No.635375

恋姫婆娑羅

KGさん

いよいよ、反董卓連合に向けて走り出しました。どうなるやら分かりませんが、どうか温かい目でお願いします。

それから、この作品とは関係ありませんが、祝・浅井長政復活!! いやー、マジで嬉しいわー、無言即殺ぶっ放したいわー

2013-11-09 00:05:37 投稿 / 全6ページ    総閲覧数:3595   閲覧ユーザー数:3280

「大乱の兆し」

 

 

 

 

 

 

中庭に調子外れの鼻歌が響いている

 

「・・・お。季衣じゃねぇか。こんな所で何やってんだ?」

 

「あ、チカ兄ちゃん。へへー、手紙を書いてるんだ!」

 

丁度、中庭を通りかかった元親が季衣の存在に気が付き、声を掛けると、何やらウキウキとした様子で手紙を書いていた。

 

「・・・手紙? ああ、そうか、今はそれくらいに治安も良くなってるしな」

 

黄巾党が暴れていた頃は、危険すぎて引き受けてくれる人間がいなかったと聞く。この時代はメールや電話なんて便利な物は無く、商人や旅人に手紙を託すしかないのだ。

 

「ところで、チカ兄ちゃん」

 

「あん?」

 

「たのしみにしてるって、どう書くんだっけ?」

 

季衣の急な質問に、元親は面を食らって聞き返す

 

「何だって?」

 

「たのしみにしてるだよー」

 

「・・・うん、分かんねぇ」

 

「えー、分んないのぉ~」

 

元親の答えに落胆する季衣、しかし、元親からすれば事務的な文章は仕事をする上で覚えなければならず、仕方がなく覚えたが、普段の手紙に使うような文の書き方は分からない。困ったように、唸る二人であった。

 

「あら、どうかしたの?」

 

「おお、丁度良いところに来たじゃねぇか!」

 

「華琳様!」

 

天の助けが来たと喜びを露わにする二人

 

「何、また何かやらかしたの?」

 

「なんで、そうなるんだ・・・」

 

「だって、元親が私を見てこんなに喜ぶなんて、何かやらかしたとしか思えないのだもの」

 

「おい・・・。どんな目で俺の事見てたんだ? そうじゃねぇ、季衣に手紙の書き方を聞かれてたんだよ」

 

「そうなんです。たのしみにしてるって、どう書くんでしたっけ?」

 

「ああ、それはね・・・」

 

状況を理解した華琳は小さく頷いて、季衣に何かを伝える。

 

「ああ、そうかぁ! ありがとうございます!」

 

華琳の言葉で理解したようだ。嬉しそうに手紙の続きを書きだした

 

「季衣はもう少し、秋蘭について物事を学んだ方が良さそうね」

 

「えー、ボク、勉強って苦手なんですけど・・・。体動かしている方が楽しいし・・・そっちを勉強するんじゃダメですか・・・?」

 

「好きな事を学ぶのは勉強とは言わないわ。苦手なことから逃げずに学んでみる事も損ではなくてよ?」

 

「そうだぜ季衣、金の勘定は出来るくらいには勉強しねぇとな・・・。」

 

渋る季衣を優しく諭す華琳と元親、季衣もこのままでは不味いのかもしれないと悩み始める。和やかな空気が漂い始め、平和を噛み締める三人だったが、唐突に華琳が呟く。

 

「ふう、市井はこんなに平和なのに、宮廷の奴らは・・・」

 

「・・・? 何があったんだ?」

 

気になる呟きをした華琳に思わず元親が反応する。

 

「・・・何進が殺されたそうよ。しかも宮廷内でね」

 

「なるほどな・・・権力争いって奴の犠牲になったか・・・」

 

元親は会ったことも無い何進に思いを馳せる。

 

「ええ。肉屋のせがれが権勢を振るうのを、面白く思わなかった奴がいたのでしょうね」

 

「そんな所はどこの世界も変わんねぇな・・・。んで? 後釜には誰が据わったんだ?」

 

「なんでも董卓とか言う者らしいわ・・・」

 

華琳の言葉に元親は胸の内で反応する。董卓と言えば、三国志において悪逆非道の者として書かれている。そんな者が権力を握ったとなれば、次の戦もそう遠くないだろう。

 

「どうしたの? なんだが顔が怖いのだけれど・・・」

 

どうやら、気が付かない内に顔に出ていたようだ。元親は一旦、考えるのをやめる。

 

「ああ、いや、なんでも無い。ただ、次の戦が迫って来てそうだなと思っただけだ」

 

「そうね、この調子なら、黙っていてもとばっちりが来るでしょう。心構えだけはしっかりしておかなければね・・・」

 

