No.533252

IS−インフィニット・ストラトス−黒獅子と駆ける者−

トラックに轢かれそうになった女の子を助けて俺はお陀仏になった・・・。・・・って!それが本来の死じゃなくて、神様のミスで!?呆れている俺に、その神様がお詫びとして他の世界に転生させてくれると言うことらしい・・・。そして俺は『インフィニットストラトス』の世界に転生し、黒獅子と呼ばれるISと共にその世界で戦うぜ!

2013-01-18 13:43:41 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:983   閲覧ユーザー数:940

 

 

 

episode104 告白

 

 

 

 

「・・・・」

 

隼人はメガネを掛けて分厚い小説を読んでいた。

 

外ではもう暗くなっているが、まだ七時前。

 

(何か暇だな・・・何か面白いことって無いかな・・・)

 

と、思っていた。

 

明日から学校が始める。しかしその前に何か面白いことが起きないか期待していた。

 

 

 

「・・・・?」

 

すると部屋のドアの向こうから聞き覚えのある声がする。

 

(一夏と箒か・・・。だが、こんな時間にどうしたんだ?)

 

そしてピンと来て小説にしおりを挟んで机に置くと、こっそりと部屋を出た。

 

(確かにあの二人だな)

 

ドアから顔を出して一夏と箒であると確認する。

 

「・・・・」

 

隼人は少し考えて――――

 

 

(覗き見はあんまり趣味じゃないけど、あの二人の反応は楽しみだからな)

 

 

そうして二人に見つからないように隼人はこっそりと付いていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数十分前。

 

 

 

 

 

「もう冬休みが終わるのか」

 

一夏は部屋のベッドに仰向けになっていた。

 

冬の間の寝巻きは白に側面に青いラインが入ったジャージを着ているようにしている。

 

「何か長かったな・・・。気のせいか?」

 

そんな事を思っていると――――

 

 

 

 

 

コンコン

 

 

 

 

 

「はいはい。どちら様?」

 

一夏はベッドから降りてドアの前に立つ。

 

 

「わ、私だ・・・」

 

「箒か?」

 

ドアの向こうから幼馴染の声がする。

 

一夏はドアを開けると、そこに箒の姿があった。

 

一夏とは異なって紅く側面に黒いラインの入ったジャージを着ていた。

 

一夏が白式のカラーリングをイメージしたのなら、箒は紅椿のカラーリングをイメージしている。

 

 

「どうしたんだ?こんな時間に?」

 

「そ、そのだな・・・えぇと・・・」

 

箒は少し頬を赤くして視線をちらほらと動かす。

 

「お、お前と話がしたい。暇はあるか」

 

「あぁ。いいけど。ここで話すか?」

 

「い、いや、二人っきりで話したい。寒いが、外で良いか?」

 

「いいけど、ちょっと待ってくれ。上着取ってくる」

 

と、一夏は部屋から上着を取って羽織ると、部屋を出る。

 

「じゃぁ行くか」

 

「あ、あぁ」

 

そうして二人は廊下を歩いていった。

 

 

 

 

 

 

「そういえば箒は冬休みの間神社の方に行っていたのか?」

 

「あぁ。正月の間は手伝いをしていた」

 

「そうだよな。神社って正月が一番忙しいからな」

 

「まぁ、そうだな」

 

「おばさんは元気だった?」

 

「元気だった。相変わらずな」

 

「そうか」

 

「そういう一夏は正月何をしていたんだ」

 

「そりゃ家に帰って千冬姉と正月を過ごしたよ」

 

「そうか・・・。まぁ、当然か」

 

「・・・?」

 

何故か不服そうにする箒に首を傾げる。

 

「さすがに束さんは・・・帰ってないよな」

 

「そう・・・だな。そう簡単に帰れないからな」

 

「だよな」

 

「だが、電話ぐらいはしてきた」

 

「で、何て言ったんだ?」

 

「普通に新年の挨拶をしただけだった。だが近い内にまた会うと言ってきた」

 

「何をしに来るんだろう」

 

「私が知るわけ無いだろ。姉さんの行動など分からん」

 

と、不機嫌そうに言うが、どこか声に明るみがある。

 

以前ならこんな感じには言わなかった。それに束をあの人呼ばわりから普通に姉さんと呼んでいる。それだけでもかなり仲が戻ってきている。

 

「だよな」

 

「・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

(至って普通の会話だよな)

 

二人の様子を見ながら隼人は隠れては覗き、こっそりと進んでは隠れるの繰り返しであった。

 

(何か衝撃的な事って無いかな。面白みがあっていいのに)

 

