No.64039

流琉と兄様 アフター・ストーリー 前編

komanariさん

たくさんのコメントをいただき、とてもうれしくなったので、がんばって書いてみました。

流琉の話なのに、今回は華琳様の方がいっぱいしゃべっています。

頑張って書きましたが、変な所かあったらごめんなさい。

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2009-03-19 00:56:10 投稿 / 全4ページ    総閲覧数:11459   閲覧ユーザー数:9169

その日の空は、青く、真っ白で暖かな太陽をつかまえられるような気がしました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

流琉と兄様 アフター・ストーリー 前編

 

 

 

 

兄様が消えてしまいました。

 

 

 

あの夜。あの場所から動くことのできなかった私は、華琳様に言われて季衣が私探しに来るまで、ずっとあの場所にいました。

もしかしたら、兄様が抱きしめてくれるような気がして。

もしかしたら、「ただいま」と言ってくれるような気がして。

 

でもいつまで待っても、兄様は抱きしめてくれませんでした。

「ただいま」と言ってくれませんでした。

 

そんな私を見つけた季衣は、そっと私を抱きしめて、

頭をなでてくれました。

 

頬をつたう涙が止まるまで、季衣はずっとそうしてくれていました。

 

私の涙が止まると、季衣が

「お城に戻ろう」

と、私の手を引いてくれました。

 

 

 

お城に着くと、宴はもう終わっていました。

 

しばらく歩いて、魏の皆さんが泊まる部屋がある棟まで来きました。

季衣は手をつないだまま、自分の部屋まで行くと

「流琉。今日は久しぶりに一緒に寝よ。」

と言ってくれました。

 

私はうなずくことしかできませんでした。

季衣は手を引いて、部屋に入れてくれました。

 

そして私たちは、二人で季衣の布団に入りました。

季衣は布団をかぶると、

「流琉。華琳様が兄ちゃんのことについてお話があるから、明日お部屋まで来なさいって。」

そういうと、季衣はギュッと私を抱きしめて、

「おやすみ。流琉。」

と言って、目を閉じました。

私も、季衣に包まれながら、目を閉じました。

 

 

次の日。季衣が部屋まで持ってきてくれた朝食を食べてから、私は華琳様の部屋へと向かいました。

 

 

 

コンッ・・・コンッ

華琳様の部屋の扉をたたくと、

「開いているわ」

という華琳様の声が聞こえました。

こうして、扉を叩いて部屋の人に来訪を知らせるということを、教えてくれたのが兄様であったことを思い出してしまい、また涙が頬をつたっていきました。

 

そうしていると、扉が開き、

「入りなさい」

と、華琳様が私を部屋へと招き入れてくれました。

 

華琳様の部屋に入ると、華琳様は私を椅子に座るように促しました。

 

「流琉。一刀について私が知っていることをあなたに伝えるわ。」

 

ドクンッ

 

胸が高鳴りました。

 

「流琉がイノシシ料理を作った日、一刀は河原で、苦しんでいたわ。」

華琳様はつづけました。

 

 

 

 

 

 

回想~河原にて

 

「華琳か・・・。変なとこ見られちゃったな。」

一刀は背中を岩にもたれさせたまま言った。

「大丈夫なの?」

「あぁ。心配ないよ。昼間に寝ずの番免除のために張り切りすぎただけだよ。」

華琳はじっと一刀の目を見つめた。

「…わたしにそんな嘘が通じると思っているの?」

華琳の言葉の真意を探そうと、一刀は華琳の顔を見つめた。

 

「流琉から占いの話を聞いたわ。」

一刀の顔に一瞬動揺が走った。

しかし、すぐに落ち着いた表情に戻り

「天下の覇王、曹操が占いを信じるの?」

と言った。

「話をはぐらかそうとしてもだめよ。」

華琳は、一刀から目をそらさずに続けた。

 

「流琉が言っていたわ。『兄様はその後に大きな影響を与えると死んでしまうんです。兄様はあまり強くないから、戦いに出ても大きな影響を与えることはないと思います。でも、兄様はすごい作戦を立てることができます。すごい作戦を立てたら、その作戦が後の世に大きな影響を与えてしまいます。だから、兄様が死んでしまわないために、兄様に献策をさせないでください』とね。」

 

華琳は一呼吸置くと話を続けた。

 

