No.515640

真・恋姫†無双 倭√ 第八倭

続・洛陽での生活

2012-12-06 20:19:22 投稿 / 全9ページ    総閲覧数:2326   閲覧ユーザー数:1947

第八倭 日常

 

 

午後の昼下がりはいつも閉めていた店も騒がしくなるようになった

 

「北郷~茶~」

 

「私にもくれ」

 

「呂布は飲むか?」

 

「……うん」

 

同僚の華雄と呂布とよく3人で店に来るのも今では少なくない

 

本当はもう3人座っているはずのだが今はなぜか居ない

 

「お前らはいつまで居るんだ?」

 

昼を食べてからずっと居座る3人、お馴染となった台詞を言う

 

「つれへんなー、こんな美女3人に囲まれてそんな態度って~いいやん、城はなんか居心地が悪い、

 

飯はマズイの二重苦やし」

 

「そうだな、城に居ても宦官が威張り腐って正直居心地が悪い」

 

どんだけ居心地が悪いんだ

 

「あの人達……嫌い」

 

好き嫌いが無い呂布が嫌いと言うなら相当な男達なのだろう

 

男……では無いけど

 

「迷惑か? 北郷」

 

心配そうに聞いてくる張遼

 

何かと肩身の狭い思いをしている彼女である

 

それも重なって張譲もとい宦官達には良い思いが無いのだろう

 

「まぁ、おやっさんの許可は取ってあるし気にしなくていいよ」

 

おやっさんにこの溜まり場化について聞いてみたが

 

“なーに、俺も妻と一緒の時間が出来たって事よ、その代わり準備はよろしくな”

 

と言う事で、溜まり場化に対してはなにも言われなかったのだが

 

洗い物や仕込みは俺がやらなければいけない事になった

 

しかしもう慣れた、

 

つまり慣れるぐらいここに居ると言う事だ、月日の経過を感じる

 

そして何故か

 

“すっぽんが必要になったら言えよ、経験上俺のお薦めは……”

 

とすっぽんを薦めて来るようになった

 

中国もすっぽんが使われてたんだなぁ、としみじみ感じつつ

 

“宦官にされそうだからやめとくよ”

 

と、断っておいた

 

実際、華雄、張遼、そして呂布を相手にそんな事を考える男がいるとは思えないのは俺だけなのだろ

 

うか?

 

「だけどここでは暴れるなよ、特に華雄」

 

「何で私なんだ! 暴れた事など無いぞ!」

 

「そうやったっけ?」

 

「張遼! 貴様は! なぁ呂布、私は暴れた事無いよな?」

 

「……忘れた」

 

「呂布! 貴様まで!」

 

「一度陳宮に団子取られた時、あんた暴れただろ」

 

「……お、覚えていない」

 

政治家みたいなこと言いやがって

 

「団子と言えばあの時間ちゃう? 北郷」

 

話しを切り替える張遼

 

「そうだな北郷、アレ作ってくれ、アレ」

 

「いつも思うけど、切り替えが早いな華雄」

 

「いつもの事だからな、それに私は知ってるぞ? 本心はそうは思って無いと言う事を」

 

「え?」

 

「え?」

 

「……?」

 

顔を見合わせる俺達3人

 

「え……?」

 

おろおろしだす華雄

 

笑いをこらえる

 

張遼は湯呑で口元を隠しているがこっからだと笑みが丸見えである

 

アイコンタクトでサインを交わす

 

まぁこの辺りで止めておくか

 

「冗談だって、それでアレってのは前作った奴か?」

 

「ならいい、そうそうなんて言ったか……く……」

 

切り替えはえーよ!

 

「……くっきー?」

 

呂布が首を傾げる

 

「そうそう、それそれ!」

 

「あぁクッキーか、アレは前準備が必要だからなぁ……」

 

材料を見て、何が作れそうか考える

 

おやっさんの奥さんはおやっさんと一緒になるまで街のお菓子屋で働いて、お菓子作りが得意であった

 

なので時々奥さんにお菓子作りを教えて貰ったり、元居た世界のお菓子のイメージを伝え再現して貰

 

い軽いノスタルジーに浸っていたのだが

 

奥さんのお腹が大きくなって来たのでその時間も取らなくなってきていた

 

その代わりと言ってはなんだが、お返しにお菓子を作って持っていこうとし、奥さんに出すお菓子を

 

味見してもらおうと彼女らに出したのが切っ掛けである

 

「今日は胡麻団子で良いか?」

 

「ええよ、甘ければ、あ、お茶はちょい渋めでな」

 

「仕方ない、胡麻団子で許すとするか、なぁ呂布」

 

「うん、胡麻団子……好き」

 

「はは、じゃあ少し待っててくれ」

 

 

 

 

 

 

「っと、胡麻団子お待ち」

 

「さっすが北郷! 毎日幸せやわー」

 

「悪くない匂いだな」

 

「……食べて良い?」

 

「あぁ、良い……って3人待たないと」

 

「ん、分かった」

 

