No.540374

魔法少女リリカルなのは -九番目の熾天使-

第八話『黒幕』

2013-02-05 15:32:44 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:3543   閲覧ユーザー数:3260

 

 

 

 

 

 数日後、俺は海辺を散歩していた。

 

 この町は海が近く、気軽に立ち寄れる。

 

「う~み~はひろい~な~おお~き~な~」

 

【マスター、急に歌い出してどうなさったのです?】

 

 いや、何か気分的に歌わないといけない気がしたんだ……。

 

「それにしても……暇だな」

 

 刺激が欲しいでこの世界に来たのに、俺は一体何をしているんだ?

 

 ま、そんな退屈な時間ももうすぐで終わる。そんな気がするんだ。

 

【マスター、結界が張られました】

 

 ほれ見ろ。俺の勘は当たったぜ。

 

 俺は海を見ると雷雲が集まり、海面に落雷が発生していた。

 

 その中心にはフェイトとアルフがいる。どうやらフェイトが魔法を使って起こしたらしい。

 

「……アイツ等、何やってるんだ?」

 

【広域スキャン開始……完了。ジュエルシードと思しき反応が六つ。落雷の魔法を使用して強制発動させている模様です】 

 

 六つを同時にか!?

 

「馬鹿か!? 個人がどうにか出来る物じゃないだろ!」

 

 俺が驚愕していると、海面から竜巻が発生、フェイトが必死に封印しようとしている。

 

 だが、全く封印出来る気配が無い。寧ろ翻弄されている。

 

【意外です。彼女がここまで愚かだとは思いませんでした】

 

 俺もそう思うよ!

 

「……っち! ルシフェル、行くぞ!」

 

【了解しました】

 

 俺はナインボール・セラフを展開し、すぐに駆けつけようとする。

 

【空間異常を感知。転移魔法と推測します】

 

 すると、高町とユーノ・スクライア……あと馬鹿二人が転移してきた。

 

「駆けつけるのが遅いというかタイミングが良いというか……。ま、これで俺が出る必要はn―――【アースラのリンディ・ハラオウン提督より通信が入りました】おいおい……」

 

『ルシフェルさん、来てくれたのですね』

 

 そっちが遅いからね。

 

 ……だけど、明らかに遅すぎる。まさか、フェイトが墜ちるのを待ってた訳じゃないよな?

 

【貴女方の行動が遅すぎでしたので。本当に貴女方はジュエルシードを回収しようと思っているのですか?】

 

『そ、それは……』

 

 どもるなよ……。図星って事がバレバレだ。これでは契約を見直す必要がありそうだな。

 

 そうこうしている内に戦闘は始まっている。

 

 高町と神崎、天城による砲撃である程度は押さえ込んでいるようだが……厄介なことに竜巻自体にバリアの様な物が張られていた。

 

「くそったれ! この竜巻、バリアを張ってやがる!!」

 

「巫山戯やがって!」

 

「き、効かないよ!?」

 

 魔力ランクSSSだろうと自分の魔力を制御できていない神崎と天城では無理か。天城が使っていた強力な魔法も、使用してないことから前もって準備しないと使えないみたいだ。

 

 あの二人が今後の修行でどれくらい物に出来るか少しだけ楽しみにしてもいいかもな。

 

「ごめんね……アルフ。私のせいで……」

 

「馬鹿言ってんじゃ無いよフェイト! アタシはフェイトだけでも守ってみせる!!」

 

 竜巻にボロボロにされたフェイトがアルフに謝る。だがアルフは諦めずに立ち向かう。見事な忠犬だ。

 

『ルシフェルさん、貴女の力を貸して下さい!』

 

 ま、いいか。だが、クロノ・ハラオウンは出さないのか?

 

【クロノ・ハラオウンはどうしました?】

 

『……今クロノは医務室で治療中です』

 

 提督が苦い顔して言う。何があったか知らないが、手を貸してやろう。それに、事情も聞くべきだ。

 

【事情は後で聞かせて貰います。ですが、今はアレを何とかしましょう】

 

『っ! ありがとうございます!』

 

 さて、それじゃ行きますかね?

