「って、こんなのやってられるか!」
血まみれの白蓮が立ち上がった。
いや、血糊まみれの、か。
「白蓮殿、勝手に動かないでくだされ。今は死体なのですぞ」
どこか見覚えのあるようなないような(及川経由で)、「超監督」と書かれた腕章をつけた星がやって来た。
……俺としては、白蓮の気持ちが痛いほどわかるのだが……。
おっと、説明を忘れていた。
そう、俺たちは今、間もなくに迫った懇親会(という名の宴会)に向けた余興の一つとして、演劇の練習をしているのだ。
……って、誰に説明してるんだ、俺。まあいいか……。
「……ところで愛紗。そろそろ離してもらってもいいかな?」
抱き枕よろしく、愛紗の胸に抱えられていた首を離してもらうように頼んだ。
本来ならもうしばらく胸の感触を……と思うところだが、その感触がごわごわして今一なのだ。
というのも、愛紗の胸元にはでかでかとした文字で「天和の代役」と書かれた紙が付けられ、いつものように柔らかな……とはいかない状況になっている。
「……はっ! こ、これはご主人様、失礼しました!」
俺はようやく愛紗に解放してもらった首を摩りながら星に話しかけた。
「なぁ、星……。この脚本、もう少しどうにかならなかったのか……?」
こちらもまた、どこかで見覚えのあるようなないような(当然及川経由)ものになっている。
いいのか、これで……?
「何をおっしゃいます主。素晴らしい脚本ではありませぬか」
しかしそんな星の言葉に真っ先に反応したのは白蓮。
「いやいやいや、それは絶対ないから」
「白蓮殿は何が不満なのだ? いつも影が薄いと言われておるのを不憫に思い、今回は主役に抜擢したのです。これならば人気投票は三位。不人気投票ならば二位間違いなしですぞ!」
「って、主役なのに三位なのかよ! つか不人気投票で二位って、人気投票よりも順位が上じゃないか!」
……安心しろ、白蓮。不人気投票の堂々一位は間違いなく俺になるから……。
というか趙雲さん。どんだけこの舞台に本気なのかと小一時間。
企画・脚本・演出・監督。それにもう一人のヒロインは絶対に天和でなければならないとか言って、曹操と直接交渉。そして出演させるまで漕ぎ着けるとは恐るべし趙子龍……。
華蝶仮面ヒーローショーを見たときから好きな奴だとは思っていたが、まさかここまでの好事家だったとは正直思わなかったぞ……。
「てか、絶対知っててやってるだろ、お前……」
「この私が何を知っているというのですか? さぁ、それより主、白蓮殿も、もう一度通しで練習しますぞ。何せ明日到着する張角は言わば舞台の職人。我々も遅れをとるわけには行きませぬからな」
そう言ってメガホンを取ろうとする星を俺は引き止めた。
「なぁ、星。一応これ読んどけ」
「何です、これは?」
「天界のお約束ってやつだ」
星は差し出された紙を受け取り、
「天の世界には何とも面妖な約束があるのですな……」
と言って、文面に目を通し始めた。
「……どれどれ……。ふむ……この物語はふぃくしょんであり、実在する人物・団体・事件・その他の固有名詞や現象等とは何の関係もありません。嘘っぱちです。どこか似てたとしても、それは他人の空似です。……この物語はふぃくしょんであり、実在する……。……主ぃ、もう一度読まなければなりませぬか? だいたいこの様なこと、当たり前ではありませぬか……」
……まぁ何だ。いろいろ混ざってる気がしないでもないが、これでよしとしよう。
終わりよければ全てよし!
「おい待て北郷! 私は全然よくないぞ!」
……ああ、白蓮を忘れてた……。
よし、これならいいだろう。
頑張れ白蓮。負けるな白蓮。いつか「がっかり」なイメージを払拭するその日まで!
「それでも全然よくなーーーーーーーーい!」【未完】
いや、【完】だって……。
これ以上どう続けろって言うんだよ……。【本当に完】
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