No.518931

神殺しの頂点と紅闇の皇と破界神の始まり 最終話

さん

凄まじく、長くなった。
当たり前だけど、ハッピーエンドに終わったぜ!(微だけど空×空亡)
紅夜の影がちょっと薄いかな……でも、やっぱり空亡ちゃんのことを紅夜が一番思っているよ!

次からはいよいよ本編に戻るぜ!……更新は遅くなると思う

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2012-12-15 20:18:52 投稿 / 全7ページ    総閲覧数:613   閲覧ユーザー数:581

それは、常夜 空亡という名を付けて少し経った時のことだ。

空の協力(とは言ってもそれが頼り)でくうちゃんの本当の両親を探すことにした。

状況が状況で、くうちゃんのこともあるが一緒に暮らすことは難しいと思うが、せめてお互いの安否を確認し合えることでどちらも安心させようと考えた結論だ。

 

俺は小走りに廊下を走る。

さきほどまでくうちゃんを見ていたが突如、空からくうちゃんの両親のことが分かったと念話で伝えてきたのだ。

俺はくうちゃんの親がどんな人なのか想像を膨らませなせながら、空の部屋を空けた。

空の表情は複雑そうに歪んでいた。

 

ーーー空?

 

ーーー…………

 

空は書類を片手にこちらに視線を向けて手招きをする。

俺は疑問に思いながら、空に近づき空が持っていた書類を見せてもらった。

 

ーーー空亡ちゃんの生まれた星の科学は発展していて、望めば寿命を長くして生きることができる

 

羅列されている文章を声を上げながら読んでいく。

空亡ちゃんの家庭は、とある出来事から株に大成功を収め、同時に親が社長をしていた会社も大手企業と契約することで、急成長を遂げたそうだ。

空亡ちゃん以外にも、男女一人ずつ子供が生まれている。

一見すれば、不自由なく生活が出来る理想的な家庭だ。

 

だが、頭の中に疑問が浮かんだ。

子供がいることは分かった空が持っているのは、間違いなく戸籍が書かれた書類だ。………なのに、なんでその中にくうちゃんがいない……?

生まれたことはくうちゃん本人が証拠となるが、なんで……いない。

本当ならくうちゃんを含めて女二人、男一人になるのに……。

 

ーーー売ったんだよ。

 

空は吐き捨てるように呟いた。

 

ーーー生まれてすぐ、空亡ちゃんの力は完全な物だった。それに目を付けたどこぞの組織は、くうちゃんを高い値段で親に交渉したのさ、更に自分たちの輝かしい未来を約束されてね。

 

……えっ?

 

ーーー子供なんて、親が健康体でいれば幾らでも作れるものさ

 

俺は空から感情の入っていない声を呆然と聞くことしかできなかった。

口の中が、急激に渇いていく。

頭の中に入ってきた情報を拒絶するように目の前の光景がぐるぐるぐるぐる回る。

 

ーーーこれも、世界……この親としては幸せなのさ

 

ふざけるなよっ。

自分の子供を売っておいて掴んだ幸せなんてーーー

 

ーーーそれを決めるのは、この親だ。君が決めるんじゃない

 

怒鳴り散らそうとしたのを読んでいたように空は冷たい声を放つ。

 

ーーー悪いことをしたから、そいつに罰が下される……っていうのは偶然が生み出した現象、人はそれを天罰だと言うが、そんなことが本当の天罰ならば、この世に悪は栄えないよ。

 

だとしたら、売られたくうちゃんという個人存在は一体何のためにこの世に生まれたんだ!?

神を殺すためか!?

売られるためか!?

そんなの、そんなことは……生贄(・・)じゃないか!!!

 

ーーー君がもし、いますぐこの親の元へ言って説教、または気持ちを入れて殴っても何も変わらないよ。なぜならこの家族は空亡ちゃんを自分の意思で売る道を選んで、事実

 

 

 

 

ーーーーー幸せを掴んだから。

 

 

分かったよ。

お前も心底では怒っているだろう。

さっきから目つきがナイフのように鋭くで落ち着かない様子だもんな。

 

俺とお前が考えていることは一緒だ。

でも、お前は動かないだろう。それは神としての立場があるかだろう。

だったら、俺が動いてやる。

俺はお前の様に神性を持っているが、完全に封じることもできるしな、今度空ちゃんに言ってやろう。

 

ーーー俺で良ければ、お前のことを一生守る親になっていいかなっと

 

神殺しの頂点だろうが、誰にだって幸せに生きる権利はあるんだ。

だから、くうちゃんの幸せを造ることを俺は自分に誓った。

 

 

 

ーーー何かが、俺の頭を過った。

 

『どうかしたのかい?紅夜くん』

 

白と黒が均等に混ざったような全身を覆い隠すまで伸びた長髪で、全ての色と言う色が混ざり合い混沌の毒々しい翡翠色をした瞳を持つ『アザトース』はその手に持っていた杯の手を止めた。

 

「………嫌な予感がしたんだ」

「なるほど、流行りの電波を受信したのですね」

 

くすりっと面白そうに口を歪ませたのは黒い燕尾服に漆黒の瞳と髪をした長身の青年『ニャルラトホテプ』だ。

 

「んっ、あっ……ねぇ~紅夜ちゃん~~お姉ちゃんと吞みましょう~~」

『………ねぇ、夫である』『僕は?』

 

凄まじく酒臭くなった彼女は、この世とは思えないほどの妖しい雰囲気を醸しながら俺の肌に触れてくる。

吐かれた息からは、陶酔してしまうような甘い香りが鼻孔を燻るが、慣れたのでこれを無視。

隣には寂しく縮こまりながら幾多の年齢層の男女の声が混ざり合ったかのような不協和音の声を零す少年の様な容姿をした『ヨグ=ソトース』はちょっと涙目で妻である『ジョブ=ニグラス』に声を掛けたが無視された、乙です。

