No.608057

真・残念†無双 第14話

システマさん

このお話は著者の自由気ままに書いてます。
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2013-08-12 20:14:19 投稿 / 全4ページ    総閲覧数:1409   閲覧ユーザー数:1253

 

「ばしゅがしゅばくはちゅ、ばしゅがしゅばくはちゅ、ばしゅがしゅばくはちゅっ、い、言えました」

 

いや、全然言えてないよ田豫ちゃん。1回も成功してないがそれでも満面の笑みで喜びの声を挙げる姿にこそ癒される。

そんな田豫ちゃんと俺との一時は続き・・・

 

 

ってまぁこれは俺の妄想なんだけどね・・・。そんなことしてもらったことないし・・・。

別に伏線でもないし、まして本線でもない。

少し現実逃避してました。むしろ妄想に逃げ込まないとストレスで大変なことになってた。

いやぁ、良くやった俺。やればできるじゃん。

 

 

で話を現実の方に戻しますと・・・、ちなみに現実じゃない方ではキャッキャウフフしてます。

もう大盛り上がりで俺も年甲斐も無く興奮しまくってます。いや、年は関係ないか

 

 

 

 

とにかくおかしいでしょ元直さん。

この手紙はいったいなんなんだ・・・。

とりあえず何かの間違いだと信じてもう1度見る。案外お土産買ったらすぐに帰りますとか書いてあるかもしれない。

 

 

・・・

 

 

うん、変わらないね。どうしようか。伯珪様まだ固まったままだし。

 

現状分析すると、今の幽州の状況はやばいはず。

・・・確か俺の記憶では三国志で公孫讃は袁紹に敗れたはず。

なんか城を増築したけど全然無駄でした~的な残念な人だったはず。

 

・・・なんで俺この人に仕えたんだろう・・・。

 

いやしかし、なんか最近三国志とか現代の記憶が薄れてきた気がするし・・・、何これ歴史の修正力?

道標さんかっ!!妲己ちゃん助けてっ!

と、とにかく俺の知る歴史とか登場人物が性別逆転してるこの世界ではすでに関係ないはず。

すでに新しい道を歩みだしてるんだ的なことになっている。

ということはいっそ俺の歴史知識は無視して、今この場所、この世界のことを考えないと・・・、

曹操が献帝を抱えている今、漢王朝の実権はほぼ曹操が握っている。曹操としてはこのまま各地を支配しつつ、

自分に従わないものは武力で征圧しようとするだろう。それに対抗しようとしている最もなのが袁紹。

名家の力を未だ持っている袁紹は土地、人口ともに曹操を上回っている。

そして権力に対する欲、さらに曹操に対する敵愾心も人一倍だ。その袁紹が曹操の漢王朝に従うはずもなく、

これから武力によってその雌雄を決するだろう。

 

 

で我が公孫軍とすると・・・、うん、まぁねその辺はわかるよね。

まぁ一応漢王朝に従う形をとってはいるが、曹操に心底従っている訳ではない。

多くの諸侯がそんな形を取っている。普通だね。普通ってすばらしい。

 

 

で、それでー袁紹が曹操を攻める前に後顧の憂いを断つ為我が公孫軍を狙ってきますね、どうします?という処でしたね。

で、それでどうしよかなーって時に・・・、ねぇ元直さん。しかも俺の今世紀最大の癒しスポットである田豫ちゃんを連れてくとか・・・、

 

よし、俺も自分探しの旅に出るか。とりあえず暖かい方向ということで南に行こう。

なんか逃亡犯は北に行きやすいという都市伝説があるらしいが俺は別に悪いことをしてるわけではないのでバカンス気分で南だ。

そうと決まればまず準備だ、伯珪様が固まっている今が好機。

食料だろ、衣服だろ、金だろ、あと武器は何処置いたっけ、お、あった。あ、伯珪さまそっちの武器取って下さい。

 

