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真・恋姫†無双 外史 ~天の御遣い伝説(side呂布軍)~ 第十五回 番外編:虎牢関の戦い②・不測の事態

stsさん


どうもみなさん、お久しぶりです!または初めまして!

今回は2回目の虎牢関です。左翼や右翼など、所々で動きが活発になります。

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2013-07-18 00:01:51 投稿 / 全7ページ    総閲覧数:5912   閲覧ユーザー数:5073

 

 

袁紹「まーだ虎牢関は落とせませんの!?」

 

 

 

反董卓連合軍の本陣では、総大将である袁紹が、まだ戦いが始まって間もないにもかかわらず騒いでいた。

 

 

 

顔良「はい、どうやら虎牢関の門前に呂布が陣取っているとのことで、先ほど劉表軍の先鋒隊が蹴散らされたと報告が入っています」

 

文醜「呂布かー、あいつ強いからなー」

 

 

 

そして、業を煮やした袁紹は、ついに自身が出向こうと立ち上がった。

 

 

 

袁紹「まったく、使えないお猿さんたちですわね!もーう待ちきれませんわ!こうなったら、このわたくしが直々に敵軍の本陣まで

 

進軍してさしあげますわ!」

 

 

顔良「ちょっ!?ダメですよ姫!姫は総大将なんですから!」

 

 

袁紹「なーにを言っているのですの顔良さん!?総大将だからこそわたくしが行くのですわ!この袁本初が華麗に董卓さんを討ち取って、

 

洛陽の哀れな民衆に、あのドブネズミのような宦官ではなく、三公を輩出した名門・袁家の当主であるこのわ・た・く・しこそが、世を

 

治めるにふさわしい人物であると知らしめてやりますわ!さぁ雄雄しく、勇ましく、華麗に進軍ですわ!」

 

 

 

顔良は必死で袁紹を止めようとするが、袁紹は聞く耳を持たない。すると、文醜がこんなことを言い出した。

 

 

 

文醜「斗詩の言うとおりですよ姫。それに姫はウチらの秘密兵器でもあるんですから」

 

袁紹「秘密兵器?」

 

 

 

袁紹は文醜の言っている意味を理解できないようだったため、さらに文醜が説明する。

 

 

 

文醜「ほら、この前姫が得意げに言ってたじゃありませんか。えーと、確かー、うーんうーんうーん・・・・・・あー、思い出した!

 

一瞬で相手の周囲の大気ごと氷結させて、んでもって相手は死ぬっていうやつですよ!」

 

 

顔良「文ちゃん・・・」

 

 

 

文醜のあまりに突拍子もない奇妙奇天烈摩訶不思議奇想天外夢物語な発言に顔良は言葉を失う。

 

 

 

袁紹「そ、そうでしたわね。このわたくしとしたことが、すっかり忘れていましたわ!」

 

文醜「ですから姫は本陣でドンと構えて、高みの見物をしていたらいいんですよ」

 

 

袁紹「よーくぞ言ってくれましたわ文醜さん!せいぜい、お猿さんたちが醜く動き回るさまをゆーっくりと、見学させていただくことに

 

しますわ!おーっほっほっほっ!」

 

 

顔良「はぁ・・・」

 

 

 

顔良は袁紹の馬鹿笑いを聞きながら、ただため息をつくことしかできなかった。

 

 

 

 

 

 

【司州、虎牢関左翼】

 

 

 

虎牢関正門前で呂布が劉備軍と対峙している頃、虎牢関左翼では、華雄と張遼が反董卓連合軍と対峙していた。

 

 

 

張遼「はーはっはっは!おらおらおらおらァ!どんどんかかってこいやァッ!」

 

孫兵「ひいっ!」

 

 

 

張遼は馬上で飛龍偃月刀を振り回しながら、次々と敵軍を蹴散らしていく。

 

 

 

華雄「飛ばしているな、張遼!」

 

孫兵「「「ぐへっ!」」」

 

 

 

そのように張遼に語りかけながら、華雄は馬には乗らず、地上で金剛爆斧を敵兵に向かって思いっきり水平に振り、

 

3人の敵兵をまとめて吹き飛ばした。

 

 

 

張遼「当たり前や!こうやって暴れとったら強いヤツの方からやって来よる!」

 