「流琉の話を聞いて、私は疑問に思ったわ。あなたが後の世に大きな影響を与えると死んでしまうというのなら、あなたが警備隊の改革を行ったときに、なぜあなたは倒れなかったのか、とね。確かに、戦場での活躍は後に大きな影響を与えるわ。でも、警備隊の改革も、後の世に起こっていたであろう事件を未然に防ぎ、失われたであろう命を救ったという点においては、その後に多大な影響を与えたと言える。ではなぜ、あなたは倒れなかったのか・・・」

 

一刀は華琳が導き出す答えが、自分の出した答えと一致するのだろうと感じた。

そして・・・

 

「それは、流琉のいう一刀が死んでしまう定義が間違っていたから。そして、その本当の定義は、あなたが後の世に影響を与えることではなく、あなたが本来の歴史を変えることであると私は考えているわ。」

 

その答えは一致した。

 

一刀は華琳を欺くのは無理だと思い、観念した様に口を開いた。

「・・・やっぱり華琳はすごいな。そんな少しの判断材料でそこまでわかるなんてな。・・・でも、なんで本来の歴史だなんて思ったんだ?」

 

 

一刀は疑問に思ったことを聞いた。

一刀は自分が現代の日本から来たということを、出会ったばかりの流琉にしか言っていない。しかも、その時の流琉はその話を理解できずに、ただ「違う国から来た人」と理解していた。

それ以来、一刀は誰かに出身地を聞かれても「東方の国から」と答えていた。

一刀は、人間が自分たちとは違う異端の者を排除するという歴史を知っていたからだ。

もちろん、華琳に初めて会った時も、「東方の国から」と言った。

でも、華琳は「あなたの知っている歴史」と言った。それは、さも一刀が三国志の知識を持った未来から来た人間(正確には違うが)であること知っているような口ぶりだった。

 

 

「あなたの出す策は、政策を含めて、私たちとは違う視点からものを考えているように思えたのよ。なんていうか、私たちが知らないことを知っていて、しかもそれらを知識を基礎として踏まえたような策だったわ。自慢じゃないけど、私はそこらへんの学者よりは多くの書物を読んでいる。そんな私ですら知らない知識を、なぜ大陸ではない、東方の国から来たあなたが知っているのか。そんなことを考えている時に、定軍山の件があった。あの時のあなたは、蜀が伏兵を仕掛けていることを知っているような口ぶりだった。たかが警備隊長が、私の知らないような情報を知っているのはおかしすぎる。この2つの疑問を同時に解決することができるものとして考えられるものの中で、あなたが未来から着たと考えるのが、一番あり得ないけど、一番納得がいくのよ。そしてあなたが未来から来たのなら、私たちがどう言った歴史をたどるのか知っているはず。」

 

(その歴史が本来あるべき歴史だろう。ということか。・・・まいったな。そこまで、ばれていたらどうしようもないや。)

一刀は自分出した答えを華琳に話し始めた。

 

「華琳の言う通り、俺はこの時代の人間じゃない。というか、この世界の人間じゃないんだ。」

 

「なんですって?」

 

「俺の知っている三国志。つまり、この時代の歴史に登場する典韋は男なんだ。曹操もね。というか、有名な人たちはみんな男なんだ。この世界では、みんな女の子だけどね。」

 

華琳は少し考え込んだ様子だったが、一刀は続けた。

「でも、大まかな歴史は一緒だった。だから、俺は定軍山、赤壁と敵の動きを華琳に伝えることができた。それによって、この世界の歴史は俺の知っているものから大きく変わってしまったけどね。」

 

一刀は、現代の日本ではまず見ることができないであろう、美しい星空を見上げた。

 

「占いについては、俺も華琳と同じ意見なんだ。そして、もしその答えが正しいなら、もう俺の破滅は避けられない。俺の知っている歴史では、曹操は赤壁で大敗を期して三国を統一することはできなかった。でもこの世界では、魏の三国統一は時間の問題だ。つまり、赤壁で俺が華琳に俺の知っていることを話した段階で、俺が消えることは確定したんだよ。・・・たぶんね。」

 

華琳は一刀を慕う大切な部下のことを思った。

「流琉にはいつ言うつもりなの?」

 

星空から華琳に視線を戻した一刀はすこし、悲しそうな顔をした。

「この戦いが終わってから。自惚れかもしれないけど、そうでなければ、流琉はこの先の戦えなくなってしまうと思うんだ。もし戦えたとしても、命を落とす危険性が格段に上がってしまう。」

