No.644756

【獣機特警K-9ⅡG】復讐の凶弾【交流】

古淵工機さん

自然保護区を襲う、黒い憎しみに包まれた復讐劇。
マイとナディのピンチに、シンディが、そしてK-9隊が吼える!!

今回はこちらの話(http://www.tinami.com/view/637720 )に出てきた女性隊員さんが殉職してます。
あとこの話(http://www.tinami.com/view/638199 )にいたザリャーさん再登場。

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2013-12-12 23:50:31 投稿 / 全14ページ    総閲覧数:630   閲覧ユーザー数:566

「いたぞっ!逃がすなぁっ!!」

それは2年前のことである。ラミナ自然保護区ではサイの角を目的とした密猟が発生していた。

ANCFのレンジャーが、密猟にあたっていたイボイノシシ形ファンガーと、ジャガー形ファンガーの二人組の男を追っていた。

 

逃げ回る密猟者の足元の地面に、数本の矢が刺さり、男達は足止めを喰らった。

「くっ、くっそぉ…」

「観念しろ!オマエ達、サイ達殺した。自首して罪償え!!」

弓矢を男達に向け、レンジャーの一人であるナディが迫る。

数時間後、男達は警察に引き渡され、自然保護区に一応の平和が戻ったのだった。

「…へー、そんなことが2年前にねえ」

と、ビーフジャーキーを頬張りながらシンディがつぶやく。

「ナディ、あいつら警察引き渡した。しばらくサイ達、殺されなくて済む。でも…」

と、当時を振り返るナディに、シンディが同調する。

「わかってる。密猟者は消えたわけじゃないんだ。あたしも昔は毛皮目当てに何度か殺されかけたし…」

「それにしてもマイ、遅い。そろそろ帰ってきていい頃」

「マイちゃんを乗せていったウサギのお姉さんからも連絡なし。どうしちゃったのかな…」

 

その時、血相を変えてトラ形ファンガーのザリャーが飛び込んできた!

「おい!大変だ!C地区の森の近くで…」

「まさか、密猟だっていうの!?」

ザリャーの言葉に驚くシンディとナディ。

「とにかく来てくれ!大変なことになってんだ!!」

「わかった!ナディ、弓矢持ってすぐ行く!!」

「あたしも…武器はないけど…すぐ行くよ!!」

シンディとナディは、ザリャーの運転する車に乗り込みすぐ現場に急行した。

しばらく走っていくと、そこはかつてサイの密猟があった場所である。

「まさか、奴らサイ達を殺すつもりじゃないだろうね!?」

シンディがザリャーに訊ねる。

「…銃声が聞こえたポイントは間違いなくこのあたりだ…マイたちもそれを発見してるんだろうぜ」

「よし!ナディ、密猟者懲らしめてやる!!」

意気込みも強く、三人が銃声の聞こえたポイントに向かったそのとき、目の前には信じられない光景が飛び込んできた!!

 

「…あれは…マイたちが乗ってた車だ!!」

「なに!?」

ザリャーが発見したのは、ANCFのレンジャーが使用する車だった。

よく見るとそれは、燃料タンクに銃弾を喰らい炎上していた。

そして、そのすぐ近くにはウサギ形の女性隊員が倒れていたのであった。

すぐに車を飛び降りるナディ。

「おい!しっかりしろ!大丈夫か!!」

「…う、う…!」

彼女はナディにとっても馴染み深い相手だった。

6年前、ナディをこの自然保護区に迎え入れ、フローラを紹介したあの女性隊員だったのだ。

ナディにとって見れば面倒見のよい姉のような、身近な存在だったのである。

「な、ナディ…ちゃん…」

 

しばらくしてシンディも降りてくる。

「ナディ!?一体どうした…の…!?」

次の瞬間シンディも驚愕の表情を浮かべた。彼女もまた、この女性隊員のことを知っていたからである。

シンディがまだ普通のトラだった頃、銃弾で撃たれて傷ついた彼女を介抱してくれたのが、この女性隊員だったのだ。

 

