No.571161

アリスとパチュリー

初音軍さん

毎回タイトルがばらついているのでどれだけこのカプを書いたか忘れてしまいました。というわけでアリパチェです。毎回のように神綺が出てきますが、ちゃんと魔界を行き来しています。アリスの家にはまだ招かれてませんね。あ、親子でパジャマパーティーとかいいですね。今度書こうかなぁ・・・←

2013-04-29 17:43:10 投稿 / 全4ページ    総閲覧数:1202   閲覧ユーザー数:1193

 

ここのところ魔法の森で魔法の研究、人形の最適化に没頭していて

紅魔館に訪れる機会がめっきり減ってしまって、少し緊張を持ちながら

紅魔館入り口にたどり着いた。

 

 こくこくと今にも寝てしまいそうな門番は私の姿を確認すると

問題はないとばかりに通してくれた。

 

 門番だけでなく今やメイド長や吸血鬼からも大体は自由に行き来を

許してもらっている。大きく天を仰ぐほどのドアが開かれる。

何度も見ているはずなのに、血のように赤い扉は相変わらず威圧感を見る者に

与える。私はごくりと喉を鳴らすと。

 

「ここがあの女のハウスね!」

「・・・」

 

 私の緊張を粉々にするような言葉を、いつの間にか隣にいた女が

高らかに叫ぶように言った。翼をパタパタ揺らし触覚がビュンビュン回っている奴を

私は強引にこねるようにして球状にしようとした。

 

「あっ、あっやめてアリスちゃん。そんな大胆なぁぁぁぁ」

「変な声出すな!」

 

 大きなミートボールにした私は空高くその球体と化した奴を叫びながら

投げ飛ばした。

 

「魔界へ帰れえええええ!」

 

 キラーン

 

「ふぅっ」

 

 星になった奴を見届けてから私は開いた扉を抜けて長い廊下を歩いていく。

飛んでいった方が早いのだが何せ心の準備をしなくてはいけない。

ここを曲がれば魔法図書館。主のパチュリーが居るのだ。

 

 名前を頭に浮かべただけで表情やその場の空気が本物のように感じてくる。

会う前からドキドキしてどうするの、私!

 

 でもそれよりも…しばらく顔を合わせてないから嫌われてたらどうしようという

マイナス思考が私を絶望の中へと叩き込もうとする。

 

「ど、どうしよう…」

 

 図書館前まで来て足に震えがきてしまった私は立ち止まって考え事をしていると

横から変な声が聞こえてきた。

 

 

 

「ゆっくりしていってね!」

「え・・・?」

 

「さっさと中にゆっくり入っていきなさいよ!アリスちゃん!」

「あんた…」

 

 さっき星になったはずの人が同じ球体・・・いや、饅頭型になって小憎たらしい

表情で私を後押ししていた。

 

「何で戻ってきてるの!?」

「神ですから!」

 

 屋内に入ってしまってはそう簡単に外へと追い出せなくなってしまったので

ついていかせることにしたが…。念のために念押しをしておいた。

 

「これから私達の邪魔をしないように!約束を守れなかったら・・・」

「守れなかったら?」

「パァンッ!」

「こわっ!」

 

 風船を割るような仕草をするとガクブルしていた。おねしょでもしそうな勢いである。

彼女を私の肩に乗せて中へと入っていくと、私の気配を察してパチュリーが落としていた

視線をあげて私と目を合わせて僅かに微笑んでいた。

 

 相変わらずこの図書館は薄暗い、ランプをテーブルに乗せて淡い光を当てながら

本を読む。この瞬間は私は好きだった。

 

「あら、久しぶりね。…あらら、お母様もいらして?」

「そうなのよ、勝手についてきちゃって…」

「ゆっくりしていってね!!」

 

「それは主である私の台詞だと思うのだけど…」

「いい加減、饅頭から元に戻りなさいよ!」

「フヒヒ、サーセン」

 

 今日の母はいつにも増して様子がおかしかった。

さっきのこね過ぎたのがいけなかったのだろうか。

しかし、久々にパチュリーと一緒に過ごしたい娘の気持ちも汲んでくれないだろうか。

と考えてちょっと頭が痛くなってきた。

 

「娘を想う親の気持ちがわからないの!?」

 

 元に戻った母は私の頬に自らの頬をくっつけてきて、鬱陶しかった。

 

「そろそろ交際を認めてくれませんかね~・・・」

 

 テーブルを囲んで3人で賑やかしく話していると、騒がしいことが嫌そうなはずの

パチュリーがそんなに嫌そうになく耳を傾けている。

 

「アリス…愛されてるわね」

 

 パチュリーの視線が私達に向いているのに、どこか遠くを見つめているような気がする。

隣で母が何か言ってるのを無視して私は両手でパチュリーの頬を挟んだ。

むにっという柔らかい感触が心地良かった。

 

「あにをするを(何をするの)」

「貴女には私がいるでしょ」

「ひゅー、アリスちゃんやる~」

 

「アンタは黙ってて。っていうか帰れ」

「はい…」

 

 さすがに私の怒りの念が届いたのか、少し寂しそうに俯いてから席を経った母。

図書館の入り口へと歩もうとするのを見ると入り口の向こうから静かな殺気を感じ取れた。

私の考えてることを読んでるかのように母は振り返り。

 