 

「流琉が戦えなくなれば、私たちが勝てる可能性が下がるわ。そうなれば、私が天下を統一する可能性も下がる。そうなれば、あなたは破滅を免れることができるのではないの?」

華琳は王としてではなく、一人の人間として一刀に訪ねた。

 

「もし、そうなったら、流琉が命を落とすような、他国の英傑との戦いが続くことになる。しかも、もうすでに俺の知っている歴史とは違うから、今度は流琉を助けることができない。そんなの嫌なんだよ。自分だけが生き残るために、好きな人を危険にさらすなんてさ。」

 

「それは、流琉も同じなのではないの?あなたが死んでしまったら、流琉はその苦しみを味わうのではないの?」

 

華琳の問いかけに、一刀は、困った顔をしてしばらく考え込んでから。

「そうかもしれない。流琉にとってはひどいことかもしれない。でも、これは俺のエゴ。・・・わがままなんだ。それに・・・」

 

「それに?」

 

「俺は死なないかもしれないし。というか、死なないと思う。」

 

「はぁ!?あなたはさっき、自分で、消えてしまうことは決まっていると言ったじゃない。」

 

一刀はどう説明しようか少し考えているようにしてから

「う~ん。うまく言えないけど、死ぬんじゃなくて、この世界から消えてしまうような気がしているんだ。まぁ、会えなくなるってことでは死ぬのと似ているかもしれない、けど、俺はここじゃない別の場所、もしかしたら俺がもともといた世界で生きているかもしれない。もしそうなら、また会える可能性は、残っているんじゃないかなぁ・・・。とかって思ってるんだ。あくまで、思ってるだけだけどさ。」

 

「それなら、流琉にそのことを伝えればいいじゃない。あなたは、戻ってこられるかもしれないのに、無駄に流琉に苦しみを与える気なの!?」

 

「さっきも言ったように、これはあくまで可能性の話なんだ。しかも限りなく低いね。たぶんこっちに戻ってこられる可能性なんてほとんどないに等しいんだ。そんなかすかな希望を流琉に残して、何年、何十年も流琉を俺に縛りつけたくないんだ。俺がいなくなれば、流琉はきっと泣くだろう。でも、いつかは泣くのをやめて、残りの人生を過ごす時が来る。そんなときに、俺が流琉を縛って、流琉が幸せになることを邪魔したくないんだ!!」

 

一刀は、自分の気持ちを華琳にぶつけた。

恋人としての自分は、当然流琉に待っていてほしいと願っている。

しかし、兄としての自分は、流琉の幸せを願っている。

この二つの相反する気持ちに対して、自分なりに出した答えだった。

 

「だから、華琳。流琉にはこのことを言わないでほしい」

 

一刀は、背中を岩から離し、深く頭を下げた。

「頼むっ・・・!!」

 

そんな一刀の姿を見て、華琳は

「・・・それが、あなたの気持なのね」

と聞いた。

 

「ああ」

 

姿勢を戻し一刀は答えた。

 

「後悔はしないわね」

一刀の目を見て、華琳はもう一度訪ねた。

 

「ああ。しない」

 

「・・・わかったわ」

 

一刀はやさしく微笑んで

「ありがとう。華琳。」

と言った。

 

「もう歩けるわね。早くしないと、流琉のイノシシ料理が冷めてしまうわ」

そう言って華琳は、一刀を急かし、陣へと歩きはじめた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「兄様・・・」

華琳様のお話を聞いて、私は兄様の気持ちを知りました。

私を思ってくれていたこと。私が兄様にどれだけ心配をかけていたのかを。

私は自分が不甲斐なくて。不甲斐なくて。膝の上に置いた手を固く握りしめました。

そんな時・・・

 

「なんていうか。男って勝手よね。」

 

華琳様が、突然そう言いました。

「何が幸せになってほしいから、よ。そんなこと言っておいて、どうせ自分はずっと一人でこっち戻ってくる方法を探し続けるくせに。なに自分の自己犠牲に酔ってるのよ。ばかじゃない!?」

 

華琳様が少し、兄様と話しているときの桂花さんに見えました。

 

「流琉!!?」

 

「はっ、はい!」

華琳様の気迫に押されて、私は声が裏返ってしまいました。

 

「あなたはどうしたいの!?」

 

「えっ。私・・・は・・・」

私はどうしたいか。

・・・そんなこと決まっています!!

