっはっ!! もっと褒め称えよ!!」

 

 

◆◇◆

 

白蓮「麗羽には、恨みは有るには有るが…矢をいかける訳にも…」

 

兵士長「我らが主『白蓮』様の人の良さに付けいる隣国おほほ太守に、目にものをみせん!! 総員、構え! 放って!!!」

 

白蓮「お、おいっ!?」

 

*****************

 

公孫部隊は、全員で『石』を投げつける!

 

兵士1「おらぁ! 俺様の『豪速球』を受けてみやがれぇ!」

 

兵士2「なんだぁ? その言い方はぁよぉ?」

 

兵士3「曹孟徳様のとこの『天のおつかい』が前に言ってやがったぜぇ! 白蓮様の恩を仇で返しやがってぇ!!」

 

兵士2「おいおい、『天の御遣い』だろ。 お前のパシリみたいに言ってると、関羽に斬らちぃまうぞぉー!!」

 

兵士4「ははは! だが、言い方はカッコエエ!! 良し、オラも…! おらっ! 豪速球だぞぉ!!! 」

 

******************

 

白蓮「すまん! 皆……………!」

 

 

◇◆◇

 

【 董卓軍側 舞台裏 の件 】

 

〖汜水関 董卓軍側にて〗

 

信廉「颯馬! 策はほぼ成功です!! 始めは、こちらに矢を、なかなか放って来なかったので、心配しましたが……今は大丈夫です!! まぁ、一部『礫』を投げてくる隊がいますが………」

 

颯馬「それくらいなら上々! ある意味『要』となる策だからな。 今のところは順調なら………別の似顔絵を用意しよう。 反応が鈍ければ、他の人に替えてやり直しで…………!」

 

信廉「はい! 了解しました!」 タッタッタッタッ!

 

颯馬「藁人形に刺さっている仕様可能な矢を、集めて置いてくれ! 後に後方に送る! 藁人形も補修出来る物は補修を!!」

 

兵士「はっ!」

 

颯馬「歳久殿! いえちゃん! 汜水関を今日、明日には撤退するため、兵達に土を袋詰めにするように指示を!」

 

歳久「了解です!」 家久「はーい!」

 

颯馬「義久殿! 申し訳ないですが、『料理』を壺に入れて蓋を閉めて、一カ所に集めて置いていただきませんか?」

 

義久「颯馬君? 全部、敵の人達に渡すの~? 少しは、皆に分けてあげればいいのに!!」

 

颯馬「━━━━━━━━!!! とんでもない!! 我らは沢山いただき、余りの美味しさに食べ過ぎて、寝込む者が複数出ました!!

 

ですから、今回は反董卓連合軍に自慢しようと思いまして!」

 

義久「そう……残念だけど……分かったわ!」

 

颯馬「謙信殿! 例の細工を兵士に作るように命じて下さい! 『料理』も、出来ていますので…………」

 

謙信「……食べ物を粗末にするなど、仏の道に反するが……これも勝つためだ! 委細承知して、全力を傾けよう!!」

 

颯馬「宜しく御願いします! くれぐれも気を付けて……!」

 

謙信「うむ!」

 

◇◆◇

 

【 新たな藁人形 の件 】

 

〖汜水関 門前にて〗

 

*****************

 

諸侯3「あの藁人形に沢山打ち込んでボロボロにしてやったぜ!」

 

諸侯4「あぁ! こんな戦も偶にはな………!」 

 

諸侯5「あぁ~、他の奴は出ないの? 袁公路サマとかさ~~」

 

冥琳「……………………………………」イラッ

 

*****************

 

 ガタガタ ガタガタ! ドン! ドン!

 

『新たな藁人形が、現れた……』

 

今度は、『曹孟徳』の澄ました顔が張り付いた藁人形が…

 

麗羽「今ですの! 一斉に放て!! …ですわ!」

 

華琳「麗羽……………………」

 

麗羽「華琳さん! これは漢王朝のため、涙を呑んで行っているのですわ! えぇ!!  そこ!! 矢の射る数が少ないですわよ!!!」

 

華琳「…………………………」

 

★☆☆

 

春蘭「お前達! 華琳様に矢を射るな!! 射れば、叩き斬ってやるぞ!!! 」

 

桂花「絶対に、射るんじゃないわよ!!! アンタ達に射られたら

華琳様が穢れてしまうんじゃないの!!!!」

 

★★☆

 

雪蓮「うーん、曹孟徳ではねぇ~ やる気が……………」

 

冥琳「………何か違和感を…感じるのだが?」

 

蓮華「…………………………………………」

 

★★★

 

〖董卓軍側 舞台裏〗

 

颯馬「やはり、曹孟徳だと反応が薄いな」

 

信廉「颯馬! これを今度は!!」

 

颯馬「あれ? 信廉殿は『袁公路』を見た事が……?」

 

信廉殿が持っているのは、俺も遠目でしか見た事が無い、『袁公路』の似顔絵。 俺以上に屋内に籠もる信廉殿が、何故判るのだろう?

 

信廉「三太夫が敵陣営に竹簡を置いてきたとき、袁術の天幕で見つけた『姿似の人形』から描いてみました! 

 

三太夫の観察した袁公路と変わりないというので、似顔絵を……」

 

颯馬「上出来です! 直ぐにも藁人形に付けて出しましょう!」

 

☆☆★

 

ガタガタ ガタガタ! トン! トン!