あ、ありがとうございます。あとは何がいるかなー、え?伯珪様何をしているかですって?嫌だなーそんなの決まっているじゃないですか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「も、もちろん、元直と田豫ちゃんを連れ戻しに行く準備に決まってるじゃないですか」

 

 

ッボコォ

 

 

ッドン ガラッ グッシャァア

 

 

 

 

 

 

 

殴られました。何故?俺は公孫軍の為を思って2人を連れ戻そうとしただけなのに、

まぁ100歩譲って元直はどうでもいいとしてマイエンジェル田豫ちゃんだけでも連れ戻さないと。

 

 

 

シュッ

 

 

あ、伯珪様、いきなり剣を取り出せれてどうなさったのですか?

 

 

ザン    カタン

 

 

 

俺の使っていた机が真っ二つに切れました。ついでに俺の前髪がさらっと数本切れました。

 

・・・さすが伯珪様、剣の腕もご達者で。

 

 

「それ以上現実から目を背けると、本当に現実からオサラバすることになるぞ」

 

「いやいや、わかりました。いや、わかってます。少しの気の迷いですよ」

 

「っふ、ならいいがな。とにかくお前も公孫軍の一員なのだからもっと誇りある行動を取れよ」

 

「はい、肝に銘じました」

 

それはわかったので早く剣をしまって下さい。

 

「というかそれなら元直はどうなんですか?こともあろうに俺の天使である田豫ちゃんを誘拐して軍を逃げ出してますよ」

 

「いや、田豫はお前の物ではないからな」

 

「そんな馬鹿なっ、この間戦から帰ってきたとき一緒に点心を食べに行きましたよ。俺がおごってあげたら

『え、えっと、すごいおいしかったです、北郷さん。ま、また連れて行って欲しいです』てデレてましたよ」

 

「お前そんなことしてるのかよ、ホントに軍規で律するぞ。

 それにそれぐらいただの同僚の距離感だろ、この屑めが」

 

「そ、そんな・・・。あれは俺に一生付いていきます的な発言じゃなかったのか・・・」

 

「どう曲解すればその結論になるんだよ・・・、あぁお前のような残念な頭だったらそうなるのか」

 

「残念な頭ってなんですか?誰が残念な頭で残念な顔の頭部残念男ですかっ!?」

 

「そこまで言ってないよ。と、とにかく元直に関しては大丈夫だ」

 

「は?大丈夫とは?」

 

「何、少し前に重鎮達と軍師達、と言っても元直と田豫だが、私を含め皆で話し合っていた時に元直が言ったのだ。

 『我が軍が袁紹にただ攻められるという状況を改善する策があります。その策の為少し遠出をしなければなりません』とな、

 今回の旅はその件だろう」

 

「いやいや伯珪様、おもいっきり驚いて固まっていたじゃないですかっ、はじめから知っていたならそれはないでしょう。

 そんな後付設定では駄目ですよ」

 

「後付設定ではない、ちゃんと最初から練りに練っていた作戦だ。あえて私が驚き固まることで敵の目を欺く作戦だ。

 君主自ら策に講じるこの策、誰が見破ることが出来ようか、いや、出来まい」

 

「反語?いやそんなんどうでもいいですから、というかここでそんな大きな声で喋っている時点で台無しですけど、

 とにかく本当に伯珪様は知っていたんですね?元直は公孫軍を救う為に旅立ったんで、この置手紙はいつもの悪い冗談だと」

 

「あぁ、そうだ、田豫を連れて行ったのもあいつが必要だからで決して今の状況を見て逃げ出したのではない。

 我が軍の軍師が2人もいなくなったのを気づかれると何かの策略だとおもわれるのが当然だからな。

 それを気取られぬよう『自分探し』という隠れ蓑を被ったのであろう」

 

「・・・本当にですか?あの悪逆非道の元直が自分の命の危険を察知して、有能で可愛い田豫のみを連れ出し

 自信の保身を図る為に他勢力に逃げ出すはずがないとおっしゃるのですね?」

 

