No.608879

ALO~聖魔の剣~ 第21剣 スリーピング・ナイツ

本郷 刃さん

第21剣です。
今回はスリーピング・ナイツの登場、アスナへの依頼です。

どうぞ・・・。

2013-08-15 14:52:20 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:10659   閲覧ユーザー数:9864

 

 

 

 

 

 

 

第21剣 スリーピング・ナイツ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アスナSide

 

【絶剣】さんとの戦いのあと、彼女に連れ出されて空を引っ張られたわたしは、

彼女と一緒にアインクラッドの外周部から現在の最前線である、

常闇に包まれた第27層の主街区『ロンバール』へとやってきました。

彼女に理由と行先を訊ねたけれど、まずは仲間を紹介すると言われ、一件の宿屋の中へと通された。

奥にある酒場兼レストランに足を踏み入れると……、

 

「ユウキ、おかえり! もしかして見つかったの!?」

 

1人の少年の声がわたし達を迎えた。酒場のテーブルには5人のプレイヤーが居て、他に人影はない。

絶剣さんは5人のところに移動した。

 

「紹介するね。ボクのギルド、『スリーピング・ナイツ』の仲間達だよ! それで、このお姉さんが……」

「はじめまして。アスナと言います」

 

彼女は仲間達を紹介してから、わたしに手を向けて何かを言おうとしたけど、言葉に詰まった。

わたしは名前を確認していないことを思い出して、少し微笑を浮かべて自分の名前を告げた。

絶剣さんは「あははっ」と自分で乾いた笑いを上げている。

 

「僕はジュン! よろしく、アスナさん!」

 

わたし達を声で迎えた小柄な火妖精族(サラマンダー)の少年。

頭の後ろで小さくシッポを結んだオレンジ色の髪をしている。

 

「テッチって言います、どうぞよろしく」

 

今度は大柄な土妖精族(ノーム)の男性がそう言った。

砂色のくせっ毛の下でにこにこと細められた両眼が愛嬌を添えているみたい。

 

「ワ、ワタクシは、タ、タルケンって、名前です。よろ、よろしくお願い、しま痛いっ!?」

 

鍛冶妖精族(レプラコーン)の男の人は黄銅色の髪をしていて、丸眼鏡を掛けています。

なんだか凄く緊張しているようで、顔も紅くなってる。最後の悲鳴は彼の隣に座る女性プレイヤーに脛を蹴られたからだね。

 

「まったく、いい加減その上がり性を直しなよ、タル。アタシはノリ、会えて嬉しいよ、アスナさん」

 

太陽のように広がった黒髪と浅黒い肌を持つ女性は影妖精族(スプリガン)みたい。

こういう人を姉御肌と言うのかな?

 

「はじめまして、私はシウネーです。来てくださって、ありがとう」

 

次はわたしと同じ水妖精族(ウンディーネ)の女性で、ほとんど白に近いアクアブルーの髪をしており、

伏せた長い睫毛の下の瞳は穏やかな濃紺に輝いている。

 

「そして、ボクがギルドリーダーのユウキです! アスナさん、一緒に頑張ろう!」

「………あの~、なにを頑張ればいいのかな?」

 

そして最後に自分の名前を名乗った【絶剣】さんことユウキ。

彼女はわたしの両手を握りながらそう言ったけれど、何も聞いていないわたしは苦笑しながら聞き返した。

すると彼女はキョトンとしたあとで、「あっ」と漏らしてからこう言った。

 

「そういえば、まだなんにも説明してなかった!」

 

その言葉とともに5人は一斉にずっこけ、わたしは思わず笑いだしてしまった。

彼女らもそれにつられるようにして笑いだしました。

少し落ち着いたところで、わたしは改めてこのスリーピング・ナイツのメンバーを見て思った。

凄まじい手練れ、武術とかに疎いわたしでもこのVR世界での強さとかならわかる。

ここにいる6人の一挙手一投足は非常に滑らかで自然なもの、本当にキリトくん達と同じだ…。

けれど、そういえばキリトくん達は動きが抑制されているって言っていたっけ?アミュスフィアだからって。

 

「まずは理由も言わずに連れてきちゃって、ごめんなさい。

 ようやく、キリト以外にボクと同じくらい強い人を見つけたから、嬉しくて興奮しちゃって…」

 

彼女がキリトくんの名前を言ったことに少し驚いたけれど、そういえば2人で話しをしたというのを思い出した。

そうだ、彼女にそれを聞くのも目的の1つだった。

 

「えっと、改めてお願いします。ボク達に手を貸してください!」

「手を貸す…?」

 

まずは彼女達の目的を知らないといけないんだった。だけど、どういう意味なのかな?