「実はボディーガードとして夢子ちゃんも連れてきたんだけど。似たような子がいて

随分意識しているようね」

 

 と嬉しそうに行ってから扉を開けて。

 

「さ、帰りましょう。夢子ちゃん」

「ちょっ、神綺さま!私もアリスと会いたいです!!」

 

 夢子姉さんの声が徐々に遠くなっていくのが少し可哀想に感じられた。

少しの間騒がしくなった後にすぐ静寂の時間が訪れた。

 

 

 

 紅茶を啜りながらパチュリーは満足そうに呟いた。

 

「いいのかしら、あんなに邪険にして」

「いいのいいの。あんなことで傷つくタマじゃないから」

 

「ふぅ~ん」

 

 白けるとは少し違う、気まずい空気が流れそうになったところで小悪魔が

紅茶のおかわりを淹れてきてくれた。淹れながら、ちょっと聞こえるくらいの

声で呟いている。

 

「最近アリスさんが来ないからってパチュリー様が寂しそうだったので

来てくれて私も嬉しいです」

「ちょっ、ちょっと小悪魔・・・!」

 

「では、失礼しますね~」

 

 小さな羽をパタパタさせながら逃げるように飛んでいった。

するとパチュリーは静かに紅茶の入ったカップを口につけると、小さな声で

アツッと呟き、バツが悪そうに俯いていた。

 

「どうしたの、パチュリー。様子がおかしいわよ。私悪いこと言ったかしら?」

 

 本当に心当たりがなくて表情を見えないように伏せてるパチュリーを見て不安で

そう聞くが、溜息を吐いたのが聞こえた後。彼女は顔を上げた。

 

 それは普段あまり見せない表情が緩んで顔が赤くなっていた。

風邪かと思い立ったがすぐに違うと思った。

それなら来た直後からそんな様子のはずだから。

 

「貴女のさっきの言葉が嬉しかったから」

「え・・・」

 

「私にはアリスがいるっていう言葉」

「あっ…」

 

「レミィがいれば寂しさもないかなって思ってたけど、お気に入りの人間を見つけてから

私に配慮はしてくれるんだけど。どこか離れていってしまったようで寂しくてね」

 

 やや饒舌になったパチュリーは過去を思い出しながら語りだし、

私の瞳を覗きこむように見てきた。輝く宝石のような綺麗な瞳に私は魅了されそうになる。

 

 パチュリーの周囲まで輝いているように感じるほどだ。

 

 熱っぽく潤んだ目を見てると私まで顔が熱くなってきそうになる。

 

「パチュリー…」

「ずっと、その言葉。私のために向けてくれるかしら」

 

「当たり前じゃない…」

 

 たまらず身を乗り出して私はパチュリーの両頬に手を添えてキスをした。

啄ばむ小鳥のように軽いキス何度も何度も繰り返した。

 

 パチュリーの柔らかくふわふわした唇が触れるたびに心地良い上にドキドキする。

うっとりした表情を浮かべながら私は口付けをした後にしばらくパチュリーと

目を合わせて見つめていた。

 

「アリス…」

「パチュリー…」

 

 まるで時が止まったように、ずっとこのままでいられるかのような錯覚を

感じていたが。その時間は容易く解かれてしまった。

 

「パチュリー様、ちょっとよろしいでしょうか」

「どうしたの咲夜」

 

 何か書類を見たまま歩いてきて一定の歩数を刻むと顔を上げてから

無表情だった顔が若干動いてから、手を口元に運び少し気まずそうな表情を作る。

 

「お取り込み中だったでしょうか…」

「大丈夫よ」

 

 私の意見を聞かずにパチュリーは言い切る。確かに問題にするほどではないけど

聞かれなかったにはちょっと寂しかった。

 

「先日、お嬢様に貸した本にねずみが侵入してきまして」

「そう…」

 

 咲夜のその一言で全てを察したパチュリーは私の手を掴んで振り返らずに

声をかけてきた。

 

「アリス、貴女の力も必要だわ」

 

 その一言だけで、ちょっとだけ寂しかった私の心を癒した。

いつもよりも積極的になってるパチュリーに引っ張られながら飛んでいく。

手を繋いだ箇所から、パチュリーの体温が伝わってきてドキドキしていた。

 

「パチュリー」

「ん?」

 

 大好きという言葉を呑み込んで、その気持ちを込めて気合を入れて言った。

 

「二人で魔理沙を追い出そう」

「ええっ」

 

 私の言葉に気づいたか気づかないか。少しだけ振り返った彼女の表情は

とても満足気に微笑んでいるように見えた。

 

 

 

 小悪魔が淹れた紅茶の食器を片しながら、咲夜は二人が出ていった入り口を

見つめながら、その硬い表情も和らいでいた。

 

 レミリアでさえも入れなかった領域にある人物が入ってきた。

パチュリーの人生に甘い花を咲かせてくれた。

 

「よかったですね、パチュリー様…」

 

 誰にとも言うことなく呟いて自分の中で納得がいくと食器を両手に抱えて

ゆっくりと飛んでいった。咲夜は二人の邪魔をする気はなく、そのまま

食器を持って台所へと運んでいったのだった。

 

 やがて遠くから叫び暴れる声が聞こえたがすぐに止んだのを感じていた。

願わくば永久の魔女に安らぎの時間を長く続くように、祈らざるを得なかった。

 

お終い


 
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