「・・・、そ、そこまで言われるとちょっと不安になっちゃうだろ~」

 

伯珪様泣かないで下さい。泣きたいのはこっちです。

 

「ですよね~、俺もめちゃくちゃ不安です。それにその隠れ蓑ってあんまり意味ないよーな、

 田豫ちゃんは普段あんまり外でないですし、元直は確かに優秀ですが新参者ですし、

 この手紙だって読んでいるのここにいる3人だけですし、ホントに隠れ蓑なんですか?」

 

「な、なに一息ついたら文を寄こすよう指示してある。心配するな。心配は要らないさ。心配するなって」

 

「いや、伯珪様こそ心配しすぎでしょう。ま、まぁあいつあれでなかなか情に厚いトコロがありますからね、大丈夫ですよ、

 それになによりマイエンジェル田豫ちゃんがいますから必ず帰ってきますよ。いっそのこと田豫ちゃんだけでいいですが」

 

俺と伯珪様の会議もとい、慰めあい、不安の打ち消し合いは仕事を続けながら長々と行われた。

というか反董卓連合での勝利により公孫軍の知名度は格段に上がった為、これで優秀な人材が増えれば仕事も楽になる!

と思っていたのだがそうもならなかった。まぁそりゃこないよね、うち田舎だし。

反董卓連合に参加した諸侯は他にもいるし、その中で我が軍より有望、有名な軍といったら両手を出しても数え切れないだろう。

 

「と、ところで伯珪様、1つよろしいでしょうか?」

 

「ん、なんだ厳綱、まだいたのか、なんだ?」

 

あれ?文官その1さんまだいたんすか?というか名前がついてるっ!いつのまにっ。

もう既に前回の話を忘れている人が多い中、声をあげるとは中々の豪気。

 

「っは、元直様が我が公孫軍の窮地を救う為に出立されたのは分かりましたが、今現在元直様が抱えられていた仕事はどうすれば・・・、

 ちなみに田豫様まで行かれていますのでその分の仕事も・・・」

 

「厳綱、それは考えちゃいけないんだ。私も気づいてはいたけど、目を向けないようにしていたのに・・・」

 

「さすが厳綱さん、伯珪様が目を背けていたトコを容赦なく突く、そこに痺れる憧れる。我が軍の唯一の良識、清廉潔白な厳綱殿。

 そしてそんなこと言わずとも分かるでしょう。その2人がやる筈の仕事が出来るといったら我等が太守様しかありません、っよ!!さすがは白馬長氏様っ!!」

 

「いや、北郷さん、あなたも仕事増えますからね、何いってるんですか?」

 

「は?、いやいや、元直や田豫ちゃんがするような重要な仕事を俺なんかが出来るわけないじゃないですか?

 まぁ伯珪様の補佐くらいは致しますが・・・」

 

「いや、言い忘れてましたがもう1つ書簡が・・・、そこには事細かに北郷さんに仕事の引継ぎを示す旨が書かれていますが・・・、

 まぁ重要な部分はほとんど伯珪様に判断されるようと書かれていますけど」

 

っく、なんと悪どい、いや用意周到なっ、これでは本当に事前に示し合わせていたに違いない。他のやつがやったことならただの策略、謀略

だと思うが元直ならばぎりぎり、最後のほんの少しでやっぱり軍の為かと思わせる。

まぁ伯珪様と厳綱さんが頑張ってくれるであろうし、ここはなんとかなるであろう。

 

 

 

 

 

 

ここで何とかなる筈がないだろと思った諸君、君はあなどっているな我が主君を!

