No.540838

真・恋姫†無双 ~孫呉千年の大計~ 第1章 8話

雪月さん

常連の皆様&お初の方もこんばんは いつもお世話になっております

この作品は真・恋姫†無双・恋姫†無双の2次創作となっております
主人公は北郷一刀 メインヒロインは雪蓮と蓮華と仲間達でお送りしております

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2013-02-06 21:34:27 投稿 / 全5ページ    総閲覧数:7101   閲覧ユーザー数:5332

第1章 黄巾賊討伐・独立編 08話『江東動乱 中編 -周 公瑾の策謀-』

 

 

 

 

雪蓮と太史慈が死闘を繰り広げた派手な開幕戦とはうって変わり

秣陵城を囲んではいるものの・・・決定打に欠け小規模な攻城戦のみが展開されていた

 

というのも城に押し寄せ、矢の応酬をお互いに仕掛けるものの・・・

門や壁に取り付かせないようにしているだけで、城から引き出そうにも劉ヨウ側がそれ以上何も仕掛けてこないのである

 

元々一刀達、騎馬による独立機動軍を中心とした編成であった為

攻城戦に向いた兵達ではないことから、イタズラに兵を仕損じると考えた呉首脳陣は

むやみに城に仕掛けず、包囲のみに重点をおいた攻城戦に変更していたのだった

 

 

そしてこの秣陵包囲戦の膠着状態は、すでに二ヶ月を経過する長期戦となっていたのだった

 

 

劉ヨウとしては膠着した展開を望んでいただけに、この経過にほくそえんでいた

太史慈としても戦闘に関する全権を委任されていたとはいえ

劉ヨウの長期化の指示に対して反論すること等もっての外だったので

日々ジリジリと削られる攻城戦に、イライラが募るばかりであったのも事実なのである

 

一方の孫呉の面々も・・・長期戦となり憔悴しきって・・・いると思いきや

劉ヨウ軍とは違って、良い緊張感を持続しながらの包囲戦を行えていたのだ

 

その理由として食事の改良があった

元々戦いの場ともなると食事は携帯食が主流となる

お世辞にも美味しいものとは言えず、空腹を避けるといった意味合いの方が大きい

 

しかし一刀の提案でこの分野にもすぐ梃入れされ、今回の戦いにおいて実験的意味合いも兼ねて

開発が間に合った”おにぎり”と干し飯=モチと味噌が携帯食に加わっていた

 

おにぎりは”焼きおにぎり”と味噌を混ぜ合わせたものを塗った”味噌おにぎり”の二種類、

焼きおにぎりと干し飯=モチを味噌汁の中に入れて食す”簡易雑煮”または”簡易雑炊”として、味噌おにぎりは串に刺し焼いて食べられた

こうした食べ方は将も一般兵も同様で、味噌汁を煮た”かまど”に皆が集い

ワイワイ、ガヤガヤ談笑しつつ自分の椀に味噌汁をよそおい、椀の中におにぎりやモチを入れて食していた

 

この戦中における食事の改善は効果覿面であった 士気が落ちる所か将と兵の一体感が増していたのだ  

士気の維持、食事の改善、補給物資も柴桑周辺の占領・安定で、何の滞りもなく補給された事により

長期化した秣陵城包囲戦において、何の支障もなく劉ヨウ陣営より優位に展開できた背景があった

 

孫呉は戦時でありながら・・・平時とほぼ変わらぬ展開を見せる一方で

自軍がジリジリと憔悴していくのを横目に、劉ヨウはひたすら後漢王朝による支援と切り札を切る機会を待ち続けていたのである

 

劉ヨウが待ちわびていた返答を携えた使いは・・・というと、明命の警備網に見事にかかっていたのである・・・

 

「冥琳様 怪しい者を捕らえました 大将軍・何進様の書状を携えていた模様です いかがなされますか?」

「やはり そうか・・・これの返答を待つべく篭城していたようだな

 いいだろう! 使いに書状を返し離してやれ」

「はい! 承知致しました 冥琳様」

というと明命は冥琳の命に疑う事もなく、即座に縛っていた縄を解いて書状を返し、すぐ使いを解き放ってしまっていた

 

明命に開放された使いは、這う這うの体で秣陵城へ辿りつき、劉ヨウの前に使命を果たせた書簡を差し出す

この様子を劉ヨウは大層喜んで、返答の書簡を携えた使いを褒め称えた

がしかし・・・劉ヨウの機嫌が良かったのも書簡に目を通すまでの間だけであった・・・

 

