No.639311

三匹が逝く?(仮)~日常編~

YTAさん

どうも皆さま、YTAでございます。この作品は、
小笠原樹さん(http://www.tinami.com/creator/profile/31735
を発起人とし、私YTAと
峠崎丈二(http://www.tinami.com/creator/profile/12343
赤糸さん(http://www.tinami.com/creator/profile/33918

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2013-11-23 21:13:31 投稿 / 全8ページ    総閲覧数:1283   閲覧ユーザー数:1096

                                  三匹が逝く?(仮)~日常編~

 

二人の女の和合を果たさせる事より、全ヨーロッパの国を和合させる事の方が、遥かに容易いであろう。

 

                                   

                                                                             フランス国王 ルイ14世

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Girls Just Want to Have Fun

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうしてこうなった……」

 ジム・エルグランドは、その巨躯が萎むのではないかと思える程の深い深い溜息を吐き、彼のログハウスに据え付けられた暖炉の前でロッキングチェアに腰掛け、悠々とジムの蔵書を読み耽っている男に、呆れとも諦めとも言えぬ視線を投げた。

 

「なぁ、コーヒーまだ?」

 男――小峰勇太が本から顔を上げずにそう尋ねると、ジムは再び深い溜息を一つ吐き、もはや地になっている感情の籠らない声で答える。

「うるせぇ。招かれざる客の分際で、偉そうに要求すんな」

 

「別に、帰っても良いんだぜ?その代わり、さっきのチケットは返せよな。本来なら、どこぞの女の子にでも渡したって良かったんだ」

「チッ。誰もコーヒーを出さないとは言ってねぇだろうが。匂い嗅げば、用意してんのは分かんだろうがよ」

 ジムは、こめかみをピクピクと痙攣させながらも、手際よく白磁のコーヒーカップと揃いのソーサーを戸棚から取り出した。チケット……即ち、ジム御贔屓の人気劇団、“TEAM ZACS”の年末公演のS席チケットが、この招かれざる客がジムに提示した“暫く暖炉の前を独占する権利”の対価であった。

 

 売り出し直後に即ソールドアウトが当たり前のこのチケットを、勇太がどの様な経緯で入手したのかは定かではない。しかも、自由席ですらもプレミアが付いて値の釣り上がるプラチナチケットだというのに、勇太が持って来た券に書かれたいた座席番号は、その中でも取り分け貴重な前列の中ほど右側である。

 この魅力には、如何な物欲に乏しいジムにも抗う事は出来なかったという訳だ。

 

「くそ、どうしてこうなった……」

 ジムは、もう一度そう呟くと、渋々といった様子で出来上がったコーヒーをカップに注ぐのだった――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 事の始まりは、その日の早朝に遡る。まぁ、つまるところ、ジムには完全に関係の無い場所から、と言う事だが。

その日も、勇太は朝日を顔に受けながらベットの中で心地良く微睡(まど)ろんでいた。夢と現の天秤が僅かに現に傾き、凄まじい違和感が身体を走り抜けるその瞬間までは。

 

「おぉう……」

 先週から冬用にと引っ張り出して来た羽毛布団の中に自分以外の体温を感じた勇太が、恐る恐ると布団をめくってみると、案の定、そこには器用に身体を丸めて穏やかに寝息を立てる狼亜人の少女、ウリアーナが居た。しかも、勇太が買い与えたメイド服を着込んだままで。

 

 元々、得体の知れぬ未成年の少女を囲っているなどと噂されるよりは、小間使いを雇ったという事にした方が良い、と体裁を整える為に買った物ではあるが、傍から見た場合、この状況に於けるメイド服というのは、余りにも相乗効果があり過ぎる。

 更に敢えて付け加えるならば、ここで言うところの“傍”とは、昨今、巷で“爆殺蹴姫”との覚えも目出度い、彼の令嬢の事である。そして、勇太の思考に彼女の顔が過った事は即ち、時に恨めしく思う事すらある彼の勘が、けたたましく空襲警報を発令しているのと同義であった。

 

