No.65575

月明かりの下で・改

「恋姫†祭り」に応募した作品をちょっと修正しました。

応募した奴を直そうとも思いましたが応募作品なので別モノ扱いで再度掲載しようと思います。

相変わらず尻すぼみMAXな感が否めませんがゴメンナサイ;;

2009-03-27 22:57:42 投稿 / 全5ページ    総閲覧数:4774   閲覧ユーザー数:4001

一刀は魏から戻り学生生活に戻った。

 

戻ってきた一刀は周りから『雰囲気が変わった』と言われ、剣道でも部活の3年生や師範の先生も相手にならない位強くなっていた。

 

女子生徒からも一目置かれ、頻繁に女子生徒から話しかけられ、デートに誘おうとする者もいれば呼び出して恋の告白もされるようになった。

 

デートには付き合うものの告白は断っていた。

 

断られた一人の女子が「私じゃだめなんですか?他に彼女がいるんですか?」と尋ねてきた。

 

一刀は一瞬悲しい顔をするが無理やり笑顔を作って「ごめんね。遠い所に彼女がいるんだ」と詫びた。

 

その噂を聞いた及川が「かずピーが女たらしになってもーた!」と顔を赤らめて騒いだとか。

 

そんな高校生活も終えて一刀は『華琳のような立派な指導者にはなれなくても人のためになにかしたい』と思い立ち警察官を目指し大学へ進んだ。

 

あの日々で体験した3人の頼れる部下と取り組んだ平和な町を守る仕事。

 

空はいつも青く、人々はいつも笑顔で溢れ、武将や文官と町へ出かければ必ず賑やかになったあの町を守る―――。

そんな仕事だからこそこ魏の皆と繋がっている気分で苦しくても信念をもってやり続けることができる。

 

そんな気がしたからだった。

大学3年のある日、家に帰ると卒業後就職した及川から手紙が届いていた。

 

それは結婚式の招待状。

 

相手は俺に告白を断った理由を聞いてきた女子生徒だった。

 

すぐに及川に電話でお祝いのついでに馴れ初め聞くと、

「かずピー。そりゃ野暮ってもんやで」と話してもらえなかった。

 

すごく幸せだと及川は喜んでいた。

 

結婚か……。俺の想い人は同じ空も見ることができない遠い世界で何をして、何を思って毎日を過ごしているんだろう。

 

「華琳……。会いたいよ……」

 

窓から覗く月に向かってポツリと漏らしていた。

結婚式当日―――

 

新郎の友人席で俺は本当に幸せそうな二人を見て二人を祝った。

 

高校の友人は新郎新婦共に多く招待しており、知っている顔が何人もいた。

 

俺はビール瓶片手に及川達改め及川夫妻へ酌をしに向った。

 

「二人とも。おめでとう」

 

「ありがとうございます。北郷さん、今日もカッコイイですね」

 

「サユぅ、もう俺の妻なんやから。ってかかずピー、色目使こおて人妻に手ぇ出すんが趣味なんか!?」

 

「いや、そんなわけないから。ってか奥さん経由で俺をいじるな」

 

「じょーだんやって。せやけどホンマありがとうな。今日は本当に幸せや」

 

「及川、違うだろ。『今日も幸せ』だろ?」

 

「せやな。ホンマありがたいわ」

 

微笑みあう二人がやけにまぶしく見えた。

 

幸せな二人を羨ましく思いつつ、いつまでも仲睦まじく続くことを祈った。

式の後に催された2次会を終え、「久しぶりに会ったんだから次の店に行こう」と誘われたが飲み過ぎたし明日も早いから、と真っ直ぐ帰ってきた。

本当に結構な量を飲んでいたため、酔いを醒まそうと部屋の窓を開け涼んでいる。

 

滅多に吸わないタバコを吸って今日を振り返る。

 

(及川、幸せそうだったよな……)

 

夜空を見れば月が出ていた。

 

「華琳との最後もこんな綺麗な月だったよな……」

 

酔っているせいか、あの世界での毎日の出来事が脳裏に甦りつぶやいた。

 

「華琳……以外と結婚はだとできないと思うんだよな……。だって結婚するってことはその人を人生の伴侶にするってことだろ?」

 

やがて肩が震え始めた。

 

「俺はお前の物なんだよな。あのときお前の背中は俺に行くな、寂しいって言ってるように感じたよ……。図々しい……かな。お前はさ、王らしく俺を送り出そうとしてくれたんだよな。華琳らしいし俺もその方がよかったって思っているんだ。……いるんだけどさ……」

 

やがて雫が1滴、また1滴と床に落ち―――

 

「……なんだろうな。お互い、見得みたいなの張っちゃって……。悲しくないようにしようって……、気を遣いあっちゃったんだよな……っ」

 

「華琳……っ、俺はすごくお前に会いたいっ、お前に触れたいっ!声が聞きたいっ……!……~~っ」

 

嗚咽をかみ殺し、そばにあったクッションに顔をうずめる。

 

「馬鹿……」

 

「っ!!」

 

振り返ると月明かりに照らされた愛する人がそこに、いた。

「か……華琳、なのか?」

 

涙も拭かず信じられない、といった表情で華琳に近づく。

 

「涙で私かどうかも分からないの?」

 

華琳も涙を溜めて近づく。

 

「でも、……なんで……?」

 

手を伸ばせば触れる距離まで来た。

 

「一刀……。私から離れて寂しくて、辛くて、むなしい思いをしていたのは貴方だけじゃなかったの……。私も、皆だってそうだったわ。だから願ったの。胡蝶の夢だろうがなんであれ北郷一刀は私達といた。じゃあ逆に私達が貴方を想えば会えるかもしれない。あの日々が皆を結びまた合えるんだ。って」

 

「華琳……」

 

華琳の瞳からも雫が落ちた。

 

「貴方のいない毎日は辛かった!起きても寝ても!何をしても一刀と一緒だったらなんて考える私がいるの!いくら振り払おうとしてもだめなのよ!」

 

初めて見る華琳の激しい告白は魏国の王曹操ではなく、年相応の少女華琳のものだった。

 

「……華琳もういい、もういいよ。こうして会えた。それでいいじゃないか。華琳の想い、伝わったよ。俺も辛かった」

 

「一刀っ!私、会いたかった!」

 

二人は抱きしめあい、月の輝きが作った影は一つになる―――――

 

 


 
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