No.545526

真・金姫†無双 #28

一郎太さん

前回のあらすじ。

一郎太が初めて投稿した絵が大盛況。

今回のオマケ。

続きを表示

2013-02-17 20:16:18 投稿 / 全12ページ    総閲覧数:10256   閲覧ユーザー数:7268

 

 

 

#28

 

 

華琳ちゃんの治める陳留を出て、俺は平原を荷車と共に進む。

 

「だから馬くらい買えよと……」

 

ひとりごちながら、陽の光が降り注ぐ中、ゆったりと次の街を目指して進んでいれば、

 

「よう、兄ちゃん。大層な荷物じゃねぇか」

「いやいやいや」

 

囲まれる。

 

「ひぃ、ふぅ、みぃ――――だいたい100人くらいか」

 

指差し確認で数を数えれば、前回秋蘭ちゃんに助けられた時のおよそ2倍。

 

「……数え終わったか?」

「あれ、待っててくれたの?いい人だね、兄さん」

 

その賊を率いているのは、年若い兄さんだった。年の頃は俺より少し下だろうか。中性的な顔立ちのイケメンだ。チクショウ。

 

「うるせぇっ!いいからさっさとその荷物を寄越しやがれ!……死にたくなかったらな」

 

だが短気なお人らしい。腰の剣を俺に突き付け、脅してきた。

 

「嫌に決まってんだろ。俺の商売道具なんだから」

「じゃぁ死ぬか?」

「嫌に決まってんだろ。誰が死にたがるかよ」

「じゃぁ寄越すか?」

「嫌に決まってんだろ。俺の商売道具なんだか――――」

「だぁあああああっ!いい加減にしやがれ!おい、テメェら!やっちまえ!」

「「「「「おうっ!!」」」」」

 

あーあ、キレちゃった。

 

※※※

 

ここで少しばかり補足をしておく。以下略。

 

※※※

 

「「「「「ずびばぜんでじだ……」」」」」

「分かればよろしい」

 

俺、勝利。

 

 

 

 

 

 

賊共に土下座をさせ、ひとまず俺は怒りの矛を収める。

 

「んで、なんでこんな事してんだ?」

「こんな事ってぇのは?」

「おらぁっ!」

「ぶべっ!?」

 

俺は、首領の顔を踏みつける。

 

「てめぇ、何しやがんだ!」

「お、お頭ぁ!?」

「うるせぇぞ、てめぇら。潰すぞ……〇玉を」

「「「「「ひっ――――」」」」」

 

ざわつく部下たちを脅し、俺は再び首領に向き直る。

 

「あ、あの…なんで蹴られたんだ……?」

「言葉遣い」

「へっ?」

「誰がため口きいていいっつったんだ、あ?」

「すすすすいやせんっ!」

 

もう一度踏みつけようと片足をあげれば、必死の勢いで頭を地にこすり付ける。

 

「俺、勝者。お前ら、敗者。この意味、わかるな?」

「はぃ゙……」

 

俺に頭を踏みつけられたまま、そいつは答える。そろそろ解放してやるか。

 

「よし、顔を上げろ」

「あ、ありがとうございやすっ!」

 

上げた顔は、土で汚れていた。でもイケメン。クソが。

 

「話を戻すぞ。なんで賊なんかやってたんだ?」

「へい…自分らは元々黄巾党の者なんです……張角たちが討たれた後、邑や街には戻るに戻れず、こうして徒党を組んでいるわけでして……」

「で、罪なき人々から色々奪って暮らしてる、と」

「ち、違いやすっ!基本的に役人関係の積み荷しか奪ってやせん!」

「へぇ?」

「元は農民や邑の出です。役人どもの酷さも、貧しい奴らの境遇も知っていやす。だから自分たちは、みんなを苦しめる役人や、そいつらとつるんでる豪族の荷しか奪わないようにしてるんです!」

 

なるほど、義賊か。だが。

 

「俺、役人じゃないけど?」

 

そう、俺は役人じゃない。確かに役人を相手にする事も多いが、一般人だって相手にしてる。それを、こいつらは襲ってきやがった。

 

「あ?どういう事だ?」

「それは、その……」

 