お金やアイテムの入手、スキルポイント上昇が目的の狩りの線は低い。

これほどの戦力が整っているのだから、わたしがいなくても大丈夫なはず。

特定のレアアイテムやプレイヤーハウスの入手にしても、

無償で攻略情報を載せているウェブサイトが山ほどあるのでそっちも違うと思う。

なら、ギルド同士での戦争…? それが一番高い可能性だとしたら、わたしは…。

 

「あ、あの…「ちょっと失礼するぜ」え?」

「「「「「「っ!?」」」」」」

 

一番高いと示唆されることを口にしようとしたわたしの言葉が、開いた扉の奥から聞こえた声によって遮られた。

 

「依頼を受ける時は2人以上で話しを聞くこと。これはオレ達の鉄則だぜ、アスナさん」

「クーハ君、どうしてここに…?」

 

現れたのは双子兄妹の兄であるクーハ君でした。

彼の言う通り、わたし達が依頼を受けるために話しを聞きに行く時は、

2人以上で男の子を必ず1人は同伴することを決めているのだ。

 

「どうしても何も、いきなり連れていかれたから追跡したんだよ。しかもかなり速ぇし…。

 そのうえ、連れていかれた先が最前線である常闇の街。

 どんな奴がいるかも分からないところに連れ込まれて、アンタに何かあったらキリトさんに申し訳が立たねぇよ」

「ご、ごめんなさい!」

 

クーハ君の言う通りだ。彼女達のことは剣を合わせた時から信用出来ている。

けれど、そうじゃない可能性だってあったのだ、以後はよく気を付けないと…。

 

「ボ、ボクもごめんなさい! 勢いで連れてきちゃって…」

「あ~、うん、いいよ……なんか、俺が悪者みたいだな…」

 

ユウキさんが思いきり頭を下げて、他の5人もそれにならって頭を下げたので、

クーハ君は気まずくなってしまったようです。まるで毒気を抜かれたみたいだね。

 

「まぁ、そういうわけだからさ、せめてその内容とかだけでも聞かせてもらっていいか?」

「はい。こちらが御迷惑をお掛けしてしまいましたから、お願いします」

 

彼の言葉にシウネーさんが代表して答えました。

そして、わたしとクーハ君はユウキさん達が目的としていることを聞きました。

 

彼女達はこの層のボスモンスター…いや、フロアボスを倒したいということだった。

しかも他のボス攻略ギルドと共に倒すのではなく、自分達6人とわたしを含めた7人で倒したいというもの。

けれどこの新生アインクラッドのボスの実力はかなりのもので、SAO時代のものより遥かに強い。

現に、レイドパーティーの最大人数である49人構成で攻略を行う人達がボスに挑んだけれど、

全滅するという結果が何回もあるそうだ。

わたし達が参加したのは21層以降では23層と24層の攻略だけで、そのあとは参加していない。

そんな中で、彼女達はなんと25層と26層のボスに6人だけで戦いを挑み、敗北してしまったという。

どうして、そこまでしてフロアボスを単独で倒したいのかと聞いてみると、

ユウキさんがどう説明していいのか分からない風になったのでシウネーさんが続きを説明することになり、

わたしとクーハ君はテーブルの席へと促され、席に着いた。

 