 

「ニャルラトホテプさん……どこでそんなメタな発言を知ったのですか?」

「ふっ、私の幾つもの名を持つ者が教えてくれるのですよ」

 

あー、そういえばこの邪神、かなりの数の名称があったな。

這い寄る混沌とか、闇に吠えるものとか、膨れ女とか……なにせ、千の顔を持つ神だもんな。

色々な所で冷笑しながら、周囲を混沌させ破滅させるこの邪神はいろんな情報を持ってそうだ。

 

「あっ、ヨグ=ソトースさん、あなたの力でちょっと空の様子を見てくれまんか?」

「ねぇ~~、私は無視なの~」

 

酔っ払いを相手にすると凄まじく面倒なことになることは既に学習済みなので俺は完全無視の方向だ。

ヨグ=ソトースは、あらゆる次元と時空を超越し、全てを知る存在だ。

故にそれは全ての存在(異例はあるが)と隣接し、全てを見ているため。彼は過去現在未来……全てを知ることが出来るチート邪神だ。っていうかスケールがデカすぎて俺もあまり彼のことを理解できてないが、互いに顔合わせするくらいは仲がいいだろう……っと俺は思っている。

 

『………』『面白いことになっているね』

 

ヨグ=ソトースさんは虚ろな瞳を少しだけ細めて口元を尖らせた。

 

「……どんなことに?」

『うん』『まず破壊神は捕縛されて』『君が大切していた神殺しの頂点の姿が見当たらないね』

「……マジですか?」

『嘘を付くメリットないよ』

 

俺はその場で急いで立ち上がった。

 

『ありゃ、行っちゃうの?』

「すいません、アザトースさん。また誘ってくれると嬉しいです」

『了解、出来れば君がヌギル=コーラスとして来てくれるともっと嬉しいね』

「………すいません」

 

盟友と強制的に結ばれた絆、やることなすことは人の害を与えるものの、相談などは親身に聞いてくれるいい邪神達だ。

俺は彼らから譲られた白と黒の大剣を取り出す。

それは、かつてとある星の大陸が一つで合った時、その領地を奪い合い相打ちとなりその屍から生み出されたこの世に一つしかない大剣であるーーー『白の虐殺(ヴンヴロト)』と『黒の狂気(ミイヴルス)』を握り、虚空へ交差するように斬る。

 

「お先に失礼しますー!」

 

彼らが軽く手を上げることを確認すると、俺は急いで斬った空間の中に入り込む。

深淵を思わせる漆黒の空間の中を走り抜け、直ぐに空とくうちゃんがいるはずの星へ着いた。

 

 

「………なんだよ。これ」

 

俺は目の前にある景色にただ茫然とした、クレーターだ。

空や俺達が住んでいた家を中心に超巨大なクレーターが広がっていた。

そして、そこには白い羽を無様に散らして、血池を造っている天使たちだ。

 

「---空ぁ!!」

 

俺はその場を駆け微かに空の気配がする所まで走った。

空の気配は見つかったが、俺が見たのは血だらけの鎖の塊のようなものだった。

 

白の虐殺(ヴンヴロト)黒の狂気(ミイヴルス)!!」

 

白の大剣と黒の大剣は輝き鎖に斬撃を加えるが火花を散らすだけで、その鎖はびくともしない。

俺は歯を食い縛りなら、その鎖に乱撃を加えるが結果は同じで中にいるであろう空を呪縛を解くことが出来ない。

 

「………紅夜っ?」

「空、大丈夫か!?」

 

今にでも消えそうな掠れた声だが、それは空の声だ。

おれは白の虐殺(ヴンヴロト)黒の狂気(ミイヴルス)を粒子に戻して空を縛る鎖を掴む。

 

「ごめん………空亡ちゃん、守れなかった…っ」

「っーーー!!」

 

いつもの空とは想像できないほどの悲痛と嗚咽が混じった声だ。

そして、ヨグ=ソトースさんの言っていた通り、くうちゃんはこの場にいない。ーーー攫われたのだ。

そして、次に起きることはくうちゃんの”死”。

 

「くうちゃんがどこに攫われたのか分かるか!?」

「無限神が管理している世界だと思う……早く行って」

 

空が注意していた無限神……その世界がどこが分からないが、神として有名なら直ぐに分かる。

俺は念話で直ぐにティシフォネに連絡して捜索を依頼する。

 

「お前は……」

「あとで絶対に行くっ!」

 

バキッバキッと鎖を引き千切る様な音が中から聞こえてくる。今この時を空は戦っているんだ。

無限神……確か№7だとか。強いだろう、だけど……

 

「……あと、紅夜」

「……なんだ」

 

鎖の中から腕が飛び出して俺を掴んだ。

俺をそれに力強く握り返した。

直後に流れてくる情報の流れ、ここでなにが合ったかを全ての情報を空は俺に叩き込んだ。

 

「誰も救わない世界はあるよ。……でも、それは世界であって個人は助けることはできる」

 

明らかに家畜以下の扱い、ごみの様に自分の従者を見下し殺していく無限神の醜悪の表情は俺の触れていけない糸を斬るには十分すぎた。

マグマの様に湧き上がるなにか、俺という存在の罪遺物はその感情に共鳴するように鼓動を開始、徐々に俺の体からありとあらゆるものを喰らい尽くす闇が、湯気のようにゆらゆらと立ち上がっていく。

 

