No.630804

恋姫婆娑羅

KGさん

いよいよ彼の出番が近づいて参りました・・・。誰かって?

そりゃ・・おや?誰か来たな・・・?

2013-10-23 22:38:17 投稿 / 全4ページ    総閲覧数:4495   閲覧ユーザー数:4181

「少女と王」

 

 

 

 

「やれやれ・・・戦う前から疲れたぜ・・・」

 

「まぁ、そう言うな片倉・・」

 

現在、曹操の軍勢は目的の賊討伐のため行軍していた。騎馬隊が大行列を作り、歩いていく光景は中々に壮観なものである。小十郎は秋蘭と共に後方の部隊を指揮しつつも、ついつい愚痴を漏らしてしまう。その原因は彼らの後ろにいる、軍師様のせいである。

 

「・・・何よ?私のせいだとでも言いたいの?」

 

「流石は、軍師殿だな・・・言わなくても分かるとは、慧眼でらっしゃる。」

 

睨みつけてくる荀彧の視線を躱しつつ、小十郎はそう皮肉る。

 

「きーー!!ヤクザ者の分際で私をバカにする気!?」

 

「おいおい・・・今の言葉、どう取ったらそうなる?」

 

小十郎の言葉に噛みついてくる荀彧であったが、のらりくらりと躱されて、ますますヒートアップしていく。そんな二人を見かねた秋蘭が仲裁に入る。

 

「おい、桂花・・・少し落ち着け。どうして、そう片倉に噛みつくんだ・・・?」

 

「ふん、そんなのこいつが気に入らないからに決まってるじゃない」

 

「・・・片倉、 桂花に何かしたのか?」

 

「・・・・特に何をしたと言う記憶はないがな・・」

 

そんな小十郎の態度がさらに気に食わなかったらしい、もはや、荀彧に怒りを沈められるのは華琳しかいないだろうと小十郎と秋蘭がため息を吐いた時だった。前方の隊から春蘭がこちらに向かって来るのが見える。

 

「おお、貴様ら、ここにいたか・・」

 

「どうした姉者?急ぎか?」

 

「うむ、なにやら前方に大人数の集団がいるらしい。華琳様がお呼びだ、すぐに来い」

 

春蘭の言葉に三人は頷き、華琳のいる本隊に馬を走らせる。子供のお守りにホトホト参っていた小十郎にとっては、この呼び出しはまさに天の助けであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「遅くなりました」

 

秋蘭の言葉に無言で頷く華琳、なにやら機嫌がよろしくない。一緒にいた政宗の方を見ると彼もまた不機嫌な様子だ。怪訝に思った小十郎は春蘭に小声で聞く。

 

「おい、政宗様と華琳になにかあったのか?」

 

小十郎の問いかけに、春蘭は苦笑いで答える。

 

「いや、それがな・・・伊達が馬の手綱を握らないで馬に乗ってたものだから、華琳様が注意なさったのだが・・・」

 

「なるほどな・・・もういいぞ・・」

 

小十郎は一人納得した。どうせ政宗様のことだ、このクールな乗り方が分からねェのか?、的なことを言って口論になったのだろう。全く先が思いやられる。

 

「・・・偵察が帰ってきた所よ。報告を・・・」

 

ムスッとした顔で偵察してきたであろう兵を促す。また少し機嫌が悪くなったのは、偵察がモヒカン頭だったからだろう。促されたモヒカンは状況を報告する。

 

「ウッス!前方にいる輩は数十人位ッス。旗が無いんでどこの誰だか知らねぇッスが、やつらの恰好がマチマチなんで多分、どっかの野盗か盗賊ッスね」

 

「様子を見るべきかしら・・・?」

 

「いえ、ここはもう一度偵察隊を・「No!ここはもう一丁偵察を出すべきだな、小十郎、指揮を執りな!」って、この眼帯男~!!私のセリフを・・・!!」

 

「はぁ・・春蘭、あなたも行きなさい。小十郎と共に指揮なさい」

 

荀彧の言葉を遮り、政宗は小十郎に命令する。そして、政宗に切れる荀彧を尻目に華琳が春蘭に命じた。二人はその指示に従い行動を起こす。

 

隊の編成をしつつ小十郎は今回の目的を偵察であることを確認する。

 

「春蘭、今回は偵察だからな・・・突っ走ってくれるなよ?」

 

「なんだ、片倉!それでは私が敵を見ると突撃する猪のようではないか!」

 

「・・・違ったか?」

 

「違うに決まっているだろう!!」

 

