No.609316

ALO~聖魔の剣~ 第22剣 樹木の街

本郷 刃さん

第22剣です。
前半がアスナ視点、後半からキリト視点になります。

どうぞ・・・。

2013-08-16 21:16:44 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:10198   閲覧ユーザー数:9187

 

 

 

 

 

 

 

 

第22剣 樹木の街

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アスナSide

 

そろそろリズ達の元に戻って説明をしなければと思い、現在の時刻を確認し、愕然とした。

午後6時20分、夕食の時間はとっくに過ぎている。しかも20分もだ。

 

「ク、クーハ君! 夕食の時間が過ぎてるから、わたしはここの部屋で落ちるね!

 先にリズ達のところに戻って、後で説明するからって伝えてもらえる!?」

「は、はぁ。まぁいいけど…」

「ありがとう! みんなもまたね!」

 

わたしはそう言って、スリーピング・ナイツのみんなの返事も聞かずに部屋を1つ取って鍵をかけ、ベッドの上でログアウトした。

 

アスナSide Out

 

 

 

明日奈Side

 

ログアウトしたわたしは現実の自室にあるベッドで目を覚まし、すぐに身支度を整え、急いでダイニングルームへと入った。

そこでは既に母さんが食事を始めている。

 

「お、遅くなって、ごめんなさい…」

「大丈夫よ。橘さん、明日奈の分の食事も出してもらえますか?」

「かしこまりました」

 

謝って入ったものの、母さんは笑みを浮かべたまま食事を進めて橘さんにそう言った。

見てみれば、わたしの分がまだ出ていなかった…あれ?

 

「それで、大事な用事は終わったのかしら?」

「え…う、ううん、まだです。夕食の時間に気付いて、急いで戻ってきたの」

「そう」

 

席に着きながら答えて再び、あれ?っと思う。

 

「どうして、母さんが用事のことを知ってるの?」

「和人君から連絡があったのよ」

「和人くんから?」

 

疑問に思って聞いてみると、思わぬ返答が返ってきた。

 

「そうよ。丁度、3時ごろだったかしら。

 『もしかしたら明日奈にALOで大事な用事が出来たかもしれませんから、彼女の好きなようにさせてもらえませんか?

  これからの彼女にとって、必要なことの1つになるかもしれませんから』、そう言ってきたのよ」

「………」

 

その言葉を聞いて、嬉しさが込み上げてきた。

和人くんはもしかしたらこうなることが分かっていたのかもしれない、ユウキと話しをしたのだから…。

それでいて、彼はむやみに干渉せず、さらにわたしに配慮してくれたんだ。

そのことに気付いて、嬉しさと同時に自分が情けなく思ってしまう。

やっぱり、自分では何も出来ていないではないかと…。

 

「明日奈。何か悩んでいるようだけど、わたしから言わせてもらうわね」

「はい…」

「貴女がどんなことに取り組んでいるのかは、私には分からない。

 けれど、貴女や和人君が大事なことと言うのだから、きっとそうなのでしょう。

 なら、その大事な用事をやり遂げることを考えなさい。それはきっと、貴女の糧になるわ…」

「っ、はい」

 

母さんから受け取った言葉が心の中に沁み込んでいく。

そうだ、ユウキやスリーピング・ナイツのみんなと一緒に、

フロアボスの攻略をやり遂げることが出来ればきっと前へと進めるはず。

 

「それともう1つ。悩んだり、辛いことがあるなら、誰かに相談した方がいいわよ。

 人は1人ではなにも出来ない、貴女は1人じゃないのよ」

「ぁ、うん!」

 

そう、誰かに頼ることは恥じではない。母さんの言うように、人は1人ではほとんどのことを出来ない。

誰かと一緒に、支え合うことで出来るのだ。

わたしにとって、それが和人くんや家族、仲間であるように……彼にとっても、そうなのだ…。

母さんの言葉を胸に、また頑張ろう!

 

明日奈Side Out

 

 

 

アスナSide

 

夕食を終えて再びALOにダイブしたわたしは、ユウキ達と話しをした宿屋から出て、自宅へと向かった。

帰り着いてみると、ユイちゃんが出迎えてくれた。

 

「ただいま~、ユイちゃん♪」

「あ~、おかえりなさい、ママ♪」

 

うぅ~、愛娘が可愛くて癒されます。親バカ?上等ですよ!

