No.644303

【獣機特警K-9ⅡG】盗まれた真実【交流】

古淵工機さん

軍の兵器工廠で繰り広げられる闇取引。
真実に迫る一人のジャーナリストと、鍵を握る一人の軍人。
そして麗しき黒い影が、巨大な陰謀に立ち向かう!

■出演

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2013-12-10 23:05:07 投稿 / 全11ページ    総閲覧数:594   閲覧ユーザー数:560

「ここね…あたしの勘が正しければ、この兵器工廠の中に…!」

 

ここはフェザントヒル近郊に置かれているファンガルド陸軍の第13兵器工廠。

その柵の外側でじっとカメラを構える一人のジャーナリストの姿があった。

彼女の名は今川 美歩、ファンガルド最大の新聞「ラミナ・トリビューン」のカメラマンである。

 

「…出てきた!陸軍の関係者のほかに…別の服を着た集団。正規の軍隊じゃないわね…」

しばらくするとその二組の集団の間に、黒服を着た別の集団が現れたのを美歩のファインダーがとらえた。

「…あの黒服…あれはもしや、ブラッドファミリー!?…これは特ダネよ…すぐにでも報道しなければ…」

と、美歩がシャッターを切ろうとしたこの瞬間だった。

「…よぉ、精が出るな」

ふと、美歩が後ろを振り返ると、ガラの悪そうなジャッカル形ファンガーの軍人が一人。

「!!」

「だがアンタは見ちゃいけねえもんを見ちまったようだ。しばらく眠ってな!!」

「がっ…!!」

突然、ライフルの銃床で後頭部を殴りつけられ、その場に倒れる美歩。

すると傍にもう一人の人影…。ブラッドファミリーの暗殺ロボット、モンド・ユーベルが現れた。

 

「あぶないトコだったよあーた。もー少しでウラ取引バレそうだったし」

「ああ、まさかこんな所で裏取引してるってコトがバレたら俺たちだってどうなるか。ところでコイツどうする?」

「そーねー。カメラの記録媒体抜き取っちゃったらどーよ?あとはテキトーにその辺に捨てときゃよくね?」

「そうだな。よいしょっと…しかしいいカラダしてやがる。捨てるのもったいないくらいだぜ」

「ヘンなこと考えない方がいいって。ま、コイツが目覚ましたときの顔が浮かぶ浮かぶwww」

というやり取りの中、軍人は傍に停めてあった軍用車両に、気絶している美歩を乗せると、そのまま工廠を離れていった。

 

そしてそれから数時間後、兵器工廠から数キロ離れた森林地帯の中の道路にて。

「…やれやれ。ま、恨むんなら知りすぎた自分自身を恨むんだな。あばよ」

男は美歩をぞんざいに道端へと投げやると、そのまま引き返していった。

…それからさらに数十分後。

車もあまり通らないような道を、一台のSUVが走っていた。

SUVを運転していたのは陸軍ラミナ指令本部のニコ・タカハラ大佐である。

 

「んー!ひさびさの休日だ。いつも訓練にパトロールでここんとこ休むヒマなかったからなー」

と、軽快に車を飛ばしていくニコ。だが、しばらく走っていくと、彼女の目にあるものが映った。

「…あれは!?人が投げ捨てられてるのか!!」

ニコはすぐさま車を停めると、倒れている女性に駆け寄る。

 

「おい!おい!!大丈夫か!!しっかりしろ!!」

ニコに身体を揺さぶられ、美歩は目を覚ました。

「ここは…?確か、あたし…突然後ろから殴られて…」

「気がついたんだね。よかった…とにかくこの写真を…」

と、美歩がカメラの中から記録媒体を取り出そうとしたそのときだった。

 

「…ない!ないわ!?そんな…確かに撮っておいたはずなのに!!」

その様子を見てタダ事ではないと察したニコは、すぐに美歩を車に乗せる。

「…なんだかわからないけど、詳しい事情を聞かせてくれない?あたしは陸軍ラミナ指令本部所属のニコ・タカハラ大佐。出来ることなら協力するよ、新聞記者さん」

「あたしはラミナ・トリビューン社の今川 美歩…感謝するわ、ニコ大佐」

美歩とニコ…顔貌も似通った二人は、ある場所を目指して走り始めた。

…バー『Fox Tail』。

「いらっしゃいニコ大佐。あれ、そちらは確か新聞記者の…」

出迎えたのはこの店のオーナーでキツネ形ロボットの長谷川 麗。

「オーナー、ちと深刻な話なんだ。少々きつめのバーボンを頼む」

「…?え、ええ…すぐに用意するわね」

少々面食らいながらも、ウララはすぐにバーボンを二人分用意する。

 