真面目な話であったが、季衣の歓声によって打ち切られる。

 

「出来たッ! チカ兄ちゃん、華琳様。ボク、ちょっと手紙出してくるよー!」

 

「ええ、行ってらっしゃい」

 

「気を付けていけよ」

 

見送る二人に元気な返事で答え、走っていく。この平和な光景を見れば、もうすぐ、大きな戦いが始まろうとしているとは、とても思えなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

あの、手紙の話からしばらくの時が過ぎた。曹操の軍勢はさらに精強になり、軍備もさらに拡大した。しかし、都の董卓も着実に力を蓄えているとの報告もある。

 

「しかし、平和だな」

 

和やかな街の空気にあくびが出る元親、現在は警備隊の隊長として街を歩いていた。平和に見えるこの世界であるが、今は董卓という危険因子が活発な動きを見せている。朝の会議でも、商人や旅人の話も董卓関連で埋め尽くされている。

 

(・・・マジで、戦が近いのかね? なんとも穏やかなモンじゃねぇか)

 

董卓に関して考えつつも実感の湧かない、この現状にやきもきする。その時であった、元親が声を掛けられたのは。

 

「あのぉ・・・。すみません、ちょっと教えて欲しい事があるんですけどぉ・・・」

 

「おう、なんでぇ? 道にでも迷ったか、それとも何か無くしたか?」

 

元親に話掛けてきたのは、おかっぱ頭の大人しそうな少女だった。何やら困った様子であったので、元親も親身になって話を聞く

 

「えっと・・・お城・・」

 

「の前に、美味しい料理を食べさせてくれる所を教えてくれよ!」

 

おかっぱ少女の言葉を遮り現れたのは快活そうな少女であった。

 

「ちょっと! 文ちゃん!」

 

「良いじゃんか~斗詩! 目的の物は別に逃げないだろ? 腹ごしらえしてからでも遅くないって~。お腹すいた、お腹すいた、お腹すいた~!!」

 

「う~。まったく、しょうがないなぁ・・・」

 

目の前で繰り広げられる愉快なやり取りに、クツクツと笑いを噛み殺しながら元親は問う

 

「で、俺はどうすれば良いんだ?」

 

「ああ、すいません・・・。なら何か美味しい物を食べさせてくれる・・・」

 

「料理屋がたくさん並んでる所、どこ?」

 

「そうだな・・・向こうに屋台通りがあるんだが・・・そこで良いか?」

 

元親の言葉に頷く二人を確認し、そうと決まればと目的の場所に案内を始める元親であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おおおーっ!! 斗詩、見ろよ! スゲー! 屋台がたくさんある!」

 

「ハッハッ。そりゃ、ここらで一番デカい屋台通りだしな! じゃあ、俺は行くぜ」

 

案内を終えた元親は仕事に戻ろうとすると、文ちゃんと言われた少女に呼び止められる。

 

「なんだよ、兄ちゃん、あんたも一緒に食べていきなよー。どうせ、昼飯まだなんだろ?」

 

「ん、まぁ・・・その通りなんだが・・」

 

「ちょっと! 文ちゃん悪いよー!」

 

「良いだろ! 旅費も麗羽様からたくさん貰ってるんだし」

 

「そりゃ、そうだけどさー・・・」

 

斗詩と呼ばれた少女も初めの内は止めるが、もう一人の少女の強引さに折れてしまう。

 

「良いだろ、兄ちゃん? それとも、あたいの奢りは受けられないとでも言うつもりかい?」

 

「なんとも強引は娘だな、こりゃ・・・。まぁ、良いぜ、あんたみたいな奴は嫌いじゃねぇからな!」

 

元親の言葉に喜びを露わにし、おススメの店を聞いてくる。さて、どうしようかと悩んでいる時であった。

 

「あ、チカ兄ちゃーん!」

 

「おう、季衣じゃねぇか、どうした?」

 

「これからお昼食べるんだけど、チカ兄ちゃんは?」

 

「俺らもこれからなんだが・・・。そうだ! 季衣よ。どっか美味い店を知らねぇか?」

 

元親の頼みに季衣は胸を張って了承するが、快活な少女が怪訝な顔で季衣を見て言う。

 

「ん~? このちびっ子、詳しいのか?」

 

「ちょっと文ちゃん、少し失礼だよ・・・」

 

さっきまで、嬉しそうな顔をしていた季衣だが、この一言に急に表情が変わる。

 

「・・・チカ兄ちゃん、誰、このボサボサ?」

 

「・・・・・・」

 

「・・・ボサボサ・・?」

 

「お、おい、季衣よ。どうしたんだ?」

 

にらみ合う二人は、まさに一触即発の様相を呈している。このままでは、不味いと判断した元親は、二人の間に入り、なんとか怒りを鎮めさせる。

 