 

「クーハさんから簡単なことは聞きました。依頼を受けてきたんですね」

「うん。依頼というよりも、お願いに近いんだけどね」

 

確かに報酬は受け取ることになっているけれど、

ユウキ達の切実な様子を見ていたら報酬は別にいいかな~?とも思っている。

 

「あ、そういえばみんなは?」

「みなさん夕食の為に、一度戻っていますよ」

 

そういえば、わたしも夕食の為にログアウトしたんだった。他のみんなも大体同じ理由だろう。

 

「でも、パパはアレから一度も戻っていませんよ。ログアウトもしていないようですし…」

「キリトくんも用事があるって言ってたもんね」

 

キリトくんが、今、何処で、何をしているのかは気になるけれど、彼のことだからきっと大丈夫だろう。

あれで結構単独行動が好きな人だし、お土産を片手にひょっこり帰ってきそうだもんね。

 

 

それからリズ、シリカちゃん、リーファちゃん、シノのんがやってきて、

事情を知らないシノのんにも説明をしてから、リズ達にことの経緯を伝えました。

 

「ふ~ん、ゲーム卒業の記念に、ね…。いいわね、それ」

「そうね。随分と素敵なことじゃない」

「思い出に残りますもんね~」

「ALOが存在する限り、名前が語り継がれるからね」

「ロマンチックです♪」

 

シノのんとリズは優しい笑みを浮かべて言い、

シリカちゃんとリーファちゃんは夢見心地で息を漏らしながら呟き、ユイちゃんも賛成しています。

そうしていると、今度は男の子達もやってきました。

彼らにも事情を説明してから、キリトくんが何処に行っているかを聞いてみましたが、みんな知らないそうです。

 

「……やはり心配か?」

「んっと、心配ってほどじゃないけど、ちょっと気になるかな~って」

「ま、アレでいて人を驚かすのが好きな奴だし、なんか企んでいるかもしれないぜ?」

 

わたしの様子を見たハジメ君の問いかけに答えると、ハクヤ君がそう言った。

う~ん、確かに何かを企んでいそうな気もする…。

 

「メッセージでも飛ばしてみたらどうっすか?」

「ダンジョン内にいても届きますしね」

 

ルナリオ君の提案にヴァル君も賛成したので、メッセージを飛ばしてみることにしました。

『今、何処にいますか?』と送ってみると、すぐに返事が来た。

その内容は『今トンキーの背中の上w』です……え?

 

「「「「「「「「「「……え?」」」」」」」」」」

 

わたしと同じような反応を浮かべるみんな。トンキーってことは、ヨツンヘイムだよね…?

い、一体キリトくんは何をしているのかなぁ~…?

 

アスナSide Out

 

――午後3時頃・アスナとキリトが別れた直後

 

キリトSide

 

アスナはユウキと戦いに行ったか…。

俺は考えて思う、もしかしたらアスナはユウキに選ばれるかもしれないと。

彼女のALOや物事への向き合い方は真っ直ぐであり、実力も折り紙つきである。

そのことで忙しくなったとしたら大変だろうな……そう思い、

俺はこの24層の主街区である『パナレーゼ』に向かい、宿の一室を取って1度ログアウトすることにした。

 

リアルに戻った俺は端末を取り出して、明日奈の母であり、いずれは俺の義母になる予定の京子さんへと連絡を入れた。

彼女にとって大事な用事が出来て、食事の時間などに影響が出るかもしれない。

それでも、明日奈の好きにさせてあげてほしい。

彼女にとって、きっと糧になるかもしれないから……と、そう話しをした。

すると京子さんは、穏やかな声で了承してくれた。

『ようやく母親らしいことが出来るのだから、精一杯あの娘を支えるわ』と、言葉を添えて…。

 

そして、改めてALOへとダイブした。俺はある人物にメッセージを送り、接触を図った。

相手からの返答あり、いますぐ会う事になり、待ち合わせとして第1層『始まりの街』へと向かった。

そして、この街の外れにある小さな広場、そこに立っている木に背中を預け、反対側にいるアイツに声を掛ける。

 

「待たせたな、アルゴ」

「問題ないヨ、キー坊」

 

俺が呼びだしたのはアルゴだ。彼女からある情報を買おうと思い、こうして人の居ない所に来てもらったわけである。

 

「それで、結果はどうだった?」

「裏は取れたヨ。けど、正直に言わせてもらうと、かなり微妙だネ」

「…というと?」

 

情報の確認は完了しているが、確かなものとするには判断が難しいのだろうか?