 

【了解】

 

 俺は高町の所まで飛行した。

 

「お、お前!」

 

「何しに来た! 邪魔だから引っ込んでろ!」

 

「ルシフェルさん!」

 

「あ、アンタ……」

 

「どうして……?」

 

 ルシフェル、作戦は任せる。

 

【テスタロッサとアルフ、今は管理局との契約により協力します。アレは私が抑えますので高町さんとテスタロッサさんは封印を。ユーノ・スクライアは高町さんの補助。それと、そこの二人は邪魔なので退避してください】

 

「おい! なんで俺が邪魔なんだよ!」

 

「巫山戯るなよ!」

 

 いや、どう見ても邪魔だよ。自分の力も制御出来ていない奴がいても困る。

 

 俺が呆れているとモニターが現れた。

 

『天城君と神崎君はアースラに戻ってもらうわ。先ほどのことで処罰がありますので』

 

 処罰? コイツら、また何かしたのかよ?

 

「な!? そ、それはそっちが悪いんだろ!?」

 

「俺は悪くない!」

 

『黙りなさい! 兎に角こちらに戻って来てもらいます!』

 

 お? 提督が怒った。それと、二人が強制的に転送されて行った。

 

【さて、それでは始めましょう。準備は良いですか?】

 

「はい!」

 

「大丈夫です!」

 

「仕方ないさね……今回だけだよ!」

 

「私は大丈夫」

 

 問題無いようだ。

 

【結構です。戦闘モードへ移行します。目標……ジュエルシード】

 

 さあ、始めよう!

 

 俺は『Stardust』で近くにある竜巻を撃ち抜く。リミッターは外しているので威力は高い。

 

 それにより竜巻を消滅。次の竜巻に向けて乱射。

 

「行くよ、フェイトちゃん!」

 

「うん!」

 

 高町とテスタロッサはそれに乗じて本体へ突攻する。

 

「僕も役に立たないとね!」

 

「フェイトはアタシが守る!」

 

 ユーノ・スクライアとアルフが竜巻を拘束して抑える。

 

 俺はスロットルを上げ、高町達を一瞬で追い越して先行する。

 

「は、はや!?」

 

「凄い……」

 

 そりゃどうも。

 

 そして竜巻が複数迫ってくるが、『Akatuki』で斬り裂く。

 

 だが、竜巻は次々と発生してキリが無い。

 

 それなら……

 

【サブウェポン、『Chaser』……ロック完了】

 

 俺はホーミングミサイルを周囲に展開する。

 

 その数は二十発。威力は数発で高層ビルを破壊できる程だ。

 

【発射】

 

 手を振り上げると一斉にミサイルが発射される。

 

 それぞれが竜巻に向かって行き、大爆発を起こした。

 

 その威力と爆風により周囲の竜巻は全滅する。

 

 高町達はもの凄く驚いていた。

 

【今です】

 

 ルシフェルの声でやっと我に返った二人が封印を始める。

 

「う、うん! レイジングハート!」

「バルディッシュ!」

 

【ディバイン】

【サンダー】

 

「バスターー!!」

「レイジーー!!」

 

 二人から桜色と金色の砲撃が放たれる。

 

 それは真っ直ぐにジュエルシードへ向かい、衝突する。

 

 僅かな抵抗を示したが、すぐに光に呑み込まれて沈静化する。

 

 そして辺りは晴れ、竜巻は消滅した。

 

 やれやれ、これで一先ずは安心だ。後の問題は……テスタロッサだな。

 

 俺が高町達を方をみると、高町がいきなり友達になりたいと言っていた。

 

 こいつは本当に不思議だ。どうしてそこまで人に関わろうとするか理解が出来ない。

 

 ま、人それぞれだから俺にはd――――【空間異常、及び高魔力反応を感知。上空です】っ!? 

