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『舞い踊る季節の中で』 第130話

うたまるさん

『真・恋姫無双』明命√の二次創作のSSです。

 桃香達が益州の首都である成都を間近に軍を進めるなか、一刀達の本拠地である建業では今日も穏と亞莎が悲鳴をあげさせられていた。
 穏と亞莎の知らない複数の思惑が彼女達の運命を弄び続けて行く。

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2013-02-17 16:53:15 投稿 / 全4ページ    総閲覧数:6855   閲覧ユーザー数:5082

真・恋姫無双 二次創作小説 明命√

『 舞い踊る季節の中で 』 -群雄割拠編-

   第百三拾話 ~ 微笑みを浮かべる仮面の下で舞う想い ~

 

 

(はじめに)

 キャラ崩壊や、セリフ間違いや、設定の違い、誤字脱字があると思いますが、温かい目で読んで下さると助

 かります。

 この話の一刀はチート性能です。 オリキャラがあります。 どうぞよろしくお願いします。

 

北郷一刀:

     姓 :北郷    名 :一刀   字 :なし    真名:なし(敢えて言うなら"一刀")

     武器:鉄扇(二つの鉄扇には、それぞれ"虚空"、"無風"と書かれている) & 普通の扇

       :鋼線(特殊繊維製)と対刃手袋(ただし曹魏との防衛戦で予備の糸を僅かに残して破損)

   習得技術:家事全般、舞踊(裏舞踊含む)、意匠を凝らした服の制作、天使の微笑み(本人は無自覚)

        気配り(乙女心以外)、超鈍感(乙女心に対してのみ)、食医、初級医術

        神の手のマッサージ(若い女性は危険です)、メイクアップアーティスト並みの化粧技術、

        

  (今後順次公開)

        

【最近の悩み】

 七乃のおかげで色々分かった事がある。

 むろん翡翠とかに、この世界の事を色々学んでいたから、まだまだ知識や経験不足な所を自覚していても、それなりに対処してこれた。

 では何が分かったかと言うと、いわば個人情報と言う奴だ。

 と言っても大した内容なものではない。俗にいう誕生日の事。

 色々あって皆教えてくれない事を、七乃に愚痴交じりに溜息を吐いたら、あっさり教えてくれた。

 もともと袁家の時代にそれなりに情報網を持っていた七乃は、当然その辺りの事も把握していて、

 

 『私が教えたって言うのは、絶対に内緒ですよ』

 

 と、やたらと念を押されたものの、七乃のそんな心遣いは、すごくありがたかった。

 それというのも子供の頃と言うか、家の舞踊教室に出入りしていた御姉さん達の教えで、女性の誕生日には普段お世話になっている感謝の気持ちを込めて贈り物をする風習が身についているからだ。

 といっても当時はまだ子供だったり学生だったりで、誕生日プレゼントと言っても手作りの物を贈る程度なんだけどね。

 妹はあまりこの事を快く見ていなかったけど、感謝の気持ちを込めてなんて事は、ああいう時ぐらいしか恥ずかしくて表せない。

 そもそも妹の場合は、それに加えて何故か一日付き合う事を半ば強要されていた。

 カラオケだったりウィンドショッピングだったり、もうデートコースと言えるようなところをね。

 ちなみに『こう言う所は彼氏と行けよ』と言ったら。思いっきり足を踏まれた。しかも同時に肘鉄を横腹に打ち込んで来たし。

……まぁそんな痛い思い出もあるものの、俺にとっては感謝の気持ちを誕生日に贈るのは普通の事で……。

 

『朱然、今月が誕生日だったろ。 はいこれ』

『えっ。 ……あ、あ、あのこれをいただいちゃっていいんですか?』

『ああ、何時も俺を助けてくれているから、受け取って欲しい』

 

『これ、誕生月の贈り物。 いつも助けてもらっているから』

『え、えっ、えっ? い、いいんですか? 私でいいんですかっ?』

 

 と、城に出入りしている職人さんに御厚意でもらってきた端材を材料にした【根付】、俺の世界で言うストラップを、今月誕生日の隊の娘や何時も手伝ってくれている城の娘達に誕生日プレゼントとして贈って廻ったんだけど、なんかえらく喜ばれたなぁ。

 根付と言っても柘植の木で作ったわけでもなし、それなりに固くて手触りの良い木を選んだとは言え、元手の一切かかっていないお手製のプレゼントだったのに。

 ………うーん、やっぱり女の娘は分からん。

 

 

 

 

 

七乃(張勳)視点:

 

 

 

 賑やかに女官さん達が動き回る中、時折考えるかのようにやや首を傾げながらも淀みなく墨を紙の上に走らせて行くなかで、筆を止めるのは文節などの節々で、如何にも思案のために止めたかのように見せるのが重要。そして何かを思いついたかのように再び筆を進め。更には…。

 

「さらさらさらさら」

 

 と、巫山戯た感じに言葉を漏らしてみるのも意味は無くても有効的なんですよ。

 えっ?何がですって? 決まっているじゃないですかぁ。こっそりと見た目以上に相手の目算以上の仕事を増やして、陸遜さんや呂蒙さんの御二人に可愛い悲鳴をあげさせる為ですよぉ~。