二人が驚いたのも無理はない。女性隊員は腹に一発の銃弾を喰らっていた。

炎上する車から逃げ出したところを撃たれたのだろう。

「そんな…ウソだよ…お姉さん、どうして…!!」

シンディの頬に涙がこぼれる。

「ナディちゃん…それにシンディちゃん…2年前のサイ密猟のこと…覚えてるわよね…?」

「覚えてる。この場所で、サイたくさん殺された…!」

「そう、奴らが帰ってきたのよ…刑期を終えてね…うっ…」

「おい!しっかりしろ!…そうだ!マイ知らないか!?」

ナディは女性隊員の体を揺さぶる。

 

女性隊員はかすれた声でナディに告げた。

「マ…、マイ…ちゃん…は…、奴らに…」

「そんな!お姉さん!!」

「お願い…マイ、ちゃん…を…た……す―――――」

女性隊員はそう言いかけて、ナディの腕の中で息を引き取った。

「そんな、ウソだ…ウソだ…!ウソだぁぁぁぁ!!うわああああああああ!!!!」

ナディは、自分を育ててくれた人物の死に大声で泣いた。シンディも嗚咽を漏らし、やがて泣き崩れた。

 

しばらくして、泣いている二人にザリャーが声をかける。

「…泣きたいのはわかる…でも今は、マイを探そう。このままじゃ彼女も危ない!!」

「わかってる…ナディ、絶対マイ助け出す!!」

ナディとシンディは、涙ながらに拳を握り締め立ち上がった。誰より愛する友を助け出すために。

しばらくすると、ザリャーが一台の車を発見した。

中には誰もおらず、乗り捨てられている様子である。

「見ろ!奴らの車だ!!」

「ということは…奴らはまだこの近くにいるの!?」

…シンディのその予想は的中していた。

大自然の中で鍛え上げられたナディの動体視力が、林の中に二人組の男を発見したのだ。

そしてその男の目の前には…忘れるはずもない友人の姿。

「マイ!!」

「あ、おい!!」

ナディは弓矢を携え車から飛び降りると、すぐさま男達の方へと走る!!

その頃。

「…来ないでください…!さもないと、さもないと撃ちます!!」

迫り来る男達に対してマイは銃を構えていたが、その瞳は涙に潤み、声は恐怖に震えていた。

「…へぇ、俺達が撃てるのかなレンジャーのお嬢さん!」

と、イボイノシシ形ファンガーの男が不気味な笑みを浮かべる。

「俺達ゃぁ貴様らレンジャーのせいでひどい目にあったんだ。だから殺しても文句ねえよな?ん?」

と、ジャガー形のほうも続く。

 

「…ま、まさか、あなた達がここに戻ってきた目的って…!」

マイの言葉に、イボイノシシの男が声を張り上げる。

「そう!そのまさかだ!!貴様らへの復讐…レンジャー狩りよォ!!」

「せいぜいあの世で祈るんだな…じゃぁ…あばよ…!」

ジャガーの男が撃鉄を引こうとしたその時である。

突然、数本の矢が二人組めがけて飛んできたかと思うと、近くの地面に突き刺さる!

「なっ…この矢はまさか!?」

「貴様…あの時のガキかよ!!」

「ナディさん!!」

男達が振り返った先には、ナディが弓矢を構えて立っていた。

 

「…オマエ達、あの時の密猟者か…!」

「だったらどうだというんだ?貴様も銃の的になるか!!」

「…オマエ達、ナディの恩人殺した。そして今、ナディの友達殺そうとしている。今度という今度、オマエ達絶対許さん!」

ナディの頬には涙が伝っていた。弓を引く手に力が入る。

しかし男達はひるむ様子を全く見せない。

「くっくっく、許さんだと?それはこっちの台詞だぜ!死ねぇーっ!!」

イボイノシシの男が、アサルトライフルを発射する!ナディは弓矢を放ち、銃弾を弾き返した。しかし…。

「ぐあっ!!」

「ナディさんっ!!」

もう一発の銃弾がナディの右肩を掠める。血が流れた肩を押さえるナディ。

「く…そ…これじゃ、弓矢使えない…!」

「選ばせてやるぜぇ?頭か?心臓か?クックック、さぁどうする!!」

イボイノシシの男がナディに近づく。

 