「僕は蟲毒の方法で造られたから親の愛情なんて知らない。けど、君は分かるはずだ。君には一時は幸せな家庭で育った時間が合ったんだから」

 

ーーー許せない。

理由も理屈も理解もその感情を生み出すには十分すぎることだった。

ーーー許せない。

くうちゃんは知ろうとした自分の好きな自然を知ることで、何か自分にできることは無いかと無意識でも希望を抱いた。

ーーー許せない。

例え、それは偽物の絆でも、俺はくうちゃんの親になりたかった彼女を守ると決意した結果の結末に自分の甘さに嫌悪する。

 

「彼女の苦しみを本当に分かるのは君だけだよだからお願いーーー助けてあげて」

「……分かった」

 

力強く握られた腕は俺の言葉に安心するように離れた。

俺は、空が来ることを信じて背を向けた。

 

 

 

神界。

それは選ばれた者だけが、足を踏み入れることを許された神聖の場所。

聖なる死した魂がここに来ることが多くあるらしいが、本当のところは知らない。

世界に各一つ一つ設けられたこの場所に、俺は不釣り合いな闇の妖気を湧き出せながら悠々と侵入した。

天使たちの心には恐怖と強制が刻まれており、明らかにそれは無限神の影響だと『負』の感情に過激に鋭くなった今の俺には、意識せずとも分かる。

恐怖で戦わされる奴は意識が逸れやすい、一応話し合いでも解決を望んだのだが……恐怖というのは根強く攻撃された。まぁ、全員無力化させたんだけどな。

 

「…………っ」

 

先ほどから見えていた、白い螺旋の巨塔の全貌が見えてきた。

 

「ぐっ……大罪人、零崎 紅夜!!」

 

門の前で門番らしき天使二人が槍を構えた。

その刃は震えている。

 

『クスクスクスクスクスクスクスクスクスクスっ、千切りましょうか?ご主人様』

 

魅惑の微笑をしながらティシフォネは甘えるように俺の首に手を回してきた。

彼女は世界という概念が無い、何もなかった所から生まれた原初にして始原の闇だ。

その力は、絶望の深淵と評されておりどんな闇からも彼女から生まれたとされている。

それはつまり、この世の終極の混沌であるアザトースの母親とも呼べる存在だ、闇と光が合っての混沌だからな。

全世界から見れば原子より小さい、微かな光を持つ天使たちにとってティシフォネは一体どんなに写るのだろうか。答えは明確でどんなよりも強い恐怖そのものだ。

 

「あああっ……!?!?」

「ひぃぃあぁぁ……!!」

 

ティシフォネの闇を見ただけで天使たちは武器を落とし逃げるように下がる。

しかし、天使たちの後ろには無情に扉という壁がある。

死神に追われ、必殺の一撃が今振るわれとする刹那の苦しみがティシフォネの存在により永遠と味合わされる一種の地獄は、天使たちの精神を崩壊へあと一歩まで追い込む。

 

「……ティシフォネ」

「全ては恋しき愛しきご主人様の為に」

 

このままだと天使たちの心を破砕しそうになると危機を感じ俺が口を開くと、ティシフォネの闇は急激に衰え彼女自身の霧となり、俺の体の中に入っていく。

普段はこうやっているが、威嚇などをするときはこうやってティシフォネを出す。

ぶっちゃけ言うとティシフォネに勝てる奴なんて、ほぼいない。

少なくてもその本気モードを空を倒すほどの実力者だと、ティシフォネに立ち向かうなんてよほどの死にたがり屋だ。

願うなら、この威嚇で無限神が大人しく、くうちゃんを返してくれることを期待していたが、白い巨塔はただ茫然と立ち尽くすだけで何も起きない。

 

「扉……開けてくれないかな」

 

出来るだけ優しく天使に語りかけたが、天使たちの表情は青を超えて真っ白だ。

あっ、口から泡を沸かして倒れた。

 

「はぁ……」

 

セーブはしているものの、罪遺物の叫びが天使たちの心に止めをしたみたいだ。

十六世界分のありとあらゆる存在の怨嗟、今の俺に人間クラスなら直視しただけで精神崩壊レベルだろう。

このコントロールは極度に難しく、これは今の俺の課題でもある。

一応、いつもは疑似的に封印しているが、俺の激しい感情に勝手に封印をぶち壊し溢れてくる。それは憎しみが憎しみが生むような円環だ。

門番の天使たちを安全な場所に転移させ、俺は頑なに閉まっている扉に拳を付ける。

同時に過去に喰らったことが神性を放出させる。

それにより、放出した神性はこの巨塔のどこかにいるくうちゃんを畏怖することを開始するーーーそれは、つまり居場所が分かることだ。

 

「覇道ーー」

 

昇ることは正直な所、時間の浪費が多い。

なら、……この巨塔を無理やりでも小さくすればいい。

 

「羅漢撃」

 

凝縮させた闇の塊をパイルバンカーの要領で撃ちだす。

同時に放った”一撃”は、扉を刹那に破壊し、更に罅割れたガラスの様に瞬く間に5000階まではある巨塔を100階前後まで壊した。

俺は倒壊寸前の巨塔の窓を目掛けて跳んだ。

 

「……くうちゃん」

 

この最上階にくうちゃんがいることを察知した俺は、地面を蹴り一気に駆け上がっていく。

途中途中に上の階を行くことをせき止める門番らしき神聖な獣がいたが、その身で殴り通らせてもらった。

体感時間で凡そ10秒で、最上位の手前まで到着して最後の扉を開ける。

 

「---っ」

 

開けた瞬間、空間を埋め尽くす光の雨が驟雨の如く降り注いだ。

 

 

「くはははは、よくやった我の下僕ども」

 