そんな事を言いつつ、自分の隊を全て偵察部隊にしようとした春蘭を小十郎が諌める。結局二人の部隊から半分ずつ兵を出すことで話をまとめ、本隊より先行し行動する。

 

「まったく・・先行部隊の指揮など私一人で十分だと言うに・・・」

 

「・・・・ハァ・・よくもそんなことが言えるな・・」

 

「なんだ?私じゃ無理とでも言いたいのか?私は迂闊なことは一切しないぞ!」

 

春蘭の言葉に呆れる小十郎、心なしか頭が痛くなってきた。

 

「小十郎さま!見えましたぜ!」

 

「ご苦労」

 

「あれか・・・なんだ?行軍している感じでは無いな?」

 

春蘭の言うとおり。あれは軍隊なんかの行軍ではない・・・ただ騒いでいるだけのようだ。祭りや宴会といった様子でもない。

 

「なにかと戦闘中のようだな・・」

 

「何かが飛んでいるな・・う~ん?・・・人か!?なんだあれは!?」

 

目の前で行われている戦闘で人が木の葉のように舞飛んでいる。春蘭は驚愕したように目を見開いている。そんな時一人の兵が声を上げる。

 

「誰かが戦ってるみてぇです。数は一人・・・ってありゃ子供じゃねぇか!?」

 

「「なんだと!?」」

 

その報告に春蘭は馬に鞭打ち駆け出して行く。小十郎も部隊に指示を飛ばし、春蘭の後を追う。

 

「でえええええぇい!!」

 

「ぐはっ・・・」

 

「ぐぇっ!?」

 

「あべしっ!?」

 

「まだまだっ!でやあああああぁ!!」

 

「うわぁっ・・」

 

「ひでぶ!?」

 

巨大な鉄塊を振り回した少女が、周りを囲む男たちを蹴散らしていく。

 

「ええい、テメェら、ガキ一人に何を手こずってやがる!数でいけ、数で!!」

 

「「「「「おおおお!!!」」」」」」

 

「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・。もう、こんなにたくさん・・多すぎるよぅ・・!」

 

少女が如何に強くとも、徐々にその数に圧倒され始める。少女は苦悶の表情を浮かべ息を切らす。もう限界かと諦めかけたその時。二筋の剣閃が走った。

 

「ぐはぁっ・・」

 

「うぎゃぁ・・」

 

「・・・え?」

 

少女の前に立ったのは二人の武人であった。

 

「大丈夫か?勇敢な少女よ!」

 

「どうやら、無事みてぇだな・・!」

 

「え・・・あ・・・はいっ!!」

 

驚いた様子で二人を見つめる少女に安堵する春蘭と小十郎だったが、すぐに周りの男たちに視線を戻す。

 

「貴様らぁ!!子供一人によってたかって・・卑怯と言うにも生ぬるいわ!」

 

「ガキ一人に、これだけの数で襲うとはな・・・外道は俺が切り捨てる・・!」

 

そう言って、二人は周りの男たちを片っ端から切り捨てていく。これに怯えた盗賊たちは一目散に逃げ出す。

 

「逃がすか!全員叩き切って・・「どけぇ春蘭!!」・・か、片倉ッ!?」

 

追おうとする春蘭であったが、小十郎の言葉で停止する。

 

「鳴神ッ!!」

 

「「「「うぎゃぁぁぁ!?」」」」

 

「・・・・!?」

 

「なんだ!?あれは!?」

 

小十郎の身体から紫電が迸ったと思った次の瞬間、彼の刀から雷が放たれ、逃げる男たちを貫く。春蘭と少女は何が起こったのかと唖然とする。男たちも人間が雷を出したと驚愕して逃げることを忘れているようだ。

 

「塵と成れ!!」

 

驚愕で動けない者達を尻目に小十郎はさらに追い打ちを掛ける。二本の刀を交差するように振りぬくと雷を纏った斬撃が飛んでいく。呆然としていた男たちにそれを避ける術もなく次々に巻き込まれ、その命を散らしていく。

 

「う、うわああああ!?人間じゃねぇよ!!早く逃げろ!!」

 

それでも尚、生き残っていた者は蜘蛛の子を散らしたように逃げていった。

 

「ちッ、逃がしたか・・・、おいッ、お前ら、奴らの後を追え!」

 

我に返った何人かの兵士が生き残りを追っていく。ここでやっと春蘭も正気に戻った。

 

「おいッ!片倉・・今のは何だ!?」

 

「何だとは何だ?生き残りを追跡して、敵の拠点を探ろうと・・」

 