すると、マイが銃を再び構えて男の背に狙いをつける。

「ナディさんに…ナディさんに手出しはさせない!」

だが、ジャガー形の男がマイの首筋にナイフを突きつける。

「おおっと。そのトリガーを引けばてめえもあの世行きだぜ?」

「くっ…!」

絶体絶命のピンチ!もはや二人の命運も尽きたか、そう思われたときであった。

「ぐおっ!?」

「ぎゃあ!!」

突然、飛び出してきた物体に跳ね飛ばされる男二人。

その衝撃でイボイノシシ男はライフルを、ジャガー男はナイフを取り落としてしまった。

「シンディ!!」

「シンディさん!!」

そう、飛び出してきたのはシンディだったのである。

その瞳は野生の頃と同じ…狩りをするトラの眼光そのものだったのである!!

 

「…あんた達、覚悟しなよ。あたし今ものすごーく腹が立ってるんだ」

「お、おい…マズいぞ!!」

「な、なんだよ!慌てるこたねえ!すぐに武器を…」

武器を取ろうと立ち上がる男達。だがシンディは間髪いれずに飛び掛る!

「ぐぁぁぁう!!」

「うわ、うわぁっ!?」

「グルルル…なんだったら今ここで…のど笛食いちぎってやったっていいんだよ…!?」

シンディの鋭い牙が、男達に向けられる。

「くっそぉっ!!」

「ぎゃ!!」

イノシシの男はライフルの銃床でシンディを殴りつけた。

衝撃で後ろに倒れるシンディ。

「おい、早くズラかろうぜ!!」

「お、おう!」

ジャガーの男はイノシシの男を連れて車に乗り込み、逃げ出した。

 

「みんな無事か!?」

しばらくしてマイ、ナディ、シンディのもとにザリャーが到着する。

「ザリャーさん!すぐ追いかけよう!あいつらまだそう遠くには行ってないみたいだ!!」

「そう遠くへ…ってシンディ、わかるのか?」

「長いこと野生だったんだ。それに…今のあたしはどうしてもあいつらを許せない!!」

「OK!振り落とされるなっ!!」

ザリャーは勢いよくアクセルを踏み込み、フルスピードで二人組の乗った車を猛追する!!

かくして大草原のカーチェイスが始まった。

突然の出来事に、逃げ惑う動物の群れをかきわけ、二台の車が激走する!

しばらくして二台は、崖のふもとに差し掛かった。

「くそっ!もう追ってきやがったか!!」

「あのトラ女め…こうなりゃ車ごとぶっ飛ばしてやらあ!おい、出せ!!」

ジャガー男の指示でイノシシ男が取り出したのは、ロケットランチャーだった!!

イノシシ男はロケットランチャーを、崖目掛けて発射する!!

 

「うっ!?あぶねえ!!」

咄嗟にブレーキを踏み込むザリャー。

その次の瞬間、ロケットランチャーによって爆破された岩が車に激突する。

「きゃあ!」

「ぐっ…おのれっ!!」

足止めを喰らった車。そのすぐ上では、巨大な岩が今にも落ちようとしていた。

 

「駄目だ!このままじゃあの岩の下敷きになる!この車はもう乗り捨てるぞ!!」

「はい!」

「おう!!」

「うんっ!!」

すぐに車から脱出するザリャー、マイ、ナディ、シンディの四人。

そして四人が脱出し、離れた場所へ移動した直後、大岩が車を押しつぶした。潰された衝撃で爆発炎上する車。

 

「ふー、危なかった…」

「もう、完全に頭きた!!あいつら…一体ドコ逃げたんだよ!!」

と、爪を立てて二人組が逃げた方向に向け威嚇のポーズをとるシンディ。

いっぽう二人組はというと…。

「上手くまいたな?」

「ああ。あの様子じゃきっと奴らも今頃お陀仏だぜ。さて、次の獲物を探しに…?」

突然二人組は足止めを喰らった。彼らの目の前に停まっていたのは、プラネットポリスのパトカーだった!!

