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魔法少女リリカルなのは -九番目の熾天使-

第七話 いざ、月村邸へ!

2013-02-01 21:20:47 投稿 / 全4ページ    総閲覧数:4546   閲覧ユーザー数:4149

 

 

 

 

 

「ふぅ……ああいうのは疲れるな。」

 

 リンディ提督と協定を結んで四日が過ぎた。

 

 彼等の情報収集能力は優秀で既に二つ目のジュエルシードの回収に成功している。

 

 高町はアースラで寝食をしているようだが、俺は地球で過ごしていた。

 

 いつボロが出るか分からないからな。

 

 そもそも、この間のような交渉は俺は苦手なんだ。精神的に疲れるよ……。

 

「さて、食材も少なくなったし……買い物にでも行きますか」

 

 そして俺は食材を買いにスーパーへと出掛けた。

 

「え~と、鶏肉と豚バラ肉……あと保冷用の氷も買っておかないと。あと保存食も」

 

 家が無いのはやはり不便だ。野宿じゃ冷蔵庫も使えないからまとめて買い揃えることが出来ない。

 

「よし、こんなもんか……ん?」

 

 俺は一通り籠に入れると、見慣れない女性が精肉商品を見て唸っていた。

 

「どうしましょう? どれが良いのか分からないわ……。それに、見たこと無い物ばっかり……」

 

 その人は女性にしては背がやや高く、ウェーブが掛かった薄紫の髪をして、瞳の色が金色という珍しい容姿だった。

 

 明らかに日本人じゃ無いな。ま、俺には関係無いから別にいいか。

 

 俺はそのまま通り過ぎようとしたら……

 

「あっ、ねぇそこの坊や?」

 

「……はい?」

 

 え? 俺?

 

「私、日本に来たの初めてだからどんな物を選んだら良いのか分からないの。もし良かったら手伝ってくれないかしら?」

 

 ……何で俺?

 

 まあ、断ると後味が悪いから、買い物ぐらいなら手伝っても良いのかな?

 

「え、ええ……いいですけど?」

 

「ありがとう、坊や」

 

 そして俺は買い物を手伝ってあげた。

 

 彼女の名前はウーノ・スカリエッティと言うらしい。数日前から日本に来て色々研究している学者さんらしい。

 

 彼女には姉妹がおり、6人姉妹でウーノさんは長女だそうだ。……大家族だな?

 

「本当にありがとうね? とても助かったわ」

 

「いえ、別に大したことじゃ無いので……」

 

「うふふ、それでもよ。よかったら今度、お礼にご馳走させてくれないかしら?」

 

「別にいいですよ。ただでさえ大所帯なのにご馳走して貰うなんて」

 

 妹が5人もいるのに申し訳ないだろ?

 

「気にしなくていいわ。別に貧しい訳じゃないもの」

 

「ま、まあ……機会があったら……」

 

「楽しみにしてるわ」

 

 そう言って俺は彼女と別れた。

 

 それにしても不思議な人だ。なんか普通の人とはどこか雰囲気が違うというか何というか……

 

【マスター、少しよろしいでしょうか?】

 

 ん? どうしたんだ?

 

「なんだルシフェル?」

 

【先ほどの女性、ウーノさんから金属反応がありました】

 

 金属反応? それならネックレスや指輪、鍵なんかがあれば当然反応は出るだろう?

 

【いえ、それが金属反応は彼女の体内から感知しました。それにエネルギー反応も】

 

「は?」

 

 体内から感知した? それにエネルギー反応? もしかして……ガノノイドだとうのか?