とかっこつけてはみたもののなんてことはない、さすがは伯珪様といったところ。あと厳綱さん。

元直と田豫ちゃん、2人が抜けた穴をなんとか埋めつつ死屍累々となりながら仕事をしている。

比較的健康そうに見える厳綱さんも

 

「あれ?北郷さんですか?ちゃんと仕事してくださいよ、まったく・・・」

 

とか言いながら柱に話しかけているのを見た時は涙しました。別に仕事の手伝いとかはしませんでしたけど。

 

 

 

 

 

 

 

 

「いや~、しかしあの2人がいなくてもなんとかなるもんですね~」

 

「ん?北郷さん、それはどういうことですか?」

 

田豫ちゃんとその他1名が旅たって数週立ち、仕事も田豫ちゃん成分が足りなくつつある昨今。

仕事がひと段落したので厳綱さんとお昼である。正直俺は新参者だからあまり知り合いもいなく

いつもは

『あ~仕事が忙しすぎて飯食う時間もないよ、仕事中に食べるしかないぜ、あ~忙しい』

とデキル男っぷりをアピールしていたのだが、まぁホントに忙しいけど。

べ、別に友達がいないのを誤魔化してたんじゃないからねっ。

最近ようやく仕事にも慣れてきて食事の時間が取れるようになってきたのでこうして数少ない友人の厳綱さんと食事である。

 

「いやまぁ内政面での仕事はなんとかなってますしね。そりゃ新しいことを始めるには至ってませんが

 なにしろ平和ですからね~、ここ最近は賊の襲撃もないですし、政策も順調、農業も今年は豊作と順調続きですね~」

 

「それが北郷さん・・・、言いにくいのですがなんともなってないんですよ・・・。

 元直さんがやらなければいけかった仕事からは目を背けているだけなんです」

 

「え?なにそれ?それってやばいんじゃないの?厳綱さんがやってくれてるんじゃなかったんですか?」

 

「ええ、やばいですね。ちなみに私は与えられた仕事はこなしますがそれ以上は意地でもしませんよ。

 定時になったらすぐ帰りますし」

 

「何かっこよく宣言してくれてるんですか?この時代定時とかないはずでしょ。時代先取りすぎですよ」

 

「なんといわれようと私は帰りますよ。夕方から『流し満貫ブラザーズ』の再公演があるんですから!!」

 

「何その2番煎じの上まったく流行りそうにない兄弟っ!!」

 

「いや、北郷さん、この2人あなどるなかれ、琵琶を弾きつつ人の心に染み入る良い歌を歌うのです。

 この歌を聴くと私の少年時代が思い起こされるのです。ふんふんふ~ふふん~♪な~つがす~・・」

 

 

ガシッ

 

「それ以上はやめるんだ厳綱さんっ!!色々なところからお叱りを受けてしまう」

 

「むむ、北郷さんがそこまで言うならよしておきましょう。しかし彼らはすごいのですよ。

 彼らの熱狂的な信者達はその頭に青い頭巾をつけその人数を着実と増やしていっているのです。

 元直さん達がいたら政治的利用とか考えそうですが私達には無理ですけどね」

 

「ですよ、そもそもいくらすごいからって言って歌だけで政治にどうこうはできないと思いますよ。

 そんなことより今は食事ですよ。私は麻婆豆腐と点心にしますが厳綱さんは?」

 

「私は麻婆茄子にします」

 

麻婆茄子とかあんのかよっ?いや、大好物ですけどね。相変わらず食文化の発展がすさまじいな。

らーめんとか普通にあるからね。どこぞのラーメン街道まではいかないけど、

街の料理屋にはほとんどラーメンありましたし。美味しいからいいけど。

この時代、こんなに庶民の食生活が活発、活性しているとはおかしいと思うが、まぁなっているもはしょうがない。

 

「そもそも麻婆豆腐より茄子の方が圧倒的に美味しいと思うんですが、何血迷ってるんですか?」

 

「は?何言ってんすか?血迷ってるのはあなたじゃないんですか?仕事のし過ぎで舌までいかれてるんじゃないですかね。

 麻婆の旨みと辛味が豆腐に染み込んでこその麻婆。茄子なんか邪道ですし、歴史のない新参者のなすことです」

 

「歴史が全てを表すなどまさに赤子の放つ言葉のこと、歴史というのは自ら作り出すものであって語るものではない。

 己が道を作り出すのは過去を切り、明日を開く力、すなわち茄子です。その旨み、味の深さ、食感の素晴らしさ、

 まさに大陸一の食材と言っても過言ではないでしょう」

 

 

なんだこいつ・・・。なんかいいことを言いそうな雰囲気を出しつつ、結局茄子が旨いということしか言ってない・・・(汗

こんなに難しい言葉を使って色々言っているが結局はただの自分の好きな食べ物の話だ。

もっと人生の意味とかそんなことでこの語彙力を使えばいいのに・・・。

 

え?ところで人生の意味とは何かって?