 実際は私自身があんまり慌てる事が好きではないと言うのもあるんですけどね。

 それに二人とも優秀な上に頑張り屋さんですから、これくらいなら頑張れば処理できなくもないでしょう。 もっとも、どれもこれも即効性のある案件では無いですけどね。そうでなければ意味が無いですから。と頭の中で話している内に、また一つ書き終えちゃいました。 え?誰と話しているかですって? それは内緒です。さてと、あと一刻もすれば今日の分は終わりでしょうから、そろそろ頃合い良いかなぁと思っていると。

 

「邪魔をするぞ」

 

 そう言って入って来た周瑜さんは此方に一度だけ視線を向けるも、此方に構う事も無く陸遜さんと呂蒙さんに幾つか仕事の上で確認を取っってゆく中、話はやがて荊州の州境の領地に立て籠もっている領主と呂布の件になりますが、今の所は双方共に筋書き通りと言った所でしょうね。

 孫呉側からしたら、蜂起したものの孫呉の軍に包囲され、結局何もできないでいる領主達を晒しもの状態にしておけること。

 領主や呂布からして見れば、街を包囲している孫呉の軍を呂布達が正面から突破してみせ、見事に食料や物資を何処からか補給し。己が力を孫呉に見せ続けていること。と、とりあえず建て前的はそんな感じでが、実際には……。

 

「もっと私達に攻めろと言う事ですか?」

「そうだ。むろん無理をする必要はないが、好機ならばそろそろ決着を付けても構わぬであろう」

「……失礼ながら」

「構わぬ。言うがよい亞莎」

「封鎖している街の規模から備蓄している物資や食料から考えても、いま少し時間をかけた方が良いと思われます。 むろん私達孫呉が本気になって攻め込めば勝てぬ道理はないでしょう。ですが呂布の力は今だ強大で衰えをみられません」

「つまり、それ相応の被害も覚悟しなければならないと言いたいわけだな」

「はい。最初からこの戦は人的被害を最小限に抑えるのが目的。むろん策と言うものは状況によって千差万別に変えるべきものですが、今の所その兆候は見当たらないように思えます」

「ああ、その通りだろう。 だが私はその為だけに今回の策を取ったわけではないし、そろそろ頃合いだと考えたのもその為だ」

 

 それで取り敢えずの用件は終わりなのか、周瑜さんの空気が変わったところを見計らい。私は先程言いかけていたことを口にします。ちょうど、良い具合に慌ただしい気配が近づいてきましたし、何時も通り右手の人差し指を立てながら満面の笑みで。

 

「そう言えば陸遜さん。良いんですか? 半月ほど前に通した書類に仕掛けておいた事が、そろそろ芽を出す頃だと思うんですが」

「ふぇっ? えっ、ええええーーーーーーっ! またなにか仕掛けたんですかぁーーーーーっ!?」

 

 私の言葉に一瞬きょとんとした眼で此方に顔を向けるも、すぐに何のことなのか理解し、抗議の声を上げてきますが、そんなことを言っている場合じゃないですよぉ~。なにせ、

 

どたどたどたっ

 

「陸様大変です。 先日調整しなおしたばかりの灌漑工事ですが、材料の到着が未だ到着していないのにもかかわらず次の工程が始まってしまい」

「そ、そんなはず在りません。その辺りは何度も確認していますし、手配にもぬかりがないはずです」

「とにかく一度現地へ、このままでは収まりがつきません」

「張勲さんのばぁぁかぁぁーーーーーーっ、足を滑らかせて豆腐の角に頭ぶつけてしまえばいいんですぅぅーーーっ!」

 

 と文官に手を引っ張られ、意味不明な言葉を部屋と廊下に響かせながら、混乱する現場を収めるべく半強制的に連れて行かれる事になるんですから。

 そんな陸遜さんを、私は満面の笑みを浮かべながら…。

 

「今回の仕掛けと、見逃した原因の報告書は明日の朝一で良いですからねぇ~」

「ふえぇぇぇ~~~~ん。鬼ぃぃぃぃ~~~~っ…………」

 

 聞こえなって行く陸遜さんの悲鳴を、呂蒙さんは明日は我が身と少し青褪めた表情で見送っている姿を見ると、気分が晴れ渡ってゆきます。

 二人とも優秀ですからメキメキと力を付けてきて、……と言うか、御主人様風に言うならば本来持つ力を発揮できるようになって来たおかげで、最近あげる悲鳴が少なくなって面白くないなぁと思っていたんですよね。 でも、やっぱりこう言っては何ですけど、いまいち面白みに欠けます。

 お嬢様程可愛らしい悲鳴や、愛らしい涙目を見せる訳でもなし。ただ単に気分が晴れるのと、少しだけ面白いだけなんですよね。

 せめて一刀さんのように面白い反応を見せてくれたり、もっとからかったり、悪戯して困らせてあげたいなぁと湧き上るようなものがあればよかったのですが、生憎とあの二人ではやりたくない仕事をやらされているうっぷん晴らしにしかならないんですよね。

 かと言って、自分の愛弟子が悲鳴を上げさせられているのにも拘らず、その口元や瞳に薄く笑みを浮かべばせている周瑜さんはというと。

 