太史慈が事情が掴めず、怪訝な表情を劉ヨウに向けていたが、次の劉ヨウの叫びで把握することとなる

「ばっ馬鹿な!! ・・・こんな事があるのか!? 援軍が出せんだと・・・」

「なっ!」

と劉ヨウの叫びに、太史慈はつい声を漏らしてしまっていた

糾合してた豪族からも、次々とこの度の後漢王朝に対して憤懣が噴出し、さらなる長期化が予想された城内は紛糾することとなる

 

 

大将軍・何進からの返答はこのような内容であったのだ

 

この度の訴えに関しては、すでに孫呉側から劉ヨウ側との”私闘”に決着をつける目的であるという訴えをすでに受け取っている

私闘に対して、後漢王朝が兵を出し調停するのもいかがなものか? 

そちらの言い分が”仮に”正しかったとしても、今は全力を賭して青州黄巾賊を征伐中の為、そちらへ兵を裂くこともままならぬ

 

この件に関しては、孫家の訴状内容の方に信憑性が認められる故、孫呉との間で解決願おう

 

との事実上の孫呉の侵略の黙認を示唆する返答内容であったのだ・・・

さて疑問に思った方もいらっしゃったであろう、孫呉側が何進へ提示した劉ヨウとの私闘の内容とは・・・

 

そう長江下流域における水利権、保険の問題で、かねてから思春率いる水軍と劉ヨウは揉めていた背景があったのだ

後漢王朝から託された荷=塩を保険適用により守っていた孫呉水軍に対し

荷が何処のモノか等意に介さず横取りを狙い、裏から散々チョッカイをかけていた劉ヨウなのであった

今回はその点を孫呉側より先に追及され、何進より私闘と突き放された格好の劉ヨウ達なのであった

そして何進の〆の言葉は、何より辛辣なモノであった

 

私闘と位置づけられし戦闘行為に、独断で江東の豪族を糾合した事は許し難い行為である 早々に解散を命じる

 

との一文で締めくくられた書簡内容に、劉ヨウ側にとってはこちらの言い分が全く採用されていない事に到底承服しかねた

 

しかし、事ここに至って反論する使いを洛陽へ出す暇など、劉ヨウに残されている筈もなく

そうこうしている内に・・・馳せ参じた豪族達は、次々に所用ができましたとか私闘のようなので失礼いたすと

次々に劉ヨウ陣営を立ち去ってゆく者達が後を絶たなかったのである

 

この後も悪あがきをする劉ヨウは、後漢王朝がダメなら・・・と直接軍閥や豪族に援助要請の使いを出すものの・・・

有力豪族達の大半は青州黄巾賊殲滅戦の佳境に入っており、劉ヨウの支援に行ける筈もなく・・・

断りの使者が次々と帰ってきて・・・徒労に終る事となる

 

この事態の推移を、明命が捕まえてきた時点で読みきって準備してきた冥琳は

あらかじめ城内から次々と去っていく豪族に攻撃をけし掛けるなと厳命を下していた

 

「さっすが愛しの冥琳ね~」

「さすが周 公瑾だな」

と雪蓮と一刀が大層ご満悦であった様子に

「世辞を言っても何も出ないぞ? 戦いはまだまだこれからだ 気を引き締めろ 二人共」

と二人に褒められた嬉しさを噛み殺し、引き締めを図る冥琳であった

 

 

 

 

冥琳の言葉通り、劉ヨウの悪足掻きですでに3ヶ月もの膠着した事態に、

シビレを切らせた太史慈は、城内に留まっていた兵5千ほどを率いて孫呉の陣に夜襲を仕掛ける

 

しかしいざ踏み込んでみると、陣には周りを囲う幕のみで”もぬけのから”

 

反撃が来ると予想した太史慈は、兵達に指示し方円の陣に素早く替え、身構えつつ辺りを伺うものの・・・

孫呉側からは何も仕掛けてこない様子に、慎重に城へと引き上げていく太史慈達であった

 

この太史慈の夜襲の失敗を見届けた劉ヨウは、夜陰に紛れさせ”最後の切り札”となる勢力へと使いを出したのであった

 