ぎゅるるるるるぅぅぅぅぅううぅぅぅうぅぅ……

 

「止むに止まれぬってか」

「へぃ……」

 

こういう時、俺がとるべき行動は。

 

 

 

 

 

 

「じゃ、さよなら」

「ちょちょちょちょっと!待ってくださいよぉ!?」

 

さっさと旅に戻ろうとすれば、縋りついてくる首領。

 

「抱き着いて来るな、気持ち悪い!俺はノンケなんだよ!」

「こういう時は、お恵みくらいくれたっていいじゃないですか!こっちだって限界なんですよぉ!」

「そうなる前に、近くの街に行って仕事でも見つけりゃよかっただろうが!」

「それはさっき説明したじゃないですかぁ!元黄巾党の自分らは、何処にも行けないんですよ!」

「んなもん知るか!というか、てめぇら賊の顔なんざ誰も覚えちゃいねぇよ!それにそんだけ人数いるなら、軍の部隊にでも志願すりゃいいだろうが!」

「嫌ですよぉ!」

 

うぜぇ。マジうぜぇ。色々と言い訳をつけて行動しないニートやらすねかじりやらと同じ位うぜぇ。

 

「いい加減に……しろやぁ!」

「きゃっ!?」

 

俺も我慢の限界なわけで、力任せにそいつの胸を突き飛ばす。途端、上がる高い声。

 

「……へっ?」

「んにゃぁ……」

 

俺の手には、柔らかな感触が残っている。こいつは、まさか。

 

「ちょっと失礼」

「んにゃっ!?」

 

地面に転んだソイツの胸に手を当てて、力を籠める。

 

「にゃっ!?にゃうんっ……」

「お前、女か」

 

それならこの見た目も納得できる。

 

「そそそそうだよっ!なんか文句でもあんのかゴラァッ!」

「言葉遣い」

「ぶべっ!?」

 

ため口になったので、右手で乳を掴んだまま左手でソイツの顔を掴む。

 

「 言 葉 遣 い は ? 」

「ばび、ずびばぜんでじだ……」

「よろしい」

「んにゃっ!?」

 

顔は解放し、右手でもう1回だけ揉んでおいた。

 

 

 

 

 

 

「――――という訳で、飯だ」

「ありがとうございやすっ!」

「「「「「ありがとうございやすっ!!!」」」」

 

乳を揉ませてもらったお礼に、俺は100人分の飯を用意した。ほとんど食材もなくなったし、さっさと次の街に行かないとなぁ。

 

「美味いか?」

「はいっ!」

「「「「「美味いっす!!」」」」」

 

俺は商売人だが、料理人でもある。こうして喜んでもらえるのは、背景はどうあれ嬉しいねぇ。

 

「そんじゃ、お前らは今から俺の部下だから」

「はいっ!」

「「「「「へいっ!!!!」」」」」

「よし、決定」

「「「「「「…………へっ?」」」」」」

「いやいや、世の中ただで飯が貰えると思うなよ?これ、契約の証。お前ら、それ受け取った。よって、お前ら、俺の物」

「「「「「「…………」」」」」」

 

さっき首領の女に言ってて思いついたんだよね。こいつら労働人材として派遣するのもありじゃね?

 

「安心しろ。俺のところで働けば、食いっぱぐれる事はねーから」

 

総合商社を目指すのに、焼鳥屋だけとはこれ如何に。新たなジャンルに手を出すぜ。

 

 

そんなこんなで旅の仲間が100人増えました。

 

「そういや、お前の名前聞いてなかったな」

「アタイですか?波才っていいやす」

「なるほど。俺は北郷だ。ま、これからよろしく」

「よろしくお願いしやす、兄貴」

「「「「「兄貴っ!!」」」」」

「馬鹿野郎ぉぉぉおおおおおっ!!」

「ぐぶらっ!?」

「「「「「姉御ぉぉおおおおおおおっ!!?」」」」」

 

すっとぼけた事を抜かすので、殴り飛ばす。

 

※波才ちゃんは特殊な訓練を受けています。この後スタッフがおいしくペロペロ(^ω^)

 