華雄「確かに、武人たるもの、弱い奴より強い奴と戦った方がいいに決まっている!」

 

張遼「せや、ウチは強いヤツと戦って、自分が一番強いっちゅーのを証明したいだけや!いつかは恋やって超えてみせる!」

 

 

 

武将にとって大切なのは、強敵と戦いそれを撃破し、己の強さを証明する。

 

この共通認識から、華雄と張遼はお互い競うように敵軍を撃破し続けていた。

 

いつかは呂布を超える。目標が高ければ高いほどに、より高みを目指そうと動きにもキレが見えてくる。

 

 

 

―――そして・・・

 

 

 

華雄「おい、噂をすれば強そうな奴が来たみたいだぞ」

 

張遼「どこや!?」

 

華雄「あの紅の旗印に孫の一文字、間違いない。世に名高い江東の虎、孫堅の本隊だな」

 

 

 

華雄が指し示す方には、蹴散らされた兵士たちが倒れる中を、 “孫” の一文字をひらめかせた紅旗を掲げる一団が接近してきていた。

 

 

 

孫堅「やれやれ、うちの兵が随分世話になったみたいじゃのう」

 

 

 

辺り一面に倒れる自軍の兵を見下ろしながら気怠そうに話すのは、褐色の肌に、赤と白を基調とした露出度の高い服に身を包み、

 

横長で、両端から紐のようなものが垂れている赤い帽子をかぶり、額に四つのひし形の装飾をつけた、淡い桃髪の女性、孫堅である。

 

 

 

張遼「アンタが孫堅やな?」

 

孫堅「誰じゃお主は?」

 

張遼「なんやウチを知らんのか!?ウチの名は張遼!字は文遠!アンタちょっと強そーやし、相手してもらうで!」

 

 

 

張遼は名を尋ねられて、待ってましたと言わんばかりに高らかに名乗り出た。

 

 

 

孫堅「ちょうりょう?聞かぬ名じゃな。黄蓋よ、お主は知っておるか?」

 

黄蓋「いえ、董卓軍といえば呂布か、せいぜい華雄ぐらいのものでしょう」

 

 

 

しかし、孫堅の反応はあまりよくなく、そばに控えていた黄蓋もまた、張遼の名は知らないようであった。

 

 

 

張遼「なっ!?」

 

華雄「はっはっは、残念だったな、張遼。お前の武はまだ世に広まっていないらしいな」

 

張遼「クッソー!もー許さへん!勝負や!!」

 

 

 

張遼は孫堅や黄蓋の予想外の反応と、華雄の挑発に憤慨し、孫堅に偃月刀を向けて戦闘態勢に入った。

 

 

 

華雄「では、私はお前の相手をするとしよう!」

 

 

 

華雄も張遼にならって、戦斧・金剛爆斧を黄蓋に向けて戦闘態勢に入った。

 

黄蓋もまた、華雄に合わせて馬から降り、大弓・多幻双弓を構えて戦闘態勢に入った。

 

 

 

黄蓋「ふむ、一応名を聞いておこうか」

 

華雄「ふん、この “華” の一文字が目に入らんのか?まあいい、心して聞くがいい!我が名は華雄!字は―――!」

 

 

 

張遼が戦闘態勢に入ると、孫堅は黄蓋とは反対側に控えていた娘、孫策に小声で語りかけた。

 

 

 

孫堅「(策、主は程普、韓当らに従い、周囲の雑兵を蹴散らしておけ。こやつらを片付け次第、すぐに進軍する)」

 

孫策「(わかったわ)」

 

 

 

母親である孫堅の命に従い、孫策は黄蓋と同期である程普、韓当に従い、華雄と張遼が率いる徐栄や郝萌らを撃破しに向かった。

 

結果、自然と張遼と孫堅、華雄と黄蓋というように、一騎打ちの構図が出来上がった。

 

 

 

張遼「なんやアンタ、あんなガキ戦場に連れて来よってからに、舐めとんかいな」

 

孫堅「なんじゃ、お主も大して変わらぬ年じゃろう。いらぬ心配じゃ。それよりも、早く始めようではないか」

 

張遼「さよか。なら、遠慮なくいかせてもらうで!ウチの名をアンタの身体に刻んだる!」

 