「策が嵌ったと言う所か」

「嫌ですねぇ。策だなんて人聞きの悪い。それではまるで私が悪女みたいじゃないですか。 悪戯程度の事ですよ。い・た・ず・ら・♪」

「なるほど、確かにあの程度ならば悪戯と言えよう。 今回の件での工期の遅れは三日と言う所か」

「そうですねぇ。陸遜さんのならそれくらいで収めてくれるでしょうけど、……問題あります?」

「いや、無いな」

 

 と、一筋縄に行かない性格ですし、なにより後々厄介そうなのでやりません。なによりからかって楽しそうな相手では無いですから。

 そして今のような反応を周瑜さんが返せば、話を黙って聞いていた呂蒙さんが小さく驚きの声をあげます。

 それはそうでしょうね。工期が遅れればそれだけ多く、無駄に税金を使う事になりますし、上からの命令に対しての信頼も揺らいでしまいます。

 しかも今回だけではなく、今迄にも何回も同じような事があり。二人はその後始末に翻弄されてきた当事者としては、それを悪戯と言う私の発言も信じられないでしょうが、そんな私を咎める立場である周瑜さんが、逆に庇うような発言をした事に疑問の声をあげるのは当然の事なのかもしれません。ですが……。

 

「それでも予定より十日は早いことになる。私の計画の上ではな。

 亞莎よ。今は必死に学ぶ事だけを考えるが良い。 悪戯程度にあえて抑えている(・・・・・)とは言え、我等を政治手腕だけで押さえつけていただけではなく、広大な土地を治めていた張勲の手腕をな」

 

 それは当然の生餌なのだと。

 国を発展させ、他国からの侵略だけではなく、内部からの手の者達から、国と民を守るために必要な人材を育てるのに必要な犠牲なのだと。

 むしろ経験や手腕を学ぶと言う事においては、安すぎるくらいの代価なのだと。

 その支払っている代価すらも、二人が見逃したりしなければ、支払わずにすむ代価なのだと。

 

「私や翡翠とは違う能力を…、しかも張勳ほどの手腕を学べる機会はそうは無い。例え、それがかつて怨敵であろうとも、この先を生き残りたければ必死に学ぶべきだ。 真なる袁公路(・・・・・・)と言える張勳にな」

 

 私が自ら背負っている罪を態々(わざわざ)呂蒙さんに教えてしまいます。

 お嬢様が歩きやすいように、いつか罪の意識では無く自分意志と夢を背負って歩けるように、背負うと決めてきたものを……。

 余計な事を……。

 

「では、何時ものような悪戯では無く、敢えて私達に経験を積ませるために」

「そうだ。 むろん楽しんでいる所はあるだろうが、あの程度の被害やお前達の悲鳴を聞くために仕込んだにしては報われる苦労とは思えんな」

「そ、そんな。……わ、私、そうとは知らずに今までたくさん酷い言葉を……」

 

 周瑜さんの口車に乗せられて、そんな与太話を本気で信じて私に謝ってくる呂蒙さんの姿は、女の娘としては素直で可愛らしいとは思うんですけど……。

 

「別にいいんですよ。 恨まれるのも軍師の大切な役目ですから。

 ではそんな素直な呂蒙さんに特別に良い事を教えてあげますね。 今日の午前で通した書類の中に、市場の一部が混乱するきっかけとなる仕掛けが隠されていますから、止めるのなら今のうちですよ~」

「えっ?」

「あっ、それと仕掛けは半月ぐらい前から少しづつ仕込んでありますから、そちらも手を打っておかないと仕込みが連続して発生したりするかもしれませんから気を付けてくださいね」

「わっわっわっ! ご、午前中なら、ま、まだ間に合うかももっ!?」

 

 言葉を噛みながら慌てて部屋を飛び出て行こうとする呂蒙さんは、部屋を出掛けた所で思い出したかのように此方に振り向き。

 

「あ、ありがとうございます。 これからも色々教えてください。 それと亞莎で良いですから」

 

 想定すらしていなかった言葉を言い残して、こんどこそ廊下を駆け行く彼女に、少しだけ間を置いたもののお礼の言葉を送ります。

 

「報告は公平に陸遜さんと同じで明日の朝までと言いたいですが、昼前までで良いですよぉ~」

「えぇぇぇっ~~~~~~~~っ!? そ、そんなの無茶ですぅ~~……っ!」

 

 先程の誰かさんと似たような悲鳴を残しながら、悲鳴を上げる時間すらも惜しみながら廊下を駆けて行く音を聞いてから小さく溜息を吐きます。………はぁ、巧く行かないものですね。

 しかも、そんな私を嫌らしく楽しげな微笑みを言浮かべちゃっている人がいます。

 

「幾ら憎まれ役を演じようとも、伝わる人間には伝わると言うものだ」

「だから厄介なんですけどね。……前にも言いましたけど孫呉の政には関わる気はないんですから、懐かれてもらっても困ります」

「ふふ、心配はせずともそれくらいの切り替えは出来る娘達だ。それに老人達や周りはお前の思惑通りに思っている。なにも心配する必要はあるまい」

 

