No.536877

真・金姫†無双 #17

一郎太さん

そんなこんなで、17話。

確かに読み易い展開だけど、※に書かれると悔しいぜ。

どぞ。

2013-01-27 21:15:31 投稿 / 全7ページ    総閲覧数:9187   閲覧ユーザー数:6907

 

 

 

#17

 

 

亞莎と共に部隊を引き連れ、煌々と燃え盛る砦の前まで敵を斬り捨てて来た。数えきれない程の剣戟を躱し、攻撃を与え、そうして到着した。だが。

 

「――――なぁ、亞莎?」

「はい、おそらく一刀さんの考えている通りかと」

 

そうか。俺と亞莎の絆は、言葉すら必要ない段階にまで来ていたんだな。

 

「流石だな。俺も、今夜の夕飯は温かいものにしようかと思ってたんだ」

「ですね。ここまで来て、追加の敵がいないという点に違和感が……って、えっ?」

「えっ?」

 

なんだよ、全然阿吽じゃないじゃん。

 

「す、すみませ…ん……?」

「で、夕飯なんだが、戦も終わりだろうし、戦勝記念って事で可能な限り串でも焼こうかと――」

「あぅ、そっちじゃないです……」

「じゃぁ、どっちだよ。前か後ろか、右か左か、当たりか外れか、男か女か。いや、男か女だったら、断然女の方がいいんだけど、でもそしたら雛里や亞莎がヤキモチ妬きそうで困る。いやいや、ここは漢らしくハーレムENDを目指すのも悪く……あれ?亞莎と雛里がいる時点で、もうハーレムじゃね?だったらこのままのルートでいくか。選択肢さえ間違えなければ、いつか3Pとかも出来るだろうし……あー、でも雪蓮や冥琳ちゃん達も捨て難いな。いっそのこと、この大陸を俺が獲っちまって、後宮に侍らせてもいいんじゃね?あー、だったらその方向でべぶらっ!?」

「いい加減にしなさい」

「……はぃ」

 

初めて亞莎に命令された。頬が痛い。

 

「それで、違和感というか……なぁ?」

「はい。ここまで来ても敵が出てこないという事は、おそらくすべての敵が出払っているものかと。向こうには軍師のような人はいないと聞きますし、それも仕方がないのかもしれません」

 

なるほど。いやいや、って事はだ。

 

「張角も出てっちまったんじゃね?」

「……かもしれませんね」

 

どうしよう?

 

「どうしましょう……」

「とりあえず、一応中を確認してくる。亞莎は部隊を率いて、雪蓮の下に向かいつつ、敵を倒してってくれ」

「あの、燃えてますけど……」

「だから1人で行くんだよ。人が多すぎても動きが鈍くなるしな」

「……はぁ。一刀さんも言い出したら聞かないですしね。いいです。それじゃぁ、私は雪蓮様に報告してきますね」

「おう、任せたぞー」

「一刀さんも、お気を付けて」

「うぃー」

 

さて、ゴロンの服とか落ちてないかな。

 

 

 

 

 

 

「……熱い」

 

燃え盛る炎の中を、ひたすら駆ける。時に扉を蹴破り、時に落ちてくる梁を弾き飛ばしながら駆けていくと、女の子の声が聞こえてきた。

 

「あっつーい!なんで砦が燃えてるのよ!?」

「お姉ちゃんもう歩けないよー」

「ほら、天和姉さんもちぃ姉さんも、早く逃げないと」

 

3人ほどいるようだ。独特の澄んだ声。声優にでもなれそうな感じ。それはいいとして、なんでこんな所にいるんだか。色々と考えるとも、理由は浮かばない。というか、訊ねた方が早い。という訳で。

 

「おっと待ちなぁ!」

「「「!?」」」

 

俺は、その3人の前に飛び出した。

 

「ちょっと聞きたい事があるんだが、いいか?」

「アンタ誰よ!いきなり飛び出してきて、危ないじゃないっ!」

 