彼女達はALOではなく、ゲーム外のとあるネットコミュニティで出会ったという。

最高の仲間達で、今まで様々な世界を冒険してきたらしい。

けれど、彼女達はこの春から忙しくなるらしく、チームとして活動が出来なくなるといった。

なので、チームを解散する前にみんなで大きなことに挑戦して、自分達が居たという証を残したいというのだ。

最後に辿り着いたこの世界、いままで渡り歩いてきたVR世界の中でも最高だと言えるこの世界、ここに証を残す。

この新生アインクラッドではボスモンスターを討伐すると、

第1層の『始まりの街』にある『黒鉄宮』、そこの『剣士の碑』に名前が刻まれるのだ。

しかも複数のパーティーで成功すれば、各パーティーのリーダーのみが名前を刻まれるけど、

1つのパーティーで行うとそのパーティー内のメンバー全員の名前が刻まれるのだ。

つまり、証を残す為にはどうしても自分達でボスを倒したい……けれど、2度のボス戦はともに、

あと1歩及ばずということになってしまったということ。

 

「なるほどな…」

「そういうことだったんですか…」

 

話しを聞き終えたクーハ君もわたしも、彼女達が拘る理由に納得がいった。

彼に確認するように視線を向けてみると、気付いたクーハ君は真剣な表情で頷いた。

OKサインだ、今回の依頼は裏が無いと彼も感じたんだと思います。

 

「分かりました。そのお話し、わたしが受けさせてもらいます」

「あ…ありがとうございます!」

 

シウネーさんが喜びながらお礼を言って、他の5人も同じ反応でお礼を言ってきました。

なんとか報酬を払おうとした彼女を止めて、経費がかなり掛かるから報酬はボスからでたものから受け取るように説明した。

そして、彼女達に少し待ってもらって、いままでの経過で少し興奮気味の頭を落ち着かせる。

ユウキさんの実力は本物で、他の5人の実力も間違いないはず。

なんせ、敗北したとはいえ、25層と26層のボスに善戦したのだから。

ボスモンスターを相手に陣頭指揮を執るのは久しぶりになる。

 

「アスナさん。何事も、失敗ばっかり考えてたらホントに失敗するから、前向きにな?」

 

クーハ君の言う通りだ、いまはSAOの時とは違う。それなら、彼の言うように前向きで行こう。

最近はキリトくんや他のプレイヤーが指揮を行っていたから、わたしも頑張ろう!

 

「やってみましょう。成功率とかは置いておいて!」

「ホントにありがとう、アスナさん!」

 

わたしの言葉にユウキさんは手を取って喜んでくれて、他のみんなも歓声をあげた。

 

「わたしのことはアスナって呼んでね」

「じゃあ、ボクのこともユウキでいいよ!」

 

わたしは彼女、ユウキとは凄く仲良くなれると、そう直感が告げていた。

 

アスナSide Out

 

 

 

キリトSide

 

「またお会いしましたね、黒き妖精よ」

「なにかご用があって、ここを訪れたのでしょう?」

「さぁ、何を求めてここへ来たのだ?」

「『ノルンの三女神』よ。硬い稲光を放ちし魔の剣、それはどうすれば手に入るんだ?」

 

再会した3人の姉妹神、長女のウルズ、次女のベルザンディ、三女のスクルド。

彼女らの言葉に対して、俺はイグ・シティで入手した情報と情報サイトで入手した情報、

そしてこの『ウルズの泉』が『聖剣エクスキャリバー』の題材となった“エクスカリバー伝説”における精霊の泉になぞらえ、

ここがキーポイントであると推測を立てて訪れたのだ。

 

「私達が教えられるのはただ1つ」

「根の上にある街に行くといいですわ」

「そこに貴殿が望む物について知る者がいるはずだ」

「ありがとう。早速行ってみる」

 

三姉妹の言葉を聞き、俺はこの根の上にある街へと向かうことにした。

この場を離れようとした時、ウルズに声を掛けられた。

 

「【漆黒の覇王】キリト。何故、貴方は彼の剣を求むのですか?」

「折角だから、可能な限りアイツとの条件を同じにしたいと思っただけさ…」

 

俺は意味深な笑みと言葉を残してから、泉を後にした。

 

キリトSide Out

 

 

 

アスナSide

 

「んじゃ、オレは先に戻るよ」

「あ、待って!」

 

ユウキ以外の5人と握手を交わし、大ジョッキで飲み物を注文しようとしたところで、クーハ君が帰ろうとした。

けれど、それを彼女が呼び止めている。

 

