No.524274

真・恋姫無双呉ルート(無印関羽エンド後)第58話

海皇さん

 ようやく更新となりました。
 日常生活の忙しさから更新がおろそかとなってしまい真にお詫び申し上げます。
 今回は揚州攻略戦のラスト、会稽の戦いとなります。
 で、これが今年最後の投稿となります。続きは新年にでも書かせていただきたいと思います。

2012-12-28 17:01:35 投稿 / 全7ページ    総閲覧数:2542   閲覧ユーザー数:2357

 劉繇軍の奇襲から約二時間後、何とか準備を終えた俺達は、会稽に向けて進軍を開始した。流石に奇襲による士気低下は避けられなかったものの、何とか行軍できるようになったのは良かったというべきか・・・。

 

 「ねえ冥琳、流石にもう奇襲は来ないわよね?」

 

 「さあな、流石にもう来ないとは思うが・・・、敵の考えまでは分からんからな」

 

 「あっそ・・、全く心臓に悪い軍ね、劉繇軍は」

 

 敵軍が居る会稽までの行軍中、雪蓮と冥琳は渋い顔でそんなことを話していた。

 

確かにさっき奇襲を受けて恋が重症を負って戦線離脱したんだから、警戒もしたくなる。

 

しかも連中は毒矢を持っている。掠っただけで死に至る猛毒が塗られた矢を、雨あられのごとく撃ってくるのだ。下手をしたら敵将と戦う前に死にかねない。

 

俺と愛紗もいつ奇襲が来てもいいように気を張ってなければいられない程だ。

 

「ご主人様、どうか私の傍から離れぬように・・・」

 

「分かってる、けど、実際奇襲なんてやってくるの?もう会稽まで直ぐそこだし、流石にもう仕掛けてこないんじゃあ・・・」

 

「そう油断してると、さっきみたいにやられるわよ。いくら戦場に近いからって、いえ、だからこそその油断をついてやってくるかもしれないのよ?油断大敵よ、一刀」

 

「雪蓮の言うとおり・・・・、と言いたいところだが、どうやらその心配は無いらしい」

 

雪蓮の言葉に続けて冥琳はそう言うと前方を指差す。俺達が前方に視線を向けると先行していた斥候の一人がこちらに向かってくるのが見えた。どうやら敵の妨害を受けることは無かったらしい。

 

「申し上げます!!敵軍、この先の荒野にて集結しております!!その数およそ6万!!」

 

「この辺りに敵兵は?」

 

「今のところ発見できません。恐らく伏兵はいないかと」

 

「分かった、御苦労」

 

 冥琳の言葉に兵士は頭を下げるとそのまま下がって行った。

 どうやら敵の伏兵はいないらしい。

 とりあえず伏兵の危険が無くなったことに関しては喜ぶべきなんだろうが・・・。

 

 「・・・どうやら伏兵は無いみたいだね、雪蓮」

 

 「そうね、どうやら連中も本拠の会稽の前に兵力を集中させているようね。だったら伏兵を気にせずに闘えるじゃない」

 

 「ですが敵兵が集まっていると言う事は連中も総力戦を挑んでくるでしょう。油断は出来ません」

 

 「関平の言うとおりだ。気を引き締めていかねば伏兵が居なくてもやられかねないぞ、雪蓮」

 

 楽観的な意見の雪蓮を、愛紗と冥琳は交互にたしなめる。

 劉繇軍もさすがに此処まで負け続けていれば、既に後は無いだろう。ここからは全力でくるはずだ。

 窮鼠猫を噛むで此方がやられてしまっては元も子もない。此方も気を引き締めるべきだ。

 無論雪蓮もそのことは分かっているのか楽観的な笑みを引っ込めて真面目な表情に変わる。

 

 「分かってるわ。もう後が無い以上、連中もどんな策を弄してくるか分かったもんじゃないからね。こちらも気を引き締めて行くわよ」

 

 「そうしてくれ。もうじき敵軍の待つ戦場に到着だ」

 

 冥琳の言葉に俺達も気を引き締める。

 もうすぐ会稽、敵の待ち構える戦場だ。

 史実の会稽は確か王朗の領土であり、孫策に呉郡を追われた厳白虎が逃げ込み、最終的に王朗は敗北し、孫策は揚州を平定したとのことである。

 もっとも揚州平定戦の時期が思いっきりずれまくっている今の状況では戦況もどうなるか分かったものではないが・・・。

 

 そうこうしている内に、軍勢が停止した。そして、俺と愛紗は目の前の戦場に目を向ける。

 