 

 ……いや、そんな筈は無い。この地球にそんな技術は…………いや、決めつけるのは早計だ。少し調べた方がいいかもしれない。前に調べたら奇妙な噂があったことだしな。

 

「ルシフェル、人造人間について調べておいてくれ。勿論、裏も含めてだ」

 

【了解しました】

 

 面倒な事にならなければ良いが…………

 

 

 

 

 

 

 それから二日後、俺はいつもの公園で寝ていた。

 

 相変わらず此処は居心地が良い。

 

「あ、いたいた!」

 

「ん?」

 

 俺が寝ていると誰かの声が聞こえたので目を開けると、先日会ったアリサ・バニングスと月村すずかがこっちに向かって来ていた。

 

「少しぶりね」

 

「こ、こんにちわ」

 

「ああ」

 

「今日も学校の帰りか?」

 

「違うわ。今日は土曜日だから学校は無いわよ?」

 

 あ、そっか。だから今日は制服じゃなくて私服姿なんだな。っていうか、日にちなんて気にしていなかったから曜日なんて忘れてた。

 

「それじゃあ今日は何で此処に?」

 

「決まってるじゃない。アンタに会いに来たのよ」

 

 俺?

 

「なんで態々俺に?」

 

「あ、あの……今から私の家でお茶会しようと思って、どうせなら篠崎君も誘ってみようかな? って」

 

 お茶会ねぇ……俺、そういう貴族っぽいこと嫌いなんだよねぇ……。

 

「う~ん……」

 

 俺がどうしようか考えていると、

 

「ほら! 悩んでないでさっさと行くわよ!」

 

 そう言ってアリサは俺の腕を掴んで引っ張っていく。

 

 え? ちょっ!? 『行く』じゃなくて『決めろ』の間違いだろ!?

 

「ま、待て! 俺はまだ行くとは―――「うるさい! 私達みたいな美少女が誘ってるのに断るなんて許さないわよ!」えぇ……」

 

 横暴だ! っていうか自分で美少女言うな!

 

 こら! 手を離せ!

 

 いやぁああああああああ!!? 

 

 

 

 ……前にもこんな事があったような気がするのは気のせいか?

 

 

 

 

 

 

 そして、俺はすずかの家にやって来た。

 

 いや……正しくは『連れてこられた』だ。もっと正確に言えば『拉致られた』である。

 

「着いたわよ」

 

「ほえぇ~……」

 

 此処、何処からどう見てもの貴族の豪邸だ。

 

 っていうか、警備が異常に凄すぎなんですけど?

 

 監視カメラが門と壁に五台。しかもそれはフェイクで見えないようにカモフラージュされている監視カメラが十台前後。

 

 中に入ると一見普通の庭と道だが、道の外れにはいくつか地面が僅かに盛り上がっていた。

 

 ……考えたくないけど、地雷の可能性がある。

 

 それに、数台しか見つけられなかったが、木に紛れてセントリーガンもある。

 

 ……実弾じゃなく、ゴム弾であることを祈りたい。

 

 とまあ、俺の感覚で分かったのはこれぐらいだ。

 

 ルシフェルに調べさせたらもっと出てきそうなのは気のせいだろうか?

 

 多分、防衛システムはオフにしているはずだ。でないと、俺を含めてアリサとすずかが蜂の巣になると思う。

 

 すずかの親……アホだろ?

 

 ああ、そう言えばこの前にルシフェルに裏を調べて貰ったら、面白いことが分かった。

 

 この世界には『夜の一族』という吸血種がいるらしい。見た目は人間とあまり変わりないが、筋力は常人の何倍もあり、真っ暗な所でも見える。

 

 そして、色々ハッキングさせて調べた結果、どうやら月村家はその種族のようだ。

 

 すずかをこっそりスキャンしてもらったらそれがハッキリと分かった。だって、筋肉量が明らかにおかしいもん。

 

 正直、調べるまで殆ど分からなかった。だが、あの時感じた違和感は多分このことだったんだと思う。

 

「ただいまー、お姉ちゃん。お友達を連れてきたよー」

 

「こんにちわ、忍さん」

 

「あら、おかえりすずか。アリサちゃんもいらっしゃい。それと、そっちの子は……?」

 

「この人は篠崎煉君と言って、この間知り合ったの」

 

 一応挨拶した方が良いよな?