それが分かっていれな苦労しないさ。というか誰か教えてください。メールでもなんでも待ってます。

 

「そもそも茄子の旨みとはその合わす食材にあります。麻婆しかり、味噌しかり、その食材との調和を持って活かされる存在、それが茄子です」

 

「なに?ホントに大丈夫?作者とか乗り移ってない?もっと政治の話とかしないの?」

 

 

俺と厳綱さんが心底どうでもいい会話、いや、どうでもよくは無いがまぁ雑談を繰り広げているとそこに見知った顔が現れた。

 

 

 

 

 

「おおっ!誰かと思えば敵前逃亡し、自分探しという人生最大の黒歴史を作りに行った元直様じゃないですか?

 お早いお帰りですね」

 

「よし一刀、そこに座れ。そんなにその首とお別れがしたいというなら手伝ってやろう」

 

「はい、すいません。優秀なる軍師様は我が軍の危機を救うために行かれたのですよね。伯珪様に聞いてました」

 

優秀なる軍師の元直様でした。・・・ッチ、いつか泣かす。まじで。

 

 

 

 

 

 

「それで首尾はどうだったんだ?ここで駄目でしたとかだったら俺は逃げるぞ」

 

「ええ?北郷さん何言ってるんですか?いまさら逃げ場なんてないですよ。というか逃がしませんよ。

 知ってるかもしれませんが要人警護と機密保持の為、私達の食事は既に監視されてますからね」

 

「ちょっと厳綱さん黙っててその現実を俺は見ないことにしてるから。というか厳綱さんはともかく俺は要人に入らないような」

 

「何を言ってるんですか、伯珪様の右腕で元直様の親友、田豫様の良き師であると城内外問わず噂となっていますよ」

 

「なんだその誇大妄想かのような噂は!?一体誰が広めたっ!?」

 

「え?私ですが、何かいけなかったですかね?」

 

「・・・、・・・ぃや、悪気がないだけ元直よりましというか、厄介というか。余計なお節介こそ最悪なものとはよく言うよね。

 そ、そんなことより話を戻すぞ。で、どうなんだ元直?」

 

「ん?私もどちらかというと茄子の方が好みかな、豆腐は冷奴とかは好きだがな」

 

「その話じゃねえぇよ!!公孫軍を救う手立てはどうなったんだって聞いてんだよ」

 

「まぁまぁ北郷さん落ち着いて、茄子の方が優勢だからといって落ち込まないで下さい。

 私も揚げだし豆腐とか好きですよ」

 

「分かった。分かりましたから、命の危機を考えましょう。伯珪様とかまだ執務室でうんうん唸ってるんですよ」

 

「大丈夫だ、一刀。既に策の大部分は成っている。あとは運と偶然と相手の気まぐれに任せておけばなんとかなる」

 

「それなんともなってないよっ!!しかも全ては人任せだな。もっと精力的に動けよ」

 

「・・・。いや、一刀、こう見えても私も女だからそんなことを言われても・・・」

 

「語感だけで変な想像してんじゃねぇよ!!・・・、もう誰か助けて・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

「つまりだな、袁紹側が考える公孫軍の取る手は3つ。1つ、降伏する。これはいい。向こうも損害が出ないし、公孫側にも出ない。

 まぁするとは思ってないだろうが始めは降伏を要請する使者を送るくらいはするだろう。

 もちろん降伏を受け入れれば主は良くて軟禁、普通は首を落とされ、主だった者も同じ。兵士は袁紹軍に吸収されるだろうが

 そこまで良い待遇を受けるということはないだろう」

 