 目の前に広がるのはまばらに木々が立ち並ぶ広大な荒野。

 

 そしてその先にあるのは、劉の文字が描かれた旗を掲げた紺の鎧を纏った大軍勢。

 

 此処が会稽、揚州攻略戦最後の戦いの舞台だ。

 劉繇side

 

 「ようやく来たか。待ちくたびれちまったぜ」

 

 自身の愛馬に乗った劉繇は、目の前に広がる赤い軍勢を見回す。

 その隣には輿に乗った王朗が疲れたような表情で孫呉の軍勢を見ている。

 

 「・・・できれば、ここに来る前に潰したかった・・・」

 

 「はっ、今更んな事言っても始まらねえだろうが。どっちみち孫策は潰す。それが遅いか早いかの違いでしかねえ」

 

 「・・・・・」

 

 王朗は「何暢気なこと言ってるの」と言いたげな表情で劉繇を見ている。

 だが劉繇の言葉にも一理ある。

 今更作戦の失敗を嘆いたところで始まらない。

 今は目の前の戦に集中するべきだ。

 

 「んで、束沙。仕込みは終わったか?」

 

 「・・・問題ない、既に終了。あとは連中が来るのを待つのみ」

 

 「はっ、そりゃ頼もしいなオイ」

 

 劉繇はニッと笑みを浮かべて自分の参謀を褒める。王朗もまんざらではないのかかすかに笑みを浮かべた。

 

 「劉繇様!敵軍から単騎でこちらに出てきた将が!!どうやら孫策のようです!!」

 

 「・・・あ?孫策だ?一体何の用だってんだ?」

 

 太史慈の報告に劉繇は胡乱な表情を浮かべる。王朗は元の無表情に戻ると、劉繇に説明する。

 

 「・・・おそらく舌戦・・・。私達を責めて自分の士気を上げる気・・・・。どうせ今までの戦術が卑怯とか何とか言うつもり・・・・」

 

 「・・・はあ~・・・。ンなことするためにわざわざ出てきたのかよ・・・。アホか孫策は」

 

 王朗の解説に劉繇は思いっきり溜息を吐く。

 今までの戦いで自軍がまともな戦いをしないと分かっているはずだ。なら、舌戦などやっている間に狙い撃ちにされる可能性位考えていそうなものである。

 それでも舌戦を行いたいというのは、こちらの不意打ちを防ぐ自信があるのか、それともただの馬鹿なのか・・・。

 

 「まあいい、連中に付き合ってやるのもおもしれえか・・・。んじゃ、望みどおり舌戦に付き合ってやりますかね。精々向こうの言い分とやらも聞いてやるか」

 

 「・・・不意打ち、やる・・・?」

 

 「んあ?いい。まあ念の為兵を出せるようにしとけや」

 

 「・・・分かった」

 

 王朗は無表情のまま、劉繇の命に従った。それを確認した劉繇はニヤリと好戦的な笑みを浮かべた。

 

 「さーて、孫伯符、一体どう出るのか。ちと見てきますかね」

 

 劉繇は馬を前進させながらそう呟いた。

 

 一刀side

 

 「・・・やっぱり雪蓮を舌戦に行かせるの止めたほうが良かったんじゃあ・・・」

 

 「そういわれましても、もう行ってしまったものをどうこう言っても仕方ありません。無事を祈るしかないでしょう・・・」

 

 愛紗はそう言ってくるが俺としては心配でならない。

 何が心配かと言うとただいま舌戦に向かった雪蓮の事だ。

 舌戦で士気を高めたいと言うのは分かるけど、それも時と場合によりけりだ。

 特に今戦っている相手は不意打ち上等の劉繇軍だぞ?マトモに応じてくるわけが無いじゃないか・・・。

 

 「いや、そう心配することは無いと思うぞ?北郷殿、関平」

 

 と、後ろから冥琳が俺と愛紗に返事を返してきた。その表情は思ったよりも心配ではなさそうだ。

 

 「ん?冥琳、どういうこと?」

 

 「貴女にしては楽観的ですが・・・、大丈夫だという確信があるのですか?」

 

 冥琳の少し楽観的な態度を疑問に思った俺達は、冥琳に質問する。冥琳は苦笑いしながら眼鏡を指で押し上げる。

 

 「いや、敵の総大将がどうやら雪蓮の誘いに乗ったようだからな」

 

 「「へっ?」」

 