「落ち着けや、季衣よ」

 

「うー・・・・」

 

「文ちゃんもだよぉ」

 

「むぅぅ・・・」

 

その場をなんとか収める事に成功した二人だったが、季衣の勧める料理屋に行く道中も、何度かの小競り合いが起こる。似たもの同士で気が合うかとも思っていたが、同族嫌悪とでも言うのか反発しまくっている。昼飯前になんでこんなに疲れないといけないのかとため息を吐く元親であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

季衣のお勧めの店のご飯を食べ始めた頃、先ほどの仲の悪さはどこにいってしまったのかと驚くくらいに、二人は意気投合していた。目の前には大量の空き皿が積まれながらも、まだまだ足りないとばかりに食べ続けている。

 

「・・・なんか、季衣が二人いるみてぇだな」

 

「・・・私も、文ちゃんが二人いるみたいに見えます」

 

呆れる二人を余所に食も会話も盛り上がる季衣と快活な少女

 

「それにしてもこれ、美味いなぁ。南皮でもこんな美味い店、なかなか無いぜ!」

 

「う~ん。なんかこの味、何処かで食べた気がするんだけどなぁ・・・・こんな美味しい店の味、ボクが忘れるはず無いんだけど・・・」

 

「なんだぁ? お前の行きつけの店なんじゃねぇのか?」

 

季衣の発した疑問の声に元親が問う

 

「違うよ。秋蘭様が美味しいって教えてくれたから、初めて来てみたの」

 

「・・・マジかよ?」

 

季衣も胆力に流石の元親も舌を巻く

 

「気に入った! その一か八かの勝負度胸、ちっこいのに大したモンだ! あたいの事、猪々子って呼んでいいぞ!」

 

「おーっ! ならボクの事は季衣って呼んで良いよ! いっちー!」

 

「いっちーか。良いなぁ、気に入った。今日は良い日だ。スッゲー良い日だ!」

 

恐ろしいまでに意気投合した二人と、完全に置いてきぼりを食らっている元親と斗詩という少女

 

「なぁ、あれって真名だよな・・・?」

 

「は、はい・・・その通りです」

 

「真名って・・・あんなに軽いもんだったか?」

 

真名の価値がよく分からなくなって来た元親と自分の事のように恥ずかしがる少女。それを尻目にいっちー、きょっちーと呼びあい盛り上がる二人である。そろそろ止めようかなんて考えていた時であった。

 

「失礼する」

 

聞きなれた涼やかな声が店の入り口から聞こえ、元親は振り向く。そこには、華琳と秋蘭の二人が立っている。元親らの姿を確認すると意外そうに声を掛けてくる

 

「あら、あなた達も来ていたのね・・・。そちらは?」

 

見慣れない二人の少女に視線を移す華琳

 

「いやな、美味い飯屋に案内してくれってんでな・・・」

 

「ふぅん・・・若い女の子には優しいのね、元親?」

 

「何言ってやがる。困った奴がいんなら手を貸してやるのが男ってモンだろ?それに頼まれちゃ嫌とは言えない性分なんでね」

 

「流石はチカ兄ちゃんっ!!」

 

華琳の意図に反して真面目に答える元親をご飯をがっつきつつ季衣が囃し立てる。

 

「いらっしゃいませ! 曹操様、夏候淵様、今日もいつものでよろしいですか?」

 

「ッ!」

 

「?」

 

「あれ、お前・・・」

 

曹操の名を聞いた瞬間、斗詩は驚愕の表情を浮かべ、猪々子はよく分かってない顔をしている。そして、元親は二人とは別の所に反応していた。

 

「どうしたの、元親?」

 

華琳が怪訝な顔で見てくる。すると給仕の女の子が華琳の言葉に反応した。

 

「え、元親って・・・?」

 

給仕の女の子が元親の姿を捉えると驚いたように声を上げる

 

「ああぁ! チカ兄様、なんでここに?」

 

「やっぱり、流琉か、お前こそ、こんな所で何やってんだ?」

 

「それは、季衣に手紙を貰って・・・って。あーーーーーーーー!! 季衣こんな所で何やってるのよ!」

 

「あー! 流琉だぁ! 遅いよぉ、お城に来てって言ったのに」

 

「季衣がお城で働いてるなんて思わないでしょう!?」

 

それから、二人の口論が始まり、止まる気配がない。

 

「元親、あなた、あの子の知り合いだったの?」

 

「まぁな、俺が倒れていた時、季衣と一緒になって助けてくれたんだよ」

 

「そうだったの・・・。それにしても、まず、あの二人を止めないとね。秋蘭、止められそう?」

 