立ち上る砂塵の中で聞こえた。清らかな声。

表面に薄い氷を張っただけの神聖を感じる。

気配だけで分かるのは、天使が30名と人間……それも超人、一般的に人外と呼ばれる天性を持って生まれた異体の人間が2人だ。

 

「………いくら、大罪人でも己と対極である属性の攻撃を受けて無事ではないだろうな」

 

それはお前の先入観だ。そしてそれは過ちだ。

片手を上げ、薙ぎ払うように振るう。その軌跡は闇の斬撃となり30人いた天使を全て弾き飛ばした。

 

「---なにっ?」

 

あの程度の闇で俺がやられると思われていることがある意味の屈辱だ。

これでも、十六の世界を喰らい尽くしたんだぞ?俺は光であり、闇であるつまり混沌なんだ。

様々な属性が混ざり合いそれを闇に変換した罪遺物(オレ)に、弱点はなんてない。あえて言うなら俺自身が弱点だな。

 

「無限神、いまなら何もしない。神殺しの頂点を返せ」

「はっ、大罪人が我に向かってどんな権利が合って発言している?」

 

無限神は玉座に座り、鼻で笑った。

左右に立つ人の領域を超えた人外も、誘われるように笑った。

 

「身の程を弁えろ。大罪人……おいっ」

「はっ」

 

右の名も知らない奴が手に持っていた鎖を引っ張ると、首輪を付けられ体中に傷跡があるくうちゃんが無限神の前に倒れ込んだ。

 

「こいつはゴミだ。こいつに価値はない」

 

そう言って、無限神はくうちゃんを頭を蹴った。

手を縛られ無抵抗のまま地面に顔を叩きつけられ、くうちゃんの頭から古傷が開いたようにぽたっ、ぽたっと血の雫が落ち始めた。

 

「世界を恐怖させる。最悪の災禍、そしてそれを討伐した我は、正に神の中の英雄となる…!」

 

地面を蹴って無限神との距離を一気に殺した。

野心に餓え、自分を至高と演じるのは正直な所、どうでもいい。

只俺はーーーくうちゃんを傷つけたお前が許せない!!!。

闇を一点に集中させた重厚の拳を、そのふざけた顔に叩き込もうとするが左右の人外から剣閃が飛び俺は逆に引き飛ばれた。

 

「……くくくっ、貴様如きに俺が相手をするまでもない。」

 

………どれだけ、人の精神を逆撫ですれば気が済むのか!!。

体の中にあるティシフォネが俺の意識と共鳴し、更に濃密な闇を奴にーー

 

 

深きものに永遠を(デ・プロフンディス)

 

右の奴がその呪文を唱えた直後に俺の真下に魔法陣が展開され光条が関節を突き刺した。

練っていた闇は維持するもの、濃くすることも薄くすることもない。

これは、俺自身を概念を封じる特殊な魔法……!あの時、反撃は俺のこの場に落すためのトラップだったのか!!

 

「そうだ。今日の我は気分がいい特別に見せてやろう」

 

左の奴が先ほどとは違う剣を取り出した。---それは黄金の剣。

俺はそのあまりの美しさ一瞬意識を奪わた。

同時に、溢れる感情は畏怖……あれはダメだっ、と本能が叫んだ。

 

乖離の剣(ニルヴァーナ)……これはどんな存在でも輪廻を消滅させる神々の中でも禁忌の剣」

 

輪廻を消滅させる剣……!?

そんなもので殺されたら、この世からいなかったことになるぞ……!!

考えなくても、分かった。奴はあれでくうちゃんを殺すのだと……存在した今の現在から生まれるまでの過去を殺すのだと

 

「うおぉぉぉお!!!」

 

誰がそんなこと許すかぁ!!!

くうちゃんは、あの地獄のような日々からようやく救えたんだ!!。

世界から生まれながら嫌悪されてなお、自然が好きだと言える優しい子なんだ……!

 

「さて、これで世界の秩序が正される」

 

右の奴がくうちゃんを髪を摘み上げる。

左の奴が黄金の剣を天に向けて翳した。

ティシフォネは俺の中で「間に合いません」と非情に呟いた。

手を必死で伸ばすが、虚しいほど距離が離れたこの空間では、どんな手段もない。

 

 

「くうちゃん……空亡ゥーーー!!!!!」

 

彼女は、闇の中で生きていた。

俺とベクトルは違えけど、同じ闇の中いた。

俺はその闇に動かされ全てを闇を全てに染め上げようと、一方的な殺戮をした。

彼女は、ただひたすらその場で耐えた。どれだけの自分の体が闇が汚染されようとも、絶望により自分が壊れていっても、それでもこんな不条理の世界を憎まなかった。 

優しくて、強い。

空や俺とは比べられないほどに、最悪な行いをしても俺達は、孤独同士で引かれあい助け合うことが出来た。変わることが出来た!。

体が引き千切れてもいい、彼女の代わりに死んでもいい。

常夜 空亡という名が、存在が生まれて彼女を知ったとき、俺は彼女を守る親になりたいんだ!。

 

 

 

「ーーーーー」

 

くうちゃんの人形のような顔から雫が落ちると同時に何かを呟いた。

そして、鮮血が舞った。

 

 

 

 

 

 

「…………!」

 

誰かが息を呑んだ。

俺の手は無様に虚空に掴みだけと思われたが、何処から吹いた微風が俺の手に黄金の髪を譲ってくれた。

完全にくうちゃんの急所を狙った一撃は、閃光の様な影が入り込んだ。

 

「空……?」

 

その正体は心からの親友だった。

 

 

「ぐうっ……!!」

 