 

 

そう告げると共に、張遼は一気に馬を駆けさせて孫堅との距離を縮め、飛龍偃月刀を水平に振るい、孫堅の首を狙った。

 

しかし、その一撃を孫堅は細身の両刃剣・南海覇王で軽くいなした。

 

 

 

華雄「―――我が武の力の前に仰天するがいい!」

 

黄蓋「ほう、それは楽しみじゃのう」

 

 

 

両者互いに姿勢を低くしたまま機を窺い、孫堅と張遼がぶつかったと同時に、華雄と黄蓋も動きだした。

 

 

 

虎牢関左翼での一番大きな戦いが、今始まった。

 

 

 

 

 

 

【司州、虎牢関右翼】

 

 

 

左翼で張遼・華雄が孫堅軍とぶつかってやや時間がたった頃、右翼では高順が淡々と敵軍を撃破しながらも、若干の違和感を覚えていた。

 

 

 

曹兵「ぎゃあっ!」

 

 

高順(おかしいですね。報告によれば、正面は劉表軍に劉備軍、左翼に連合軍一の主力の江東の虎・孫堅軍が攻めているとか。ならば、

 

右翼に、最近徐々に力をつけ始めている曹操軍を攻めさせ、左右から正面を挟み込むものかと思っていたのですが、曹操軍は雑兵の小隊

 

を小出しにするばかりで一向に攻めきろうとする意欲が見えませんね。これはいったいどういうことでしょう・・・)

 

 

 

高順は手にした槍で敵兵の心臓を一突きにし、垂れ下がりかかっていた長い袖を再度たくし上げながら、あたりの様子を窺っていた。

 

すると、そこへ予め放っていた斥候が報告しに戻ってきた。

 

 

 

董兵2「伝令!右翼後方より白馬の軍団を確認!旗印は、公孫です!」

 

 

高順「公孫・・・幽州の白馬長史ですね。だとすると、曹操軍の本隊に動きはなしですか。何か問題でも起こったのでしょうか・・・

 

あるいは、公孫賛軍に右翼を押し切らせるつもり―――」

 

 

 

高順が言い終わる前に、放った斥候とは別の方向から、血相を変えた兵士が走ってきた。

 

 

 

董兵3「伝令!!敵軍の虎牢関内への侵入を許しました!!」

 

 

 

その報告の内容は信じられない出来事であった。

 

 

 

高順「なっ・・・!?ありえません!誰がどこから侵入したのですか!?まさか、呂布様がやられたのですか・・・!?」

 

 

董兵3「いえ、呂布将軍は依然、劉備軍と交戦中です!侵入したのは曹操軍です!どうやら正面は突破できないとみて、周囲の崖を

 

強行突破した後、城壁を上ったものと思われます!」

 

 

 

高順は呂布の安否を確認でき安心するものの、曹操の取った荒業には疑問を投げかけずにはいられなかった。

 

 

 

高順「そんな・・・あんなに険しい場所を通ったというのですか!?馬では無理でしょう!?」

 

 

董兵3「はい、さすがに曹操軍も騎馬での強行突破は無理と判断したらしく、曹操軍の軍馬と思われる馬数百体が崖のそばに乗り捨てて

 

ありました!」

 

 

高順「くっ・・・やられましたね・・・!公孫賛軍は右翼での曹操軍の穴を埋めるための遊軍といったところでしょうか・・・とにかく、

 

曹操を止めにいかないと・・・!」

 

 

 

つまり、はなから曹操は左右からの挟み撃ちなど考えていなかったのだ。

 

それほど、呂布という存在は戦うべきでない存在であったのか。或いは、他勢力など信用に値しないといったことなのだろうか。

 

とにかく、このような連携のなさは、さすがは連合軍とはいったものの所詮烏合の衆であるという評価を受ける所以であった。

 

この連合軍に集結した群雄のほとんどが、己が利のためだけに動いていた。

 

しかし、この連携のなさは、結果として個陣営の突飛な行動を許し、虎牢関への侵入を許す形となってしまった。

 

そして、この結果を受けて高順は迷っていた。

 

当然すぐにでも自身が曹操を止めに行きたいのだが、ここ右翼は賈駆に防衛を任された要所。

 