「季衣が二人分では少々荷が重いかと・・・。しかし長曾我部がいるなら、任せても良いでしょう」

 

事情を聴き終えた華琳達は、口論から乱闘に発展した二人を止めるのを元親に丸投げして、呑気に食事をしている。

 

「やれやれ、おいっ! テメェら落ち着けや!」

 

「うわっ!」

 

「きゃっ!」

 

丸投げされた元親は面倒臭そうではあるが、二人をアッサリと小脇に抱え込み動きを止める。

 

「チカ兄ちゃ~ん、離してよぅ!!」

 

「チ、チカ兄様っ! 下ろしてください!」

 

「お前らが大人しくするってんなら下ろしてやるよ」

 

「う~、分かったよ」

 

「分かりましたから、早く下ろして~」

 

あっさりを二人を大人しくさせた元親の手腕に、華琳たちはもちろん、斗詩も猪々子も感心する。

 

「流石ね、元親」

 

「大したものだな、長曾我部」

 

「すごーい、お兄さんって何者ですか?」

 

「なんだよ兄ちゃん、めちゃくちゃ強ぇーのな!」

 

「おいおい、おだてたって何も出ねぇぞ?」

 

満更でもなさげに答える元親であったが、季衣と流琉が暴れた後を片づけるために二人を引きつれて掃除を始める。それを愉快気に眺めている華琳達に斗詩と猪々子が近づき口を開く。

 

「あ、あの~、御初に御目に掛かります。曹孟徳殿。私は顔良と申します」

 

「あたいは文醜! 我が主、袁本初より言伝を預かり、南皮より参りました!」

 

「こんな場面で恐縮ではありますが、ご面会いただけますでしょうか?」

 

急に真面目な態度を取ったと思いきや、そう名乗り出す二人に華琳は嫌な名を聞いたと顔を顰める。

 

「・・・あまり、聞きたくない名前を聞いたわね。まぁ良いわ、一旦、城に戻りましょうか」

 

そう言うと店の主に金を支払い城に戻っていく。元親らも片づけを終えて、店主に謝罪してから急いで城に戻るのであった。

 

 

 

 

 

 

 

「袁紹に袁術、公孫賛、西方の馬騰まで・・・よくもまあ、有名所の名前を並べたものね」

 

「董卓の暴政に、都の民は嘆き、恨みの声は天高くまで届いていると聞いております。先日も董卓の命で、官の大粛清があったとか・・・」

 

顔良、文醜の二人が面会を求めた理由は、暴政の限りを尽くす、董卓の討伐のための同盟軍参加についてだった。

 

「ふん、どうせ、あの麗羽の事だから・・・どうせ、董卓が権力の中枢を握った事への腹いせなのでしょう?」

 

「うっ・・・・」

 

華琳の歯に衣着せぬ物言いはどうやら図星だったようだ。痛い所を突かれたと、顔良が顔を顰める

 

「その大粛清も、都で悪政をしていた官を粛清しただけだと聞いているわよ。統制の取れていない文官がやりたい放題にしている事を、董卓の所為にしているだけじゃなくて?」

 

「・・・よく知ってますねぇー」

 

「あまり知りたくも無いことだけどね」

 

華琳の言葉に関心したような声を出す文醜である。さらに、誰が参戦表明を出しているのかを聞き出すと、袁家に縁のある諸将が続々と手を上げているらしい。中には袁術配下として孫策も出てくるとの事だ。春蘭がこれで借りを返せると意気込むが、桂花に私情を挟むなと諌められる。

 

「さて、どうしようかしらね・・・政宗、どう思う?」

 

思案に更ける華琳は意見を政宗に求める。

 

「・・・参加するべきなんじゃねぇか? これから覇道を歩むって言ってる奴が、こんな所で尻込みしてたんじゃ、周りの諸侯の良い笑い者だぜ?」

 

政宗の言葉に華琳は微笑みを浮かべた。自分と全く同じ考えであったからだ、それにこの男ならきっとこう言うだろうという確信じみた思いもあった。

 

「そうね。顔良、文醜。麗羽に伝えなさい。曹操はその同盟に参加する・・・と」

 

「「はっ!」」

 

曹操の意思を確認した二人はすぐに南皮へと戻って行った。次なる大乱の兆しに俄かに騒がしくなる城内。

 

この先に待つのは、栄光か、それとも絶望か、それを知る者は誰もいない・・・

 

 

 

 

 

 

 

来ました。恋姫ss最大の山場である董卓連合の話です。これからは、戦闘、戦闘でうまくいくか分かりませんが、どうぞ、御付き合い頂けたらと思います

 

それでは、ここまで読んで頂いた方には、最大級の感謝を・・では

 

 

 

 


 
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