大将軍からの返答に焦れて、劉ヨウ側が何かを仕掛けてくる事を予期していた冥琳は

夜襲の襲来に関して、(かまど)の炊煙の長さを、予め明命達斥候に把握させており

太史慈の今回の夜襲の時期を、的確に見抜いていたのだった

 

早く太史慈と決着をつけたいのだろう、ここに残るぅ~といつもの雪蓮の我侭により駄々をこねる一幕もあったのだが・・・

冥琳の『却下』の鶴の一声で、「にぃーーーーーーぎゃぁーーーーーー(意:嫌)」という叫び声を残し

一刀の胸元に抱かかえられ、連行されていくSD猫化した雪蓮さんであった・・・

 

こちらの策にまんまと嵌った太史慈達に対し、冥琳は何もしかけなかった事態に

反撃し痛撃を与えるべきであったと祭や楓達武官は冥琳に詰め寄り反論したのだった

 

そこを”穏”がすかさず反対派の前に進み出て、今回の夜襲に反撃しなかった意図を

のほほ~んとした透き通る声音でゆっくりと説明し出す 

反論する武官達のトゲトゲしさを無くし、落ち着きましょうね武官のみなさんと言っているようであった

 

 

実は・・・劉ヨウが苦し紛れに出した書簡に応じた軍閥勢力があったのである 

 

その勢力とは”成都”を本拠とした『劉焉』である

 

そう、大陸は狭い訳でもない

本来ならどう考えてみても、”西の果て”に位置する成都から大陸の”東の果て”の江東で争う勢力に介入する勢力とは到底考えられない

しかし現在は十常時派に組みし、劉表と劉焉は停戦状態にある 荊州黄巾賊が跋扈していた劉表達とは違い

劉焉達は密かに領土と権力を拡大する機会を、虎視眈々と狙っていたのだ 

 

参戦した理由とは、長江における水利権の獲得と後々交州、荊州南部を統べるという壮大な計画の下

そう蓮華達が占拠した比較的手薄な柴桑を標的として狙っていたのである

 

劉ヨウからの支援要請の書簡を受け取った劉焉は、すぐさま桔梗を大将に任じ行動を開始

劉焉の軍勢が悠々長江を下っていくのを、兵糧が乏しかった劉表軍は歯噛みして悔しがったが・・・この事態にどうすることも出来なかった

 

豫章周辺まで制していた為、柴桑はさらに手薄な事もあり、陥落するのは時間の問題とも思われた・・・が

 

思春率いる孫呉水軍の行方は、雪蓮達を阜陵港に上陸させた後、そのまま上陸せずに

長江を遡り、寿春でお留守番をしていた水軍軍師である琥珀と合流を果たし・・・現在、柴桑からそう離れていない九江港にあったのだ

冥琳の命により、主に劉表へ対策として九江港に待機していた思春達であったが、ここにきて備えがピシャリと符合したのである

 

そこへ敵と思われる船団が柴桑へ迫ってきている事を、第一報として受け取った蓮華は

柴桑の守備を紅と藍里に任せて、自身は数騎護衛を従え九江港で思春と琥珀達に合流、出港し船上の人となっていた

 

陣の前を航行している斥候から、旗が左右に数度振られ、次に旗を大きく三度振られ、最後は左右に二度振られた

 

旗の合図の意味は”敵船が現れ、大型船主体の陣形なし”という意味であった

その合図を確認した思春は、琥珀に普段の訓練の一連の流れから作戦の指示を請うものの・・・

 

琥珀も思春の意図を読み、思春に頷いてはみたものの・・・

「敵は楼船が主体の編成のようですね・・・どこの大軍なのでしょうか」

と少し呆れ顔の琥珀であった

 

二人が困惑した理由とは・・・

 

相手は劉表軍と思いきや・・・どうやら違っていたようで

紫紺の劉旗だった模様、つまりは劉焉軍を表しており

楼船でもって敵を圧倒する・・・なんて芸当は彼我の戦力差がないと無理な訳で・・・

弓矢だけを撃ち合う訳でない水上戦において、楼船が主体の編成なんてこれまで聞いた事もなかった思春と琥珀である

 

矢を射掛けたり防いでいるだけで、勝てると思われているのでしょうか? 随分と舐められたモノですね・・・

琥珀の思考はここで瞬時に凍結・停止させてしまい・・・結果、ズブの素人集団という答えを弾き出したと言う訳だ

 