やっとまともな説明が始まったよ。ここまで来るのにどれだけ時間がかかったか。

既に俺と厳綱さんは食事を終え、厳綱さんは他の仕事に、俺は元直からの報告を受けることになった。

まぁ俺が受ける必要性はないのだが、説明好きな元直が・・・、いや心優しい元直様が俺みたいな愚民にも教えてくださるという

ので聞かせていただくことになったのだ。ん?いや別に脅されてるとかはないよ。

戦の序盤で降伏を受け入れるってよっぽどのあれか、名君かとかだよな。

大抵無駄とは分かっていてもあがきたくなるのが人情ってやつだ。

 

「2つ、策を持って迎撃する。元々北からの侵略に備える為、公孫軍は訓練と実践を積み重ねている。他の軍に比べそこそこ精強な軍だ。

 それに加え私という軍師が入ったのだ。

 まぁ私の知名度はもちろん無いに等しいが水鏡私塾出身の者が軍師に就いている。という情報は既に持っているだろう。

 ならばその軍師が主を説き、軍を進めるという可能性は十分にあると考える。

 ただし、そうだとしても5万にも及ぶという袁将軍とその軍を意のままに操る軍師田豊。軍の数はもちろん軍師として経験も、

 知識も知恵も負けている。私が勝っているのは若さと美貌と器量と人間としての素質くらいだろう。

 そこそこの策を持ち、そこそこの戦いを強いられるが結局は袁将軍が勝つというのが向こう側の大勢の予想だろう」

 

おい、勝っている物の方が多いぞ。戦とはあまり関係ないだろうがと思ったが突っ込みはやめておく。シリアスな場面だからだ。

 

「そして向こう側が嫌がる3つ目は玉砕覚悟で進軍してくることだ。先程も言ったが公孫軍は精強だ。主である伯珪様も武人寄りで

 誇り高き人だ。侵略など何するものぞと玉砕覚悟で向かってくることもありえる。その場合策等通じず、ただ袁紹軍の被害が増える

 ばかりだ。だが被害が増えると言っても袁紹軍の勝ちは変わらない。少しばかりの犠牲は仕方なしと割り切るしかない」

 

つまりどの場合も公孫軍としては終わりってことじゃないか?

 

 

「いやいや、そんな『つまりどの場合も公孫軍としては終わりってことじゃないか?』って顔をするな一刀」

 

「なんで俺の考えを一字一句間違わず読めるんだよっ!?そんなにわかりやすい顔か?」

 

「そんなにわかりやすい顔だ」

 

「っう、そこまで言い切られると辛い」

 

「とまぁそこはさておき、このままでは公孫軍は終焉だ。・・・とそこをなんとかするのが軍師であり、私だ。

 つまり第4の選択肢を見つけたわけだ。公孫軍が生き、袁紹軍が退く一手を!

 そう、それこそまさに時代を担う一手。この大陸に名を残すであろう軍師の一手」

 

おーい、、聞こえてますかー?なんか自分の世界に入っちゃってますけど・・・。

 

「・・・で、曹操様に助力を願い出るって訳か。確かに曹操軍の精強さと夏候姉妹の武の強さは耳にするけど数に劣る袁紹軍に勝てるのか?」

 

そう、あろうことかこいつは策を敷いて、策を持って、策を繰して、公孫軍の力を活かして袁紹軍を破るとはせず。

最初から別の力を借りるという策を決行したのだ。

 