伸ばしかけた手を引っ込める呂布

 

「偉いなー呂布は、この2人とは違って」

 

「どう言う意味だ」

 

「その手に持った団子を置いてから言え」

 

「恋、偉い?」

 

首を傾げて聞いて来る呂布、正直可愛い

 

頭を撫でたくなる衝動を理性で抑える

 

「あぁ、偉いぞ呂布、俺の分の団子もあげる」

 

その代わりとても甘やかす

 

「ありがとう……北郷」

 

「ふん、お前に偉いと思われても仕方あるまい」

 

「せやせやー北郷ーのあほー」

 

その正反対の不良娘2人組

 

「お前らはもう少しお行儀良ければ恋人とか見つかるだろうに、容姿は悪く無いんだから」

 

ルックスは悪くない、というか上の部類に入るだろ

 

そんな2人がほぼ毎日ここに入り浸っていて、浮いた話の一つや二つも聞かない

 

「ええもん、ええもん、ウチには武があるしーなぁ華雄」

 

「あぁ、そうだ、それに私より弱い男には興味無い」

 

「せやせや、ええ事いったで華雄」

 

こう言う時だけ意見が一致する2人

 

「華雄と張遼より強い男なんて大陸広しと言えどそう居ないだろ……」

 

「その時はその時だ」

 

「そういや呂布はどうなんだ?」

 

「……?」

 

「好きな人とか居ないのか?」

 

「……好き?」

 

「お、どうなん? 恋」

 

「分からない……」

 

「まぁ呂布にそういうのは想像出来無いがな」

 

「言わせて貰うと華雄、お前もな」

 

「な!? どう言う事だ!?」

 

「そのまんまの意味だ」

 

「クッ……胡麻団子さえなければこの男を……」

 

何か物騒な呟きがあったので聞こえない振りをする

 

「そういや董卓と賈駆と陳宮は? 後で来るって言ってたけど何処行ってるんだ?」

 

先程からの疑問を口にする

 

「買いたい物があるって言ってたぞ」

 

「ふぅ、やっと着いた」

 

「恋殿~~~!」

 

「こらねね! アンタ自分の荷物ぐらい自分で持ちなさいよ!」

 

噂をすればなんとやら

 

店の入り口から声がする、やっと全員そろったか

 

 

 

 

 

団子を皿に取り分けて改めて皆でおやつタイム

 

「北郷、茶のおかわり」

 

ズイと湯呑を出す華雄

 

皿の団子も既に半分が無くなっている

 

「あいよ、なんだ口に合って良かったよ華雄」

 

「ふん、今まで不味いと言った覚えは一度も無い」

 

確かに、味に文句を言わない華雄

 

旨いか不味いか不安になるこの頃

 

「そうか、なら良かった」

 

「相変わらず素直やあらへんなー華雄は」

 

「うるさい!」

 

「照れとる照れとる」

 

茶化す張遼

 

「華雄……照れてる?」

 

「照れてなんか無い!」

 

「華雄も女の子やな~」

 

「う、うるさいぞ貴様等!」

 

「うるさいのは華雄よ」

 

「華雄、うるさいのです」

 

賈駆と陳宮が毒を吐く

 

それを微笑ましそうに見てる董卓、最近彼女が一番大人なんじゃないかと思っている

 

口には出さないけどね

 

「皆私に冷たくないか」

 

拗ねる華雄

 

「でも、やっぱ作る以上は感想が欲しいなぁ、なぁ? 華雄」

 

「ふん! 知るかそんな物!」

 

一蹴された

 

 

 

団子も完食し、お茶を飲みながらまったりとしている昼下がりの午後

 

店を通る風が、新鮮な空気を運んでくる

 

「暇だ」

 

「暇やな~」

 

「眠い……」

 

「ねね、勝負しない?」

 

「今回はねねが勝つのです!」

 

賈駆曰く、陳宮は直情軍師との事

 

毎回賈駆に将棋で負けては凹んでいる

 

「あの、何か手伝えることはありますか?」

 

「何、良いって良いって」

 

野菜の皮を剥きながら

 

それぞれの暇アピールを聞く

 

「そういや、董卓は城で普段なにしてるんだ?」

 

どうしても董卓の仕事の様子が想像できない

 

話のタネになれば、と聞いてみる

 

「そ、それは……」

 

言い淀む董卓

 

地雷を踏んだ!?