「だからと言って手を抜く訳にもいきませんし、何時もの如く素早く動き敵を蹂躙し、大勝と参りましょう!」

と大将の蓮華に献策する琥珀

 

「えぇ それでいいわ 全て任せるわ 良きように計らって琥珀 働き期待しているわ

思春 ・・・あまり無茶をしないようにね」

 

「承知致しました 蓮華様」

「御意 蓮華様」

と琥珀と思春は、蓮華に抱拳しそれぞれ所定の位置へと移動する

 

                  ・

                  ・

                  ・

 

艨衝(もうしょう)で敵が大混乱のようだ 敵の足は止めた! あとは敵船に乗り込むぞ! 先登(せんとう)を突っ込ませろ!

 すぐに私も行く! 赤馬(せきば)を用意しろ!」 

と素早く部下に指示を出した思春は、傍に寄って来た琥珀に対し

 

「琥珀! 後の指示と蓮華様の事任せる!」

「思春 任されました 御武運を!」

「ああ!期待して待ってるがいい」

とニヤリと笑う思春を気遣い、琥珀はすれ違いざまに

 

「蓮華様のお言葉 くれぐれもお忘れなきように・・・」

と時々暴走し無茶をする同僚に対し、ちょっと釘を刺しておくことも忘れない琥珀

 

「ふっ 痛い処をつくな琥珀 ・・・わかった 心に留めおくとしよう」

と言うと、琥珀の心遣いに感謝しつつ、高所にいた蓮華と眼が合い、素早く一礼し赤馬へと乗り込んだ

「よし! 出せ!」

と叫ぶと、思春を乗せた赤馬は滑る様に水面を疾走していった・・・

 

 

 

 

「アホか!? 雑魚ども失せろ!」

波を舳先で切り裂き猛スピードで進む思春を乗せた赤馬は、前線で怒号を飛ばしていた焔耶を視界に捉えていた

「右手の楼船近くへ着けろ!」

と部下に指示を飛ばし、近づいた時には”鈴音”を抜き放ち、梯子をかける間もなく投げ縄を使い、もう飛び移っていた思春である

普段と変わらぬあまりの手際の良さに、部下達は苦笑するしかなかった程である

 

船上で双方の怒号がひしめく中、思春の動きに呼応するかのように、劉焉軍兵を死出の旅路へと導く”鈴の音”を辺りへ響かせる

 

その”鈴の音”に気付いたのであろう、焔耶が鈍砕骨を構えて思春に振り返り構える

「名のある将とみた! 私の名は魏文長!」

「甘興覇だ 死出の土産に相手してやる 来い!」

 

思春の動く速度に焔耶は全くついていけなかった 眼で追うのも必死なくらいだ

世の中にはこんなに速く動ける奴がいるのか・・・と半ばヤケになりながら

当たらないとは判りつつも諦めきれない焔耶は、鈍砕骨を力任せに思春に振るう

 

その度にどごぉーんと爆音を響かせ甲板に穴を開けていた

穴を開けた甲斐があったのか思春の後ろは壁であり、勝利宣言を心の中でしていた焔耶であった

 

「ハァ ハァ やっと追い詰めたぞ! ちょこまかとすばしっこく逃げやがって! 覚悟しろ!」

と最早勝った気でいる焔耶に、溜息をつきつつ”最後”と思い答えてやると静かに焔耶に向けて思春が呟く

「貴様 足元をみてみろ・・・脳筋」

「誰が脳筋だ!」

と思春の言葉に怒りを覚えつつ反論するものの、指摘された方向に視線を向けると・・・

鈍砕骨で自身の周囲の甲板が、無残に穴ぼこだらけとなっていた・・・

 

この状況に焔耶がアタフタしている内に・・・ミシミシという音が響き、最早耐え切れなくなったのであろう・・・

”バキッ”という音を最後に

「なっ なぁーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!」

と叫び声が辺りに木霊し、甲板下へ落下していく焔耶

 

思春と焔耶の一騎打ちは”自爆?”というあっけない幕切れとなった・・・

 

焔耶をそのまま放置した思春は、慣れない船の上での戦場に戸惑いをみせる劉焉軍を尻目に

次々に敵船を渡り・・・”鈴の音”を辺りに響かせ劉焉兵を着実に屠っていく

 