 

「『硬い稲光を放ちし魔の剣』、外部の攻略ウェブサイトにも載ってるシ、

 それと似たような性能の武器情報に関してモ、2,3人のNPCが央都アルンで喋ってたサ。

 ケド、武器名が不明な上に、まともな情報が無いからネ…」

 

それならば、微妙という判断は正解だろう。

 

「だが、確かに存在はするんだな?」

「それは間違いない、オレっちが保障するヨ」

「なら十分だ。NPCの情報では、『世界樹の根』で会っているな?」

 

そうだ、その剣は間違いなく存在する。アルゴの情報が間違っていたことはないし、彼女も真剣に頷く。

俺は情報代を渡し、少しばかりの助言をすることにした。

 

「アルゴ。確かに武器名は不明かもしれないが、情報屋ならばリアルの情報にも目を傾けてみるといい」

「つまり、リアルの方に答えがあるってことカ?」

「そういうことだ、さっきのヒントで調べてみな。じゃあ、俺は行くとするよ」

「助言どうモ。またのご利用を頼んだヨ~」

「折角だ。下の情報を集めてきてやるよ」

 

彼女と別れ、アインクラッドの外周部から飛び出し、

現在の位置から最も近い地下世界ヨツンヘイムへと続くダンジョンへと向けて空を駆け抜けた。

 

 

地下世界『ヨツンヘイム』。

かつては闇と氷に覆われていたこの世界は、

世界樹の根元に巣食っていた氷塊の城『スリュムヘイム』の崩壊によって、元の緑豊かな大地を取り戻した。

それにより、この世界に続く東西南北の四方に存在しているダンジョンに居座っていたボス級邪神が消滅し、

ほぼ自由に行き来が可能となった。

まぁ、このフィールドを闊歩しているのは丘の巨人族(動物型邪神)に変わりないのだが…。

 

そして、アルゴからの情報と自分で立てた予想を組み合わせ、世界樹の根元にある泉『ウルズの泉』へと向かい、

そこには俺と仲間達に『聖剣エクスキャリバー』を譲ってくれた『ノルンの三女神』が居ると思い、訪れた。

結果は彼女達から情報を受け取る事が出来、その情報通りに世界樹の根の上にある街を訪れることにした。

泉の周囲の根を散策すれば、なんと根の一部が広めの階段になっているところを見つけ、その場所を上った先には…。

 

 

「これは驚いたな…」

 

思わず感嘆の言葉を漏らしてしまった。

封印されていたとは思えないほどに、根の上にある街は活気で溢れている。

勿論、全てNPCなのだが、様々な種族がいるのだ。

このゲームの9種族は勿論だが、他にもドワーフのような者、

翅は無いが妖精のように長い耳からしてエルフのような者、

そして鎧甲冑に身を包んだ女性ワルキューレのような者までいる。

後者の3種族の人数はかなりまばらであるが、初めて見る。

おそらく、かなり前の段階でだがこれらの種族は予めカーディナルによって生み出されたのだと思う。

ウルズやトールなどと言った者達と同じように…。

街の入り口である門扉に立つNPC門番に話し掛けてみる。

 

「ここはなんという街なんだ?」

「ここは世界樹の根にある樹木で出来た街『ミズガルズ』、あらゆる種族の集まる街さ」

 

ミズガルズ、だと…? それは確か、北欧神話における人間の住む世界のはずだが…。

もしや、このゲームで人間が出ないので、街の名前にしたのかもしれない。

そして様々な種族が集まれば、それはそれで納得が出来る。

プレイできない種族がいると思うと勿体無い気がするが、致し方ない…。

そういえば、北欧神話に出てくるドワーフは『ドヴェルク』と呼ばれる闇の妖精であり、

太陽の光を受ければ消滅するはずだが、そこはゲームだから大丈夫なのだろうか?

 

「取り敢えず、情報収集のついでに散策も済ませよう」

 

まずは街を見て回ろう。散策した結果、宿屋は在って勿論泊まれる。酒場や商店もあり、

特に売られている物は央都アルンと同等のものもあり、逆にアルヴヘイムやアインクラッドでは売られていない物もあった。

20層を超えた上層にて結構な値で『転移結晶』が販売されており、ここでは少し安いくらいの値段で売られていた。

転移結晶を1つ購入しておき、今度は情報収集を行う。

 

「『硬い稲光を放ちし魔の剣』の情報は、どれくらい出てくるかな?」

 

そう呟いてから、俺はまず酒場へと向かった。

 

キリトSide Out

 

 

 

To be continued……

 

 

 

 

 

 

 

 

後書きです。

 

遅くなってしまいましたが、なんとか投稿することができました~。

 

キリト視点中心に初めていくつもりが、前半はアスナに使った次第です。

 

とりあえず、後半のキリト側のストーリーは完全オリジナルなので、オリ設定などもたくさんでます。

 

そしてこのキリト側の話しは、アスナとクーハがユウキと会っている間から、結構夜遅くまで単体行動を取る話になります。

2,3話、長ければ4,5話掛かるかもしれません。

 

それでは次回で・・・。

 

 

 

 

 


 
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