「あ、兄貴……?」

「俺の事は、社長と呼べぇっ!!」

「社長っ!」

「「「「「社長ぉぉおおおおおおおっ!!!!!」」」」」

「うるせぇっ!!」

「ごもびょっ!?」

「「「「「姉御ぉぉおおおおおおおおっ!!?」」」」」

 

 

 

 

 

 

という訳で、商業旅団の結成です。

 

「社長、クマを捕らえてきやした!」

「社長、山菜を集めて参りやした!」

「社長、このキノコは喰えやすか?」

 

旅の途中でも拠点を決め、色々なものを集めさせる。あぁ、波才。そのキノコ、毒入ってるから。

 

「んなっ!?」

 

こいつ、強いくせに使えねぇな。

 

「――――で、ここで敵が突っ込んできたとしよう。どうする?」

 

時々座学。傭兵としても売り込めるように、知識を蓄えさせる。

 

「はい!」

「よし、波才。答えて見ろ」

「真っ直ぐ来るたぁ、言い度胸でさぁ!こっちも正面からぶつかってや――」

「却下」

「――ぶべっ!?」

「んな事すりゃぁ、被害が出るだけだ。数で負けてる以上、こっちは頭を使わにゃ勝てねーからな。まずは少しずつ下がっていく。ただし、真ん中だけだ。敵は押していると勘違いするから、そこを両翼で包囲する。そしたら――――」

 

他にも色々と個人面接。

 

「なるほど?社員B君は、昔は料理人をやっていたと」

「はい、ラーメン屋を営んでましたが、同業他社に負けてしまい、店が潰れまして……」

「で、黄巾党に入ったと」

「はい」

 

まぁ、ラーメン屋は競争率が激しいからな。昔ながらの顧客を抱えるか独自の路線、あるいはチェーン店くらいしか生き残るのは難しい。昔ながらのラーメン屋、俺は好きだけど。

 

「じゃぁ、この街でいっちょ開くか」

「何を開くんですか?」

「あぁ、ラーメン屋だよ。ラーメン屋経験者が3人いたからな。そいつらに教える意味でも、俺が店を開く」

「ラーメンも作れるんで?」

「当たり前だろ。という訳で、俺が動けない間は、お前が指示を出せ、波才」

「へいっ!」

 

たった数ページで迷走している気がするが、まぁ、なんとかなるだろ。

 

 

 

 

 

 

そんなこんなで、立ち寄ったとある街。俺と料理人3人は、新たな店を出す。客席10席のカウンター式。ちょっと大きめの屋台。鍋は3つ。麺・野菜・スープ用だ。

 

「お客さん、大蒜は?」

「大蒜・野菜・脂で」

 

十数日も経営すれば、リピーターがやって来るようになった。ここからが本番だ。

 

「そっちの大豚二倍(W)の方、大蒜は?」

「全部泰山盛りでお願いっ!」

「お、ちっちゃいのにたくさん食べるんだね?」

「せいちょーきだから、いっぱい食べるのだ!」

 

季衣もこんぐらい食べてたし、大丈夫だろ。

 

「小の方、大蒜は?」

「メンママシマシで」

「ねぇよ!!」

「ぎゃぁああああああああっ!!?」

 

アホな事を抜かした青髪の女客には、スープの鉄槌を。

 

「目が!目に(スープ)がぁああっ!?」

「カネシ!カネシ!」

 

ビシャッ ビシャッ!

 

「某の一張羅が真っ黒に!?」

「ニンチョモでおしまいだゴルァア!!」

「鼻が潰れるぅぅうううううううっ!!?」

 

ふん、天罰だ。

 

「愛紗ちゃん、新しいラーメン屋さんだよ」

「ほう、食べていきますか?」

「うん!」

「いらっしゃい」

 

新規の客のようだ。大丈夫かな。

 

「あれ、桃香様に、愛紗さん」

「朱里ちゃん!」

「朱里も来たのか」

「はい、どうもこの味が恋しくなって……」

「そうなんだ、楽しみだなー」

「桃香様、恐れ入りますが、声は抑えめに」

「へっ?」

「まわりを見てください。皆、静かに食べているでしょう?」

「う…そういえば、独特の雰囲気だね……」

「お客さん、大蒜は?」

「えっ?」

 