苦しみの声音を吐きながら、空は右と左の腹部に掌底を打ち込み吹き飛ばす。

更に無限神が唖然としているウチにくうちゃんの鎖を破壊し、抱えて俺の近くに跳躍した。

 

「お前……!」

「ははっ、ギリギリセーフだね。……ゴフッ」

 

背中に肩から腰まで裂傷が走り、夥しいほどの流血と共に空自身も口から血を吐き出したした。

空のお気に入りの純白のコートは急速に真紅の色に浸食され、元の色が分からなくなるまでになっている。

空は震えた手で、俺を縛っている魔法陣に触れ破壊した。

そのおかげで体の自由が効く様になり、直ぐに空の傍で腰を下ろす。

 

乖離の剣(ニルヴァーナ)とか……これ、また凄い、の。出して、きたね」

「直ぐに回復を!!」

「無駄、だよ……」

 

吐血する空に直ぐに回復魔法をを使おうとすると手を掴まれ止められた。

 

「輪廻を、消滅させる、剣。傷を負えば、それは、どんな手、を使っても、治療不可……」

「もう、喋るな…!」

 

空の発言から推測するに殺せば最大の威力を発揮する、傷を付ければそれは永遠永劫に残る呪いの様な傷になるのか…!。

これは一生の傷だ。空という輪廻を一部でも消滅させられたんだ、存在そのもの傷と言ってもいい。

止まる気配を一切見せない流血を俺は自分の漆黒のコートを破って、空の傷を圧迫するように縛る。

 

「ーーーなんで、?」

 

くうちゃんは信じられない様に空の腕の中で呟いた。

 

「僕はね……、絶望して、狂って、いるんだよ。だから、僕の様な、絶望を、見せたくないなぁ……って」

 

喋るなって言っているのに……!

輪廻ということは空が生まれてくる前のことも言う、つまり過去現在未来はこの傷を決定してしまう。

そうなってしまえば、空の破壊でも治すことは不可能だ。

この傷の最も恐ろしいのは、存在そのものが浮き出しになっている所だ。

人間的に言えば、常に心臓や脳がはみ出しているようなことだ。

 

「あなたは、私に死んでくれると嬉しいと言った……」

「……それは、神殺しの頂点に向けて言ったんだよ」

 

想像を絶する激痛に顔を歪めながら、壊れかけのおもちゃを扱うように空はくうちゃんを優しく地面に下ろした。

 

常夜 空亡()は、とても、いい子だから……光に生きてほしいよ」

「!!!」

 

神殺しの頂点ではなく、ただ一人の少女として、空は彼女の存在を認めた。

 

「辛いこと、悲しかったこと、一杯あったよね。分かるよ……僕たちは、その感情に流されて好き勝手した。けど君は、ずっと抗った。偉いよ、優しいよ……」

 

我が子を褒め称えるように、慰めるように、空はくうちゃんを抱き締めて背中を摩り、頭を撫でた。

くうちゃんは、怯えるように体を震わしたが、徐々に眠るように落ち着いていき瞳を閉じた。

 

「もう、いいんだよ…?僕達は君を守るから……だから、安心して、一人じゃないから……一緒に居てあげるから……」

「……ありが、とう」

 

今までの緊張が消え心底安心したのか、くうちゃんは空の胸の中でこれ以上に無い安らかな表情で寝息は立て始めた。

生まれたその時から神殺しの頂点として、異形の存在として親から売られ、野心と欲望の渦巻いた人間達から卑劣なことを強制され生きてきた、不幸の少女は一陣の光が照らし……そこにはーー幸せに眠る少女がそこにいた。

 

「ーーー茶番だ。」

 

最も許せない奴が気を取り戻し、苛立ち荒々しく立ち上がった。

空は苦しげに顔だけ、無限神に向けたがその瞳は怒りの烈火に宿していた。

 

「ティシフォネ」

「---いつものあなたの傍に」

 

呪縛が解けたことから俺の体から闇の瘴気のようなものが溢れだし、ティシフォネを創造する。

 

「空…」

「うん………また、ね」

 

名残惜しいように眠るくうちゃんを離しティシフォネに渡した。

ティシフォネは少し嫌そうな顔をしたが、俺の指示…安全な場所に避難させることを受けて姿を消した。ついでに俺が無力化した天使も持って行ってもらった。

 

「実につまらない茶番だ。ゴミをかき集める物好きがいたものだ」

 

壁に埋もれていた人外の奴二名が何事もなかったように無限神の隣に立つ。

その表情には痛みに歪むことなく、くうちゃんのような無表情だが、それと違うこちらは生気すらも感じない。

 

「……あれはクローンだよ。精神操作(マインドコントロール)もされている」

「!!」

 

空はそいつの目を見ながら呟いた。

空は、自分と同じ人工的に造られた者に対してかなり鋭いんだ。

 

「くくっ、紛い者は紛い者と共感できるのか。下種と下種が支え合うような虚しい組み合わせだなぁ?」

 

俺はさっきからキレっぱなしの思考で冷静に心底腐っているあいつをマジで殺していいか考えている。

我慢の限界を超え、見る者全てを自分より劣等種とみるコイツの思想にウンザリしてきた。

 

「神はシステムだ……」

「はっ?」

 

未だに続いているだろう激痛に耐えながら空はなんとか立って呟く。

突然のことに思わず無限神も俺も声を零す。

 

「つまり、存在することに意義がある。故にお前を殺すことはできない」

「ふっ、そんな傷でお説教か?」

 

あーーー、なるほど。

空の言いたいことは分かった。………死ななかったなんでもしてもいいってことだろう?

