No.539929

~貴方の笑顔のために~ Episode 22 壊れゆく未来

白雷さん

一刀がめを覚ましてから一か月がたっていた。
一刀の体も完全に回復しつつあり、最後の旅へでようと、
決心していた。

2013-02-04 10:57:51 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:10355   閲覧ユーザー数:8332

一刀が目を覚ましてから一か月が経過していた。

すでに一刀の体は回復し、一刀は体のなまりをとりもどすために毎日

特訓に励んでいた。

 

 

~一刀視点~

 

俺がしなければ、ならないこと・・・

確かにあの時、俺は雪蓮の前でそう堂々と言い張った。

旅は終わったが、俺にはやり遂げなければならないことがあると。

 

そう考えながら俺はあの刀を手に取り、見つめる。

 

「まだ、俺にはこの刀を使う覚悟はないのかもな・・貂蝉」

 

次の目的地は魏だ。これで、終わる。俺の旅が。

 

司馬懿、この世界でまだ名すら聞いたことがないが、そいつの存在を確かめなければ

ならない。

三国は、蜀、魏、呉と滅ぼされていくが、その原因は司馬懿にある。

つまり、今司馬懿が魏にいるのだとしたら危険だ。

 

歴史とは違うかもしれないが、

華琳たちに俺のことが気づかれる前にそいつのことを観察しなければならない。

俺の正体が気づかれれば、そして、司馬懿が歴史通りのクーデターを

起こすものだったら、やつは慎重になってしまうだろう。

そしたら、詮索が難しくなってしまう。

 

もしも、歴史通りなら、これが俺にできる最後のしごとだ。

 

そしたら、やっと、俺は堂々と華琳に、みんなに会える。

 

明日には、ここをでなければな。

 

そう思いながら俺は、それを伝えるため、雪蓮がいる部屋へと向かっていった。

 

「雪蓮、いるか?」

 

「一刀?いるわよ、どうしたの?改まっちゃって。」

 

「すまん、入るぞ。」

 

「うん」

 

部屋に入ると、雪蓮が机に向かって仕事をしていた。

 

「雪蓮、珍しいな」

 

「なにが?」

 

「いや、雪蓮が仕事している光景はなかなか見られないと思ってさ。」

 

「なによ、一刀、ちょっとひどいんじゃない。

 私だって仕事はするわよ」

 

「そうか・・すまん」

 

「別にいいけど」

 

「・・・」

 

「もう、行くのね」

 

俺のその空気を察したのか雪蓮がそういう。

 

 

「ああ。」

 

「そう。いろいろとありがとうね。一刀」

 

「こちらこそ、ありがとう」

 

「それで、一刀、今度の目的地は?」

 

「魏、だ。」

 

「最後の旅としてはふさわしい場所かもね」

 

「また、もどってくるわよね」

 

「ああ、今度はちゃんと北郷一刀として。あいにくるよ」

 

「そう、そう願っているわ。 もう、みんなには?」

 

「まだ、言っていないかな。後でいう機会を設けてくれるか?」

 

「もちろんよ」

 

「雪蓮、去る前にひとつだけ。」

 

「なに一刀?」

 

「ちゃんと対策はできているのか?」

 

「・・はぁ、やっぱり気づいていたのね。」

 

「まあ、それくらいはな。」

 

三国は平和になったとはいえ、その結ばれ方が結局は

三国同盟という形だ。蜀、呉の民は思っているはずだ。

なぜ、平和になれる道があったのならば、はやくそうしなかったのかと。

一国にまとまるのであればそれは仕方のないこととして

民は受け入れることができる。

 

しかし、果たして、この三国戦争の間に家族を失った人たちはどう思うのか?

同盟という形に少なからず不満を抱いているはずだ。

 

その不満が、おそらく蜀では張任の反乱とともに、爆発し、

静まりつつあるだろう。

そして、なんといっても三国戦争のとき、あの桃香自身が華琳と正面から

戦ったのは民の心に焼き付いている。

 

 

果たして、呉はどうだろうか?

三国同盟が結ばれてから、反乱といえる反乱が全くない。

これが逆に奇妙に思える。

 

「一刀の言うとおりね。私たちはあの、三国同盟の後、

 しっかりと反乱勢力に対処する方法をかんがえていたわ。

 平和を願い、たたかってくれた呉の民たちだもの。

 殺すことはできない。

 かといって、見過ごすこともできない。

 だから、私たちはどうすれば話し合いにより解決できるのかを考えていたわ」

 

「そうか、で、結論はどうなんだ。」

 

「正直言って、私たちはあの後、いくつか反乱がおきると思っていたの。

 けれど、小さい反乱一つも起きていない。

 一刀、これはいいこと?それとも・・・」

 

雪蓮がいいたいことはわかる。

反乱がないことは確かにいいことにみえる。けれど、その一方で、

別の考え方をすれば、相手が時期を待っているとも考えられる。

 

「難しいな・・いいことととらえてしまい準備がおろそかになってしまっては

 もともこもない。そして逆にあまりに警備を固めると、

 民に不安を与えてしまう」

 

「そう、なのよね。」

 