そう考えながら様子を窺っていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やっぱりこの時間だと冷え込むな」

 

「あぁ」

 

二人は寮の外に出て歩いていた。

 

「・・・去年はさ、何か色々とあった年だったよな」

 

「そうだな」

 

「俺と隼人がISを動かして世界中で話題となって、IS学園に入学。それから色んな事件に巻き込まれた」

 

「・・・・」

 

「でも、俺としては本当によかったと思うよ」

 

「・・・まぁ、私もそういうのがあるな」

 

 

「箒や隼人、鈴と再会。色んな人たちと出会った」

 

「・・・・」

 

「居るとは思ってなかった輝春兄と出会って、千冬姉そっくりのマドカと出会った」

 

「・・・・」

 

「本当に色んな事があったよ」

 

「そうだな」

 

「でも、一番嬉しかったのは、隼人に勝てたことだな」

 

「ずっと目標だったからな」

 

「あぁ」

 

「・・・私も隼人に・・・一度でも勝ってみたいな」

 

「箒だって勝てるさ。きっと」

 

「そ、そうか・・・」

 

箒は頬を赤くして答える。

 

「だ、だが、その前に一夏。お前にリベンジを果たすぞ!負けたままに行かんからな!」

 

と、箒は一夏に向けてビシッ!と指を差す。

 

「お、おう」

 

戸惑いながらも返事はする。

 

 

 

 

 

 

 

(相変わらず箒はあんな感じか)

 

隼人は丸く刈られた植木に身体を隠して頭を上から出してみていた。

 

(何か捻りって言うのが無いかな・・・こうクイッと捻った事とか)

 

と、思っていると――――

 

 

 

 

 

「ほぅ。盗み聞きとはお前も変な趣味を持ったな」

 

と、後ろから聞き覚えのある声がして隼人は少しビクッと身体を震わせる。

 

「ち、千冬さん。居たんですか」

 

「さっきから居たぞ」

 

「・・・そういう千冬さんはなぜここに?」

 

「たまたま通り掛かったのでな」

 

(絶対嘘だ)

 

「私がいつ嘘を言ったか」

 

(そして相変わらず勘の鋭いことで・・・)

 

「まぁいい。隼人。少し私と付き合ってもらうぞ」

 

「え?」

 

「少し話がある」

 

「は、はい」

 

隼人は立ち上がって千冬についていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おぉ。今日の月は満月だな」

 

そして二人は空が見える広場に着く。

 

「あぁ。綺麗に丸くなっているな」

 

箒も満月の綺麗さに少し見とれる。

 

「・・・・」

 

「・・・・」

 

 

 

 

「なぁ、箒」

 

「な、なんだ?」

 

「箒は覚えているかは分からないけど、夏休みの時さ」

 

「・・・・?」

 

「篠ノ之神社の夏祭りで何か言わなかったか?」

 

「えぇっ!?」

 

箒は頬を赤くして驚く。

 

「よく覚えてないんだ。何か聞こうとしたら箒に突き飛ばされたからな」

 

「・・・・」

 

「そういえば・・・」と箒はあの時を思い出す。

 

 

 

 

(あ、あの一夏が覚えていただと!?)

 

箒は内心で狼狽していた。

 

(全然言わないから忘れていたと思ったのに!なぜこのタイミングで!)

 

 

しかし冷静になってみる。

 

(いやしかし。あの一夏が覚えているんだ。これは・・・チャンスだ!)

 

と、右手を握り締める。

 

(勇気を振り絞れ!いつも私はここで躓いている!一歩を踏み出すんだ!)

 

幸いにも周囲には誰も居ない。大声を出しても恐らく気付かれない。

 

 

 

 

 

 

「そ、そうダな。あ、あの時ハ舌を噛んだかラ、い、一夏には聞きずらかったナ」

 

何とか勇気を振り絞って言うが、緊張のあまり少し片言になっていた。

 

「あぁ。あの後何も言わなかったからさほど重要じゃないのかなって思ったから聞かなかったけど」

 

もちろん一夏は箒の片言に気付くはずもない。

 

「そ、その時は聞くものだぞ」

 

少し落ち着いたのかようやく普通通りに話せた。

 

「すまないな」

 

「・・・・」

 

何事も無いように一夏は言うので箒は少しムッとする。

 

 

「それで、何を言ったんだ?」

 

一夏は箒の真意に気付いているはずも無く、真顔で聞いてくる。

 

「そ、その・・・だな」

 

何とか言葉を出そうにも喉で留まってしまう。

 

 

(うぅ・・・。一気に出そうと思ったらあの時の二の舞だ。そ、それだけは勘弁だ!)