 其れは其れでやり辛いんですけどね。

 それに合っているか合っていないかはともかく、此方の思惑がこうだと勝手に決めつけられるのも面白くありません。

 

「何の事です?」

「ふふっ、此方の一人ごとだ。気にするな。

 して、お前の眼から見てあの二人はどう見える?」

「そうですね。陸遜さんはもともと軍師としては私より上の素質を持っていますから、思考が脱線しすぎなければ、いずれは周瑜さんの後継者に一番近い存在になるでしょうね。 もっとも変な癖を矯正する事が前提条件ですけどね」

「……そんな事まで知られていたか」

 

 蟀谷を指で押さえながら溜息を吐いたのは己が愛弟子の性癖に対してなのか、それとも孫呉が独立する以前の私達の情報網に対してなのか。おそらく両方なんでしょうね。

 少しだけ気分が晴れたので周瑜さんについでに警告しておきます。

 愛弟子が可愛かったら御主人様の前であの変な癖を出させない事を。

 もしそんな事態になれば少なくても(・・・・・)御二人が黙っていないでしょうからねぇ~。

 

「呂蒙さん……そうですね、せっかくですので亞莎さんと呼びましょう。 あの素直さが多少心配ですが、それが勉学に活かせば大きくなるでしょうね。本人は表に出さないようにしていますが武将と軍師の両方の思考を同時(・・)に出来ますから、彼女ならではの強みになるでしょうね」

「ふふ、なにより他の軍師達と違って、まだ誰の色にも染まっていない。これはある意味強みと言えよう。 私が聞きたいのは其処だ」

 

 やっぱりそう言うつもりでしたか。

 周瑜さんの言葉と眼差しに、心の中で溜息を吐きながらも二人に少しだけ同情します。

 

「そう言う意味ではお二人とも向いていませんね。 陸遜さんは妙な性癖の件もありますが、既に軍師としての方向性が固まっていますし、御自身の足場も確立されています」

 

 御主人様に対しての補佐を兼ねた監視………と言うより、天の知識を吸い出すための存在として。

 

「亞莎さんは先程仰っていた観点からすれば、もっとも適任に見えますが………。もっとも不適格とも言えますね」

「ほう、どうしてそう思う?」

「分かっている事をあえて聞くのは、周瑜さんの悪癖の一つですね。 まぁ、私に関係ない事ですから言っちゃいますけど」

 

 関係なくはありません。

 私や美羽様にとって、それはとても見過ごす事のできない事。

 なにより、色々と面白くありません。

 

「簡単な事です。『憧憬』と言うものは『理解』からもっとも遠い感情だからです。

 彼女は御主人様の能力に『憧れ』、御主人様の考え方や生き方に『崇拝』しているから、御主人様の『理解者』と成るべく補佐官には不適格なんです」

「『教主は信仰故に信徒に神にされ、信仰故に教主は信徒に殺される』か……。理由がそれだけとは思えんが」

「そうですか? 嘘なんてついていませんよ」

「ふふ、まぁそう言う事にしておこう。

 老人達の意見故に無視する訳にはいかなかった件だが、そう結論できるのならば仕方あるまい。 私としては天の知識を上手(・・)に引き出せなくとも、巧く(・・)引き出せれるのならば、誰であろうと構わぬ。例えそれが、己が主であろうとも玩具にする不良奴隷であろうともな」

「うわぁ~。酷い人がいるですね~。

 でも良いんですか? 色々と口煩い方の意向を無視しちゃって?」

「構わぬさ。老人達を説得させる程度の苦労で、北郷が『神』では無く『人』としていられるのなら、喜んでするさ」

 

 とりあえず孫家の老人達を説得する口実が出来た事に、肩の荷が一つ降りたと楽しげに笑みを浮かべる周瑜さんの瞳は確かにこう語っていました。

 

 『安心したろ?』

 

 むぅっ! 絶対にこの人、良い死に方をしないでしょうね。

 こう、ぷすっと後ろから刺されるか、口から血を吐いて悶絶死するかどちらかでしょうね。

 と言うか、そうならないかなぁ~と、天に祈っちゃいますよ?

 もっとも、そんな事にならないように御主人様は、今回の事を周瑜さんに『頼んだ』んでしょうね。

 そしてそれを周瑜さんが御主人様の『命令』にした。

 ……本当に面白くありません。

 

「それよりも、荘園の方はどうだ?」

「順調ですよ。民の感情以外はと言った所ですが、私達が巧くやっているうちは我慢してくれると思います。感情のままに反発するよりも、利用できるものは利用して自分達の生活を楽にしたいと思っている人達が大半ですからねぇ。

 まぁそんな話は周瑜さんにはどうでも良い話でしたね。先程も言いましたが順調ですよ。先日も十七つ目の井戸から水が出た所です」

「そうか。思ったよりも早いな」

 

 御主人様が私に教えてくださった知識の中に在った其れは、今まで5間(約9メートル)程が限界だった井戸掘りが、上総掘りや打ち抜き方と言う天の知識のおかげで一気に数倍の深さまで掘れるようになり、開拓や生活に必要な水の確保が以前に比べて遥かに容易になりました。