現在接近中の公孫賛軍も、軽く捨て置けるほど甘い相手ではないことを理解しているだけに、

 

今この場を離れて良いものかの判断ができずにいた。

 

 

 

高順「(樊稠、張済(ちょうさい)・・・いや、やはりここは・・・)」

 

 

 

逡巡すること2,3秒・・・

 

 

 

高順「臧覇!曹性!侯成!」

 

臧覇「御意」

曹性「了解でさぁ!」

侯成「了解ッス!」

 

 

 

しかし、結局高順は経験豊かな董卓軍古参四人衆の樊稠・張済ではなく、信頼のおける八健将にこの場を任せることにした。

 

この辺りは董卓軍の中でも、特に呂布一派と言われる仲間たちの信頼関係が生んだ結果であった。

 

高順は右翼で戦っている董卓軍の中でも、特に信頼できる仲間の名前を呼ぶと、皆内容も聞かずに高順の意図を酌み、了解した。

 

 

 

高順「すいません・・・!」

 

 

 

そう告げると、高順は無駄に長い袖を靡かせながら、ものすごい速さで虎牢関正面へと駆けて行った。

 

 

 

 

 

 

【司州、虎牢関左翼】

 

 

 

虎牢関右翼に敵軍侵入の情報が伝わったのとほぼ同時刻、虎牢関左翼でも同様に情報が伝わっていた。

 

 

 

―――しかし、

 

 

 

張遼「今はそれどころやない!コイツを倒してからや!」

 

 

 

張遼はまず目の前の敵を撃破することを優先させた。

 

 

 

孫堅「ふむ、曹操に先を越されたか。まぁ連携など期待はしておらんかったが、やはりあの小娘、ただものではないのう」

 

 

 

一方孫堅もその情報を耳にしており、張遼の猛攻を涼しい顔で受け流しながら、つまらなさそうに言った。

 

そんな余裕の孫堅に対して張遼はまるで自身の体の一部かのように偃月刀を振るってさらなる猛攻を仕掛けるが、

 

それでも一向に孫堅に一撃すら入れられる気配がしない。張遼は苛立ちをあらわにした。

 

 

 

張遼「くそっくそっくそっ!何でや、何で一撃も入らへんのや!」

 

 

 

孫堅はそんな張遼の様子をつまらなさそうに一瞥すると、ため息交じりに告げた。

 

 

 

孫堅「やれやれ、そんなことも分からんのかのう」

 

張遼「なんやと!?」

 

孫堅「まったく、力に溺れる将兵ほど弱い者はおらんのう」

 

張遼「ちぃっ!」

 

 

 

張遼は孫堅の挑発に乗り、ひたすら攻撃を続けた。

 

張遼の頭の中には、すでにさきほどの報告などすっかりどこかへ行ってしまっていた。

 

 

 

 

 

一方華雄と黄蓋との一騎打ちも、依然拮抗しているという状況であった。

 

 

 

華雄「ふん、やはり飛び道具相手は少々やりづらいな!」

 

 

 

華雄は黄蓋の持つ大弓、多幻双弓から放たれる二本の矢を金剛爆斧で防ぎながら隙を見ては接近して切り込み、

 

黄蓋は切り込まれそうになったら間合いを取って再び矢を放つ、というのを延々と繰り返していた。

 

 

 

華雄「どうした、息が上がっているぞ!?そろそろ引退する時期なんじゃないのか!?」

 

黄蓋「ぬかせ若造が!まだまだケツの青いガキには負けんわ!」

 

 

 

当然華雄の耳にも虎牢関への曹操軍侵入の報告は届いていたが、華雄もまた、黄蓋との戦闘の為、本陣救援に向かう余裕はなかった。

 

 

 

 

 

 

【司州、虎牢関正門前】

 

 

 

虎牢関正門前にも同様に情報が伝わっていた。

 

 

 

陳宮「それは本当ですか!?」

 

董兵4「は、本陣が至急援軍を送ってほしいと要請してきております!」

 

 

陳宮(まずいです・・・虎牢関内の主だった武将は李傕と郭汜しかいないです。あいつらなら普通なら問題ないでしょうが、相手が曹操なら

 