「勝てるとも。そもそも戦いは数ではない、人だ。人材の素質としては曹操軍の方が上回っている。将も兵もだ。あくまで素質だがな。

 装備、数、報酬等は袁紹軍の方が上だ。ちなみにこの情報は私調べ(今年度版)だ。

 しかしだが、帝が曹操の下に居て、曹操が相丞である以上、曹操と袁紹が対立すれば大陸の正義は曹操にある。

 もちろん袁紹が勝てば別だがな。勝った者が正義だとは良く言ったものだ。

 つまり何が言いたいかというと、曹操軍の兵士にとってこれは討伐戦、殲滅戦であり、袁紹軍の兵士にとって反乱戦なのだ。

 ここで既に大きな差が出て、さらに人材でも負けるとなると曹操軍の勝ちはまず間違いないだろう。

 数など問題ではないことは既に歴史が証明している」

 

何お前もあの国民的人気漫画読んだの?あれまじ面白いよなー。まじ泣けるし読んでない人は是非読んで欲しいよね。

ってそれどころじゃなくて士気の上げ下げについての重要さは分かっているが・・・、それだけで数にかなり劣る敵を倒せるかねぇ。

三国志の結果として曹操が勝つのは知っているが、その歴史と既に十分ちがうこの今を知る俺にとっては半信半疑だ。

 

「そもそも袁紹は何故この幽州を攻めてきたのか、その答えは明らか。己が天下を取る為だ。天下とは何か、土地か?金か?権力か?

 っっくく、大方袁紹はそのどれかだと思っているだろう。だが違う。天下を取るとは人の心意を集めることだ。

 王たるものとは求められなければいけない、尊敬されなければいけない、信頼、信望を得なければならない。

 それらに答えることができるのが曹孟徳、彼女だと思ったのだ」

 

 

いやぁ、俺は別にいんだけど。一応仕えている伯珪様のことも思い出してあげてね。

 

 

「いや、もちろん一刀が疑うのは分かる。私とて十割十全に曹操が勝つとは思っていない。不足の自体もあるだろう。

 だがもうどうしようもないのだ」

 

 

うん、伯珪様のことなんてすっかり忘れているね。

 

 

「なんでもうどうしようもないんだよ。そこまで考えているのならむしろこれからだろう。

 曹操軍の内情視察が済んだのなら交渉はこれからだろ、戦に有利な助言をするなり、やっぱり曹操の元にはつかないなり方法はあるだろう」

 

 

 

 

「・・・・いや、だってもう曹操の元に下るって曹孟徳様に言っちゃたし」

 

 

 

 

 

「・・・は?なに言ってんの?この子?既に曹操に言ってるだとっ?っは、まさか田豫ちゃんがいないのは?」

 

「うん、中央政務及び軍務に置ける筆頭研修生・・・件、人質(笑)」

 

「おいいいいいいいいいいいいいい、お前何俺の田豫ちゃんを曹操に売ってるんだよっ!!」

 

「っくく、何を言ってるんだ?あくまで中央の政務、軍務を学ぼうという田豫の心意気を買ったにすぎない。

 本人がそう言ったんだからいいだろう。田豫も何も知らずに喜んでいたぞ」

 

「何も知らずにって・・、お前人質だとか説明してないだろう、もし俺達が曹操の気に障ったなら田豫ちゃんの命はどうなるんだよ!!」

 

「一刀、大丈夫だ。私の見立てでは曹操は命までは取らない」

 

「ほ、ほんとか?俺の田豫ちゃんは帰ってくるのか?」

 

「・・・、ただ田豫の貞操は・・・・」

 

「おいいいいいい、あのロリコンレズ野郎がぁああああああああああ!!!」

 

「いや待て、一刀、

 孟徳殿は女性なのだから『野郎』はおかしいのでは・・・?」

 

「何冷静に突っ込み入れてんだよ!!全てお前のせいだぞ、元直!!」

 

「そんな全て私のせいにされては困るな。そもそも根本的に悪いのは攻めてきた袁紹であり、またはそれに対抗する力の無い公孫軍であり、

 強いて言うなら特殊な性癖を持つ曹操であり、おや、おかしいな私の悪いところが見当たらないなァ」

 

「っほんとにいい性格してるよなお前。そもそも伯珪様は知っているのか?」

 