桔梗は事ここに至り、水軍の力量が天と地の差であることを見せ付けられた

船であろうと地があるのだから・・・と高をくくっていた部分もあった桔梗であった 

しかしその認識は甘かった事を痛切することとなる

 

劉焉軍は楼船を多く配備していたのだが、これが裏目に出てしまう

 

孫呉水軍は、前方に斥候(せっこう)を配置し敵情を探りつつ、先頭に艨衝(もうしょう)、その側面に先登(せんとう)を配置し先鋒とし

楼船(ろうせん)を主力に、露橈(ろとう)が周りを固め、赤馬(せきば)は後方に控えている 

小回りが利き、動きが緩慢となりがちな水上戦において、”速さ”を前面に押し出す実に効果的とも言える布陣であったのだ

 

楼船ばかりのこちらは、艨衝によって初期の陣形を崩されるや・・・

次々と仕掛けられ沈没させられたり、露橈や先登から次々に乗り込まれ霍乱される始末に

劉焉水軍は常に後手後手に回らざるを得ない惨憺たる有様であった

 

孫呉水軍にとっては普通であった事柄でも、水上戦の経験の乏しい桔梗にとっては眼から鱗であった 

孫呉水軍の統率力・組織力 そして何より焔耶を軽くいなした将と

遠めに指揮している軍師であろう者(=琥珀)の存在が大きいと感じていた桔梗であった

 

もはや・・・いくらあがこうとも大勢は既に決したも同然・・・ならば!とそう感じた桔梗は

近くにいた部下に、落下した焔耶の回収と周囲の敗残船や将兵を纏めるよう言い残し

好敵手と思えた思春を捉え豪天砲を撃つ

 

自身の脇を掠めた弾が向かってきた方向へと静かに振り返る思春

「何故 貴様 今私を討たなかった?」

「ふんっ 喧嘩は戦場の華ぞ? 興を削ぎ華を汚す討ち方なんぞに興味はない」

「ふっ 面白い! 死んでから後悔しても遅いぞ?」

「ハッハッハー その意気や良し! 少しはこの喧嘩楽しめそうだ! 行くぞ!」

「さっさと来るがいい! 冥土への土産にお相手しよう!」

 

桔梗の豪天砲の次弾装填が、思春が想定していたより速く、”神速”を使用しても桔梗との間合いを詰めるのに梃子摺っていた

桔梗としても思春に全弾避けられ、焔耶を振り回した時より更に速度を増していた思春の瞬身に、心の中で舌を巻いていた

人とはこんなに速く動けるモノなのかと・・・

 

「素早いな・・・だがいつまで豪天砲を避けていられるか・・・」

「フッ 当たらなければどうという事もあるまい? 貴様こそ・・・精々残弾に注意しろよ?」

「はっはっはーーー言うな! そうでなくては喧嘩は楽しめんというものよ」

と減らず口を叩き”鈴音”を構える思春に対し、豪快な笑い声をあげて強敵との死闘に満足げな桔梗であった

 

「・・・この戦闘狂め!」

と悪態をつく思春であったものの・・・

「それこそ お主もそうであろうが! はっはっはーー」

と口では到底勝てないようで・・・桔梗に言いくるめられてしまった思春は

「減らず口を・・・今すぐ叩けなくしてやる!」

「はっはっは 面白い! 受けて立ってやるぞ小娘 さぁ さっさと参れ!」

と憎まれ口を叩き、再び桔梗との死闘に興じるのであった

 

二人が死闘を演じている間に、劉焉軍は刻一刻と琥珀の一手一手に追い詰められていった

 

「そろそろ時間か・・・楽しかったぞこの喧嘩 わが名は厳顔という お主の名はなんという?」

「なるほど貴様が厳顔か・・・通りで強敵であるはずだ 私は甘寧という・・・」

「なるほどのう 通りで焔耶や我が軍が翻弄されあっさりと負ける筈じゃ

 先ほどから鳴り響く”鈴の音”は、劉表のところにいた勇将・鈴の甘寧のモノであったか 孫呉にいたとは驚いた・・・」

 

桔梗の出方を猶も警戒する思春に、若いなと心の中で苦笑しつつ、桔梗は表情を緩め語り続ける

 

「今回の戦、我らの認識の甘さをお前達に教えられた こちらの完敗じゃ 今回はこれにて引かせてもらおう

 また何処かの戦場で会うこともあろう さらばじゃ」

と桔梗が去っていくのを、そういえば無理はしないと約束したしな・・・と琥珀との約束をふと思い出し

”神速”が無ければ、負けていたのはこちらかもしれないな・・・と先程の戦いに少し反省すると

それ以上追うような真似はせずに、桔梗が去って行くのを視線で追う思春であった

 