あのモードになるために罪遺物が闇を解放させるため、力を込め始める。

 

「なっ、なんなんだ。この闇は……」

 

十六の世界を喰らい尽くし、更に長い年月を得てこの世の円環に戻ることができない、彷徨う魂魄にある娯楽と言えば、自分と同じ境遇を合わせたい深淵から天を貫く様な極限の怨嗟、それは世の理すらを破壊尽くす暴虐の言霊となって全てを闇に落す。

故に俺は、『ヌギル=コーラス(破壊神)』と言われるのさ。暗黒のな

 

破壊神の証(ウルティマ・テウルギア)……!」

 

空が虚空に向けてソレを呼ぶ。

それは一般的に大剣と呼べる形状をしていて、削る様な鉤爪や、喰らう様に歪曲した鎌のような刃、叩き割るような極太の包丁のような重厚さ、それらが組み合わさった3メートルはある圧倒的存在感を見せる破壊の刃。

世界神であり、その一柱である破壊神…空だけが持つことを許された唯一無二の絶対剣。

破壊というのは自然で、自然とは世界だ。空のもつその大剣にはその概念が入っている。それはつまり空はいま破壊という概念を宿した世界を持っているということだ。

 

「くっ、---行けぇ!」

 

無限神の命令と同時に英雄を元に造られたであろうクローンが別々に俺達を襲い掛かる。

右の奴は魔術師(ウィザード)系らしき無尽蔵に様々な属性の魔弾を飛ばし、

左の奴は騎士(ナイト)系らしく乖離の剣(ニルヴァーナ)を手に斬りかかってくる。

 

『……お休み(グットナイト)

 

虹色の強雨に空は破壊神の証(ウルティマ・テウルギア)振るう。全ての魔力弾を破壊してウィザードは破壊の斬撃に成す術なく呑まれ髪の毛一本も残さず消えて無くなった。

傷を付けばそれは果てない激痛と永遠に癒えぬ弱点として残し、その剣の前では全てを殺し輪廻から消滅させるという乖離の剣(ニルヴァーナ)を手に持つ奴は、分身が出来るほどの速さで光速の剣閃を放つが、俺はそれが身に届く前にナイトを殴り飛ばした。あふれ出る怨嗟は瞬く間にナイトの体を浸食させ

その身を闇に変え俺の体の中に入っていった。

 

「ふっ……光栄に思え、我が直々に相手をしてやる」

 

駒を失っても無限神は顔色一つ変えず、天に向かって手を上げる。……本当ならその動作間で100回ぐらい殺せるんだが、俺も空もそれをしない。それは何故か……空は神をシステムだと言った。存在することに意義があると言った。ならば……こいつの腐った根性と精神を再起不能にしても問題ないってことだろう。故にーーー俺達は、

 

『(こいつのありとあらゆる手を正面から打ち砕く…!!)』

 

無限神の力で、全てが変わっていく。

俺達がいた部屋は宇宙の様な広大な距離感を失い程の空間に塗り替えられていく。

 

「我は無限を制する至高にして、果てなき神!」

 

不死鳥がはばたく様に腕を広げる。

 

「ここは永劫摂理の時空界(フォーミュラ・エターナル)、無限神、我の絶対領域なのだ。」

『自慢話の暇があるなら、とっとと掛かってこい』

 

もう、ここまでの時間で一億回は殺せるぞ。こいつ……。

無限神は額に青筋を立て、瞳をギラギラとハイエナのように輝かせながら合図をするように手を広げる。

何もない。星々のような煌めきがある宇宙の様な突然空間から四方八方から超巨大な炎玉、恐らく太陽そのものを出現させ俺達に向けて飛ばしてきた。

 

「空…」

「はいよ」

 

俺達はただ無限神の準備をしている時間に同じように準備をさせていただいた。

本来なら刹那の時間で十分だが、眠たくなるほど暇なので無限神が攻撃する時間まで待っていたのだ。

 

「死ねェェェェ!!!!」

 

逃げ場はない、完全に密封された複数の太陽による流星攻撃。

ティシフォネがいないことが残念だが、単体でもデコピンで次元を吹き飛ばせるあのモードへ、

空は破壊神の証(ウルティマ・テウルギア)を準備体操をするように器用に舞踏させ一息して水平に構えた。

 

「---鎮魂奏・十六夜劇(グランギニュル・レクイエム)!!!」

「我が存在をここに証明するーーー禁断化(ドライブ・デストロイヤー)!!!」

 

 

 

無限神side

 

「やった……やったぞ!!」

 

我は疑似空間から無限の力を使い太陽を創造し、忌々しい奴らに落した。

360°から襲う、最高1600万度の焔の球を約100個を真面に直撃させた。

この空間は無限、故に我そのものだ。よって法律も創造することができ、奴らは魔力などを一切使えないようにしているのだ!。

 

「くくく、我が至高だ。」

 

神殺しの頂点は原初にして始原の闇に囚われえてしまったが。

なに、我の力は無限だ!。

我以外の全ては触れることさえ困難である。我が最強、我が究極なのだ!。

 

「っ……?」

 

我は悪寒を感じた。

ここには我と忌々しい奴らしかいない。しかしあいつらはあらゆる方面からの太陽直撃で間違いなく消滅したはずだ。

しかし、何かがいる。

決して触れてはいけない……禁忌の様なものに、

 

ゾワッ

 

「ぐっ………!?」

 

頭に何かが直撃した。

何か何かと周囲を見渡すが何もない。

あるのは太陽と太陽が融合した切り裂く様な轟音と……

 

キシュアアァァァァア!!!!

 

「あがっ!?」

 

今度は全身が、押し潰される様な激痛が襲ってきた!