 冥琳が指差している方向に目を向けると、遠くて分からないものの、馬に乗った黒い服の男が雪蓮と向かい合う形で睨みあっていた。恐らくあれが劉繇なんだろう。

 

 今まで奇襲ばかりやっていた敵の総大将が自ら堂々と姿を現したのに俺と愛紗は若干驚いていた。

 

 「どうやら雪蓮の誘いにわざわざ乗ったらしいな。最も何か罠を張っている可能性もあるのだが・・・」

 

 「ちょっ!?大丈夫なの!?」

 

 「本人が大丈夫だと言っていたが・・・、まあこんな荒野で待ち伏せなど出来るはずはないから心配ないだろうが・・・」

 

 冥琳は笑いながらそう言っていたが、やはり何処か心配そうな雰囲気だった。

 かく言う俺達も雪蓮が心配でならないんだが・・・。

 

 雪蓮side

 

雪蓮は目の前の男を睨みながら観察した。

 服装は厳白虎、太史慈と同じ黒革でできた服、髪の毛は茶髪に一部青い髪の毛が僅かに生えている。

 恐らくこの男が劉繇だ、孫策は直感でそう断じた。

 

 「一応聞いておくわ、あんたが劉繇で間違いない?」

 

 「そうだ、間違いなく俺が劉繇だ。んで、その変態染みた服装、てめえが孫策に間違いないな?」

 

 「変態染みたって・・・、・・・・厳白虎、一体どういう伝え方したのよ・・・。まあそれはともかく!私は間違いなく孫策伯府よ」

 

 劉繇の言葉に若干キレながら雪蓮は自身の名を名乗る。孫策の名を聞いた劉繇は馬鹿にしたように鼻を鳴らした。

 

 「ハッ!人の庭を荒らす不届き者の大将がどんなモンか拝んで見たかったが、厳白虎の言うとおりとんだ痴女じゃねえか!大方兵士の士気もその服装で上げてんじゃねえの?」

 

 「あ~も~!!厳白虎といいあんたと言い同じことを言って!!違うっての!!ただ暑いから薄着してるだけだっての!!大体私達が此処に攻めてきたのもあんたらが先に手を出したからでしょうが!!」

 

 「よく言うぜ。どうせ俺達が手を出したからその報復ってのは単なる口実だろうが」

 

 劉繇は雪蓮の言葉を軽く受け流しつつ薄ら笑いをしながら雪蓮を眺める。雪蓮はその薄い笑みを見て直ぐに表情を引き締める。

 

 「随分余裕ね・・・。ひょっとしてまだ隠し玉でも持っているのかしら?」

 

 「さーて、ねえ。持ってるかもしれねえし持ってねえかもしれねえ。俺にゃわかんねえよ」

 

 「・・・ま、いいわ。あんたみたいな卑怯者、どんな策が来ても叩き潰すだけだから」 

 

 雪蓮はそう言って劉繇を睨みつける。が、劉繇はその表情に全くひるまず、一瞬キョトンとした表情を浮かべると、突然腹を抱えて大笑いし始めた。

 その笑い声はまるで先程の雪蓮の言葉を嘲笑っているかのようであり、雪蓮の怒りに油を注ぐこととなった。

 

 「!!何がおかしいのよ!!」

 

 「カッハハハハハハハハハハハハ!!こ、これが笑わずに居られるかよ!!卑怯者?それって俺のことかよ!?ハッ!!やっぱテメエはお目出度いお子チャマだな!!孫策ちゃんよお!!」

 

 「な、なんですって!?」

 

 劉繇の返答にますます雪蓮は激昂する。それを見ながら劉繇は嘲るように笑う。

 

 「これは戦、一対一の決闘じゃねえんだぜ?戦ってのは味方の被害をどれだけ減らして勝つかってのが基本だろうが?その為に敵潰すための策を練るんだろうが。俺はその策を実行してるだけだぜ?それを卑怯とほざくのは負け犬以外の何者でもねえな」

 

 「ぐっ・・・、言わせておけば・・・」

 

 劉繇の嘲る言葉に雪蓮は唇をかみしめる。

 確かに奴の言っていることも分かる。戦場は一対一の戦いではない。

 兵士達が集団で戦い、殺し合うのが戦場だ。将の役目は、いかに自軍の兵士達の犠牲を少なくし、敵に勝利するかにある。

 勝利はしても自軍も被害が甚大、では敗北と同じだ。だからこそ将は、軍師は兵士の犠牲を少なくするために策を練るのだ。

 

劉繇の戦術も、そう考えれば実に効果的だ。

 

 奇襲、兵站を絶つ、そして焦土作戦・・・。

 

 どれも防衛戦という観点から見れば何処までも効果的、かつ有効な一手だ。

 

 劉繇は続ける。

 

 「どうせテメエにとって戦なんて決闘と大差ねえんだろ?知ってるんだぜ?

