EP17 解決、そして…
公輝Side
和人から受け取った画像を用意して俺は海童氏に話し掛けた。
「海童さん、少し時間を貰えませんか?」
「構わんよ。どうかしたのかい?」
「この画像の男に、見覚えはありませんか?」
「むっ……こやつはっ…!」
どうやら知った顔であったらしい、見せて正解だったな。
海童氏の様子が気になった朝霧と井藤、2人の家族も順番に画像を見ていく。
井藤家の面々は知らないようだが、朝霧家の面々は驚いた反応をしている。
「未縞君と言ったかの……この画像を何処で?」
「弟分にして親友である俺の仲間が情報を集めてくれたんですよ。
そんで犯人達の移動経路を辿ったら、如何にも黒幕っぽいその男が接触していたってわけです」
さらに驚きの表情を俺に向ける一同。
そりゃあ警察でさえまだ掴んでいない重要な情報と証拠を高々高校生とその友人が掴んでいたら驚くよな。
「それでどうですか、その男?」
「……数日前に雫ちゃんと見合いをした少年の父親じゃ。見合いはしたのじゃが、勿論断った…雫ちゃんが嫌がったからの」
「断られた腹いせ……ってわけじゃなさそうですね、やっぱ朝霧に入り込みたかったんですかね~?」
「恐らくは、の…」
つまり簡潔に纏めるとこういうことだ。
数日前に朝霧とその男の息子が見合いをしたが朝霧は断った、その男はどうやら朝霧に取り入りたかったようである。
さらにここからは推測という形になるけど、多分男は誘拐犯に彼女を攫うように依頼し、
自分と息子で助けだして朝霧に恩を売って取り入る事を目論んだ。
勿論犯人達には保釈金なり弁護士を付けるなりして保護するつもりだったんだろうな。
「確かに、その考えが妥当じゃろうな…」
俺の考え(実は和人からの受け売り)を話してみると海童氏もその考えに至っていたらしい、さすがは【稀代の傑物】だな~。
「未縞君、よければ警察への説明を手伝ってくれんかの?」
「勿論ですよ。解決しておくのが一番ですから」
その提案に俺は乗り、警察への説明を手伝った。翌日、例の男とその息子が逮捕された。
男の会社には強制捜査が入ったがそちらは一切関係がないらしく、朝霧財閥が社員らへの援助を行う形で丸く収まった。
「……で、どうして俺まで
「いや~、お前が情報を集めてくれたって言ったら海童さん達が是非お礼をって」
俺、そして和人は現在、朝霧財閥本社の応接室にあるソファに座っている。
何故ここにいるかといえば朝霧や海童氏に改めてお礼を言いたいと言われたからだ。
最初は遠慮したんだが、どうしてもと言われれば断るのもどうかと思って了解した。
その時に和人のことも話す事になり、同行することになったんだ。
ちなみに和人の機嫌が少し悪い理由は…、
「今日は『ソードアート・オンライン』のサブ迷宮ボス攻略の予定だったんだが…」
とあるゲームのβテストで楽しみにしていたボス戦に行けなかったからだ。
「俺だって楽しみにしてたさ……けど、海童さんに誘われた以上断るのもアレだし…」
「はぁ~、そうだな…。わるい、お前に当たるのは筋違いだったな」
そういうわけで俺も和人も今回の参戦は見送りとなり、志郎と景一、烈弥と刻から感想や情報を聞くことにしよう。
そんな時だった、部屋に海童氏と陽大氏、朝霧の3人が入ってきた。
ただ朝霧は少し顔を紅くしているけど、どうしたんだろ?