あまりの痛みに呼吸することも出来ず、もがくことできない。

まるで我とは別次元の何かが圧殺をしかけてくるこの空気を感じた時に、呪詛が呟かれた。

神や獣、人間、竜、妖怪、この世のありとあらゆる全ての咆哮が一つになって絶叫し世界の破滅を詠い始めた。

 

「いいい、あぁぁ……!?」

 

肉体が精神がみしみしと亀裂を走らせ、壊れていく。

我は駆け巡る激痛から閉じていた瞳を開いてーーー見惚れた。

 

 

そこには、朝と夜があった。

距離と言う概念がないこの空間に忌々しい奴らがいた場所から境界を引く様に全てを照らす極光と全てを染め上げる暗黒が広がっている。

 

『これで終わりか?』

 

そうだ。

奴らは影ではこう呼ばれていたのだ。

光り輝く、太陽の様な光明を放つ最恐の破界神、矛盾の頂点、夜天 空。

深淵の如き、漆黒の闇を制する暗黒にして最凶の破界神、紅闇の皇という大罪人、零崎 紅夜。

 

その時、我は初めて恐怖を知った。

 

 

 

夜天 空side

 

久しぶりにこの姿になった…と心の中で呟く。

火花のような粒子を纏い、紅蓮に染まった長髪と翼を持つ全ての存在を入れ混ぜた畏怖を感じさせる九対の翼。

紅夜も似たような感想なのだろうと隣を見る。

そこには肘に不気味に輝く噴出口からこの世の悪意が溢れてくる武装に背中に神秘すら感じる禍々しくも美しい円陣から放出される九対の翼のような物。

 

「うぅぅ……!!」

 

無限神、ちょっと涙目。

まぁ、それはそうだ僕でもこの場所は結構キツイ。

隣の紅夜はいまは自分が殺した十六世界の存在と一体化しているんだからね、そしてそれは長い年月により全て怨嗟と闇となった。

その怨嗟は、世界を呪殺させるほどの災厄の咆哮だからね。それを真面に聞いてしまった無限神の精神はかなり危ないだろうね。

僕も破壊の因果を纏って近くにある物は容赦なくぶっ壊していくんだけど、隣にいる紅夜は十六世界分と同化しておりぶっちゃけ質量的に破壊不可能なんだよね。

今の紅夜を傷を与えたかったら、十六世界分の全ての存在が重なった壁を一気に破るほどの火力が無いと無理、ということでぶっちゃけムリゲーなんだよね。(ティシフォネがいればもっとひどいことになるけど)

 

「どうした、無限神……終わりか?」

 

イヤイヤ、紅夜さん。空気を読んで僕もこの姿になったけど君の怨嗟で、十分あいつはノックダウンの一歩手前だよ?僕要らない子状態だよ?分かるかな……?

無限神はなんとか冷静になろうと思考を繰り広げているだろうけど、恐らく初めてなんだろう自分とは格が違う奴と正面向いたことなんて……だから、俺TEEEEEの言動で英雄気取りになる。

 

「我は、我はァァァァァァ!!!!」

 

無限神は頭を抱えて絶叫する。

今まで築いてきたプライドや自信が粉々に壊されていくんだ。苦しいよね?

 

「こんな言葉は使いたくないけど……”天罰”だよ」

「因果応報とも言うな。お前は身の程を知らず、俺の大切な奴を傷つけた……その報いだ」

「なぜだ、……あんなゴミを……化け物をなぜ貴様たちはァァァアァ!!!」

 

血眼になって吼える無限神に僕たちは、当たり前のように同じタイミングで口を開いた。

 

「俺は常夜空亡の父親だ」

「僕は常夜空亡の教育係だ」

 

 

『ーーーそれ以外に理由(・・)がいるか』

 

君には、分からないだろう。

大切な物はなく欲望のままに生きていた君に、痛みや悲しみを知ることなんてできない。

辛いことを乗り越えてこそ、代償を払ってしまったこそ、今の僕たちがある。

力に振り回され、責務を忘れてた君の様なド三流の神に負ける理由なんて、僕たちには存在しないよ。

 

「うわぁっぁああぁぁあ!!!」

 

我を失った無限神は手を前に出す。

そして、莫大な魔力とこの領域によるバックアップを得て、超高密度の全てを消し飛ばすほどのエネルギーが無限神に集まっていく。

間違いなく、彼自身の全てを使った最大にして最強の一撃。

 

「さっさと決めて帰ろう。空」

「はいよ」

 

いつもの様にだけど、短く切られた会話。

僕たちは無言で肩を合わせた。

究極の破壊の因果と世界を呪殺させる怨嗟が反発するようにこの空間を照らすほどの紫電を起こす。

そして、僕は左手を紅夜は右手を交差して柄をーーー(ツルギ)を握るように、

 

「キエロォォ!!!」

 

理性が無くなった獣の様な咆哮と共に放たれたこの無限の一撃、あれにはこの領域だからこそ出来る法則の創造が全てが混ざっており、例え時空を超える速さで動いて必ず直撃するだろう。故に回避不可能で防御も意味がない。残された道は全てを断ち切る反撃だ。

バリバリバリっと火花を上げながら反発する最恐の光と最凶の闇、混ざり合うことはないただ互いを相乗させ、その矛先をただ一点に絞る。

 

『ーーーオメガ・エヴァストルムッ!!!』

 

どんな世界でも象徴される光と闇は、全てを断ち切る無垢なる刃となって無限の極光と無限神を飲み込み、無限の空間に突き刺さる。

それだけでは終わらない。空と紅夜の両手で握りしめられた対極の剣でこの無限を薙ぎ払うように、自分たちを中心にに円を描いた。

 

「お前が常に無限を制すなら」

「俺達は常にその無限を超越するまでだ」

 