 

『新たな藁人形が、現れる……』

 

今度は、『袁公路』の泣き顔が張り付いた藁人形が…

 

雪蓮「待ってました!! 一斉射撃!  始め!!」

 

祭「おぉ!! 歯応えがある的が来たわい! そりゃ! そりゃ!」

 

蓮華「ちょっと!? そんなあからさまにやって!!?」

 

冥琳「蓮華様………大丈夫なようですよ……」

 

蓮華「…………………じゃぁ………私も…」

 

☆★★

 

美羽「あ、あぁぁ………、ヒャウ!? わ、妾の顔が──!?」

 

七乃「あぁぁ、美羽の身代わり人形がボロボロになる様子…それを

怖がる美羽様!! 七乃は幸せ者ですうぅぅ!!!」

 

美羽「ピィィィィ─────────────!!!」

 

 

 

…この後…………藁人形の交代は三回ずつ交代され、その度に阿鼻叫喚の悲鳴が挙がる。 

 

主に藁人形の似顔絵の者が…………!

 

……そして……一刻(約二時間)程続いた…………

 

 

麗羽「ゼェーゼェー! 華琳さん……! まだ『私』を狙おうとするのですかぁぁ? そんな事、無駄無駄無駄無駄ですわぁ!!」

 

華琳「誰が!! アンタなんて馬鹿を狙うもんですかぁ!! 汜水関を狙う所にアンタが立っていた方が悪いのよ!!!」

 

美羽「あぁぁ──────、妾が────────!」

 

 

すっかり日が暮れて、目標が見えなくなり、反董卓連合軍は陣営に戻る。 数々の怨恨を抱いたまま………。

 

 

【 公孫伯珪の離脱策 の件 】

 

〖反董卓連合軍 公孫伯珪の天幕にて〗

 

はぁ……………何で、私って奴は人が良いのだろうか………。

 

つい先程まで、反董卓軍連合軍の副将達が互いに罵り合った。

 

麗羽「い・い・で・す・か・!! 明日こそは…必ず、必ず!! 汜水関を落としなさい!! これは、厳命です!!!」

 

華琳「ふん! 貴女は後ろでどっしりと固まって居なさい!! 必ず

前衛の我らが落としてみせるから!!!」

 

 

      「「 フン!! 」」

 

 

これで済んでくれれば良いんだが……あろう事か、二人して私へ頼み込んで来たんだ!! 

 

麗羽『白蓮さんだけが頼りですわ! 汜水関を明日一番に抜いて下さいませんか!! 白蓮さんなら必ずできます、できますから!』

 

華琳『公孫伯珪殿、明日は必ず汜水関を抜きましょう! 麗羽の度肝を抜かしてやるのよ!!!』

 

おいおいおい! 昨日と今日に散々な目にあったのに(私は被害より部下達の献身的態度に感動したが)、明日直ぐに抜けると思うか!!

 

あの『天城』という軍師が守っているだけで、永遠に抜けそうとは思えんのだが………。 はぁ────、どうすればいいんだあぁ……。

 

??「もしもし、もしもし?」

 

白蓮「はぁ──────」

 

??「もしもし 亀よぉ~♪」

 

白蓮「亀さんよぉ~♬ じゃない! 誰だ!?」

 

??「董卓軍の者ですが……」

 

白蓮「何? この私に何の用だ!!」

 

??「お心鎮めて下さい、公孫伯珪様。 私が主『天城颯馬』からの話を聞いて欲しいのです。 この事は、決して公孫伯珪様や御味方にも迷惑がかかりませんので……。 是非、拝聴の程を…………」

 

白蓮「……わかった。 聞いてやるだけ聞いてやる!」

 

だぁ!! 何で、そこで話を聞くんだ『私』! だから、麗羽から『普通』なんて侮られるし、人が良いと言われるんだよぉ!!

 

……まぁ、悩んでいるのも事実だ……。 今は汜水関攻略を何とかしたいしなぁ…………

 

??「では、御拝聴を御願いしたい、と言いたいところですが、公孫伯珪様は、何かお悩みのご様子。 それでは、この『影』の話が耳に入らないと思います。 

 

……差し当たり愚考すれば、汜水関攻略の件でしょうか?」

 

白蓮「……………………………」

 

影「ふむ……それならば、我が主の策を使えば、悩み事など雲散霧消に無くなり、逆に感謝されましょう! ……如何ですかな?」

 

……………………………………………………

……………………………………………………

 

白蓮「わかった! では、私は汜水関の攻略を、実行すればいいのだな? 後の準備は、お前達の手で………!」

 

影「はい! お任せを。 そして、再度、御約束致します! 貴女様や部隊の方々は、皆に感謝されながら、この地を離れられる事を!」

 

白蓮「では、明日!」

 

影「……………はっ!」

 

この後、『影』と名乗る人物と別れた。 

 

確かに悩みは消えた……明日への展望も見える。 

 

だが、今更ながら思うよ。 

 

よく、こんな奴と対峙して、生き延びられたな……………と。

 

 

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あとがき

 

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

 

天城颯馬の策「第二矢」発動となりました。

 

白蓮さんですが、書いてる途中で『兵士達を連れて戻ればいいのに』と、コメントに書いてくれましたnake様の文章を思い出し、策に合わせて、脱出させる事になりました。

 

その後は、予定では白蓮さんも洛陽側に……と考えています。

 

 

また、次回も、よろしければ、読んで下さい。

 


 
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