「そうじゃない!お前から雷が出た事だ!!」

 

「・・?・・。お前も武人なんだ、雷くらい出せるだろ?」

 

「出せる訳ないだろ!!」

 

春蘭の言葉にキョトンとした顔をする小十郎、このくらい普通の事だと、事も無げに話す小十郎に春蘭は薄ら寒いものを感じるのであった。

 

「あ、あの・・・」

 

おずおずと少女が二人に声を掛ける。

 

「あぁ、すまない・・怪我はないか? 少女よ」

 

「はいっ。ありがとうございます!おかげで助かりました」

 

春蘭の問いかけに少女は元気に答える。どうやら本当に無事らしい、それに安心した小十郎が訊ねる。

 

「しかし、何故こんな所で一人で戦っていたんだ?」

 

「そうッ!それなんですが・・・」

 

少女が話をしようとすると後方から本隊がやってくる。

 

「・・・・・ッ!!」

 

本隊を見た、少女が小さく顔を歪める。小十郎はその変化に首を傾げたが、馬上より降りてきた華琳たちに報告を求められたので視線をそちらに向ける。

 

「はいっ!あやつらは、この私の武威に恐れおののき撤退して行きました。追撃部隊もすでに送っていますから、敵の本拠地はすぐに割れるかと・・!」

 

「あら?流石ね、小十郎、気が利いているわ」

 

「か、華琳様ぁ~・・・」

 

小十郎の功績すらも己の物にしようとした春蘭に苦笑しつつ報告をしていく。その中で少女が口を開いた。

 

「あ、あなたッ・・・!」

 

「ん?・・・この子は?」

 

「お姉さん、もしかして国の軍隊・・・・ッ!?」

 

「まぁ、そうなるが・・・なッ!?」

 

そう聞くや否や、持っていた鉄塊を華琳に目掛け振り下ろしてきた。

 

「おいッ、どうした、いきなり!?」

 

間一髪、鉄塊は小十郎に防がれる。場に緊張が走るなか春蘭が声を荒げる。

 

「き、貴様・・何を・・?」

 

「国の軍隊なんか信用できるもんかッ!ボクたちを守ってもくれないくせに税金ばっかり持って行ってッ!!そんなことだから兄ちゃんが・・・」

 

「なるほど・・・だから一人で戦っていたと・・?」

 

小十郎の言葉に頷く少女。

 

「そうだよ!ボクが村で一番強いから、ボクが皆を守らなきゃいけないんだッ!盗人からも、お前たち・・役人からもッ!」

 

叫びながら攻撃の手を休めない少女を小十郎が抑える。

 

「なんだ?華琳、テメェそんなCrazyなことやってんのか?」

 

「ここは、曹操様の治める土地ではないのよ。だから盗賊追跡を名目で遠征して来てはいるのだけど・・・その政策に、曹操様は口出し出来ないの」

 

「All right・・・」

 

「・・・・・」

 

「華琳様・・・」

 

政宗の疑問に荀彧が答える。華琳は黙ったまま少女を見つめた後に、大きな声を上げた。

 

「二人とも、そこまでよ!」

 

「・・・・えっ・・・?」

 

その言葉に少女の動きは止まった。

 

「剣を引きなさい!そこの娘も、小十郎も!」

 

「は・・・はい・・・」

 

少女は持っていた鉄塊をその場で取り落とす。

 

「春蘭、この子の名は?」

 

「え、あ・・・・」

 

そういえば聞いて無かったと言葉に詰まる春蘭であったが、その問いに少女が自ら口を開く。

 

「き・・・許緒といいます」

 

華琳の放つ威圧感に少し怯えたように名を名乗った。

 

「そう・・・許緒、ごめんなさい」

 

「・・・えっ・・・?」

 

「曹操・・様?」

 

「何と・・・」

 

華琳は許緒の名を呼び頭を下げる。その行動に面を食らう許緒と曹操の配下たち。

 

「名乗るのが遅れたようね、私は曹操、山向こうの陳留の街で、刺史をしている者よ」

 

「山向こうの・・・?・・あ・・・それじゃッ!?ご、ごめんなさいッ!山向こうの街の噂は聞いています!向こうの刺史様はすごく立派な人で、悪いことはしないし、税金も安くなったし、盗賊もすごく少なくなったって!そんな人に・・ボク・・・ボク・・・!」

 

「構わないわ。今の国が腐敗しているのは、刺史の私が一番良く知っているもの。官と聞いて許緒が憤るのも、当たり前の話だわ」

 

「で、でも・・・」

 