チッ トーシロカヨ ググッテカラコイヤ

 

「桃香様、店主に『大蒜は?』と問われたら、具材(トッピング)を答えてください。大蒜・野菜・カラメ・脂の4つです。早く」

「えっと、じゃぁ…大蒜抜きの……最近少し太ったから、野菜多めでお願いします……」

「桃香様、それは――」

「隣の黒髪のお客さんは?」

「同じで」

 

バンッ ダン ガンッ

 

「愛紗さん、ちゃんと答えないと――」

「そっちの大豚二倍(W)のお嬢ちゃん、大蒜は?」

「あ、ニンチョモ野菜脂マシマシのカラカラで」

「あいよ」

「しゅ、朱里ちゃん…なに、そのおまじないみたいなの……」

「ただの具材(トッピング)注文です。それより、桃香様……」

「え…朱里ちゃんの顔が怖い……」

「ちゃんと、食べてきってくださいね?」

「う、うん……シュリチャンガコワイョ」

「へい、大蒜抜きの野菜多め2つに、大豚Wのニンチョモ野菜油マシマシのカラカラね」

「「えっ?」」

「いただきます」

 

金髪幼女は丼を受け取ると、黙々と食事を始めるが、隣の新規客2人は茫然としている。

 

「桃香様、愛紗さん。早く食べないと伸びてしまいますよ」

 

幼女は箸とレンゲを上手く使って麺と野菜の上下を入れ替えるが、隣の2人は気づいていない。ただ、野菜の量に茫然としていた。

 

「い、いただきましょう、桃香様……」

「う、うん……」

 

数分後。

 

「うぅ…野菜ばっかで麺が出てこないよぉ……」

「味が濃くて、キツイものがある……」

「……」ズルズルズルッ

「やっと麺が出て来たぁ……って、伸びてるぅ……」

「と、桃香様……」

「う、うぅ……もう、おなか、いっぱいだよぉ……」

 

バンッ

 

「きゃっ!?」

「何事だ!?」

「「「「「有罪(ギルティ)有罪(ギルティ)有罪(ギルティ)有罪(ギルティ)!」」」」」

「ふぇえ、愛紗ちゃぁん……」

「なんなのだ、この掛け声(コール)は……」

有罪(ギルティ)有罪(ギルティ)!」

「朱里ちゃんっ!?」

「朱里!?」

 

 

 

 

 

 

そんな事もあり。

 

「――――さて、もうすぐ俺の出身の領内に入るわけだが」

 

しばらくもすれば、商業旅団の規模も大きくなった。波才と同じように黄巾の出の者たちや、それとは別に貧しい街を抜けて新天地を求める者たちなど、ジャンルは様々になる。だが、俺は過去や出身など気にしない。学歴もひとつの指針としてはアリだが、それ以外の部分も見て欲しいものだね。

 

「お前らに言っておくことがある」

 

その数はいまや300人近くにも上っていた。先のラーメン屋以外にも大工をしていた奴らや、農業をしていた奴ら、兵をしていたが、城ごと負けて職を失った奴らもいる。最初は(わだかま)りのようなものがあったが、今では同じ釜の飯を食う仲だ。

それはいいとして。

いま言ったように、元賊軍、元兵士の奴らも大勢いる。要するに、見た目がムサイ……じゃないくて、厳めしい。つまりは、不信感を持たれやすいということだ。

 

「なんですか、社長?」

「周りを見てみろ。俺たちは、元々の生業もあり、見た目が仰々しい。つまりは、どこぞの賊と疑われる事もあるかもしれないということだ」

「『元』って点を除けば、間違っちゃいないですけべへぇっ!?」

「過去なんざ関係ないんだよ!今を生きろ!Carpe diemだ!リピート・アフター・ミー!