「…それで後ろから殴られて、起きたときにはあの道端に捨てられていた上に、記録媒体を盗まれてたってわけか」

「ええ。あの記録媒体には、軍の裏取引らしい様子が映っていたの…ブラッドファミリーのギャングスターらしき影もちらほらとね」

「なんだって!?よりによって陸軍(ウチ)がブラッドファミリーと…!!」

美歩の言葉に、ニコは歯を食いしばった。

「それで!?取引があったって場所は!?」

「第13兵器工廠よ。フェザントヒル郊外の」

その言葉に、ニコは拳を握り締めながらバーボンをあおる。

「…第13兵器工廠か。どうも最近妙な動きをしてるって噂だが…一体あいつら何を企んでいるんだ?」

「…え?もしかして大佐も、裏取引のことが…」

「気になるさ。気にならない方がおかしい。身内ならなおのコトさ!でも…」

ニコはしばらく押し黙った後に続ける。

「確固たる証拠がない以上、下手に動くわけにも行かない。ヤツらどんな汚い手を使ってごまかすか…!!」

…その話し声を、店の外で聞いている者たちがいた。

トリッカーズの怪盗ラピヌ、ルプス、バニーの3人だ。

「…バニー、店内のドクトランぬいぐるみ形マイクの感度はどう?」

「うん、バッチリよ。どうやら今回は陸軍が何かやらかしたみたい」

「どうもあの新聞記者さん、証拠写真を抑えたって話だが…それを相手方に押さえられてるんじゃぁな…」

「どうするの?このままじゃ裏取引が誰にも知られないまま…」

「手はあるわよ。兵器工廠に侵入して記録媒体を奪い返せばいいのよ。そうよねルプス?」

「そうだなラピヌ。お前ならそう言うと思ってたぜ!」

「やだもう!フフ、ルプスったら…」

「ラピヌ…///」

「ルプス…///」

 

相変わらず唐突にいちゃつき始めるラピヌとルプス。

(…テオ君…)

その様子を見つめるバニーは、顔を赤らめながらも、少し寂しげだった。

しかし翌日、事態は予想もつかない方向へ動こうとしていた。

それは、怪盗ディアとヴィクセンが、ラピヌたちのもとへ戻ってきたときのことだった。

「…大変よみんな。兵器工廠に潜り込んだんだけど、例の記録媒体は見当たらなかったわ」

「なんですって!?」

「くそっ!まさかもう相手方に感づかれたんじゃ…!!」

「せっかく敵の目を欺いて侵入したのに…収穫ゼロでした」

まさかの失敗に落胆するトリッカーズ一同。

このまま真実はわからず終わってしまうのかと思われたその矢先のこと、聞き覚えのある声が背後から聞こえた。

 

「…トリッカーズの諸君、それはこれのことですかな?」

「怪盗ノワール!?」

「どうやら、タッチの差で私が先に頂いていたみたいです…この記録媒体で間違いありませんね」

と、記録媒体を取り出しながら得意げに語るノワールに、ディアは歩み寄る。

「…なんだか知らないけど、トリッカーズを代表して感謝するわ。怪盗ノワール」

「お褒めに預かり光栄です。さて、この記録媒体は本当に必要としている者に渡すとしましょう」

そう言うとノワールは指をパチンと鳴らす。

するとどうしたことだろう、ノワールの手に握られていたはずの記録媒体が消えてしまった。

…同じ頃、陸軍司令部内のニコの自室。

「…ふう…これも手がかりナシか。どうも引っかかるんだが…」

と、無数のデータを調べているニコだったが、ふと手元に何かがあることに気がついた。

 

「なんだこれ…こんなモンおいておいた覚えは…!?」

ふと見ると、そこには一つの記録媒体。そして複数の書類とともに一つのカードが添えられていた。

そこには

『親愛なるニコ大佐 第13兵器工廠に関する一連の情報をお届けいたします 怪盗ノワール』

と書かれていた。ニコはやれやれ、と言わんばかりに苦笑する。

「ふふ、まったく…ノワールの奴め…」

 

一方、自宅に戻った美歩はというと…。

「ただいまー…」

「ママ!大変なの!!ママの机の上にこんなものが!!」

娘の和美がなにやら慌てている。それがただならぬ事態であることは明白だった。

恐る恐る、娘から渡されたものを確認する。すると…。

 

「これって…盗まれたはずの記録媒体!!」

さらにこちらにも一枚のカードが添えられていた。

『親愛なる新聞記者 今川美歩様 盗まれていた貴女の大切な物、確かにお返しいたしました 怪盗ノワール』

「…ノワール…噂には聞いていたけど、怪盗とは思えないくらい優しい方ね…」

さらにカードの裏にはこう書かれていた。

 

『追伸 この情報は貴女がご自分で捕えた真実であり、貴女にはそれを報道する権利があります。あとは貴女にお任せします』

「…わかったわ。この真実、このまま風化させるわけにはいかない!!…和美、ママ大事な仕事が出来たからもう少しお留守番お願いね」

「え!?あ、うん…いってらっしゃい!」

…それからしばらく後、陸軍第13兵器工廠。

「ラミナ指令本部、ニコ・タカハラ大佐入ります」

「うむ、入りたまえ」

基地司令室の扉が開くと、ニコを待ち構えていたのはハイエナ形ファンガーの男であった。

「君の戦歴はかねがね聞いているよ。ニコ・タカハラ大佐」

「お褒めに預かり光栄です、ガメツイヤー中将閣下。ところで…一つお聞きしたいことがあるのですが」

「何かね?」

ニコは一枚の写真を取り出してガメツイヤーに詰め寄る。

 