 

夏祭りの時の苦い思い出が蘇る。

 

「はぁ~~~~」

 

箒は深呼吸して緊張を解す。

 

 

「い、一夏!」

 

「お、おう?」

 

大声で呼ばれて一夏はたじろぐ。

 

「わ、私は・・・お、お前の事が・・・好――――」

 

 

 

すると箒の真上にあった電灯から大粒の水滴が滴り箒のうなじに落ちた。

 

「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!?!?」

 

そして物凄く冷たいものが首筋から全身に走って箒は驚いて声を裏返して飛び跳ねた。

 

「っ!?」

 

それには一夏も驚く。

 

 

「あっ!」

 

しかし箒は着地に失敗してバランスを崩して倒れそうになる。

 

「箒!」

 

一夏はとっさに箒を抱き留めた。

 

 

「な、何があったんだ?いきなり叫んで?」

 

「い、い、い、いや!?わ、わ、わ、私はべ、べ、べ、別に何も!?」

 

箒は頭の中が真っ白になって狼狽してとっさに一夏から離れた。

 

「わ、わ、私は、ただ『お前の事が好きだ!!』と言いたかっただけなんだ!!何も無ければこんな事にはならなかったんだ!」

 

と、重要なことをスラスラと早口で言い放った。

 

 

「え・・・?」

 

一夏はその言葉を聞いて驚く。

 

「箒・・・今何て?」

 

「え?な、何がだ?」

 

箒は何とか冷静になったが、あまりにも頭が真っ白になって混乱したのでついさっきの事を忘れてしまった。

 

「俺の事が・・・好きだって・・・」

 

「っ!?」

 

そして自分が言ったことを思い出して顔が真っ赤になる。

 

 

 

 

(な、な、な、何でこうなるんだ!?)

 

箒は内心で物凄く焦っていた。

 

(何でいつも普通に言えないんだ、私は!今回は一夏に伝わってもこんなんじゃ良い筈がない!)

 

焦りとある意味悲しみが箒の中を交差する。

 

 

 

「あ、う、あ・・・」

 

もはや気絶しそうなくらい狼狽して言葉すらまともに出ない状態だった。

 

「い、一夏・・・わ、私はた、ただ・・・その・・・#&%$¥*」

 

後半は何言っているのか分からない状態だった。

 

 

 

「・・・箒」

 

と、一夏は優しく箒を抱擁する。

 

「・・・い、一夏?」

 

一夏に抱擁されて箒は少しずつ冷静になっていく。その頬を赤くして。

 

「箒の気持ち・・・何となく伝わったよ」

 

「え・・・?」

 

一夏は箒を少し放して顔を見る。

 

「ちょっと分かりづらい所もあったけど、それでも伝わったよ」

 

「・・・・」

 

「俺の事が・・・好き・・・なんだな」

 

「・・・あ、あぁ」

 

箒は頬を赤くしたまま歯切れが悪く答える。

 

 

「わ、私は・・・一夏の事が・・・好きだ」

 

「・・・・」

 

「だ、だから・・・一夏。わ、私と・・・付き合ってくれるか?買い物に付き合う意味じゃなくて・・・こ、恋人として」

 

「箒・・・」

 

「だ、だが、周囲には気付かれたく無い。だから、こっそりでも良いから、たまにでもいいから」

 

「・・・・」

 

「だ、ダメか?」

 

 

 

「・・・いや、箒がそう言うなら、俺は構わない」

 

「ほ、本当か?」

 

「あぁ」

 

「・・・・」

 

箒は涙を流す。

 

「・・・ありがとう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それで、話しとは?」

 

その頃二人がいい雰囲気の少し前に、隼人と千冬は建物の陰にいた。

 

「まぁ、私個人としての質問が多いな」

 

千冬は近くの自販機でホットの微糖コーヒーを二つ購入する。

 

「まずは、私からの奢りだ。身体を温めながら話そう」

 

「ど、どうも」

 

と、二つある内の一つを隼人に投げ渡して隼人は缶コーヒーを受け取る。

 

「まずは、お前の行動だ」

 

「行動・・・ですか」

 

「・・・なぜマドカを気に掛ける?」

 

「・・・・」

 

「お前が誰かに気にかける時は、何らかの理由があるからな」

 

「ですね」

 

千冬は缶コーヒーを開けて一口飲むと、隼人も缶コーヒーを開けて一口飲む。

 

 

「だが、マドカは亡国機業のメンバー。つまりは敵だったんだぞ。なぜ敵のあいつの事を気に掛けるんだ」

 