何処となく似た顔立ちの3人。姉妹だろうか。桃髪巨乳に青髪お転婆娘、それから眼鏡っ娘。

 

「いや、俺は張角の居場所を知りたいんだが、嬢ちゃん達は知らねーか?」

「え?私の事を探し――――」

「「わー!わーーーーーーー!!!!」」

 

俺の問いに桃髪おっぱいが何事か言おうとした時、残りの2匹がいきなり叫び出した。

 

「ちょっと、姉さん!何言おうとしたの!?」

「え?だって、お姉ちゃんの事探してるって……」

「だからって馬鹿正直に言ってどうするの?私達、お尋ね者なんだよ!」

「あうぅ、ごめん……」

 

と思えば、2匹は巨乳ちゃんに何やらコソコソと伝えている。

 

「あの、えっと、ごめんなさい。貴方はどなたですか?」

 

内緒話も終わったのか、3人は俺に向き直り、そして眼鏡っ娘が問い返してきた。

 

「あぁ、俺は孫策軍の北郷ってんだ」

「北郷さん、その、私達は張角にずっと捕まってて……」

「え、そうなの?」

 

3人共美少女だしな。張角も似顔絵から判断するに男らしいし、こいつらを侍らしてあんな事やこんな事をしていたに違いない。あぁ、羨ましい。そして羨ましい。じゃなくて。

 

「そうそう、そうなのっ!張角が何処かに出て行って、ちぃ達もようやく逃げられそうなんだから!」

「そうか、大変だったんだな。じゃぁ、俺は張角を探しに行くから、君らはさっさと逃げるといい」

「はい、頑張ってください」

「気をつけてねー」

 

美少女3人の声援を受けて、俺は砦の奥へと向けて駆け出す――

 

 

 

 

 

 

「えっ?」

 

――駆け出すが、すれ違ったその直後、桃髪のおっぱいちゃんの肩を背後から掴む。

 

「あ、あの…なにか……?」

「ちょいと聞きたいんだが…お嬢ちゃんたちって、姉妹?」

「そうです、けど……」

 

巨乳ちゃんに問うたつもりが、答えたのは眼鏡ちゃん。

 

「あ、やっぱり?似てるもんな。ちなみに名前は?」

「えっと……」

 

そして口籠る。ここでようやく、巨乳ちゃんが答えた。

 

「お姉ちゃんが天和で、こっちが地和ちゃん、こっちの子が人和ちゃんだよ」

「それって真名じゃね?」

「うん、私達、自分の名前を知らないの。だから、真名しかないんだ」

「そうかそうか。それじゃぁ、俺が名前をつけてあげようか」

「はぁ!?いきなり何言ってんのよ!というか、さっさと逃げたいんだから、離しなさいよ!」

 

ちっぱいの娘は元気だ。うちの妹たちとはジャンルが違うらしい。

 

「いやいや、それを聞いたらもう離してあげるからさ」

「じゃあさっさと名づけの親にでもなりなさいよ!それを名乗るかどうかはわからないけど」

「じゃぁ、決めるぜ?」

 

さて、予想が正しければ。

 

「姉ちゃんが張角、そっちの元気な娘が張宝、そんで眼鏡ちゃんが張梁」

「「「っ!?」」」

「どうだ、しっくりくるだろ?まるで、ずっとそう名乗っているように」

「どう、して……?」

「ん?」

「どうして、分かったの……?」

 

そりゃ簡単だ。

 

「だって、さっきの内緒話、聞こえてたし」

「「「 」」」

 

商売人は情報収集が得意なのさ。

 

 

 

 

 

 

「そんじゃ、ちょいと捕まえさせてもらおうかにゃー」

「待って待って!なんでちぃ達が捕まらないといけないのよ!?」

 

手をワキワキさせながら近づけば、張宝ちゃんが食って掛かる。

 

「お前ら、お尋ね者。俺、捕まえる。金、貰う。妹、喜ぶ」

「なんで片言なのよ!?」

「ま、仕事だし。それに、お前らがこの一連の乱を主導してたんだろ?」

 