 

 テメエが戦場で人殺して興奮する殺人狂だってな。テメエにとっちゃ戦場なんて遊び場と同じなんだろ?そりゃあ遊んでる最中に邪魔されちゃあ、嫌になるよなあ?

 ああ、んなら俺は邪魔者か?そりゃあ悪かったな、ハッハハハハハハハハ!!!」

 

 「・・・!!」

 

 再び哄笑を上げる劉繇に、雪蓮は唇をかみ締めて鋭い視線を向ける。

 

 確かに自分は戦場で血を見ると興奮する体質ではあるが、戦場を遊び場だと考えたことなど一度もない。

 

 戦場で死んでいく自分の兵士達を見るのは身を斬られるようにつらい。

 

 自身が殺した敵兵に対する鎮魂の気持ちも持っている。

 

 初めて戦場で人を殺したときの恐怖は今でも覚えている。

 

 断じて殺人を楽しいと感じたことはない。

 

 「まったくこんな殺人狂に引き回される兵士どもも哀れだぜ!!なら俺がこいつからさっさと解放してやんないと・・・・「・・・言いたい事はそれだけ?」・・・・あん?」

 

 話を遮って放たれた言葉に、劉繇は話を止めて雪蓮に視線を向ける。

 雪蓮の眼光は鋭く、その殺気は衰えるどころかさらに強くなっている。

 

 「さっきから聞いていれば好き勝手言って・・・。私が殺人狂?言ってくれるじゃない。でも生憎と私は人殺して楽しむような趣味は無いのよ。

 むしろあんたこそ、奇襲やら毒矢やら使って私達の兵士達を弄んで、殺しまくるのを楽しんでるんじゃないの?」

 

 雪蓮の挑発に、劉繇は笑みを引っ込めると、苦々しげな表情で溜息を吐いた。

 

 「ハッ、生憎こちらにゃ楽しむ余裕はもうねえよ・・・。ま、いい。

 もうテメエらと付き合う余裕も暇もねえ。ここでとっとと潰してやらあ」

 

 「あっそ、私もいい加減あんたと付き合うのも飽きてきたし、ここでさっさとケリを着けてあげるわよ!」

 

 劉繇の言葉を聞いた雪蓮は、ニヤリと好戦的な笑みを浮かべ、劉繇を挑発する。

 

 そして両雄は、自らの軍勢に向かい、高らかに号令を出す。

 

 「我が孫呉の精鋭達よ!!遂にこの時が来た!!

 

 愚かなる謀反人劉繇に誅を下し、この戦いに終止符を打つ時が!!

 

 そして我等孫呉の悲願たる揚州平定の時が!!

 

 ここまで来るのに犠牲となり、散って逝った多くの同胞達の為に!!

 

 そして我が孫呉を築きあげし始祖、孫文台の悲願を遂げんが為に!!

 

 いざ進め我が朋友達よ!!我等の勝利の凱歌を奏せ!!」

 

 

 「我に付き従う我が軍勢よ!!今こそ決戦の時!!

 

 愚かにも我等の領地を冒し、餓狼の如き野望を遂げんとする孫呉に誅を下す時!!

 

 この揚州を、この大地を守護せんがために散って逝った幾多の英霊の為に!!

 

 目の前に立ちふさがる愚かなる狗共を蹴散らし、我等の力を示すために!!

 

 いざ戦え我が朋友達よ!!奴等の血をもってその罪を購わせるがいい!!」

 

 

 

 「「全軍、攻撃開始せよ!!!」」

 

 

 

 雪蓮と劉繇の号令に、大地が震えるほど巨大な鬨の声が響き渡った。

 

 

 

 一刀side

 

 遂に劉繇との最後の戦いが始まった。

 

 孫呉の軍勢は雪蓮と劉繇の号令が終わると同時に鬨の声を上げて突撃を開始した。

 

 劉繇軍は反対に大量の矢を雨霰のごとく放ち、敵を寄せ付けない防御的な戦法で来ている。近づいた敵には重装備兵の長槍で串刺しにされるという厄介な布陣だ。

 

 が、それも今は通じない。

 

 『ドオオオオオオオオオオオオン!!!』

 