やや心許ないですな・・・)

 

 

 

李傕も郭汜も、呂布や華雄といった武将には遠く及ばないにしても、董卓軍を代表する猛将である。

 

しかし、最近勢力を徐々に拡大し、勢いに乗っている曹操軍が相手となると話は別である。陳宮は呂布の方を見やる。

 

 

 

関羽「はあぁあああっっ!!」

張飛「てやあぁあああっっ!!」

呂布「・・・・・・」

 

 

 

呂布は相変わらず一切表情を変えることなく関羽張飛の連携のとれた猛攻を受けきっていた。

 

しかしそれは同時に、呂布が二人を退けられていないことをも意味していた。

 

この三人はすでに一時間以上もずっと正門前で死闘を繰り広げていた。

 

その集中力は凄まじいもので、当然敵軍が虎牢関内に侵入したことなど知る余裕はない。

 

 

 

陳宮(恋殿もさすがにあの怪物二人を相手にしているので簡単にはいかないようですな・・・)

 

 

 

ここで陳宮は目を閉じてどう出るべきかの思考に入った。次の自身の決定が、行動が、間違いなく自軍の命運を決することになる。

 

 

 

陳宮(しかしどうするです・・・魏続と宋憲は劉備ほか雑兵を食い止めているです・・・左翼は孫堅軍、右翼は曹操軍、さらに公孫賛軍

 

も接近中・・・劉表軍はほぼ瓦解、捨て置いて問題なし・・・袁紹・袁術ら諸侯に動きはなし・・・落ち着くです・・・軍師が冷静で

 

なければどうなるというですか・・・)

 

 

 

陳宮の脳内では、瞬時の間に思考がめぐっていた。

 

あらゆる可能性を想定しつつも、もっとも自軍の被害を最小限に抑え、かつ本陣を救出できる方法を導き出そうとする。

 

 

 

陳宮(今一度情報を整理するです・・・虎牢関内は李傕と郭汜・・・侵入したのは曹操軍の本隊・・・これを捨て置くのは破滅を

 

意味すると理解して間違いなし・・・自軍の兵は各々の持ち場で手一杯・・・)

 

 

セキト「わんわんわんっ!」

 

 

 

数秒の思考の後、セキトの鳴き声と共に目を開けた陳宮は、意を決して宋憲に向かって叫んだ。

 

 

 

陳宮「宋憲!高順を呼んでください(●●●●●●●)です!」

 

宋憲「了解!!」

 

 

 

“呼んで来い” ではなく “呼んでくれ” 。別に陳宮が言い間違えたわけではなかった。

 

しかし、ここ虎牢関の正門と、高順のいる右翼は、かろうじて怒号が聞こえる程の距離があり、とても呼んで聞こえるはずもなかった。

 

この陳宮の奇妙な要請に、しかし宋憲は何の疑問も抱くことなく了解した。

 

そして、対峙していた劉備軍の兵を蹴飛ばすと、何を思ったのか、急に息を思い切り吸い込んだかと思うと、思いっきり叫んだ。

 

 

 

宋憲「こおぉおおおじゅうぅううううん!!!!!戻ってこ―――」

 

高順「言われなくとも」

 

 

 

宋憲は戦場で響き渡る怒号などものともしない程の大声で高順を呼び出そうとしたのだ。

 

辺り一面の劉備軍の兵たちや、魏続の引き連れた伏兵に至るまで、その場にいた兵は耳をふさぎながら何事かと宋憲に注目していた。

 

それこそ、本当に右翼まで届くのではというほどの、人間の限界を超えた大声である。

 

しかしその途中で、この場にいるはずのない高順本人にさえぎられた。

 

 

 

宋憲「な、なんだよいるじゃねえか!」

 

陳宮「なな!?どうしてもうお前が・・・!?」

 

 

 

陳宮は驚きの表情で高順に問いかけるが、高順はその質問に答えることなく、

 

走ってきた勢いのまま呂布・関羽・張飛が死闘を繰り広げる間を一瞬ですり抜けて虎牢関内へと突入した。

 

 

 

関羽「なっ!?」

張飛「何なのだ、今の!?」

呂布「・・・なな?」

 

 

 