思春は荒かった息を落ち着かせ、静かに鈴音を納刀すると

蓮華の下へと戻り、琥珀と共に素早く水軍を整えさせると、淡々と九江港へと取って返していた

今回は想定していなかった劉焉軍であったから楽に勝てたものの・・・

劉表軍がいつ来るかとも知れなかった為、警戒の意味も含め気を引き締めていた思春と琥珀であった

 

一方の桔梗は敗北した劉焉軍を纏め上げた処に

劉焉が病に倒れたとの報も届いた事もあり、これ以上戦っても益はないと判断し、撤退準備に取り掛からせていた

しかし思春に振り回され、何も出来ずに敗北してしまったこの度の戦いに納得できなかった焔耶は

執拗に桔梗に交戦を主張し食い下がったものの・・・

桔梗の拳骨が聞き分けのない焔耶の頭に容赦なく被弾し・・・煙をあげて沈黙 

その後、粛々と永安へ引き上げを開始する劉焉軍であった・・・

 

 

孫呉水軍と劉焉軍の戦いで~、万が一、柴桑を落とされたとすれば~

此処をすぐにでも、引き払わなければならなかったためですよぉ~

と笑顔を絶やさずに、穏の唯我独尊のペースで語られたのが功を奏したのか・・・

 

穏の説明が終った時に反論する武官達は皆無となっていた

 

 

弟子の穏に説明を任せた冥琳は、説明の間自身の思考を深層深くへと沈めていた

 

黄巾の乱の収束に向けた策動から、ここまで私が描いた通りに来ている

後は江東を統べる段階だけとなっているが、これで素直に終り・・・とは思えん

劉ヨウに余裕が見受けられる まだ何か隠し玉を持っている・・・と睨んでいる

 

もはや考えられる勢力は・・・●●しかあるまい・・・だが甘いぞ?劉ヨウよ

私の当たりが確かならば・・・”天の御遣い”の存在は私をも遥かに超越している事となるな

フフフ 楽しみであり待ち遠しいな 劉ヨウの切り札とやらが

と当たりをつけていた冥琳であったが、その数日後・・・突如として判明する事となった・・・

 

 

そう辺り一面を見渡す限り・・・数万は下ろう見慣れない大軍勢が、山間から突如として現れたのであった・・・

 

 

劉ヨウが”最後の切り札”を切るに当たり、江東動乱は最終局面へと移行しつつあった・・・

 

 

 

 

■■■【オリジナル人物紹介】■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

 

 

 ○孫堅 文台 真名は緋蓮(ヒレン) 

 

  春秋時代の兵家・孫武の子孫を称し、各地で起こった主導権争いに介入し

  『江東の虎』の異名で各地の豪族を震撼させた

  優秀な人材を率い転戦、やがて軍閥化し孫家の基礎を築いた

 

  容姿:髪は桃色で、孫家独特の狂戦士(バーサーカーモード)になると、右目が赤色に変化するのが特徴で、平時は量目とも碧眼である

  祭と同じく胸が豊満で背は祭より高い 体格は祭よりすこし大きい 顔立ちは蓮華というより雪蓮に似ているだろうか

 

 ○張紘 子綱 真名は紅(コウ) 

 

  呉国の軍師の一人で主に外交を担当。 魏の程昱(風)の呉版と考えていただけると理解しやすいだろう

   『呉郡の四姓』と呼ばれる有力豪族の張氏の出 雪蓮直々に出向き、姉の張昭と共に臣に迎え入れられる

  張昭と共に『江東の二張』と称される賢人

 

  ※史実では、呉郡の四性でも張昭と兄弟でもありませんのでお間違い無きように。。。 

   呉郡の四性の中で張温しか見当たらなかった為、雪月の”脳内設定”です

 

  容姿は青眼で背丈は冥琳より少し低い 顔は姉の王林とは似ておらず童顔で人に安心感を与える顔立ちである

  髪は腰にまで届こうかという長く艶やかに保った黒髪を束ね、ポニーテールと呼ばれる髪型にしている事が多いが

  その日の気分により、長髪を肩辺りで束ね胸の前に垂らしている場合もあるようである

  服装は藍色を基調とした西洋風ドレスを身を纏っている

 