「折角ここまで来たんだし、話しも聞いてもらったから、一緒に乾杯しようよ」

「えっと、いいのか? オレ、邪魔なんじゃ…」

「そんなことないよ。ね、みんなもいいよね?」

 

ユウキの言葉を聞いて彼は迷った様子見せたけれど、

彼女の仲間達もわたしも頷いたからこのまま一緒に乾杯することにした。

クーハ君の分の大ジョッキも追加して、彼が簡単に自己紹介を済ませてから乾杯しました。

 

「そういえば、ユウキはキリトくんと戦ったんだよね?」

「うん、負けちゃったけどね。アスナはキリトのことを知ってるの?……あ、その印章(シギル)

 クーハのもだけど、キリトのギルド『アウトロード』のものだね? 2人ともキリトの仲間なの?」

 

わたしは彼女がキリトくんと戦い、敗北したのを思い出し、そのことを聞いてみた。

すると、わたし達の印章に気付いたユウキは問いかけてきた。

 

「オレとアスナさんは確かにアウトロードのメンバーだよ。

 ついでに言うと、アスナさんはキリトさんの恋人で婚約者、リアルで…」

「「「「「「えぇっ!?」」」」」」

「ちょっと、クーハ君っ//////!?」

 

そう答えた彼、スリーピング・ナイツのみんなは吃驚仰天、わたしは紅くなるしかありません。

うぅ~、恥ずかしいよ~///

 

「でも、キリトってホントに凄いね。僕の秘密も全部お見通しだったみたいだし…」

 

秘密と言ったユウキ。多分だけど、それがキリトくんが彼女と話したことだと思う。

でも、他の5人の真剣な反応を見るに、あまり触れない方がいいのかもしれない。

少なくとも、今は聞かない方がいいわね。一応、そこで話しを変えることにしました。

 

攻略の手順説明を行う、まずはボスの攻撃パターンをきちんと把握すること。

攻撃、防御、回避、それぞれ行うべきところではしっかりと行うことを説明した。

その情報を得る為に、1度は全滅することも視野に入れるべきと伝える。

ユウキが言うには、自分達も1度全滅して3時間が経った頃に、

もう1度挑戦しにいったが既に他のギルドに攻略されていたという。

まるで、自分達が負けるのを待たれていたかのように…。

 

「キナ臭いな…」

 

クーハ君が短くそう呟いた、わたしもそう思う。

ここ最近でボス攻略に関するトラブルが発生しているという噂を聞いているからだ。

主に、大ギルドによる管理が過ぎているというものだけど、6人の小ギルドにまで注意を払うのだろうか?

 

「提案、オレも手伝わせてもらう。その大ギルドに関して情報を集めてみる。

 勿論、報酬はいらない。俺が気になるだけだからな」

 

クーハ君の提案にみんなが驚いた、わたしもである。でも、良いかもしれない。

 

「えっと、いいの? 僕達にそこまでしてくれて…」

「乗り掛かった船だからな。それに、一生懸命に何かを成そうとしているやつを応援したいんだ」

「ありがとう、クーハ♪」

 

彼の思いを聞いて、ユウキはにぱっとはにかんだ笑顔を浮かべながら彼にお礼を言った。

 

「それじゃあクーハ君、情報収集お願い。みなさんも、一応1度は全滅することを想定して、再挑戦できるように準備を整えましょう」

「「「「「「「はい(うん)」」」」」」」

 

それから6人に都合の良い時間を聞いて、夜はノリさんとタルケンさんがダメみたいだから、

明日の午後1時にこの宿屋に集合して挑戦することになりました。

 

「頑張りましょう!」

「「「「「「おぉ!」」」」」」

 

わたしの言葉にスリーピング・ナイツのメンバーは片手をあげて応え、クーハ君は笑みを浮かべていました。

 

アスナSide Out

 

 

 

To be continued……

 

 

 

 

 

 

 

 

後書きです。

 

はい、ついにスリーピング・ナイツが登場しました。

 

しかもボス戦にクーハは参加しませんが、情報収集という手伝いを行います。

 

さらにキリトさんは単独行動を続けていますねw

 

次回はそのキリト中心で話しを進めます。

 

それではまた・・・。

 

 

 

 

 


 
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