 『水を飲む人は井戸を掘った人の恩を忘れない』と言う言葉が在るように、川から遠い地に住む人達にとって、水の確保が命に係わる程で、それくらいに人が生活をする上で真っ先に必要なのが水なのです。 これが十分で無ければ人は人らしい生活をする事が出来ないですし、畑や田を耕す事も出来ません。

 御主人様は其処に目を付け、私達に荘園での最初の仕事としました。もっとも実際に作業を行うのは村の人間や、孫呉からお借りしている技師の方で、私は水脈が在りそうな地点を探し出して指示をし、現場を監督する事なんですけどね。

 ですが天の知識の殆どは、そういった目に見える様なものでは無く。

 

「米作りの方は一苗一苗を間隔をあけて植える方法はかなりの手間と労力が掛かりますが、成長の方はかなり順調です。その一方で幾つかの畑が枯れました。 原因はやはり……」

「肥料枯れとか言うものか。 聞いてはいた事だが、やはり一足飛びと言う訳にはいかんな」

「堆肥の与える時期や量、それに種類や天候の状態。様々の要因がありますから、試して行くしかないでしょうね。それと不確かな噂を信じて無暗に肥料を与える人達がいるから気を付けないといけません」

「一歩間違えれば、一家纏めて飢え死にか」

 

 さらに多くの時間や経験を必要とするものばかりです。

 肥料に関して安全と思われる最低限の量を厳守させるように敢えて通達させているのですが、やはり多ければ良いと思い込む人間もどうしても出てしまいます。

 今の所は除虫技術の件もあり、全体としてはかなりの収穫量が見込めそうなので問題視も少ないですが、放っておくわけにもいかない問題でもあります。

 

「機織り機の方も順調です。先日新たに御主人様の言う『たおる』や『毛布』用生地の折り機も調整段階に入りました。 ですか両機共に今迄の物とは比べ物にならないくらい複雑な構造のため、どうしても高価なものになってしまいます。やはり国なり領主なりの梃入れが無いと広めるのは難しいかと。そう言う訳でそっちの方面に関しては、私が口を出す訳にはいきませんので翡翠さんにお任せするしかないんですね」

「やはり、見抜かれていたか」

「あれで分からない方がどうかしています」

 

 江東と江南を始めとする呉の各領土を治める諸侯達を説得して廻っていた雪蓮さん達が帰ってくる。

 そうでなければ、まだ時期が熟しきっていないと言うのにも拘らずに、二人に呂布が立て籠もっている街へ責め立てろと言う訳がありません。 ついでに言うならば、それは私の此処でのお仕事の終わりを示しており、ようは短いながらも二人への政務に関して(・・・・・・)の修業の仕上げの準備をしておけと言う事です。

 

「予定より早いが、それだけ順調だったと言う事か雪蓮の例の勘で、時間をかけるだけ無駄な所を見限って来たのだろう」

「随分とあっさりと、とんでもない事を言いますけど、……信じているんですね」

「ふふ、信じてはいるさ。

 ただ、どういうやり方をしてきたか、などと言う事を考えたくはないがな」

「あはははは、翡翠さんも大変だったでしょうね」

「ああ、雪蓮より先に労ってやらねばな」

「良いんですか? また拗ねちゃいますよ」

「仕方あるまい。それが普段の行いから来るものとなればな。 それにな、アレはアレで可愛いものさ」

 

 瞳を軽く瞑りながら口元に小さく笑みを浮かべる周瑜さんの惚気話に、私は小さく肩を竦めて早々に話を戻します。だって、お嬢様の可愛い処の御話なら幾らでも付き合えるというか何刻でも話せていれますけど、人の惚気話なんかに付き合ったって少しも面白くないですもの。

 そう言う訳で新しい技術での製塩とその広まりによる軋轢や今後予想される問題と、その利益から今後の展開予定などを要点を纏めて話して行きます。

 御主人様の齎した天の知識は多岐に渡っているものの、その殆どはあくまで民の生活基盤の強固に関するもので、御主人様自身、必要以上に知識を与え過ぎない事を憂慮しています。

 

「それにしても、まだまだ元気な呂布にぶつかれだなんて、お二人をやや過信しているのでは?」

「幾ら雑兵とは言え、たった一人で三万もの黄巾党を叩き潰した相手に、正面からぶつかる程二人は愚かでは無いさ。

 穏も亞莎も勘違いしているようだが、相手の籠城戦に長々と付き合っているのは何の事は無い。次代を担うあいつ等を鍛えるのが主な目的。今回の状況はまさに理想的状況と言えよう」

 

 目を細めながらも、周瑜さんのその瞳には力強い意志が宿っています。

 二人を鍛えるためにどれだけの血と命が流れるか理解していて……。

 どれだけの税金を使われるかを知っていて……。

 それでも尚、二人を鍛える事を選んだのだとその瞳は語っています。

 孫呉の重大な弱点の一つ、それは人材。

 御主人様も以前指摘していましたが、軍務、政務、その殆どが周瑜さん一人に重く圧し掛かり、その手助けをする者や代わりを務めれるほどの者が未だ育っていないと言う事です。