「あぁ、先程伝えた。まぁ既に私にある程度の権限は与えられていたからいいだろう」

 

「で?それを受けて伯珪様はなんて?」

 

「あまりの私の聡明ぶりに感嘆したのか固まっていたな」

 

「それ違う意味で固まっていたんだろうな」

 

「いや、そこまで褒められると照れてしまうじゃないか」

 

「・・・はぁ、と、とにかく俺達はこれから何をすればいいんだ?曹操の援軍が来るまで篭城か?」

 

「何を言ってるんだ一刀はまったく、ほんとにまったくだな。曹操のいる許都からこの易京までは遠い。軍を進めている間に

 我が軍の負けは必須だろう。なれば曹操の攻める処はひとつという訳だ。まぁ私達のする行動としては抗戦の構えを見せる為、

 眼前に広がる荒野に布陣することだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結果曹操軍大勝利。

袁紹軍は公孫軍に狙いを絞って居た為背後の警戒を疎かになっていた。もちろん軍としての最低限度の警戒はしていたが、

それは結局最低限度でしかなく、それで奇襲を狙い密かに行動していた曹操軍を見つけられる訳はなかった。

公孫軍と袁紹軍が対峙し、その戦いの火蓋が切って落とされた正にその時、後方から曹操軍が向かってきた。

しかし、その数はさほど多くない、先にも言った様に許都から易京は遠い。さらに軍を率いて来るには時がかかり過ぎるだろう。

ならば少数精鋭で。と、言うには簡単だがそれを出来る者は少ない。だが幸運なことにそれを出来る者が曹操軍にはいた。

彼女の名は張遼、騎馬隊を率いり、正に神のごとく早い行軍速度とその圧倒的武力を称え多くの者は彼女をこう呼んだ。

 

 

『神速の張遼』と

 

 

とあっては袁紹軍の勢いが落ちるのも当然であろう。さらに夏候惇の突撃に合わせた波状攻撃により袁紹軍の指揮系統は崩れ、

そこを曹操軍と公孫軍の挟み討ちにされてはひとたまりも無かった。

だがしかし、侵略軍としては壊滅してもその首級たる袁紹の身柄は見つかっていない。

もちろん袁紹軍の全兵力を幽州に向けるという愚行をしているわけがなく袁紹の本拠地たる処にはさらなる精鋭がさらなる数で持しているだろう。

袁紹の2枚看板、顔良と文醜により袁紹が救い出されたという情報も既に入っている。

公孫軍に降伏を申し出ていたのが袁紹であるから戦場にいてのは間違いないのだが、その悪運、豪運のおかげかどうやら逃げ延びたらしい。

 

 

 

こうして袁紹VS公孫讃(曹操の助力98%)の戦いは終わった。一人の軍師の英断・・・、いや壮大な裏切り、いや聡明な判断によって。

もちろん今回の件によって公孫讃は曹操の傘下として認識され、事実今後傘下としての働きを余儀なくされた。

ただしかし、それにより公孫傘下の多くの民が袁将軍に虐殺され、奴隷とされ、使役されることは無く、

後の世に公孫讃こそ己が誇りと引き換えに民の命、誇りを守った名君とされ語り継がれることになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いや、後の世とか知らないですし、何その『語り継がれることになった・・・』とかかっこいい感じ。

正直伯珪様がどうなろうと知ったことじゃないですし、あの野郎。・・・、いや女性だから野郎ではないか、最近誰かに訂正されたな。

んじゃあ、あのメス狐め。いつか恨み晴らさずに居るべきか。

 

そんな先の未来、いや俺にとっては遠い過去か?での話であり、そんなどこだかの歴史家が語った言葉なんか関係ない。

関係あるのは俺の今日の食事であり、明日を生きる糧であり、今後生き続ける術だ。

未来なんか、過去なんかは知らないけど俺の現在の現実は分かる。

 

 

 

 

 

・・・はぁ、仕事探さなきゃ・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 
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