 

「篠崎煉です。よろしく」

 

「すずかの姉の忍よ。よろしくね、煉君」

 

「忍様……」

 

 そして忍さんの後ろからメイドが一人現れた。

 

【マスター、この人物から金属反応とエネルギー反応を感知しました】

 

 決まりだな。やはりこの世界には人造人間が存在している。

 

「ノエル、すずか達にお茶の準備を」

 

「はい、かしこまりました。それではすずかお嬢様、こちらへ」

 

「うん、ありがとうノエル」

 

 

 

 

 俺は今、お茶を飲んでいる。

 

 お茶以外にはケーキやクッキーなどがあり、ノエルさんお手製だそうだ。

 

 周りには猫だらけ。入ったときはビックリしたが、慣れれば可愛い物だ。

 

 そしてすずかやアリサ達と一緒に談笑しているが、ハッキリ言って居づらい!

 

 何故か? 理由は簡単だ。視線が痛いんだ!

 

 俺の8m後方でジッとこっちを見ているんだよ、ノエルさんが!

 

 俺、何か悪い事でもしたのか? 心当たりが全く無いんですけど?

 

「それでね煉……って、聞いてるの?」

 

「あ、ああ……聞いてるけど? アリサの友達の事だろ?」

 

 い、いかんいかん……ちゃんと話を聞いておかないと。

 

「そうよ。それで、そいつが最近ずっと一人で考え事してたのよ」

 

「そうそう。いつも声を掛けても上の空だったから、ついこの間アリサちゃんが怒ったんだよね?」

 

「う~……ちょっとカッとなっただけよ」

 

「へぇ……でもそれってつまり、アリサはその友達の為に何も出来ない自分が嫌だったんだろ?」

 

 アリサの性格は少しだけだが、理解できた。こういう奴は何だかんだ言っても友人を大切にするからな。

 

「うっ……何で分かるのよ?」

 

「なんとなく」

 

 でも、あまり大人びた発言は控えます。後ろが怖いので。

 

 …………ちょっと、トイレに行きたくなったな。

 

「すずか、スマンがお手洗いに行きたいんだが、場所を教えてくれるか?」

 

「あ、それならノエルさんに案内してもらうよ」

 

 え?

 

「あ、いや―――「ノエルさん、お手洗いまで案内してくれますか?」……」

 

 勘弁してくれ……

 

「では篠崎様、こちらへ」

 

「……はい」

 

 すずか、気持ちはありがたいが今回は少し恨むぞ?

 

 そして俺はトイレまで案内して貰い、用を足した。

 

 そしてトイレから出ると……

 

「篠崎様、忍お嬢様がお話をしたいと申しております。私に付いてきて下さいませ」

 

 えぇ~……何で俺? しかも拒否権無し?

 

「……なんで?」

 

「忍お嬢様がお話したいと」

 

 ……このメイドさん、絶対に俺を逃がさないつもりだ。

 

「はぁ……まあ、別にいいですけど?」

 

「ではこちらに」

 

 俺は仕方なくメイドさんに付いて行った。

 

 

 

 

 

 

「まったく、恭也が居ないときに限ってこんな面倒な事になるんだから!」

 

 すずかが珍しく……いや、初めて男の子を家に連れてきた時は驚いたわ。

 

 それと、嬉しくもあった。すずかに恋人なんてまだ早いかな~とは思ったけど恋に年齢は関係無いみたいね。

 

 それが普通の男の子だったらの話だけど。

 

 さっき、監視カメラの映像を再生してみると……男の子が全ての監視カメラに視線を向けていた。しかも、カモフラージュしているものまで!

 

 ただの偶然と思いたかった。でも、その後の映像ではセントリーガンや地雷の敷設場所まで見ていたのよ……。

 

 もう偶然とは言えなかった。

 

 私達に仕向けた刺客だろうか? こんな子供を使うなんて奴等も相当腐っているわね。反吐が出るわ。

 

「忍お嬢様、篠崎様をお連れしました」

 

 ……来たわね

 

「入ってちょうだい」

 

「失礼します」

 

 入ってきた男の子は髪も瞳も黒い普通の日本人だったわ。

 

 でも、改めて見ると分かる。

 

 目つきが歳不相応だったから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「失礼します」

 