太平なんとかだっけ?変な宗教みたいな。

 

「そんな事してないわよ!あれは、周りが勝手にやっただけで!!」

「そうだよー。お姉ちゃんたちは、ただ歌を皆に聴いて欲しかっただけなんだから」

「姉さんの言う通りよ!私達は何もやましい事なんてしてないんだから!」

「はいはい、言い訳は署で聞くから。大人しくついてこようねー」

 

メンドクサイなぁ。力ずくで連れてってもいいけど、あんま乱暴な事はしたくないんだよね。ほら、俺って紳士だし?

 

「お願いです!私達は本当に歌を歌ってただけなんです!」

「しつこいなぁ。じゃ、訊くが、なんでこんなに大軍となって邑や街を荒らしてたんだ?」

「それは、隠れ蓑に集まってきた乱暴者の人たちが勝手にやってただけで、私達は本当に歌いたかっただけなんです。聴いてくれる人が増えるにつれて、賊とかも混ざってきちゃって…次第に私達でも制御できなくなっていって……」

「人和の言う通りよ!私たちは別に、漢王朝を潰そうなんて思ってない!ただ、歌いたかっただけなんだもん!」

「もう1つ質問だけど、君たちの言う通りなら、なんでみんながみんな、同じように黄色い布を身に着けてるんだ?徒党を組むための目印とか、そういう類のものじゃないのか?」

「私達の服が黄色を基調としてるので、取り巻きの人たちが始めたんです。それが何時の間にか広まって、私達を応援してくれる人たちの共通意識になったというか……」

「……」

 

言っている事の辻褄が合わないという事はない。張梁ちゃんは知的な雰囲気だけど、姉2人はそうとも思えない。だというに、3人がバラバラに答えて、それでいて筋は通っている。

 

迷いが生じる。こういう時は、頭がいい人の意見を聞くに限る。限るが、ここにはいない。

という訳で、俺が採る選択肢は。

 

「いま出てっても、どこかの軍に捕まるのがオチだぞ?」

「じゃぁ、どうしろって言うのよ!ここは燃えちゃってるし、逃げ場なんてないじゃない!」

「その通りだ。という訳で、提案があるんだが――」

 

その時だった。

 

 

 

 

 

 

「おい、そこのお前!」

「んぁ?」

 

背後から声がかけられる。誰だよ、こんな時に。

 

「曹操軍の夏候元譲だ!訊きたい事があるのだが」

 

振り返れば、黒髪赤チャイナの嬢ちゃん。バカデカイ剣を抱えている。ってか夏候惇か。かっけーな。あれだろ?魏武のなんちゃら、って奴だろ?

 

「そうかい。俺は孫策軍の北郷だ。で、訊ねたい事ってのは?」

「あぁ!張角の居場所を探している!何処にいるか知らないか?」

「っ!?」

「……」

 

後ろの3人はあからさまに身体を震わせるが、俺は若干呆れていた。張角の首は1個しかないだろ。各軍でそれを取り合おうってのに、わざわざ教えると思ってんのか?馬鹿か、コイツ?

 

「聞いてどうするんだ?」

「もちろん捕らえるに決まっているだろう!」

 

ま、そうだよな。そして確信した。やっぱ馬鹿だコイツ。

 

「ん?というか、お前の後ろにいるのは誰だ!?まさか張角か!」

「おいおい、いきなり人に向けて剣を構えるなよ。怖いじゃねーか」

「質問に答えろ!お前が先に張角を捕まえたのか!?」

 

だから怖いって。

そんな彼女は一旦無視して、俺は小声で後ろの3人に問いかける。

 

「なぁ、歌手って話だが、演技も出来んの?」

「はぁ?こんな時になに言ってるのよ!?」

「出来るよ?舞台の上では、歌姫の仮面を被らないとね」

「姉さん!?」

「なるほどな。じゃぁ、その演技次第で、君らの今後が決まるんで、頑張ってくれ」

「「「……へっ?」」」

 