 Carpe diem!」

「「「「「かるぺでぃえむ!!」」」」」

「分かったか、波才!!」

「な、なんで殴られたんですか……?」

 

※波才ちゃんは特殊な訓練を(ry。

 

「という訳で、ここからは孫策の領地であり、もしかしたら孫家の軍と遭遇する事もあるかもしれない。だが、絶対に変な動きは見せるな。俺たちは商売人だ!何も悪い事なんざしちゃいねぇ!」

「昔はしてましたけどねべらっ!?」

「堂々と、俺に合わせていろ。抵抗をする事は許さん。これは業務命令だ。いいな!」

「「「「「いえす・ぼす!!!」」」」」

「な、なんでアタイだけ……」

 

領境辺りで社員たちに、指示を出しておく。ま、問題はないだろ。

 

 

 

 

 

 

そんな事を考えていれば。

 

「――――孫家の御方が、ただの商人である俺たちに何の御用ですかね?」

 

俺たちは『孫』の旗を掲げる軍に包囲されていた。千単位はいるだろう。俺たちは動く訳にもいかない。

 

「ただの商人が、これほどの数になる事などありえない。貴様ら、賊か何かか?」

 

皆には暴れないように再三言い含め、俺は向こうから出て来た1人の少女に対応する。フンドシ姿の狐目のお嬢さんだ。その向こうには、桃髪に褐色の肌、コバルトブルーの瞳のお嬢さん。雪蓮ちゃんに似ている。……あぁ、あれが孫権か孫尚香あたりか。

 

「答えろ」

「答えるもなにも、そのまんまですよ。荷物だって見てくれていいですぜ?」

 

俺は手を広げて荷車の列を示す。それを合図に、社員たちも荷車から離れた。

 

「どうぞ?」

「……おい」

「はっ」

 

ミニチャイナのフンドシちゃんは、視線と剣の切っ先を俺から外さずに、部下に指示を出した。指示を受けた兵たちも、それぞれ荷車の布を剥ぎ、積み荷を確認していく。

 

「甘寧様、特に不審な点はありませんでした!」

「こちらも同様です!」

 

しばらくして、兵士たちは確認を終え、命令を出した女の子に報告をする。

 

「……」

「なにか問題でも?」

 

殺気すら滲ませて睨んでくる。怖いねぇ。

だが、それもすぐに収まった。甘寧さんとやらは、ゆっくりと剣を腰に収めると、

 

「……解放してやる」

 

それだけ言って、雪蓮ちゃんの妹さんのところへと戻って行った。

 

 

 

 

 

 

「待ちな」

 

だが、それを俺は許さない。

 

「……なんだ」

 

甘寧ちゃんは振り返り、相変わらずきつい目で睨めつけながら問うてくる。

 

「疑われた事は別にいいよ。ムサイ男たちが、何百人と隊列を作って荷物を引いている。どこぞの官軍でもない。なるほど、確かに怪しく見えるだろうさ」

「なにが言いたい」

 

そりゃ、人間関係の基本さ。

 

「繰り返すぞ。疑われる事は別にいい。予想していたしな。だが、そうして疑いをかけ、さらには剣を向けて、謝罪の一言もないってのはどうなんだい?」

「疑われるような事をしているお前達が悪い」

「アンタには話してねぇよ。そっちのお嬢さんさ」

「貴様、何を――」

「なぁ、どういうつもりだい、孫家のお姫様?」

 

俺の言葉に、ようやく自分に向けて言葉をかけられていたと気付いたのだろう。妹ちゃんは、ハッとした表情で俺を見据える。

 

「さっきのがアンタの命令か、このお嬢ちゃんの進言かはわからないよ?でも、少なくともここにいる軍のなかで1番偉いんだったら、部下の非礼の責任は取らなきゃな。それともなんだ?このお嬢ちゃんは自分の手に負えないような奴だから、知ったこっちゃないってか?」

「貴様、孫権様を愚弄する気かっ!」

「おっと」

「社長っ!」

 

激昂した甘寧ちゃんが、一気に距離を詰めて斬りかかってくる。俺は軽く躱すが、後ろの波才が反応し飛び出し、俺の前で双剣の曲刀を構えた。

 

「いいよ、波才」

「ですが社長!」

「命令だ」

「……はい」

 

それを俺は制する。

 