 入るなり観察するような視線を浴びた。失礼だとは思わないが、もう少し警戒を弱めてくれると有り難い。

 

「で、俺に何かお話があるって聞いたんですけど?」

 

 取りあえず用件を終わらせたいから単刀直入に聞いた。

 

「うん? ただの好奇心よ。すずかが男の子を連れてくるのって初めてだからお姉ちゃん、興味が湧いて来ちゃった♪」

 

 見事な猫かぶりだな。

 

 ただ、その発言は……

 

「……お姉さんってそっちの趣味なんですか?」

 

 誤解を招く。

 

「……へ? っ! ち、違うわよ!? 私はそういう意味で言ったんじゃなくてn―――「知ってますよ」……くぅ!」

 

 ちょっとからかってやった。意外と楽しいな、この人。

 

 さて、そろそろ真面目に話そう。ただ、ここはやはり普通の子供で通すのは無理がありそうだ。

 

「それで? 本当に聞きたい事は何ですか?」

 

「っ!」

 

 俺は目つきを鋭くして聞いた。少し、殺気が漏れていたかも知れない。

 

 ソレを感じ取ったのか、後ろのメイドさんがそれを感じ取って襲いかかろうとする。

 

 俺はいつでも展開できるようにしているのでその場を動かない。だが……

 

「やめなさいノエル!!」

 

 忍さんに止められた。

 

 つまらん。

 

「で、ですがお嬢様!」

 

「いいから。まだ彼がそうとは決まっていないわ」

 

 メイドさんは隠し持っていたナイフを袖に入れると下がった。

 

「いきなりでごめんなさいね?」

 

「いえ、慣れていますので」

 

 疑似体験の時なんて裏切りや不意打ちが当たり前だったしね。

 

「そ、そう。それで、貴方は何の目的ですずかに近づいたのかしら?」

 

「別に? 彼女と知り合ったのも、この家に来たのもただの偶然。俺の意志では無いし、寧ろ無理矢理連れられたんだけど?」

 

 アリサのやつ、本当に強引だったな。

 

「……信じてもいいのかしら?」

 

「好きにすれば? 俺は別に困らないしね。俺からは何もしないが、もし俺に危害を加えるならその時は……排除するだけだよ」

 

「「っ!?」」

 

 俺はここ一番の殺気をぶつけてやった。

 

「わ、分かったわ。信じるし、私達から手出しはしないわ。でも……もしすずかに万が一の事があれば……」

 

「承知してるよ。寧ろ、すずかが危ない目に遭っていたら助けてやっても良いくらいだ」

 

 無駄な……いや、つまらない遊びをするほど暇でも無い。

 

「……分かったわ。信じるわ」

 

「そうか」

 

「お嬢様!?」

 

「落ち着きなさいノエル。彼は自分からは何もしないと言ってるの。それに、何かしら目的があるならもう行動を起こしているはず」

 

 それ以前に、俺一人でアメリカ軍を壊滅させることもできるしね。

 

「し、しかし……」

 

「これは命令よ、ノエル。それと煉君、私と貴方でビジネスをしないかしら?」

 

 ビジネス?

 

「内容は、私達が助けを求めたら駆けつけて対処してくれること、この一点だけ」

 

 へぇ……それで、見返りはなんだ?

 

「そっちは何をしてくれるの?」

 

「私はこう見えても結構パイプがあるの。で色々融通が聞けるよ? それに、資金援助もね」

 

 要は裏工作と金、だろ? ま、自分達の命に比べたら随分安いだろう。

 

 こっちにもちゃんとメリットがあり、デメリットは然程無い。

 

「いいよ。ただ、今は資金は必要ない。必要になったら少し請求するよ」

 

「そう。じゃ、契約成立ね」

 

 俺と忍さんは握手を交わす。こうして俺と月村家にパイプができた。

 

 その後、俺はやっと解放されてアリサ達の所へ戻った。

 

 そして『遅い! 何してたのよ!』と怒られた。

 

 一応迷ったと言って誤魔化したが……。

 

 

 

 


 
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