「おい、ウリヤ。起きろって。主人のベットで寝こけるメイドがどこに――」

 勇太が、滲み出る保護欲と必死に戦いながらウリアーナの頭を軽く叩くのと同時に、これまた毎度毎度の事ながら勢いよく家のドアが開いて、溌剌とした女性の声が朝の挨拶を告げる。まぁ、当然の帰結として、暫し時が凍り付いた後、阿鼻叫喚の修羅場が待ち構えていたのは言う迄もないであろうが。

 

 正座である。

 三十も過ぎた大の男が、二十歳おっつきの女性に睨まれて、朝も早よから正座である。しかも、自宅のリビングで。

 これ程の屈辱が、他にあろうや?いや、無い。と、今、この濁流の唯中に放り投げられた勇太ならば即答したであろう。尤も、彼に口を開く権限は与えられてはいなかったが。

 

 

 尚も悪い事に、もそもそと目を覚ましたウリアーナが、青タンを作った勇太がシャンテに睨まれて正座させられている瞬間を目撃してしまい、必死にシャンテを止めに入った事で、事態は混迷を極めるに至った。もうそろそろ、敢えて言うのも憐れであるが、この狼亜人の少女の“必死に止める”とは、服の裾を引っ張るとか腕に縋り付くとか、そういう類の愛らしい仕草の事ではない。全身の毛を逆立てて、獰猛な威嚇の唸り声を上げる事を言う。

 

 まぁ、人畜無害な普通の少女ならそれも良かろう。しかし、屈強な成人男性の腕すら素手で易々と引き千切る、狼亜人の威嚇行為である。ウリアーナも、シャンテが自分の祖父と懇意にしている人物の血縁者であるという認識はある為、まさかシャンテをバラバラ死体にしたりはしないだろうが、それでも勇太からすれば気が気ではない。

 

「シャンテ、どうして何時も、ユウいじめる?ユウ、悪い事してない」

「いじ!?苛めるって……あのね、ウリヤ。このバカは、あんたを手籠めにしようとしてたじゃない!」

「てごめ……?てごめ、なに?」

「あ……う……つ、つまり、男と女が……その……同じ布団で……」

 

「……交尾の事?」

「そう、それそれ!って、ストレート過ぎるでしょうよ!!年頃の女の子が交尾とか言っちゃ駄目じゃない!!」

 無論、シャンテの方が正論なのろうが、そもそも持っている文化的価値観の違うウリアーナからすれば、叱られる理由が、一から十まで解らない。

 

「どうして、交尾だめ?強い男、いっぱい交尾して、たくさん子供作る、当たり前。女、強い男の子供ほしい、当たり前。強い男、独り占め、良くない」

 ウリアーナの理屈では、こうなる。ウリアーナがシャンテをライバル視しているのは、あくまでも“どちらが勇太の寵愛をより多く受けられるか”の競争相手としてであり、“どちらが勇太を独占する権利を持つか”を決する敵としてではないのだ。

 

勇太には“強い男”として多くの女と子を成す権利があり、女であるシャンテには、“強い男”を独占する権利はない。何故なら、それは他の女達が“強い男”の子供を産むチャンスを奪う事になるからだ。

つまりウリアーナにしてみれば、シャンテは理不尽な要求をして一方的に勇太を“苛めている”としか映らないばかりか、他の女達にも迷惑を掛けている様に思えていた。

もしもウリアーナが、最初からシャンテを排除すべき敵と考えて行動していたならば、さっさと決闘でも申し込んでいたであろう。

 

 

「もぅ……どこからどう説明すりゃ良いのよ……はっ、しまった!!?」

 眉間を揉んでどうしたものかと悩むシャンテの視界の隅に、勇太の居た筈の場所が映る。そう、“居た筈の”場所が。

 

『しばらく留守にします。探さないで下さい』

 

 そんなベッタベタな書き置きを床に残し、勇太の姿は忽然と消えていたのだった――。

 

 

 

 

 

 

「つーかさ」

 ジムは、新しい本を手に取ってロッキングチェアに戻ろうとしていた勇太に、訝しげな眼差しを向けた。

「この前も見掛けたけどよ。何であの亜人の子、お前の所に居るんだよ。家族はどうした?」

「その“家族”が、俺に押し付けてったんだよ……本人の意思も含めてな……」

 