「別に愚弄なんざしちゃいねぇよ。それとも、本当の事だから怒ったのか?」

「貴様ぁ!」

「だから甘寧ちゃんには聞いてねぇって言ってんだろ」

 

何度も曲刀を振るう甘寧ちゃん。怒りに身を任せているからか、その軌道は読む事も躱す事も容易い。

 

「そのうえ、ただの一般人に本気で攻撃を仕掛けるとか、どうなってんだ……よっ!」

「ぐっ!?」

 

そろそろめんどくさくなったので、俺は甘寧ちゃんの腕を掴み、組み伏せる。

 

「動くな」

「「「「「っ……」」」」」

 

それを受けて兵士たちが構えようとするが、俺の言葉と、将軍の首筋に添えられたクナイに、身体を硬直させる。

 

「さて、この落とし前、どうやってつけるつもりだい……孫権ちゃん?」

 

俺が視線を向ければ、孫権ちゃんはようやく動き始めた。

 

「……」

 

そのままゆっくりとこちらに歩み寄り、口を開く。

 

「そこまでにしてもらえるか……北郷?」

 

えっ?

 

 

 

 

 

 

「――――えっ?」

「その反応……やはりお前が北郷か」

 

おいおいおい、どういう事だよ。

 

「思春…甘寧を放してもらえるかだろうか」

「……暴れないように命令してくれる?」

「あぁ。思春、聞いた通りだ。その者に攻撃を加える事を禁ずる」

 

その言葉を受け、俺は甘寧ちゃんを解放した。

 

「……おいおい、そんな睨むなよ」

「黙れ、殺すぞ」

 

おー、怖い怖い。

 

「ま、それはいいとして、だ」

 

俺は孫権ちゃんに向き直った。

 

「どうして俺の名前を知っているんだ?」

「ふっ、お前は、自分がどれだけ姉様に気に入られているか、本当にわかっていないのか?」

「雪蓮ちゃん?」

「貴様、孫策様の真名を――」

「思春、やめなさい」

「ですがっ!」

「私たちは姉様の真名を口に出してはいない。それなのに、彼は知っていた。姉様が預けたと考えるのが当然の流れでは?」

「……失礼しました」

 

んー、まだ孫権ちゃんの掴み所がわかんないなぁ。

 

「話を戻す。姉様から、よく手紙が来ているのだ。街の事や軍の事……もちろん、お前やお前の妹達の事もたくさん書いてあった」

「あー……そういう事ね」

「『商人のくせして、私よりも強い。冥琳たちが認めるほどに、頭だっていい。度胸もある。先日、商品を仕入れに行くとか言って、街を出てしまったものだから退屈で仕方がない』……姉様の手紙に書いてあった事だな」

「結構空けちゃったしなぁ」

「こうも書いてあったぞ?『義には薄い部分を持っているくせに、商売人という性格からか、義とはまた違った信頼関係を非常に重く見ている。非礼に関しては、それを許す事を是としない』ともな。どうだ?『商人』で『強く』て、『度胸』があり、『非礼を許さない』……ここまで挙げた特徴、姉様の言う『北郷』と重なるだろう?」

「別に俺の事なんて書かなくてもいいのに……」

「だが、書いてあったからこそ、私はお前を北郷と思い、カマをかけてみた。正解だったわけだ」

「そうだな。……うん、俺の負けだよ、孫権ちゃん」

 

孫権ちゃんも、酷い事をしてくれやがる。まさか、俺が口で負けてしまうとはな。

 

「――――というのは、冗談だ」

「んぁ?」

 

内心悔しがる俺を他所に、孫権ちゃんは後ろを振り向いて声をかける。

 

「そろそろ出てきていいぞ」

 

そして出てきたのは。

 

「あの…お久しぶりです、一刀様……」

 

猫フェチ娘だった。

 

 

 

 

 

 

あとがき

 

 

新しい女の子が出て来たよ!

 

 

今ならオリキャラも描ける気がする……

 

 

てなわけで、また次回。

 

 

バイバイ。

 

 

 

 

 

 

オマケ

 

 

 

今度は亞莎たんをとっても可愛く描いたんだよ!

 

 

こいつぁ、流行るぜ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 
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