No.650363

真恋姫無双幻夢伝 小ネタ5『真桜の閃き その2』

あけましておめでとうございます!今年も御ひいきによろしくお願いします。
今回も真桜が頑張ってくれます。

2014-01-01 00:06:53 投稿 / 全4ページ    総閲覧数:2573   閲覧ユーザー数:2261

   真恋姫無双 幻夢伝 小ネタ5 『真桜の閃き その2』

 

 

「それでは、新年を祝して」

「「かんぱーい!!」」

 

 アキラの号令で李靖軍の新年会が始まった。汝南城内の宴会場に集まった武将や文官たちが一斉に盃を交わす。

 昨年度独立したばかりの李靖軍。今年こそは悲願であった袁術軍打倒を掲げ、それによってかこの宴会における士気も高い。各将の飲酒のスピードが速く、忘年会と同じように混沌と化してきた。

 そんな中、部屋の一角で酒を飲む真桜の姿があった。彼女は宴会場全体の酒のありかを見ていた。凪や沙和と共に華雄に次ぐ実力者である彼女は、李靖軍全体にも気を配らなければならない。もちろんこの宴会においても。決して自分の酒を確保するためではないのだ。

なんてことを考えていると、ふと彼女は閃いた。

 

「そういえばうちらの“軍師”って誰やろ?」

 

 

 

 

 

 

 翌日、彼女は早速街に出かけた。自分たちの軍師が誰かを見極めるために。

 

「まずは華雄副隊長やな」

 

 李靖軍におけるNO.2とは名実ともに彼女のことである。普段は適当に過ごしているアキラに対して叱咤を加えているのも彼女だ。的確に助言を与えられる立場ではある。

 華雄を探していた真桜は、街角でその姿を発見した。縁側に座って小さな子供と将棋を打っていた。その表情は真剣そのものだ。

 

(さすがは副隊長。本気で子供に教えているのやな)

 

 ところが、しばらく見ていると華雄は思いっきり子供に頭を下げた。そしてその子供が盤上に指を向けながらぶつくさと話しているのを、神妙に聞いている。

「あっ」と声を上げて、ようやく真桜は気付いた。

 

(こ、子供に教そわっとるー!?)

 

 教えを乞うている彼女の目は本当にキラキラと純粋な目をしていた。いつの間にか正座をして、子供の話にいちいち頷く姿は、面白さを通り越してシュールだ。

真桜は慈愛の眼差しを向けながら、その場を立ち去った。

 

「あかん!あかん!やっぱり軍師は頭が良くないと」

 

 真桜は次のターゲットを決めた。沙和だ。

 普段はほんわかとしている彼女は実は真桜と凪の中でも一番頭が良い。一緒に通っていた学問所では、成績はいつも沙和・真桜・凪の順であった。李靖軍に所属してから身に着けた兵士訓練手法は、傍目から見ればドギツイものではあるがしっかりと成果は上がっている。

 

「自分の性格も変えられるし、臨機応変能力はバッチリやな」

 

 歩きながらキョロキョロと探していると、ある服屋の奥から彼女の声が聞こえた。

 

「えええ~~~!!」

 

 何事かと思って真桜は扉に体を隠しながら、沙和と店員の話を聞き始めた。

 

「福袋がもう無いってどういうことなの?!」

「申し訳ございません。本日分は売り切れてしまいまして」

 

 今年から始まった汝南の福袋は、その評判を聞きつけて洛陽や陳留から客が来るほど人気だ。こんな昼近くになって買いに来るやつが悪い。

 

「あ、明日の分!明日の分を買うの!」

「お客さま、それはちょっと…」

「買うの~!!」

 

 涙目の彼女はそのまま店内の床に転がり、困り果てる店員に向かって駄々をこね始めた。(子供か!)と誰からもツッコミが入るだろう。冷静さの欠片も無い。

 真桜は「あちゃー」と小声で漏らして、見ていられないといった感じでその場を後にした。まだ店内からは沙和の声が聞こえてくる。

 

「副隊長もダメ。沙和もダメ。う~ん」

 

 そこまで考えた真桜はふと立ち止まった。

 

「あれ?ということは」

 

 

 

 

 

 

 二日後、凪はいつもと様子が違う真桜の姿を見た。

 

「なんだ、その恰好?」

「ふふふ。これはやな、軍師の服装や!」

「軍師?」

 

 ドヤ顔の真桜に対して凪は首をかしげる。大きめの冠を被り、右手で羽扇をふわふわと動かしていた。

 

「隊長がこの格好がええって言ったから間違いない」

「なるほどな?」

 

 “隊長”という言葉に弱い彼女は思わず納得してしまうが、どうも腑に落ちない。大体、真桜が軍師とはどういうことだろうか。

 真桜は彼女の疑念を察したのか、言葉を付け加えた。

 

「まあ気持ちは分かるで。でもこれはしょうがないんや」

「しょうがないって…。それにしても何か足りないような」

「格好はこれで良いはずやけど、隊長は、あとは光線が撃てれば完璧やって言っとったな」

「光線か。それなら撃てるぞ」

 

 そう言った凪は空に向かって気弾を発射した。わざわざ光線に見えるように、細長く長時間撃っていた。

 

「こんなものでどうだ?」

「負けました」

「えっ」

 

 こうして李靖軍の軍師は決まった。

 

 

 

 

 

 

 後日、アキラの執務室にて。

 

「隊長。こちらの仕事もお願いします」

「ええ~!やっと一区切り入れようと思ったのに」

「そうは言われましても」

「凪、お願い!代わりにやって!今度晩飯奢るから」

「そ、それは……分かりました」

 

 その姿を同僚たちはしっかり見ていた。

 

「やっぱりあかんな」

「従順すぎるの…」

「とりあえずアキラをとっちめてくるか」

 

 彼らに軍師が出来る日はくるのだろうか?

 


 
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