 勇太は、溜息を吐いて煙草に火を点けながら、メイズと初めて邂逅した日にジャン・ピエール・ドゥ・ラ・パトリエール卿の言った、『現在交渉中の、お前に回す事になるかも知れない案件』と言うのが、ウリアーナの事であったらしいと、ジムに告げた。

「そりゃあ、つまり、身辺警護とかそういう類の――」

 

「……子供、作れって……」

「あぁ、成程。子作りな……って、ア゛ァ゛!!?」

「凄むなよ。ただ突っ立ってるだけでも怖ぇんだから……」

「大きなお世話じゃゴルァ!それよりお前、衛兵んとこ行こうぜ。俺も一緒に行ってやんよ……」

 

「俺はペトじゃねぇし!合法ロリは余裕だけど、ペトじゃねぇし!!」

「十分素質アリじゃねぇか!!」

「否!断じて否!!テニスの王○様とリアルのテニスくらい違うわ!!」

「例えがイミフ過ぎんだろ……」

 

 

「いや、だからさ。俺にその気が有る無しじゃなくて、向うが一方的にバッチコイ状態なだけで……」

 勇太は、ジムが(甲斐甲斐しくも)おかわりを注いだコーヒーカップのソーサーを手に持つと、コーヒーを啜りながら事の次第を説明し始めた。ウリアーナは、ブルタリアス王国の東の果てに住む、狼亜人の一族の長の孫娘に当たる。

 

 男女共に勇猛な戦闘種族として知られるこの一族の中で、将来の族長でもある最も強い男と、その正妻である最も強い女の間に生まれたウリアーナは、正しく超の付くほどのサラブレッドだった。金色に輝く髪と瞳は、生まれながらの強者であるという、その証と言ってもいいだろう。

が、部族に於ける成人の儀――一人で森に入り、大人十人が満腹になるだけの獲物を狩って帰る――を半年前に無事成し得た後、ウリアーナと家族は、重大な問題に直面する事となった。婿が居ない。

 

 つまり、彼女の両親以外の誰一人として、ウリアーナを打ち負かせる男が居なかったのである。『強者こそ正義』を是とする狼亜人に取って、これは由々しき大問題であった。

 無論、ウリアーナよりも“強い”両親が無理矢理に婿を決めれば、ウリアーナも嫌だとは言えないのだが、その両親にしてみたところで、自分達の娘を、娘より弱い男になど嫁がせたくはない。ましてや、弱い男の子供を産ませるなど、屈辱の極みと言う訳である。

 

 そんな中、何時もの様に森へ狩りに入ったウリアーナが、忽然と姿を消してしまった。一族の者達は、『まさかウリアーナがそこいらの魔獣などに遅れを取る筈もない』と多寡を括っていたのだが、一週間近く音沙汰なしという事態に至って初めて事の重大さを認識し、山狩りをして捜索したところ、覚えのない人間の臭いと共に、ウリアーナの痕跡が消えているのが発見されたのである。

 

 部族会議の結果、一族の手による探索だけでは手遅れになりかねないと判断した族長は、若かりし頃に縁を結んだ旧友、ジャン・ピエール・ドゥ・ラ・パトリエールに助力を請う事にして、一路、王都ブルデューへの旅に出た。そうして族長がジャン・ピエールに再会したのは、丁度、勇太が馬車に揺られて、ロワイエ公爵邸へと向かっている最中の事である。

 

「で、お前が助けたんだろ?それは分かるけどよ、俺も見てたし。でも、別に戦った訳でもないのに、何でお前が狼娘より強くて、子作り相手に認定O.K.されちまったんだよ?」

「お前のせいじゃあ、ボケェ!!」

「ア゛ァ゛!?なに訳分かんねぇキレ方してんだっつーの!!」

 

「お前と遣り合ったの見られたせいで、知らねぇ内に“強い奴”認定されちまったんだろーがよ!!」

「あー……」

 自分の身体を自在に他の生物への変えて戦う異形。受けた傷を瞬きの間に修復する、生物を超越した生物。そんな得体の知れない存在を、一度は圧倒すらした勇太の姿を見れば、それは“強い奴”と言って差し支えはないだろう。まぁジムとて、再戦の機会があったなら前回と同様にはならない、と言う自負はあるが。

 

 