華琳の名乗りに自身の勘違いに気が付いた許緒はひどく狼狽してようで、何度も謝った。華琳もその怒りも、尤もと彼女を許す。それでも、まだ己の非礼を許せないのか震える許緒に華琳が言った。

 

「だから許緒。あなたの勇気と力、この曹操に貸してくれないかしら?私はいづれこの大陸の王となる。けれど、今の私の力はあまりにも小さすぎるわ。だから・・・村の皆を守るために振るったその勇気と力。この私に貸して欲しい」

 

「あ・・あの・・曹操様が王様になったら・・・ボクたちの村も守ってくれますか?盗賊もやっつけてくれますか?」

 

おずおずと聞いてくる許緒に大きく頷きながら華琳は約束する

 

「約束するわ。陳留だけでなく、あなた達の村だけでなく・・・この大陸の皆がそうして暮らせるようになるため、私がこの大陸の王となるの」

 

政宗と小十郎の目に、あの日の一騎打ちの光景が甦る。ボロボロになっても立ち上がり、己の信念を叫んだ、あの姿が。きっとこの言葉は嘘にはならないだろうと、本当に面白い女に出会ったと小さく笑う政宗だった。

 

「曹操様・・・わかりました。ボクの力、曹操様にお貸しします。でも一つだけボクのお願いを聞いて貰っても良いでしょうか?」

 

「良いでしょう・・・それでどんな願いなの?」

 

「実は・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

許緒は話す。つい最近、村の近くで男が倒れていたこと、その男を助けると、とても感謝されて村の様々なことを手伝ってくれたこと。許緒は何時しか、彼を兄と慕い本当の兄妹のように過ごしていたこと。しかし昨夜、村が盗賊の襲撃に合い、二人で協力して追い払った後、兄が奴らの本拠地を叩くと、そのまま一人で行ってしまったこと、自分は待っていろと言われたが、朝になっても帰ってこない彼を探しに行く途中で、さっきの奴らに襲われたことを話した。

 

「曹操様ッ!!どうかお願いです・・兄ちゃんを・・・どうか、兄ちゃんを助けるのを手伝ってください!!そしたら、ボクの力でもなんでも、曹操様にお渡しします!!」

 

華琳は顔をヒクつかせ許猪に問う

 

「きょ、許猪? なんでもっと早くその事を言わなかったの・・・?」

 

許猪は照れたように国の軍隊だと思ったら、頭に血が上って忘れていたという。これなに皆、呆れるしかなかった。

 

「とにかく、分かったわ。許猪?その願い、私の誇りに懸けて叶えてあげる」

 

「あ・・・ありがとうございますッ!!」

 

華琳言葉に許緒は嬉しそうに感謝する。そんなやり取りをしていると丁度そこに先ほど放った部隊が戻ってきたと報告が入った。どうやら盗賊団の本拠地も見つかったようだ。

 

「許緒・・・あなたの力も貸してくれる?」

 

「ハイっ!もちろんですッ!!」

 

「ふふっ・・・ありがとう。春蘭、秋蘭。許緒は一先ず、あなた達の下につける。分からない事は教えて上げなさい」

 

「はっ!」

 

「了解です!」

 

着々と話が進む中、政宗と小十郎は、ある一つの可能性について考えていた。

 

「なぁ、小十郎・・・許緒の言う、兄ちゃんとやら・・・まさか・・・」

 

「可能性はありますな・・・。何せ、あやつも我々と同じ所で光を受けておりましたから・・」

 

「だよな・・・だったら急がねぇといけねぇな」

 

「そうですな、もしあの男であれば今頃は・・・」

 

彼らは許緒の言う兄に心当たりがあった。もし、それが当たっているのであれば少々まずいことになる。そう思い立った、政宗は華琳を急かす。

 

「おい、華琳・・・。許緒の言う兄ちゃんのことなんだが・・」

 

「ええ、分かっているわ・・・昨日の夜ということはもう手遅れかもしれない。でも許緒との約束を反故にする気はないわ!急ぎましょう・・・ッ!」

 

「Ah~・・・。急ぐのはかまわねぇんだが・・・まぁ良いか、成るように成るだろ・・・」

 

「・・・?」

 

歯切れの悪い政宗に疑問を抱きつつ、華琳は軍を進める。そこに待つものが何であるかも知らずに・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

はい、次の話にはついに我らの・・・まだ言えませんが・・・まぁもう大体わかるかと・・・。

 

 

それではここまで読んでくださった方には最大級の感謝を・・

 

 

 

 

 

 


 
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