「・・・気に掛ける。と言うより手を差し伸べている、と言うところですかね」

 

「・・・・」

 

「千冬さんの遺伝子から作られたクローン。そして千冬さんを倒す目的を持って生まれた。そんな事をして何を得ますか?」

 

「・・・何も無いな」

 

「えぇ。そしてマドカはあなたに敗れた。だから生きる意味を持たない。ただそれだけで彼女は死のうとした」

 

「・・・・」

 

「そんな彼女に俺は一つのチャンスを上げたのです。考えを改めて新しく生きて貰う為に」

 

「・・・そうか。やはりあいつの体内のナノマシンは・・・お前が止めたのか」

 

「えぇ。バンシィのコントロールジャックでナノマシンを全て完全停止させました」

 

「・・・・」

 

「それでも彼女は生きようとはしなかった。だから、彼女にアドバイスを上げたのですよ」

 

「・・・お前はなんと言ったんだ。少なくともあいつの気が変わるほどだからな」

 

「今はまだ言えませんよ。その時では無いのですから」

 

「・・・何を企んでいる」

 

千冬は隼人に警戒の目を向ける。

 

「何も。ただ、彼女が自分の意志で答えを見つけさせるため」

 

「・・・度々あいつに話し掛けてきたのは、ヒントか何かをあいつに教えていたのか」

 

「ヒントと言うより、きっかけですよ。似たようなものですが」

 

「で、あいつにテストパイロットをさせたのも、その一環だと言いたいのか」

 

「そう見方によっては確かにそうしているように見える。まぁ、事実ですけどね」

 

「・・・・」

 

「いつかは分かりますよ。手応えはあったのですから」

 

 

 

「お前は昔から分からんな。考えていることも、その真意も・・・お前の正体も」

 

「何を言っているのですか?」

 

 

 

「前々から疑問に思っていたのだが――――」

 

千冬はコーヒーを一口飲んで喉を潤す。

 

「お前は年の割には知りすぎている。知らないはずの事をスラスラと言える。まるで最初から知っているような口ぶりもな」

 

「・・・・」

 

「なぜマドカの正体を知っている?なぜマドカに監視用のナノマシンが注入されていると知っていた?」

 

「・・・・」

 

「まるで別の人生を歩んで来た。だから知っている事が多い」

 

「・・・・」

 

「隼人。お前は何者だ」

 

 

 

「・・・さすがにそれは考えすぎなのでは?」

 

隼人は半分を当てられても、別に動揺せずに答える。

 

「・・・・」

 

「偶然ですよ」

 

「それで全てを片付けられると思うのか」

 

「・・・・」

 

「他の専用機持ちの話しでは、お前はあのアンノウン・・・バインドの事を知っていたような事を示唆していたな」

 

「・・・・」

 

「クラス対抗戦でもまるで襲撃されることが分かっていたかのように先に行動を起こしていた」

 

「・・・・」

 

「学園祭でも亡国機業の襲撃があった事も分かっていたように動いていた」

 

「・・・・」

 

「それでも、偶然と言うのか」

 

「えぇ。まさか千冬さんは俺が一度生まれ変わったから前世の記憶や経験を持っているなどと非科学的で根拠など何所にも無い。そんな空想話を言いたいのですか?」

 

「・・・・」

 

「あなたにこう言うのは気が引けますが・・・馬鹿馬鹿しいですよ」

 

「・・・・」

 

千冬は少しムッとして片方の眉毛を少し上げる。

 

「少し言い過ぎましたね。ですが、ただの偶然。それだけですよ」

 

「それで言い逃れると思うのか」

 

「・・・・」

 

「例え視線が泳いでなくても、お前の言葉には裏があるぞ」

 

「・・・・」

 

「・・・・」

 

 

 

「話はそれだけですか?」

 

「・・・・」

 

千冬は少しして――――

 

 

 

「・・・あぁ。私からの話は終わった」

 

これ以上問い詰めても平行線のままなので、千冬は諦めた。

 

「それでは、お休みなさい。また明日会いましょう」

 

そうして隼人は頭を下げて千冬に挨拶し、寮に戻って行った。

 

 

 

 

 

 

(隼人・・・お前は何を・・・)

 

千冬は内心で呟き、隼人の背中を見続けた。

 

(何を隠している・・・。決して口が裂けても言えない何かがあると言うのか・・・)

 

思えど思えど、答えが出るわけではない。

 

「・・・・」

 

千冬は右手を握り締めて缶コーヒーを握り潰した。

 

「いつかは話を聞かせて貰うぞ」

 

と、呟くが、周囲には誰も居ない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 
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