 ○魯粛 子敬 真名は琥珀(コハク)

 

  普段は思慮深く人当りも良い娘で、政略的思考を得意とし、商人ネットワークを駆使し情報収集・謀略を行う

  発明に携わる時、人格と言葉遣いが変化し、人格は燃える闘魂?状態、言葉遣いは関西弁?風の暑苦しい人に変化する

  このことから「魯家の狂娘・後に発明の鬼娘」と噂される

 

  ※穏(陸遜)は本をトリガーとして発情しちゃいますが、、琥珀(魯粛)は発明に燃えると・・・燃える闘魂に変身って感じです

 

  容姿は真名と同じく琥珀色の瞳をもち、髪は黒で肌は褐色がかっており月氏の特徴に似通っている

  背は明命と同じくらいで、服装は赤を基調としたチャイナドレスを身に纏っている

 

 ○張昭 子布 真名は王林(オウリン) 

 

  呉国の軍師の一人で主に内政を担当。 冥琳とはライバル同士で互いに意識する間柄である

   『呉郡の四姓』と呼ばれる有力豪族の張氏の出 雪蓮直々に出向き、妹の紅(張紘)と共に臣に迎え入れられる

  張紘と共に『江東の二張』と称される賢人

 

  妹の紅は「人情の機微を捉える」に対して「政(まつりごと)の機微を捉える」という感じでしょうか

 

  容姿は冥琳より少し高めで、紅と姉妹でありながら顔立ちが似ておらず、冥琳と姉妹と言われた方がピッタリの美人系の顔立ちである

  眼鏡は使用しておらず、服装は文官服やチャイナドレスを着用せず、珍しい”青眼”でこの眼が妹の紅と同じな事から

  姉妹と認識されている節もある 紫色を基調とした妹の紅と同じ西洋風のドレスを身を纏っている

 

 ○程普 徳謀 真名は楓(カエデ)

 

  緋蓮旗揚げ時よりの古参武将であり、祭と並ぶ呉の柱石の一人 「鉄脊蛇矛」を愛用武器に戦場を駆け抜ける猛将としても有名

  祭ほどの華々しい戦果はないが、”いぶし銀”と評するに値する数々の孫呉の窮地を救う働きをする

  部下達からは”程公”ならぬ『程嬢』と呼ばれる愛称で皆から慕われている

 

  真名は・・・素案を考えていた時に見ていた、某アニメの魅力的な師匠から一字拝借致しました・・・

 

  容姿は祭と同じくらいの背丈で、端正な顔立ちと豊かな青髪をうなじ辺りでリボンで括っている

  均整のとれた体格であるが胸は祭とは違いそこそこ・・・ちょっと惜しい残念さんである

 

 ○凌統 公績 真名は瑠璃(ルリ) 

 

  荊州での孫呉崩壊時(※外伝『砂上の楼閣』)に親衛隊・副長であった父・凌操を亡くし、贈った鈴をもった仇がいると

  知った凌統は、甘寧に対して仇討ちを試みるものの・・・敵わず返り討ちにあう間際に、一刀に救われ拾われることとなる

  以来、父の面影をもった一刀と母に対してだけは心を許すものの・・・未だ、父の死の傷を心に負ったまま

  呉の三羽烏の一人として日々を暮らしている

 

  容姿はポニーテールに短く纏めた栗色の髪を靡かせて、山吹色を基調とした服に身を包んでいる小柄な少女

 (背丈は朱里や雛里と同じくらい) 真名の由来で目が瑠璃色という裏設定もございます

 

  ○朱桓 休穆 真名は珊瑚(サンゴ)

 

  『呉郡の四姓』と呼ばれる有力豪族の朱氏の一族

  槍術の腕を買われ、楓の指揮下にいた 一刀の部隊編成召集時に選抜された中から、一刀に隊長に抜擢された『呉の三羽烏』の一人

  部隊内では『忠犬・珊瑚』の異名がある程、一刀の命令には”絶対”で元気に明るく忠実に仕事をこなす

 

  容姿:亞莎と同じくらいの背丈で、黒褐色の瞳に端正な顔立ちであり黒髪のセミロング 人懐っこい柴犬を思わせる雰囲気をもつ  

  胸に関しては豊満で、体格が似ている為よく明命から胸の事で敵視されている  

 