 

 俺が一息吐こうとした時、ルシフェルからその報せを聞いた。

 

 言われた通り高町達の上を見ると、空間が歪んでいた。まるで穴が空いているかのように……。

 

 そこから大きな魔力を感知した。

 

 何かが起きる……。恐らく、彼女達に。

 

「ゼロシフト起動!」

 

【ゼロシフト、起動します】

 

 俺はゼロシフトを使い、一瞬で高町達に接近した。

 

「えっ? る、ルシフェルさん!?」

 

「な!?」

 

 それに答える余裕は無い。何かがすぐそこまで迫っている。

 

 兎に角、彼女達を此処から離れさせるのが先だ。

 

 ゼロシフトやバーニアを使おうとしたが、彼女達の身体が急な加速に耐えきれるか疑問だったので却下。

 

 ならば……

 

「え? きゃっ!?」

 

「な、なにs―――うあっ!?」

 

 俺は高町とテスタロッサを掴んで放り投げた。

 

 安心出来る距離では無いが、少しはマシだろう。

 

 そして、彼女達を放り投げたと同時に何かが俺に降り注いだ。

 

 

 

 

 痛い、熱い、苦しい。

 

 まるで雷が全身を貫いているような感覚だ。

 

 いや、実際は雷に近い物なのだろう。

 

 紫色の電気が俺を襲っているのだしね。

 

 だが、シールドも間に合わずに俺は直撃を受けた。

 

 装甲にダメージは無い。

 

 ただ、痛みがフィードバックされる。

 

 装甲にダメージが無いのは、この機体の装甲にはセルフ・サポーティング・アーマー(S S A)が使用されているから、電力を供給されれば装甲は修復される。(詳しくはwikiで)

 

 しかし、本当に痛い。

 

 いくら自分が望んだからと言って、電気までダメージを喰らうとは思わなかったな。

 

 コイツの装甲がほぼ完全に俺の皮膚と同義ということか。

 

 幸いなことにバーニアに問題は無かった。通常通り稼動している。

 

 変態科学者共め……こうなることでも想定してたのか?

 

「……え? 今……」

 

 あ、やべっ……声が聞こえたか?

 

【私は大丈夫です。早くアースラへ退避しなさい。先ほどの攻撃がまた来るかも知れません】

 

「は、はい!」

 

 俺は周囲の警戒を怠らずにリンディ提督に繋いだ。

 

【リンディ提督、すぐに高町さん達を収容しなさい】

 

『分かりました。ただ、こちらも攻撃を受けて混乱しています。数分待って下さい』

 

 向こうも攻撃を受けたのか?

 

 っていうか、さっきテスタロッサが母さんって言ってたな?

 

 もしかして……テスタロッサの母親の仕業か?

 

「くっ!」

 

 そして、困惑していたテスタロッサだったが、彼女はすぐに我に戻るとジュエルシードがある場所まで飛んでいった。

 

 この期に及んでまだそれを狙うか……。

 

 勿論俺は管理局に協力関係なので見過ごせない。

 

 ゼロシフトは起動せずにバーニアだけで加速し、テスタロッサと同時にジュエルシードを確保した。

 

 俺が確保したのは三つ。そしてテスタロッサも三つだ。

 

【それをこちらに渡しなさい。】

 

「…………」

 

 テスタロッサは俺を睨んで返答した。

 

 渡す気は無いらしい。だが、身体は震えている。勝てない事が分かっているからだろう。それでも彼女は母親の為に必要で

 

 ……ふむ、このまま逃がすのは頂けない。態々こちらの不利益になるようなことは…………いや、少し面白い事を思いついた。

 

【……いいでしょう。今回は見逃します。ただし、次はありません。必ず貰い受けます】

 

「……? 見逃すと言ったけど、その言葉に嘘は無い?」

 

 テスタロッサが訝しげに聞いてきた。

 

 勿論、今回は見逃すよ。

 

【戦いたいのですか?】

 

「っ! いいえ……。それじゃあ行かせてもらうから」

 

 俺が『Akatuki』をちらつかせて問うたらテスタロッサ達はすぐに逃走した。

 

 そこへリンディ提督がモニターを出して詰問してきた。

 

『ルシフェルさん、一体どういうことですか!? 何故彼女を逃がしたのです!?』

 

 うるさい、目の前で大声を出さないで欲しい。っていうか落ち着け。

 

【落ち着きなさいリンディ提督。貴女は主犯を捕まえたいのでしょう? 私に考えがあります】

 

『考え……?』

 

【はい。詳しい話はそちらに戻ってからします】

 

 そして俺はアースラへ転移させてもらった。

 

 

 


 
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