「…この写真に見覚えはありませんか」

「…あぁ、どうせまた誰かがデマでもでっち上げたんだろう」

「ではもし、この写真が真実だとしたら…?」

ニコはさらに詰め寄る。ガメツイヤーは声を張り上げる。

 

「うるさい!俺はそんなものは知らんぞ!?」

「知らないはずがない。ちゃんと証拠はあるんですよ。何故だか知らないけど、私の手元にね!」

と、ニコが取り出したのはノワールから入手した複数の書類。書かれていたのは武器の取引内容が書かれた契約書。

その中にはブラッドファミリーのほかに、反政府武装勢力の代表者の文字があった。

「…き、貴様何が言いたいんだ!?」

動揺するガメツイヤーに、ニコはさらに詰め寄る。

「とぼけたってムダですよ閣下。あなたとブラッドファミリーの間に何があったんです」

「うるさい!知らんと言って…」

ガメツイヤーが言い切らないうちに、ニコは拳銃を抜き放ち構える。

 

「うるさいのはそっちだ。いいからあたしの質問にイエスかノーで答えな。さもなくばあんたの額に穴が開くぜ」

「き、貴様!上官に逆らうのか!!銃を下ろせ!!軍法会議にかけてやる!!」

喚き散らすガメツイヤー。だが、ニコはためらいもなく撃鉄を引いた!!

銃弾がガメツイヤーの脇を掠める。

「に、ニコ…貴様ぁ…!」

「あー、そうそう。言い忘れてたがあたしは上層部とも何かとコネがあってね。こんなのをもらってきたんだよね」

そういってニコはさらに一枚の書類を取り出す。それは…。

「ま、まさか…」

「さっきの書類をちと上の連中に見せたらこいつがでてきたんだ。あんたの逮捕状だよ…」

ニコは逮捕状を手にガメツイヤーに迫る!

「く、来るな!それ以上、俺に近づくな!!お、俺は上官だぞ!!」

慌てふためきサブマシンガンを構えるガメツイヤーに、ニコは銃を向けながら表情一つ変えず迫る。

「抵抗する気かい。ならあんたをここで銃殺しても構わないんだけどね。令状にもそう書いてあるぜ」

「やめろ!来るな…来るなぁぁっ!!」

ガメツイヤーの手が震え、持っていた機関銃を取り落とす。

そしてそのまま壁際へと追い込まれたガメツイヤーの胸倉に掴みかかったニコは、拳銃を突きつけながら言い放った。

 

「え!?ブラッドファミリーを仲介人にして、反政府勢力に武器を売るたぁどういう了見だい!!」

「や、やめろ…やめてくれっ…」

「いいか!軍の装備を売るのは重大な軍規違反だ。まさか知らないはずはないよな!!」

「そ、それは…」

「アンタは自分のしたことがわかってんのか!!…アンタはあたしら軍人を…いや、このファンガルドを売ろうとしたんだよ!!」

「わ…わかった!!俺が悪かった!わかったから撃つなぁぁぁぁぁ!!!」

ニコがガメツイヤーを締め上げていると、後方の扉が開き、ラミナ司令部所属のレンジャー部隊が数名入ってきた。

 

「ニコ大佐!」

「ご無事でありますか!!」

レンジャー部隊の隊員がニコに声をかける。

「ああ。ちょうど売国奴を捕えたところだ。連れていきな!軍法第41条に基づきガメツイヤー中将には軍法会議を受けてもらう」

「「はっ!」」

かくして、ニコの指示でガメツイヤーは連行された。

 

その後、ラミナ・トリビューンがこの違法な軍事取引を報道したことで、密売に関与した第13兵器工廠の士官は次々に連行され、まとめて軍事法廷につるし上げられた。

また同じく密売に関与したブラッドファミリーのメンバーも、プラネットポリスによって順次逮捕と相成ったのである。

…翌日、バー『Fox Tail』。

「ありがとう美歩。アンタが真実を報道してくれたおかげでファンガルドは救われたよ」

「いいえ、あたしだけの力じゃないわ。ニコ大佐の勇気ある行動が…」

と、談笑するニコと美歩。

「…いや、むしろ一番感謝すべきは…」

 

同じ頃、その店外に潜んでいたトリッカーズは…。

「あーぁ、今回はノワールにおいしいトコ持ってかれちゃったわね」

「まぁまぁ、いいじゃねえかバニー。何はともあれファンガルドの危機は救われたんだ。そうだろラピヌ」

「そうね…今回ばかりはノワールに感謝しないとね、ルプス…」

「ラピヌ…///」

「ルプス…///」

「はいはいごちそうさんごちそうさん。それにしても…今回は悔しいけどノワールのおかげね…」

ラピヌとルプスがいちゃつく傍で、ディアは遠い空を見上げる。そして心の中で呟いた。

 

(…ノワール…ありがと…)


 
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