関羽と張飛はいったい何が起きたのか理解できなかったが、呂布は高順の姿を辛うじて捉え、

 

この戦場に立って初めて無表情を崩し、一瞬不安げな表情を作った。

 

 

 

 

 

 

【司州、虎牢関内部】

 

 

 

高順は風の如き勢いで本陣へと急行していた。

 

 

 

高順(急がないと、李傕と郭汜では恐らく・・・)

 

 

 

しかし、高順が全力で虎牢関内を駆け抜けていたその時、

 

 

 

??「待てぇいっ!」

 

高順「―――っ!?」

 

 

 

とある人物が高順の行く手を阻んだ。

 

 

 

??「ここは誰も通すなとの曹操様からのご命令だ!通りたければワタシを倒してからにしてもらおうか!」

 

 

 

高順を鋭く見据えるその眼光は、まさに狼が獲物に狙いを定めた時のそれであった。

 

 

 

高順「誰ですかあなたは!?」

 

夏候惇「我が名は夏候惇!字は元譲!」

 

 

 

高順の目に映った夏候惇は、全身を血で真っ赤に染めぬいていた。

 

そこで改めて周囲を見回してみると、先ほどまでは全力で走っていたため気づかなかったが、

 

辺り一面に数百もの董卓軍の兵士の死体が転がっていた。

 

つまり、それは自身の出血ではなく、敵を切り殺したことによる返り血。虎牢関内は死屍累々たる墓場と化していた。

 

 

 

高順(まさか、これだけの人数を一人でやったというのですか・・・!)

 

 

夏候惇「そのビロビロした無駄に長い袖、キサマ、陷陣営の高順だな?キサマの武勇はよく耳にするぞ!せっかくの機会だ!

 

我が魏武の大剣、その身に受けてみよ!」

 

 

 

そう述べると、夏候惇は自慢の得物である幅広の刀、七星餓狼を一度大きく振り下ろして、

 

刀から滴っていた鮮血を振り落とし、狼の如き鋭い二つの眼光を高順に向けた。

 

 

 

高順(まずいですね、ここで魏武の大剣とまともにやりあっていては間に合いません・・・)

 

 

 

高順も止むを得ず無駄に長い袖をたくし上げながら袂から二本の小刀を取り出し、構えた。

 

 

 

高順(曹操・・・まったく、夏候惇ほど足止めにふさわしい人材はいませんね・・・)

 

 

 

高順は焦りを募らせつつも、一時でも早く董卓の下へ向かうため、全力で夏候惇にぶつかった。

 

 

 

【第十五回 番外編:虎牢関の戦い②・不測の事態 終】

 

 

 

 

 

 

あとがき

 

 

 

第十五回終了しましたがいかがだったでしょうか?

 

この過去編では、過去編らしく現在と比べると少し違う点がいくつか見られます。

 

霞が戦闘狂だったり、劉備軍が新鋭だったり、曹操軍がまだ勢力上昇途中だったりがそれです。

 

ちなみに恋や雪蓮、霞がガキと呼ばれたりと全体的に若いイメージなのですが、

 

ねねとかどうなってんの?過去編なのに祭さんが何だか年寄り臭い、とか考えだすときりがなくなるので、

 

そこはサザエさん方式のご都合主義がまかり通っているとご理解いただければと思います。

 

 

あと一応補足しておきますと、董卓軍内の呂布一派とは、下邳攻防戦に参加していた

 

(それ以前に死亡していたのもいますが)名有り武将たちのことです。

 

彼ら彼女らは形式上は董卓軍配下ではあるものの、皆呂布を慕って集まった人たちであるため、

 

仲間意識や結束力が強く、そして何よりお互い強い信頼関係にあるといった特徴を持っております。

 

この派閥が、後に一刀君と出会うまでの、呂布軍暗黒時代での、董卓古参派の残党との

 

いざこざの原因になったりするのですが、それはまた別のお話(全く内容考えてませんが、、、汗)

 

 

最後に、前回さっそく恋姫の口調についてご指摘いただきありがとうございました!

 

このようにstsはボロボロなので、ばっさり斬っていただければと思います。

 

 

それではまた次回お会いしましょう!

 

 

 

なんで華雄さんの字は伝わってないんだろう、、、なぜ真n

 

 


 
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