  ○徐盛 文嚮 真名は子虎(コトラ)

 

  弓術の腕を買われ、祭の指揮下にいた 一刀の部隊編成召集時に選抜された中から、一刀に隊長に抜擢された『呉の三羽烏』の一人

  『人生気楽・極楽』をモットーにする適当な性格であったが、一刀と他隊長である珊瑚と瑠璃・隊長としての責に接していく上で

  徐々に頭角を現し、後に部隊内では『猛虎』と異名される美丈夫に成長を遂げていくこととなる 

 

  容姿:思春と同じくらいの背丈で黒髪のショートヘア 体格も思春とほぼ同じく、遠めからでは瓜二つである 

  二人の区別の仕方は髪の色である(所属部隊兵談) またしなやかな動きを得意としている為、思春の弓バージョンと言える 

 

  ○諸葛瑾 子瑜 真名は藍里(アイリ)

 

  朱里の姉 実力にバラツキがあった為、水鏡から”猫”と称される

  その後、水鏡と再会時に”猫”が変じて”獅子”になりましたわねと再評価される

 

  天の御遣いの噂を聞きつけた藍里が冥琳の元を訪れ、内政・軍事・外交とそつなくこなす為、未熟であった一刀の補佐に転属させられる 

  初期には転属させられた事に不満であったが

  一刀に触れ与えられる仕事をこなす内に(わだかま)りも消え、一刀に絶大な信頼を寄せるようになる

  後に亞莎が専属軍師につくと、藍里の内政面への寄与が重要視される中で、藍里の器用な才を愛し、軍師としても積極的に起用している

 

  容姿は朱里より頭一つ高いくらい 茶髪で腰まであるツインドテール 朱里とよく似た童顔でありながらおっとりした感じである

  服装に関しては赤の文官服を着用しており、胸は朱里と違い出ている為、朱里とは違うのだよ 朱里とは・・・

  と言われているようで切なくなるようである(妹・朱里談)  

 

 

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【あとがき】

 

常連の読者の皆様、お初の皆様 こんばんは雪月でございます

 

まず始めに、オリキャラの容姿等の表記がなく、あまりにもボンヤリとしていて捉え難いとのご指摘を戴きまして

急遽オリジナル武将紹介に追加しておきました

 

ちょっと調べて見ましたら・・・紅さんと瑠璃しか容姿説明していませんでした・・・

ご指摘があるまで全く気付きもしませんでした 

雪月の顔面蒼白 久々に大ポカをやってしまった・・・感タップリでございます

 

今までの皆様が想像されていたキャラとは違ってしまい

違和感を抱かれる方々も少なからずいらっしゃることとご推察いたします 本当に申し訳ありません

 

今後このような不手際を致さないように注意いたしますので、今後ともよろしくお願いいたします

これまでのオリキャラの容姿のご説明不足・・・誠に申し訳ありませんでした・・・重ね重ね深くお詫び申し上げます

 

この他にも何か気付いた事がございましたなら、お気軽にご指摘くださると嬉しく存じます

 

 

江東動乱と銘打ち、前編・中編とお送り致しました

今回の話は、冥琳の深謀と初の海戦描写を中心に制作しております

冥琳の策謀の一手一手が黄巾賊を滅亡へと追いやり、劉ヨウを苦しめております

次回は江東動乱の大詰めとなります ご期待に添えますよう制作したいと思っております

 

上記にもカキコ致しましたが、この度初の海戦描写でありました

平常の戦いもそうですが、描写が実に難しいですね 悪戦苦闘しつつお送りしました次第です

うまく皆さんに伝われば良いなと思っております

 

今回は桔梗さんと焔耶を物語に出す事が出来ました 紫苑さんは?と思い、自身の初期設定を確認しておりましたら・・・

この時はまだ劉表軍に所属しておりました  自身の設定ぐらい覚えとけよと思わなくもありません・・・(滝汗

 

才媛の未亡人、紫苑さんファンの方々には、もうしばらくお待ち戴く事になりそうです・・・

私自身も出せず残念です・・・(泣

 

次回更新は前編・中編ときましたので、もちろん”後編”となります

劉ヨウの最後に切った切り札とは? 現れた軍勢とは? 江東動乱の結末はいかに?といった処でしょうか

 

それでは来週の更新までヾ(*'-'*)マタネー♪

 

 


 
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