 

「…呆れた。動物狩りに懲りたと思ったらこんどはレンジャー狩りとは」

目の前に立っていたのはK-9隊隊長のクオンだ!その隣には3号機のイシス、8号機のソラ、9号機のミライが立っていた。

「あなたたち、覚悟は出来ているんでしょうね?殺人の現行犯で逮捕します!」

「くそぉ!そこをどかねえか!!」

イノシシ男は、こんどはマシンガンをK-9隊に向けて撃ちまくる。

だが、クオンはすぐさまスタンロッドを取り出すと、華麗なロッドさばきで次々に弾丸を撃ち落としていく…!

 

「うっ!?くそっ!こうなりゃ強行突破だ!!」

銃が効かないとわかるや、ジャガー男は一気にアクセルを踏み込み、突進する!!

「バカな!血迷ったか!?」

「みんな気をつけろ!!突っ込んでくるぞ!!」

勢いよく突進してくる二人組の車。だが…。

「う、うわあああああああああ!!!」

突然目の前を横切ったゾウの群れに驚き、ジャガー男は急ハンドルを切った。

結果、バランスを崩した車はそのまま横道にそれ、近くにあった岩に激突、そのまま爆発炎上したのであった。

 

「…あ、危ないとこでしたね隊長…!」

と、安堵のため息をつくミライ。

「でも、これでもうレンジャーの皆さんも襲われなくて済むんですよね…」

と、ソラ。その言葉を受けたクオンは、イシスのほうに向き直り告げる。

「イシスさん、今回の事件は解決…被疑者死亡のまま書類送検でお願いします」

「了解しました、隊長」

かくて、密猟者の復讐劇は思わぬ形での幕切れとなったのであった。

…それから数時間後、ベースキャンプ。

「…どうか安らかに眠れ…ナディの大切な人…」

ナディが祈りを捧げたその場所は、かつて殺されたゾウのフローラの墓の隣。

そこには、ナディとシンディにとって最大の恩人であったウサギ形の女性隊員の墓が作られていた。

 

「クオンさん…」

マイは涙ながらに訴える。

「どうして、どうしてみんな、憎しみあって…殺しあうんでしょうか?みんな、この星に生きている命なのに…!」

シンディもマイに同調する。その頬にはやはり涙が伝っていた。

「あたしもナディやマイと同じ気持ちだよ。動物だってテラナーだってファンガーだって、あんた達ロボットだって生きてるのに…!」

クオンはしばらく二人を見つめていたが、やがてこう答えた。

 

「…僕にもわからない。何故簡単に命を奪い合うのかなんて。憎しみがそうさせるのか、それとも欲望がそうさせるのか…」

「クオンさん…」

「でも、弱い者が一方的に殺されるなんてのは嫌いだし、それが引き金になって永遠に殺し合いが続くのもイヤだ。だから僕たちは戦ってるのかもしれない…」

クオンが振り返ると、イシスが、ソラが、ミライが深く頷いた。

「…君達レンジャーが自然を愛するのと同じように、僕たち警察も市民の命を愛する。これからも一緒に戦っていこう!」

「はい!ありがとうございますクオンさん!」

「クオンタイチョー、いい人だ!だから絶対負けないよな!」

「あたしも戦うよ。同じ自然の中で生きる者だもん!」

 

いつしか自然保護区は夕陽に照らされていた。

K-9隊とANCFのレンジャーたちは、その夕陽を前に今、改めて巨大な悪と戦い抜く決意を固めたのであった。

 

 


 
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