 むろん私もその事を以前から(・・・・)知っていて、当然ながらそれを利用していました。この先孫呉を相手する人達は当然そんな致命的な隙が在ればそれを突いてくるでしょうし、それを見逃すほど甘くない相手です。

 だから周瑜さんは選んだのでしょう。 遠くない未来で数万、数十万の民の命を失うよりも、今、数百、数千の命と血税と言う名の犠牲を支払う事を……。

 

「はぁ……あの呂布を相手に理想ですか?」

「そうだ。噂に聞く呂布だけならば力押しで事を済ませたさ。幾ら強かろうと、天下無双であろうとも、所詮は力だけの人間。 私が理想敵だと言ったその要因の一つ、それは呂布を飛将軍の地位へと押し上げた存在。 常に呂布の影となり呂布の知恵袋として支え続けた人物」

「確か陳宮さんだったと記憶しています。 まだ童女と言っていいほどの歳で、呂布の腰巾着と言われていますね」

「ほう、流石に知っていたか」

「ええ、まぁ一応は」

 

 知っている事を知っていて、あえて話を振った癖にと思いつつも、尋ねられるままに人物評を答えます。

 呂布を生涯の主とし、官位があるにも拘らず呂布の個人軍師と広言憚らずも、殆ど人の口に上がる事の無い光が当たらない存在。

 つまりその程度の才しかなく、傲慢で人の話も聞か無い上に負けん気が強いため、あちこちで小さな衝突を巻き起こすも結局問題ならなかったのは、呂布の威を借る狐だからと。

 

「と、そんな所ですね。 周瑜さんが気に掛ける存在とは思えませんよ」

 

 ニコニコと何時もの笑みを浮かべてそう答えて見せる私に周瑜さんは、小さく鼻で笑いながら面白そうに。

 

「私はどこぞの誰かの月旦評ではなく、お前の評価を尋ねたつもりだが?」

「え~、そんなの面倒臭いじゃないですか、それに採点されている様なので嫌です。 間違っていたら恥かくのは私ひとりじゃないですかぁ」

 

 だから私も満面の笑顔で返します。

 さっきから私ばかり喋らせられて不公平です。

 なにより腹の中を見られるようで面白くありません。

 

「中央に行く事も多かったお前だからこそ尋ねたのだが、まぁ良い。偶には採点される側の緊張を得ておくのも必要だと言う事だろう」

「ああ、言っときますけど採点なんてしませんよ。だって面倒くさいですから」

「ふふ、そう言う事にしておこう。

 確かに私が集めた情報でも似たようなものだが、世に広まっている評判はどうあれ。中央、しかも官軍として、帝の威光を民や他国に見せつける実動部隊に身を置く者が、ただの腰巾着である訳がない。 力在る者が正当に評価されない事など中央では日常茶飯事。しかもそれが上から煙たい性格の人間であるならば尚更であろう」

 

 なにせ、そう言う事は見て見ぬ振りするのが、あそこでの生き残り方ですからね。

 実際、黄巾の乱の時は劉備のように後ろ盾の保たない人達が、褒賞も貰えずに待機命令のまま放置させられているのを帝に苦言した人は、次の日には何故か姿が見えなくなっちゃいましたし。う~ん、こわいこわい♪

 

「それでも、張子の虎では無く官軍の実戦部隊としていられたのは、呂布自身がそれだけ扱いにくい人物だという噂もあるが、その能力を惜しんだからであろう」

 

 なにより戦場の軍師としてならともかく、平時において軍部の枠を出れる程の政才が無い。と言うよりも呂布に固執しているため、幾らでも扱いようが在ると言う事が、あそこでは一番の理由でしょうね。

 まぁ理由は幾らでもあるでしょうが肝心なのは……。

 

「だが、私が一番買っている理由。

 それは戦場での経験だけで言うならば、大陸中の軍師の中でもっとも多いであろうと言う事だ」

 

 劉備達の所に居る諸葛亮や鳳統。

 魏の荀彧、郭嘉、程昱の三軍師。

 袁紹軍の荀諶ちゃんと沮授君。

 そして呉を含め、その誰とも違う考え方を持ち、戦略より戦術に特化した異色の軍師。

 戦果の有無はともかく、どんな戦場に送り込まれようが生き残り帰還してきた。

 呂布の腰巾着。そう言われる本当の云えんは、軍師でありながら戦場であろうとも堪えず呂布の傍にいるため。

 どんな些細な変化にも即応し、部隊を効率よく動かして見せる。

 言わば即断即応の最前線型の軍師。

 

「事実、董卓の時代には呂布共々に官位は上がってはいないものの、第八師団から第一師団へと籍が変わっている」

 

 正当に評価されない理由の一つは呂布の存在。

 その余りにも人並み外れた武のため。それ以上に軍部内で力を持たせたくない人達が多くいるからです。

 他にも理由はありますが、何より大きいのが後ろ盾が呂布以外いない事。

 実績や経験はともかく、その軍師としての在り方が特殊過ぎた上に、あまりにも若すぎると言う事。

 それが陳宮と言う軍師が正当に評価されない主な理由であり、軍師としての在り方を更に歪にさせた原因。

 

