No.538219

IS x アギト 目覚める魂 43: 予期せぬ異動

i-pod男さん

今回は委員会フラグです。

2013-01-31 07:12:25 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1860   閲覧ユーザー数:1780

「と、言う訳だ。」

 

事件発生後、収集が着き次第男子二人は千冬に何が起こったかを報告する事になった。千冬は目頭を揉んで溜め息をつく。

 

「全く・・・アンノウンだけでも充分大変だと言うのに・・・・次から次へと。」

 

「そう言えば・・・あいつが使ってた機体はアメリカの第二世代・・・確か、『アラクネ』とか言う機体だった。見るからにアメリカ人では無さそうだったけど、使ってた。もしかしなくとも、あいつあのISパクったんじゃないか?」

 

「そうだ。確認は取っていない、いや取れないと言った方が正しいが・・・・ある企業がお前達を狙っている可能性が高い。」

 

「企業?」

 

「ああ。人数は勿論、メンバー構成、その数、本拠地、目的、あらゆる情報が全く掴めない、ISを使うテロ組織。通称亡国企業(ファントム・タスク)だ。」

 

「全く情報がつかめない・・・・まるでアンノウンだ。まあ、俺達を狙う理由は十分過ぎる程にあるけど、企業の人間を名乗れるんだったらここから先は気を付けなきゃな。もしかしなくても、既に学園内部を押さえられた可能性だってある。ゴーレムとかのコアも必ず狙うだろうし。」

 

「ちなみに一夏、お前を拉致したのも恐らく奴らだ。」

 

「・・・・・じゃあ、やる事は一つだ。奴らをぶっ潰す。俺達が。」

 

それだけ言い残すと、一夏と秋斗は職員室から出て行ってそれぞれの部屋に戻った。

 

「難儀な話だ。これ以上狙われてたら幾ら命があっても足りないっての。」

 

気怠そうに秋斗が壁を背にずるずると体育座りになり、踞った。

 

「もう・・・・私よりお兄さんなのに、だらしないぞ〜。ツンツン。」

 

「うるさい・・・・」

 

「ねえ。私決めたの。私の力、貴方にあげるわ。」

 

「・・・・そうか。良いんだな?」

 

「うん。私は、家が家だから、人間の汚い部分を見て来たし、汚い事に手を染めた事もある。人も殺した。でも、アンノウンは生き物であると言う以外根本的に違う。私には手に負えない存在だって事が分かったの。学園最強だからと言って名実共に本当の最強って訳じゃないから。」

 

「・・・・・お前は、凄いな。その歳で達観するとは。流石としか言えない。だけど、本当に良いんだな?」

 

楯無は無言で頷き、秋斗の胸に手を当て、目を閉じた。秋斗は体の奥に熱くなったり冷たくなったりする物が流れ込む様な奇妙な感覚に顔を顰めたが、やがてその力が体内に宿った事を感じ取ると、大きく息を吐き出した。

 

「随分マシになった。ありがとうな。さてと、俺はもう寝る。分かってるとは思うが、冗談混じりでも俺の布団の中に潜り込もうとするな。蹴り落とすぞ。」

 

「いや〜ん、怖〜い♪」

 

 

 

「ふう・・・」

 

「一夏、部屋に戻ってからそればっかり。」

 

「仕方無いだろう。今まで以上に事が複雑になって来たんだ。溜め息の一つや二つ位つきたくもなる。」

 

現在一夏は簪の膝枕に頭を乗せて天井を見上げていた。

 

「これからどうなるんだろうな、俺?」

 

「どうなっても、私は一夏の味方だから側にいる。」

 

一夏の頭をまるで赤子を胸に抱く様に優しく包み込んで髪を撫でてやる。一夏は擽ったそうに身を揺する。

 

「一夏。」

 

「ん?」

 

「私、もっと強くなりたい。」

 

「そっか。お前ならなれる。絶対に。」

 

「だから、私を鍛えて欲しいんだけど・・・・駄目、かな・・・?」

 

「・・・・・はい?まあ、やる分には構わないが、理由を聞いても?」

 

「私、最近専用機の開発とかで実技は全然やってないから・・・・だから、んぅ・・・?!」

 

一夏は上体を起こし、簪の顔を両手で包んで唇に吸い付いた。

 

「自分が弱いから、鍛えて欲しい。そう言ってるのか?」

 

「・・・うん・・・」

 

「お前は充分強いと俺は思うがな。良いぜ。じゃ、明日の朝から。」

 

「分かった。ありがと、一夏♪お休み。」

 

二人は抱き合いながら眠りについた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうした事か・・・・・」

 

「どうしたんですか?」

 

「これを見ろ。」

 

嘆息している千冬に声をかけた真耶の目に映ったのは、一夏と秋斗の出頭命令だった。行き先は・・・・『IS犯罪対策部』だった。

 

「とうとう政府がアギトやアンノウンの力に目をつけてしまったらしい。全く・・・・してやられた。ここまでの騒ぎが何度も起きていては隠し切れないのは自明の理だ。委員会直属の監査官が二人に付く。」

 

「そんな・・・!!」

 

「私とてブリュンヒルデと呼ばれても所詮は人間・・・・いや、組織と言う名の機械の歯車の内の一つにしか過ぎない。あらがえぬ物、超えられない物は存在する。」

 

「でも、あの二人はこの学園を・・・・生徒達を命を賭けて守って来たじゃないですか!それをどうして」

 

「『仕方無い』としか言い様が無い。明日私がこの件を二人に通達する。」

 

千冬は部屋に戻り壁を思い切り殴り付けた。ポッカリと穴が開通した。手に刺さった破片を抜いて絆創膏を張ると、ベッドに座り込んで目から涙が零れ落ちた。悔しい。自分の無力さが悔しい。弟一人守れずして何が家族か。結局何も出来ない虚しさと悔しさで、千冬の顔は涙と鼻水で普段とは見る影も無くなってしまう。

 

「一、夏・・・・!!」

 

嗚咽を飲み込みながら弟の名を呼ぶ。その声は虚しく、小さく響いた。

 


 
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