短い遣り取りを終え、俺は夏候惇に向かって口を開いた。

 

「こいつらは、俺の妹だ」

「なっ!そうなのか!?」

「あぁ。1年前に張角たちに捕らえられてな。こいつらを助ける為に、俺は孫策様の軍に入ったんだよ。アンタ、夏候惇さんだろ?聞いた話だと、弟か妹がいるんじゃないのか?」

「あぁ、秋蘭が……夏侯淵は私の妹だ」

「だったら分かるだろ?大事な妹たちが賊に捕まったんだ。どんな事をしてでも取り返そうとする筈だ」

「当然だ!愛する妹だからな!!」

 

何度目になるか分からない確信。やっぱ馬鹿だコイツ。

 

「ほら、3人共。この御方は、その武で有名な夏候惇様だ。挨拶しな」

 

言いながら振り返り、俺は絶句した。3人が涙を流しながら、俺に寄り添っていたからだ。

 

「夏候惇様、どうか……どうか張角を討ち取ってください!アイツ、私だけでなく、姉さんや妹に酷い事を……」

「お願いします、夏候惇将軍!ちぃちゃんと人和ちゃんの恨みを晴らしてくださいっ!」

「お兄ちゃんなら勝てなくても、夏候惇将軍だったら、必ずや……」

 

確かに演技上手いな。あとアドリブも。張宝なんか、キャラがさっきまでと全然違うし、張梁なんかお兄ちゃんって言ってきたし。

 

「私にも妹がいるからな。……あぁ、任せろ!いま行くぞ、張角っ!首を洗って待っていろ!うぉぉおおおおおおおお――――」

 

そして夏候惇は、スイッチが入ったらしく、砦の奥へと駆けて行った。

 

「お姉ちゃん、首洗った方がいいのかなー?」

 

そんな時間はありません。

 

 

 

 

 

 

「――いい演技だったよ」

「ふっふーん!ちぃ達にかかれば、あんな脳筋っぽい奴なんて、簡単に騙せるんだから!」

 

張宝は薄い胸を張る。ぺったんこ。

そしていつの間にか乾いている涙。女はずるい。

 

「ま、確かにアイツは馬鹿だな。適当に捕まえた奴を『張角だー』とか言って殺すだろ」

「あ、あの……」

「どうした、張梁ちゃん」

「なぜ、あのような事を……?」

 

不安気な瞳で見上げてくる。可愛いなぁ、もう。

 

「さっき言った通りだ。お前らは、俺の妹。だから俺が助けに来た」

「じゃ、じゃぁ……」

「あぁ、おそらくこれが、一番成功率が高い。変に逃げても怪しまれるだけだしな」

「……わかりました。姉さん達も、それでいい?」

 

末妹の問いに、2人は頷く。

 

「お姉ちゃんはいいよ。妹っていうのもなってみたかったし」

「ちぃもそれでいいわ。その代わり、最後まで守りなさいよ、兄貴!」

「よし。じゃ、改めて。俺は北郷。真名は一刀だ。知っとかないと拙いしな。こっちも真名で呼ばせてもらうぞ」

「「「はーい」」」

 

そういう事となる。

 

「じゃ、そろそろここを出よう。いい加減、限界だろ。天和、背中に乗れ」

「はいはーい」

「「きゃっ!?」」

 

天和を背中に乗せて、地和と人和を両手にそれぞれ抱える。ちょっと身体を揺らすと、背中の柔らかい感触が動いた。……素晴らしい。

 

「じゃ、逃げるぜ」

「「「おーっ!」」」

 

妹、3人追加。

 

 

 

 

 

 

あとがき

 

 

そんなこんなで#17でした。

 

 

ま、こっちの一刀くんならこうなるわな。

 

 

そして夏候惇さん、バカッコイイです。

 

 

そろそろ黄巾編も終わると思うけど、前回みたいに10話でキリ良く終わりたい。

 

 

ではまた次回。

 

 

バイバイ。

 

 

 


 
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