「待たせてしまってすまなかったの~」
「あ、そのままで構わないよ」
「こ、こんにちは///」
入室してきた3人に一礼する俺と和人。対面しているソファの右に海童氏、左に陽大氏、中央に朝霧が座る。
「はじめまして、桐ヶ谷和人です。朝霧財閥の創設者である海童氏と現総帥の陽大氏にお会いできて光栄です」
「キミが桐ヶ谷君だね。まだ中学2年生だと聞いていたけど、ここまで礼儀正しいとは」
「若い子ながら感心じゃのぅ~」
まぁ俺も和人も師匠から礼儀を仕込まれているから、
初対面で
「改めてお礼を言わせてほしい。今回の一件、本当にありがとう」
「桐ヶ谷君の情報、未縞君の行動のお陰で雫ちゃんも奏ちゃんも無事で済んだのじゃ。
あ、未縞君の手の治療費はこちらから出させてもらうからの」
陽大氏と海童氏にここまで言われると俺達はともに驚くしかないが、
それでもお二人が納得できるのならば甘んじて受け入れよう。
「それと何か礼をしたいのじゃが、なにか所望する事はあるかの?」
あれま、このパターンか……こういうのは何か頼んだ方が相手もスッキリするから言えばいいんだろうけど、
いまのところはこれといって欲しい物などはないしな~。
隣の和人を窺ってみれば困ったような表情をしていた、俺もそんな感じだ。
「えっと、いまは特にないんで……また考え付いた時でもいいですか?」
「勿論構わんよ、いつでも言っておくれ」
とりあえず俺はそう返答しておき、和人もそれに頷いたので海童氏も受け入れてくれた。
それから俺達は少しの間談笑を続け、30分も経った頃に帰宅することにした。
「こちらから招いておいて、大した持て成しも出来なくてすまないね」
「いえ、お礼の言葉だけで十分ですよ」
「困ったことがあったらなんでも言ってくれて構わんよ、いつでも助けにならせてもらうからの」
「その時はお願いします」
陽大氏の言葉には和人が応え、海童氏の言葉には俺が応じた。
そして応接室から出ようと思ったその時、
「あ、あの、未縞君///!」
顔を紅く染めたままの朝霧に呼び止められた。
「す、少しお時間を…///」
「ああ、いいぜ」
そうして俺は朝霧に手を引かれてビルの屋上へと移動することになった……ん、なんだ、この展開?
「あ、貴方の事が好きです//////! わ、わたしと付き合ってください//////!」
「……………へ?」
これはアレだよな、告白ってやつだ……え?
「ちょ、ちょっと待ってくれ!?……まずは、俺の何処に惚れるような要素があったんだ?」
正直惚れられた方からしてみれば謎でしかない、やっぱり助けたからなのか?
「その、私に…私として接してくれたからです///」
「えっと、どういう意味?」
「朝霧財閥の娘、それだけで普通の人なら飛び付きたくなるものなんです…。
男性に限らず女性にとっても、媚を売ったり、取り入ろうとしたり……そういったものを私は何度も見てきました…」
自嘲気味に苦笑しながらそう言葉にした朝霧。
なるほどな、確かに朝霧の名前ってのはそれだけの価値がある。
性別と境遇に関係無く、取り入る事が出来れば人生を変えられるかもしれない事だって考えられるんだよな…。
「ですが、貴方は違いました。私が朝霧の娘だと知っていても態度を変える事なく接してくれました、親友の奏と同じように」
「まぁ俺からすれば普通に接するのが当たり前だし。別に朝霧だろうがなかろうが、お前は雫っていう名前の女の子だろ?」
「あっ…////// ふふ、そうですね……でもそれが、凄く嬉しいんです///」
む、むぅ~…男の俺じゃ女心は良く分からないなぁ…。
「私が私でいられるように接してくれる男性は未縞君が初めてで、会った時から助けてくれたり、
今回の一件で巻き込んだ事を気にしていた私に優しくしてくれました。
その時には心が温かくなって、気付いたんです……貴方が好きになったんだって//////」
「そっか…///」
こんな風に真っ直ぐな告白をされるのは初めてだからかなり照れる。
別に告白自体は何回かされたことがある。
だけどどれも真剣さが足りなく、理由が「カッコイイから」だとか「頼もしい」や「優しい」なんていう、
簡単かつありきたりなものだったので断っていた。
けどマジでどうしよう、俺自身は彼女のことを友達としか見えていないし…。
「あ、あの…いま、返事をしなくてもいいですから/// また、後日でも…///」
「お、おう、それで頼む…///」
少し気まずい空気を残しながらも俺と朝霧は屋上を後にして和人達が待つ1階のロビーへと向かった。
そして帰る間際に俺は陽大氏と海童氏にこう言われた。
「あ、僕のことは『義父さん』って呼んでくれていいから」
「儂は『爺ちゃん』で頼むぞい」
「お、お父様///!? お祖父様///!?」
混乱する朝霧、いや俺も混乱しているんだが……聞かれていたみたいだな、うん。
そんな俺の肩に和人の手が置かれる。
「ま、頑張れ(笑)」
コイツ、殴ってもいいか? 俺は溜め息を吐いてから和人と共に帰宅の路についた。
これが俺と朝霧…いや、雫が付き合い始める前の経緯だ。
ちなみに…、
「これで朝霧にパイプが出来たか…。心強い味方になったな…(黒笑)」
和人がこんな事を呟いていた……お前ホントに恐ろしいよ…。
公輝Side Out
To be continued……
後書きです。
今回で「公輝&雫馴れ初め編」は終了です!
2人の出会いはこんな感じだったのですよ・・・え、肝心の公輝がOKしていないって?
それは次回で書きますからご安心を・・・。
そして和人さん・・・アンタやっぱり黒いよwww
ではまた、次回で・・・。
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EP17です。
今回で過去編は終了になります。
どうぞ・・・。