 

「私は兄様に会いたいです!会って、それからずっと一緒にいたいです!!」

 

そう。私の気持ちなんて、あの時、兄様の温もりが消えたときから決まっていました。

 

「あいつは言っていたわ。こっちに戻ってこられる可能性なんてってね。こっちにあいつが戻ってくる可能性があるなら、こっちからあいつの所に行ける可能性、あるいは、こちらからの働きかけであいつも戻す可能性もあるかもしれない。ひとつの可能性は低くても、全部合わせれば、多少は高くなるわ。」

 

華琳様の言葉が、冷え切っていた私の心を奮い立たせました。

今まで心を温めてくれた兄様がいなくなって冷え切っていた私の心は、自ら動くことで、熱を取り戻そうとしていました。

 

「魏以外の国には私から、言っておくわ。だから流琉。あなたは、こちらにあいつの連れ戻す方法。あるいはこちらからあいつの所に行く方法を探しなさい。そして、その方法が見つかるまでは、あなたを親衛隊長の任を解くわ。大陸中、好きに探し回りなさい!」

 

 

 

 

「っはい!!!!!」

 

私はその日から、兄様を取り戻すための行動を開始しました。

 

その日の空は、青く、どこまでも澄んでいて、真っ白で暖かな太陽に手を伸ばしたら、つかまえられるような気がしました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~蛇足~

 

 

「ふぅ。」

流琉が出て行った扉を見つめて、華琳は息をついた。

 

 

「とりあえず、季衣もこっちの言ったことを理解して、しっかりやってくれたみたいだし、流琉も元気になってよかったわ」

 

昨日、一刀が消えた日に流琉のもとに季衣を向かわせたのは華琳だった。

一刀が消えてしまうこと、季衣に伝え

「流琉をよろしくね。あと流琉に、明日私の部屋に来るように言ってちょうだい。一刀のことで伝えなきゃいけないことがあるから」

そう言って、季衣に流琉を迎えに行ってもらったのだ。

 

 

それにしても・・・

「・・・ふぅ」

 

華琳はまた息をついた。

 

そんなに、息をつくのには理由があった。

 

華琳は感じたことのない感覚を感じていたのだ。

 

 

あの時、一刀が流琉に本当のことを言わないでくれと言ったとき、さっき流琉に言った言葉をなぜ言わなかったのか。

あの時、華琳が一刀に言っていれば、流琉は一刀との別れであんな悲しみを味わうことはなかっただろう。

天下の曹操が、そのことが分からないわけがなかった。

ただ、あの時は・・・

 

「・・・あんな真剣な顔をされて、あの場でそんなこと言えるわけないじゃない」

華琳は、流琉のことを思う一刀の姿に見惚れてしまっていたのだ。

 

「・・・あんなにカッコいいなんて」

今まで、誰かを好きになっても、相手はすでに自分のことを好いている。またはすぐに自分のことを好きになるという状況しか経験したことのない華琳にとって、これははじめての感覚だった。

 

(あんな優男を好きになるなんて)

 

 

華琳はやけに眩しい太陽を見上げた。

 

「ふぅ。・・・ばかみたい」

 

 

 

 

 

 

あとがき。

 

 

こんばんわ。komanariです。

 

 

昨日初めて投降した作品にあまりにいい評価をいただいたので、調子に乗ってアフターを投稿しました。

 

と言っても、今回はまだ前編なので、終われていません。

というか、流琉のハッピーエンドまでたどり着けていません。

 

そればかりか、今回の話は華琳様がヒロインよりも台詞が多くて長い・・・

(長い台詞が読み難かった方すみませんでした。)

 

まぁ、華琳様も好きなんで、個人的にはいいかなって思っています。

 

 

後編は、希望が多いようであれば、今回のように調子に乗って頑張って早く書くかもしれません。

あと、細かな話方もそのうち頑張ってみようと思います。

 

 

最後に、

前作にコメントを寄せてくださった多くの方々、本当にありがとうございました。

応援してくださるコメントが、こんなにうれしいものなのだと初めて知りました。

 

また、今作に期待を寄せていてくださった方々。

皆様のご期待に添える内容か、作者としてはとても不安ですが、皆様に楽しんでいただけることを願っています。

 

 

今回も僕のつたない文章を読んでいただき、ありがとうございました。

 

 

 


 
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