「私は、こうも考えている。 もし董卓達と呂布達が真に信用を築くだけの時間が在ったのならば、連合軍での勝敗は逆になっていたかもしれないとな」

「それが無いと確証していたからこそ、あの人達を唆して、私達を隠れ蓑に連合軍に参戦した人が言っても説得力が無い気がしますけど」

 

 それにもしそうなっていたなら、その時は美羽様や私達に脅されて仕方なく帝に矛を向いたとか、頃合いを見て反旗を翻すつもりだったのでしょうね。もっとも、それくらいの事はするだろうと知っていたからこそ、口車にあえて乗ったわけですから、私もその事を責めれる立場では無いですね。

 

「本気で孫呉軍に損害を与える事の出来ない今の呂布さんと陳宮さんは、二人を鍛えるための贄と言う訳ですか。 でもそんなに上手く行きますかね? 逆に贄とされる可能性が大きいとも考えられませんか?」

「前のままならば無理であろう。 だが陳宮は虎牢関で知ったはず。今のままでは駄目だと言う事をな」

 

 つまり、必死になって今迄の殻を破ろうとしている陳宮さんだからこそ、其処に付け入る隙があり、利用する価値があると。 ………はぁ、随分とえげつない事を考えますね。 恐いなぁ~♪

 ついでに言うならば、陳宮さん達にとって、手を結んでいる城主こそが足枷になっていると言うのも大きな理由の一つなんでしょうね。

 

「何にしろ、私とお嬢様には関係のない事ですから、其方は其方で好きにやっちゃってください。

 私としては、やりたくもない仕事からやっと解放されると言う事には感謝しますけどね」

「やりたくもない仕事か…くくくっ、確かに今のお前にとってはそうかもしれないが、本当にそう言い切れるのか?」

「ええ、そうですよ。こんな事で嘘を言っても仕方ないじゃないですか」

 

 他に何が在ると言うんですか。もう。

 いつも通り指を虚空に向けながら、言う私に周瑜さんは口元所か目元にも小さく笑みを浮かべながら。

 

「だが、それでもお前は本気で二人を鍛えた。 それが答えではないのか? 

 北郷が本当に望んだからこそ、……いいや、私があやつの伝言を『命令』と言い換えたからこそと私は思っているのだが」

「何なんですかそれ? ちっとも面白くない冗談です」

 

 本当に、少しも面白くありません。

 あまりにも面白くない冗談に、ムッとする私に、周瑜さんは既に用件は終えたのか邪魔をしたとばかりに退出します。ただ、微かに聞こえるような声で溜息交じりに、またまたつまらない冗談を残してゆきます。

 

「もう少し楽な生き方もあると思うが………、言っても無駄か」

 

 と………。

 本当に余計なお世話です。

 自分を雁字搦めにして生きている貴女に言われたくありません。

 まったく、こんなつまらない冗談を言われるのも、懐かれたくもない人達に懐かれるのも、元をただせば皆御主人様が悪いんです。

 ええ。もう、帰ってきたら、おもいっきりこの鬱憤を晴らさせてもらわないと割が合いません。

 言っても無駄たとは分かっています。

 そう望む事も無理だと言う事も理解しています。

 とにかく、お嬢様が寂しい思いをしているのも、私がこんな所で周瑜さんにあんな事を言われるのも、みんなみんな、み~~~~~~んな、御主人様が悪いんです。

 本当に帰ってきたら、どうしちゃいましょうか。

 

 

 

桜華(おうか)(劉璋)視点:

 

 

 

「…そ……そん……な、うそだよね。梅華ちゃん」

「事実です。 それと今は公務中故、張任と御呼びください」

 

 乾いた口から掠れるように零れ落ちる言葉に、居並ぶ臣下の列から一歩出て報告していた梅華ちゃんは硬い言葉で返してくる。

 うん、分かっている。 今は弱さを見せる時ではないって。 でも、でも………、紫苑さんだけでは無く桔梗さん達まで裏切るだなんて………。

 味方だと思っていた。

 姉のように頼れる人だと感じていた。

 本当の意味で私について来てくれる人だと信じていた。

 なのに、敵となってこの街に攻め込んでくるだなんて……。

 

「そ、そうだね。 ………で、梅華ちゃ…、ううん、張任はどう見るの? その、この……戦」

 

 信じたくは無かった。

 あの優しい人達と戦をするだなんて。

 本気で戦う事になるだなんて。

 ………でもだからと言って、現実から目を逸らす訳にはいかない。

 私はこの国の王。 たとえお飾りだと言われようとも民を守り導く義務があるもの。

 民を見捨てるわけにはいかないし、したくない。

 きっと訳があるんだと思う。

 だから、その訳を聞くためにも今は……その、た、戦わなくてはいけない。

 ……たぶん。

 

「敵軍は、裏切り者の黄忠と厳顔の呼びかけにより、更なる裏切り者どもを掻き集め、勢いを増しておりますが、我等の軍より数を増す心配はございません」

「………二人の他にも……出たんだ」

「今はその事を考えるべき時はありません。

 それに御安心ください。今回の戦は侵略とは言えその実態は反乱に近しきもの。

 三月ほども立て籠もれば、奴等の方で勝手に自壊して行きましょう」

 