「まあ、でも慎重に構えて悪いことはない。

 警備のほうもあまり緊迫した雰囲気を民に与えなければ、

 大丈夫だと思うぞ」

 

「そうよね、うん、一刀。私何とかやってみるわ」

 

「ああ、がんばれ。雪蓮。」

 

 

「雪蓮いるかっ!?」

 

そんな話をしていた時だ。冥琳があわてた様子で部屋に駆け込んできた。

 

「なに?冥琳。そんなあわてて。」

 

冥琳は俺のほうをみると、なにかまずいという表情を一瞬し、雪蓮に

ちょっと話があると声をかけていた。

 

「なんだ?なにかあったのか?」

 

「すまん、一刀。お前に隠しているわけではないが、少し

 私も混乱しているのだ。雪蓮とまず話させてくれ」

 

「・・わかった。」

 

その、冥琳のただならぬ雰囲気に俺はそううなずき、部屋の外にでた。

 

 

~雪蓮視点~

 

「それで、冥琳、用ってなんなのかしら」

 

冥琳はそとにいる一刀の様子が気になるらしく私の耳にことの詳細をつぶやいてきた。

 

「・・!なんですって。でも、魏のことって、そんなのあり得ないわ!

 誤報にきまっているはずよ!だって、彼は・・」

 

「わかっている。私もそう確信している。しかし、明命が・・」

 

「とりあえず、これは私たちの話だけではすまないわ。

 彼にもつたえないと。」

 

「そう、だな。」

 

「冥琳、なにか問題が?」

 

「いや、そうではないが。一刀のことだ。自分を責めてしまうのでは

 ないかとそう、思ってな。」

 

「・・、確かに、そうかもしれない。けれど、これは彼が乗り越える壁よ。

 いえ、彼がすでに背負っていたことよ。

 あの仮面をつけた時から」

 

「そう、だな。」

 

「じゃあ、一刀に話してもいいわよね」

 

「ああ」

 

そういって、私は一刀をよんだ。

 

~一刀視点~

 

なんだ、俺を避けてまでして話す用事って。

 

そんなことを考えていると、間もなくして部屋の中から雪蓮が俺の名を呼んだ。

 

「もう、いいのか?じゃあ、入るぞ」

 

「ええ。」

 

部屋に入ると、さっきまでの雪蓮とは違った、深刻な表情をしている

雪蓮がたっていた。

 

「なにか、あったんだな。」

 

「ええ」

 

「なにがあったんだ?いや、なにが起こっている?」

 

先ほどから部屋の外が騒がしくなりつつある。これは、ここだけの問題ではなさそうだ。

 

「一刀、落ち着いて聞くのよ。」

 

「ああ」

 

 

 

 

「五胡が蜀に侵攻。その規模は25万。」

 

 

 

「・・・なん、だと?五胡・・・五胡、だと。

 その情報は確かなのか?」

 

「ええ、確かよ。桃香じきじきに書が届いたわ。それに加えて

 呉の者からも同じ報告が届いている、北方より大軍が蜀へ侵攻中と。」

 

「なんでだ?なんで」

 

「原因は不明。桃香もこれに急ぎ対応中」

 

 

 

なんでだ。なんで、五胡が・・・この時期に。

 

 

「それだけじゃないわ。」

 

「それだけじゃないって、どういうことだよ」

 

「蜀は荊州に愛紗、関羽の軍を送ってきたわ。しかも、完全武装状態で。」

 

 

・・・愛紗が?呉と蜀の国境近くの守りを固めている?なぜだ?

五胡に主力である関羽軍を送らないで、何をやっている?

呉への守り・・それはすなわち

 

「呉で、反乱が起きたのか?」

 

「いえ、まだ、そういう報告はないわ

 なぜ、関羽軍がきているのか詳細は不明。

 こちらも相手の様子をうかがっているところ」

 

 

 

なんだ・・何が起こっている?

 

 

 

「そして、呉に華琳の部下、霞、張遼軍が侵攻中。原因は不明。」

 

 

 

思わぬことに俺は机をバンとたたく。

 

「そんなのあり得るわけがない。なんかの間違いだろ!

 魏が呉に侵攻なんて」

 

そうだ、霞が、いやそもそも華琳がそんなこと許すはずがない。

 

「わかっているわ。私もそう思った。けど、明命が間違いないって。

 ちゃんと、霞の顔をみたといっている。」

 

明命が・・・?くそっ、何が起こっている・・

 

「そして、あと一つ」

 

「なんだ!まだあるのか?」

 

だめだ、頭がついていけない・・

 

「魏へ軍が侵攻中。敵数不明。」

 

なんだ、と。魏までもかよ・・・

どうなっていやがる・・どうなっているんだ。

 

「だれだ、それは!?」

 

「・・・」

 

「雪蓮?」

 

「・・・・」

 

「ここまで、きてためらう必要はない・・」

 

 

 

 

「わかったわ。魏へ侵攻している旗は、」

 

「・・・」

 

 

「白に十文字」

 

 

 

 

俺は、そこまできいて、体から力が抜けるのを感じた。

 

 

 

「天の御使い、北郷一刀よ。」

 

その時、俺のなかで、何かが壊れていくのを感じた。

 


 
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