そして、果てのない無限の空間は桜が散るようにバラバラになり、世界は元の姿に戻った。

 

 

 

 

 

「…………ふぅ」

 

山の様に積もった書類を見ながら僕は、憂鬱のため息を吐いた。

あれこれ徹夜続きで精神的疲労も重なっていたことから、今日はここまでにしようと、筆記用具を片付けていた時に目に入ったのは、左に僕、右に紅夜で守るように挟まれた空亡ちゃんが撮られた写真だ。

 

無限神に攫われた事件から、早一年の時間が流れた。

世界的から見れば正しいとはいえ、明らかな独断行為による行動は僕の発言からお義兄様へとすべて報告され、裁判が行われたらしい。

あいつが明らかに弱いに対しなぜ、№7になったかと言うと賄賂や女、毒を盛ったりと部下に強制させて自分は汚れず上に昇ってきたと聞いた。

勿論、今回の一件で無限神は汚職は知れ渡り、栽培の結果は神としての権利を略奪され三世代人として転生される罰が下ったらしい。ざまぁ……

 

そして僕たちは………勿論、裁判ごとになったよ。

この世の猛毒とされる神殺しの頂点を十六界を喰らった紅夜が面倒を見ると主張したもん。只でさえ、最悪の大罪人であるのに、そんな危険なものを手に入れたら……という先入観の元、神殺しの頂点を処刑すべきだと話が出たりしたよ。

まぁ、紅夜がニッコリ笑って『戦争するかゴラァ』と言ったらみんな黙ったけどね。みんな臆病だ、そして紅夜の評価がまた下がった。(でも、カッコイイ!)

 

「…………」

 

あの事件で肩から腰に斜めに走っている裂傷はもう、治ることはないらしい。

輪廻の消滅で完全に存在そのものを抹消されちゃったから、元通りにするためには過去に戻るぐらいはしないといけないけど、僕はあの時、無意識で空亡ちゃんを庇った。

その結果が、これだけど僕はあの時の選択は間違ってないと思う。だからこの傷は永遠だ。………だけどこれ、人間で例えるならこの傷は急所が壁無しで現れになっているものらしくて、僕の弱点となってしまった。

人間クラスでもここを殴られたら一発で失神するね。

 

「ふぁっ……うんっ」

 

今は深夜の時間帯だが、月の光と星の光で電気を使わなくても足元が分かるほどまで明るい。

欠伸をしながら、自室に向かって歩き始めた。

この星は核を見事に落とされた所を破壊の能力全開で治すことはできた、ただこれからのことを考えると頑丈な家を造る必要があったので設計は出来たものの人手に困っていると紅夜が助っ人を呼んできた。……ジョゴスっていう元は奴隷様に造られた生命体で簡単に説明するならスライムだ。

あまり邪神に関係ない奴らだが、その存在はクトゥルフ系統なので正直な所は嫌だった人手に困っていたのは事実でほかに頼れるような奴がいなかったので恭しくお願いした。

彼らは上司で造物主である古きものから自由の為に反逆したことを知っていて、下手に扱う訳にはいかず給料とかちゃんと寝るところとか用意した。

すごく喜ばれたと思う……うん、あいつ等「テケリ・リ!」しか言わないから意思疎通が出来ないからな……紅夜が出来ることには仰天したけど。

まぁ、そんなところで新築を造って、今は紅夜と僕と空亡ちゃん……あと無限神から非人道的に扱われていた天使から必要な分の執事とメイドとしてスカウトして、他の天使たちは僕が建立した学校で働かせている。

それなりに待遇は良くしており、彼らからも「今の生活は大変だが、やりがいがある」と感謝されている。

 

「…………」

 

なんとか平凡に戻り始めた時に困ったことが起きた。

空亡ちゃんは、どうも僕に懐いてしまったらしく紅夜と交代して一緒に寝てるんだ。

僕は徹夜で仕事することが多いから、空亡ちゃんは僕の仕事部屋にある仮設ベットで子守唄でも歌って寝らせている。

悔しいけど、寝ている時の空亡ちゃんはいつもと変わって喜怒哀楽の変わりが激しくて超可愛いです。

紅夜は昔、僕のことを子煩悩と言ったが、この前「娘って……いいよな」とか言ってきた今は秘密裏に紅夜と空亡ちゃんの可愛い写真を交換することがある。……盗撮じゃないから警察は呼ばないでね。

 

「……あれ、これって困ったことなのかな」

 

自分で思ったことに自分で突っ込んだ。

どうやら、疲労で頭がおかしくなってきたようだ。

部屋を空けると、狙った様に僕の部屋のキングサイズベットに空亡ちゃんは猫の様に丸くなって寝ていた。おまけに紅夜も一緒に寝ていた。

 

「……………まっ、いいか」

 

いつもなら弾き飛ばす所だが、今日はもう疲れたからそんな気にならない。

僕も寝間着に着替えて、空亡ちゃんの隣に潜り込む。

空亡ちゃんと紅夜の仲も日に日に良くなっている。因みに紅夜の腕枕で空亡ちゃん寝ている……羨ましい

 

「……………」

 

守れなかった初恋で大切な女神であったレインボーハート、

壊してしまった妹のような大切な女神であったニーヴァ、

今度こそ、あんな過ちは繰り返してはいけない。泣くのも、泣かれるのも、もう嫌だから……

 

「おやすみ」

 

安らかに眠る空亡ちゃんの頬に唇を落として、明日も彼女が幸せであるように祈りながら瞳を閉じた。

 

 

 

 

 

 

外伝:殺しの頂点と紅闇の皇と破界神の始まり ー完結ー


 
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