「で、ウリアーナが俺の嫁になりたいとか言い出して、あの白髪の糞ジジイが、俺が“竜殺し”だのなんだのっていらん事をウリアーナの家族に吹き込んじまったもんだからさぁ……」

「家族総出で乗り気なんか……」

「うん。なんか、牛とか豚とか丸ごと何十頭も送られそうになったんで、全力かつ丁重にお断りした……」

 

「それはまぁ、なんつーか……」

「不幸中の幸いなのは、ウリヤに具体的な“子作り”の知識が乏しいって事だわ。今んトコ、抱き付いて来たり勝手に俺の布団に潜り込んで寝てたりする位で、それ以上の事はしようとしないし」

 しかしそれも、シャルロッテ・ドゥ・ラ・パトリエールの存在を抜きにすれば、という話である。シャンテに取っては、上記の様な事だけでも十分に勇太を蹴り飛ばす動機になりうるらしい。

 

「で、トンズラして来た、と。まぁ、確かに、俺の家なら幾らあの二人でも思い当らないとは思うけどよ……」

「フッ。延々と回り道して、キッチリ五回、川の中を泳いで来たからな。ウリヤの鼻でも、流石に追跡は出来まい!」

「このクソ寒いのに、わざわざ寒中水泳かよ。そんなトコばっかり徹底してんのな、お前……」

 

「紳士の嗜みと言ってもらいたい」

「どうせ“変態”が付くんだろ。で、どうすんだよ?」

「何が?」

「これからだよ、こ・れ・か・ら。まさか、ずっと俺んちに居座る気じゃねぇだろうな?」

 

「え、ダメ?」

「ったりめーだろ!つか、言い方が気色悪りぃ!!」

 勇太は、引き気味に憤るジムに「冗談だ」と苦笑を返して、煙草に火を点けた。

「取り合えず、一戸建てとは言えワンルームの今の家じゃ、もうプライベートは確保出来ないからな。来る途中に不動産屋に寄って、適当な物件探して貰える様に頼んどいた。ウリヤの部屋は納屋を改装したし、引っ越さなくても良いと思ってたのにさぁ……まぁ、一週間は掛らないと思うから、多目に見てくれや」

「むぅ……」

 

 そこで嫌、と言えないのが、ジムのジムたる由縁なのだろう。強面の巨漢は、半ば諦めた様に緩々と首を振ると、この奇妙な来客の分も夕食の献立を考え始める。

 思えば、つい数週間前には殺し合いを演じた相手の家に、しれっと「暫く泊めてくれ」などと言って訪ねて来るのだから、奇妙どころの話ではあるまい。まぁ、なんやかやと文句を言いつつ、その申し出を許諾してしまうジム自身も十分に奇妙な人物ではあるのだろうが、本人に自覚がないのだから致し方ない。

 

ジムが、鹿肉の塩漬けは十分にあっただろうか、などと考えながら台所に向かおうとすると、ドアと叩く控え目なノックの音が響いた。

「おや、誰か来た様だ……」

「そのセリフ止めれ。嫌な予感しかしないから」

 

ジムは、自分の独り言にまたもや意味の分からない合いの手を入れた勇太の方を僅かに見遣ったが、当の勇太はと言えば、僅かに警戒したものの、気配から追手ではないと察したのか、知らぬ存ぜぬを決め込んで、再び本のページに視線を戻していた。

 ジムは、今日何度目かになる溜息を吐くと、「あいよ。今、開ける」と、ドアに向かって返事をした――。

 

 

 

                   あとがき

 

 さて、今回のお話、如何でしたか?

 遅れた上に短くて、他の作者さん方に申し訳ないです……。

 恋姫SSの方も、八割がた書き上がってるんですが、未だ脱稿には至っていないし、読者さんをお待たせしてしまって……。

 

 出来るだけ、執筆時間を割ければと思ってる次第です、はい。

 内容としては、新レギュラーのウリアーナの背景と、ジムと勇太を多く喋らせてみる事に集中しました。

個人的には、何時の間にやら作者陣の中で愛されキャラになっているジャン君も弄りたかったんですが、欲を出すと何時までも脱稿しないだろうとの判断で割愛ですw

 

 では、赤糸さん。お待たせして申し訳ありませんでしたが、宜しくお願いします。

 

 


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