 裏切った一族達だけでは、長くは軍を賄いきれないと。

 ましてや劉備軍は、五万人以上にも及ぶ難民を引き連れてなら尚更と。

 街に住み民に不安や不便を与える事になるが、流す血も少なくて済むと。

 ……そ、そうだよね。

 それなら、その後でも大丈夫だよね。

 

「そ、そう言えば張松達の顔を見ないけど」

「ああ、あの者達なら」

 

 居並ぶ臣下達の中で、いつもならもっと声が聞こえてくると言うか、真っ先に私に王ならばこうすべきだと、あれこれ言って来てくれる人たちの顔が見当たらない事に、改めて自分が思っていた以上に不安になっていた事に気がつき、こう言う所がまだまだだから、みんな私の話を聞いてくれないんだと反省する。

 梅華ちゃんが言うには、万が一火災に遭ってはいけない重要書簡や物品を一時的に安全な場所に非難させるための作業を自ら指揮していたとの事。

 ん? していた?

 

「既に街の防壁の扉は全て閉じさせております。 幾ら重要だといっても、彼等が街から持ち運ぼうとしていた物は膨大で、既に敵軍の手の物が忍び込む危険性がありました。故に例え彼等であろうとも猫の子一匹たりとて防壁を出入りさせる訳にはいきませんでした」

 

 それでも強引に押し通ろうとしたため、軍を動かして身柄を確保し、今は屋敷で心が落ち着くまで休ませているとの事。ずっとこの街が戦に遭う事が無かったため、不慣れな事態に心が疲れているのだろうと。梅華ちゃんは私に報告してくれるのだけど、それだけでは無い気がする…。何となくそう思ってしまう。

 ただ……。

 

「これも全ては民のため。はては劉璋様のためになる事。

 私はこう考えるのです。この戦は言わばこの国にある膿を吐き出すべき、天が我等に与えた試練だと。

 試練であるこの戦を終えた時、劉璋様はこの国の真の王となりましょう。

 劉璋様は民のための事を想って政務に勤しんでくだされば、きっと民は劉璋様の御心に応えてくださるはずです」

 

 力強い梅華ちゃんの言葉に……。

 揺らぎの無い強い眼差しに……。

 梅華ちゃんが私を心から想っての言葉に……。

 初めての戦を前に不安に振るえる心が、少しだけ落ち着く。ほんの少しだけど、力が湧いてくる。

 うん。紫苑さん達の事は残念で悲しい事だけど。私は良い家臣に恵まれた。

 梅華ちゃんは家臣として、そして親友として私の背中を押してくれたんだもん。

 なら、私はそれに応えなければいけない。

 王としても……。

 親友としても……。

 

「分かりました。詳細は聞きません。ただ私は王として命じます。

 この国を守るため。一人でも多くの民を守るため。

 張将軍、貴女の才覚でもってこの戦を終わらせるのです。

 他の者達はすべて、この戦が終わるまで張将軍の指揮の下で動くように」

 

「「「「「「はっ!」」」」」」

 

 首都であるこの街が、戦と言うかつてない危機に晒されて、皆が心に一つにしようとしている。

 皆がこの街を護りたいんだって……。

 この国を皆、守りたいんだって……。

 その事に心が震えるのが分かる。

 形は人それぞれ違うけど、この地を守りたいんだって思ってくれている事が、嬉しいと感じる。

 そうだね。私も負けていられない。

 皆の心に応えるためにも…。

 今回みたいな事態を、もう二度と引き起こさないためにも……。

 私はもっともっと頑張らないといけないんだって。

 王として……。

 人として……。

 私も私の出来る事を、力いっぱい頑張らなくちゃ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく

あとがき みたいなもの

 

 

 こんにちは、うたまるです。

 第百三拾話 ~ 微笑みを浮かべる仮面の下で舞う想い ~を此処にお送りしました。

 

 学生の内は免許なんていらない、と言う親の意見から一年。 諸事情により、無事に自動車学校を卒業し免許書を取得する事が出来ました。 通続ける三カ月は長かったです。なにが長いって、とにかく無暗にある待ち時間(汗。 もう時間の無駄そのもの(嘆

 

 さてそんな皆様にはどうでもよい愚痴はおいておいて、とうとう益州攻略の最終戦に突入しました。

 と言ってもちょびっとだけ、しかも序章染みた内容を(w

 前半の七乃視点はともかく、後半の劉璋は、以前明命視点で少しだけでてきましたが、今回初登場の張任こと梅華ちゃん。劉璋共々、金髪のグゥレイトゥ!様のキャラをお借りいたしました。

 本当に氏のキャラは色々と想像掻き立てられます。妄想が文章にしてただもれしてしまいます。

 と言っても、氏の作品紹介の所のコメントで、私の寝言発言のような事態は無いので、ああ言った展開を楽しみにしていた方々には予めお詫び申し上げます(w

 

 最近思ってきたけど、冒頭の一刀の悩みコーナーって、裏を返せば明命ちゃん達の悩みでもあるんですよね。

 ………本当にこの人、何を考えているんだろうと。………はぁ、思わず明命ちゃん達に同情しちゃいます。

 

 

 

 では、頑張って書きますので、どうか最期までお付き合いの程、お願いいたします。

 


 
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