 と、俺の耳に凄まじい爆音が響き渡る。俺が愛紗と一緒に開発した焙烙玉の爆発音である。

 この簡易型手榴弾ともいえる火薬兵器は、爆発時に凄まじい音を出す。

俺は戦場から離れた場所にいるものの、それでもこの耳にははっきりと届いている。

 これが至近距離ならば、とてもではないが戦いどころではない。

 さらに焙烙玉には鉄片や石の破片が大量に詰められているため、爆発の瞬間にそれらが飛び散り、兵士達に傷を負わせる。

 無論死ぬことはそこまで無いだろうが、傷を負ってしまえば戦闘にも支障が出る。

 さらにこれが最後の戦いと言うことで今回は遠慮なしに大量の焙烙玉を投げ付けている。

 敵はもはや攻撃どころではないだろう。

 

 「これは、案外いけるかな?」

 

 「さて、どうでしょうね。既に手の内を見せている以上、何らかの対策を取ってくると思うのですが・・・」

 

 俺の問いに愛紗は疑問げな表情で戦場を見る。

 

 確かに今のところ俺達の軍が圧倒的に優勢だ。焙烙玉で混乱している敵の先鋒を打ち崩して破竹の勢いで圧倒している。

 だが相手はあの劉繇軍、何か仕掛けてくるかもしれない。

 そう考えて、俺達は用心している。

 と、何故か前線に居たはずの雪蓮がこちらに戻ってくるのが見えた。

 その表情は何処か不満そうであったが・・・。

 

 「あれ?どうしたの雪蓮。てっきり前線で戦ってると思ったんだけど」

 

 「そうしたかったんだけどね、劉繇の奴が下がっちゃったし矢の攻撃も激しいから此処は祭達に任せようって思ったのよ。ま、毒矢喰らって死ぬなんて馬鹿馬鹿しいし」

 

 「それが賢明です。劉繇軍も今は押されていますが、何をしてくるか分かりません。用心しておくに越したことはありません」

 

 「そうだけど、にしても劉繇軍手ごたえ無いわね~。あの啖呵は単なる強がり?それとも焙烙玉の攻略法考えてなかったの?」

 

 雪蓮の不思議そうな声は、俺自身同意見だ。

 確かに焙烙玉の影響もあるかもしれないが、実際焙烙玉は一度見せている。それなら何らかの対策法を思いつきそうなものだが・・・。

 

 「・・・何か、あるのでしょうか?」

 

 「・・さあね」

 

 愛紗の言葉に答えながら、俺は戦場の行く末を見守っていた。

 

 

 

 劉繇side

 

 「全く、とんでもない武器だぜ。俺の自慢の重装兵がご覧の有様じゃねえかよ」

 

 「・・・確かに、厄介」

 

 「劉繇ちゃんから聞いてたけど凄い音ね~」

 

 そのころ劉繇は後方に退き、自分の同盟者である厳白虎、王朗と共に戦場の状況を見ていた。

 現在の戦況は孫呉が有利だ。劉繇の奇襲の時に使ったあの謎の兵器に自軍は攪乱され、その隙をついて孫呉兵に倒されている。

 

 「・・・で、束紗、対策法はちゃんとあるんだろうな?」

 

 「・・・あれなら問題ない。計画した策で何とかなる」

 

 「ん、だけどそろそろヤバいぜ。早く手を打たねえと・・・」

 

 「・・・もう始まる。安心していい」

 

 王朗は劉繇に向かって笑みを浮かべてそう言う。その表情は、間違いなく勝てる、と劉繇達に告げていた。

 

 

 戦いはまだ、始まったばかりである。

 

 

 

 あとがき

 

 どうも、まただいぶ遅れた更新となってしまいました。

 

 もうだいぶ私のことを忘れている方もいらっしゃるでしょうけど・・・。まあ例の世界滅亡前に終わらせたいとは思っていたんですけど、ね・・・。

 

世界終わらなくてよかった・・・。まあどうせデマなんでしょうけどね。

 

あと一部修正を。

 

 本当は戦場を合肥にしていたのですが、よくよく見たら合肥では思いっきり会稽から離れていましたので、合肥は修正して会稽の戦いに変更いたしました。

 

 読者の方には誠申し訳ありません。心よりお詫び申し上げます。

 

 何とか今年中に更新でき、本当にホッとしております。

 

 次回は恐らく来年になると思います。出来る限り早めに仕上げるつもりですが、現実での事が忙しく、どうなるかは分かりません。

 

 では皆さま、どうかよいお年をお過ごしください。

 

 

 


 
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