 

「何もしてないわ」

 

代わりに応えてくれる賈駆

 

「じゃあ何で洛陽に」

 

「張譲の所為よ、アイツが何考えてるか知らないけどボク達はここまで連れて来られたの」

 

「大変なんだな」

 

「そうよ、ご飯だけが取り柄の北郷には解らないでしょうけどね」

 

「詠ちゃん」

 

「あ……ゴメンなさい、ついカッとなって」

 

「俺が聞いたのが悪いんだよ、俺だって賈駆の立場だったら腹立つし、しかも俺の聞き方も悪かっ

 

た、ごめんな董卓、賈駆」

 

聞く人によっては、嫌味に聞こえたかも知れないと反省する

 

董卓の事になると口調が荒くなる賈駆

 

そんな事は今までで良く分かっているので今さら気にしたりしない

 

それにこんな風に直ぐ謝ってくれる素直でいい子だ

 

「で、客将をやってたウチ達と知り合ったと言う訳」

 

話しを引き継ぐ張遼

 

「最も、月がいなければこんな所オサラバなんやけどな」

 

「すみません、霞さん……」

 

「なーに、好きでやってるんやから気にせんでえぇって」

 

時々見せる姉御肌

 

この時の張遼は素直に格好良いと思える

 

「成る程ねーで、どうなんだ? 陳宮、張遼の働きぶりは」

 

出会いが出会いなだけに、聞いてみたくなる

 

彼女の仕事っぷりを

 

「駄目駄目です、いつも居なくなったらお酒飲んでやがりますし」

 

聞くまでもなかった

 

「だって~戦も無くて暇なんやもん、えぇやろ?」

 

「他にやる事あるでしょう! 部隊の訓練とか色々!」

 

「それは朝の内からやってるからええのー、それより北郷ーお茶ー」

 

「はいはい、じゃあ華雄や呂布の働きぶりはどうなんだ?」

 

湯呑にお茶を注ぎながら聞いてみる

 

「呂布はなんていうか、なにやっても許されると言うか……居るだけで心強いな」

 

「せやなぁー恋やし」

 

「恋だもん」

 

「恋殿ですから!」

 

それぞれの返答

 

まぁ呂布にあれこれ言うのは無粋ってものか

 

てか言える奴がいるのか知りたい

 

「って、呂布といえば伝説の新兵どこにいったんだろ」

 

内心ドキッっとする

 

呂布と目が合う、

 

「……団子」

 

ひょいっと一つ呂布の皿に載せる

 

コクっとうなずく呂布、口止めに成功したようだ

 

「恋殿に一合でやられ医務室に担ぎ込まれる新兵達、しかしその中で唯一対等に渡り合った新兵が!」

 

「まぁ最後は終わり方が終わり方だけにダサい終わり方だったけどねぇ」

 

「はは……」

 

苦笑いを浮かべるしかできない俺

 

「でもかっこよかったです」

 

「まぁ、月の言うとおりだけど……」

 

「恋、顔は覚えてないのか?」

 

「……ううん」

 

「その新兵を案内した兵長に聞いたけど、顔は覚えてないらしいわよ」

 

「うぅぅぅウチも見たかったぁ~~」

 

「私もだ張遼、クッ……あんな誘いに乗らなければ……」

 

「へぇ、華雄後悔してるんや? ウチと飲んだこと」

 

「いや! それは断じてない……のだが……話を聞くとどうしても、な」

 

「まぁウチはこうやって華雄となかようなれて良かったけど~」

 

「な!? は、恥ずかしいことを面と向かって……」

 

「なんや、華雄照れとんのか~」

 

「て、照れてなどいない!」

 

「そ、それにしてもなんで新兵が呂布と戦うんだ?」

 

彼女が呂布だったと知ってから一度聞いてみたかった事である

 

「そりゃ、呂布と戦えばあとは怖いもの無やからやろ」

 

「あ……なるほど」

 

「あれ? そういえばその時北郷もウチの部屋いいへんかったか?」

 

「あ、あぁ居たよ」

 

心拍数が跳ね上がる

 

「そう言えばいつの間にか居なくなってたな……あの後どうしたんだ?」

 

「普通に帰ったよ……ってそういや華雄はどうなんだ? 城での仕事ぶり」

 

話を逸らす、ちょっと不自然な感じがするが仕方ない

 

「……」

 

その瞬間流れる沈黙

 

「この沈黙はどう言う事だ貴様等!」

 

「ねぇ?」

 

「だって」

 

「ねぇ?」

 

「……悪かった」

 

なんか華雄が不憫になって来た、素で謝ってしまった

 

「北郷! 貴様まで敵になると言うのか!」

 

「比べるなら張遼と比べるべきだった」

 

「ウチに飛び火!? どう意味や北郷! 聞かなくても分かるやろ!」

 

「そうだぞ北郷、私の方が上だ」

 

「何威張ってんねん華雄! ウチの方が上や!」

 

「いや、私だ!」

 

「ふふ、仲良いですね2人とも」

 

「誰がや!」

 

「誰がだ!」

 

店に笑い声が響き渡る

 

こうして賑やかな1日が今日も過ぎて行く

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……来た」

 

「おぉ、来たか呂布」

 

「……うん」

 

 

 

 

 

あのいわゆる伝説の新兵事件の後、張遼は約束通り皆を連れてきた

 

華雄、董卓、賈駆、陳宮、そして呂布

 

忘れていますように、と願ったのは束の間

 

「……」

 

気付いているようだった

 

あの後、呂布を個別に呼び出しあの時の事は内緒にして欲しいと頼んだところ

 

「……ご飯……いっぱい」

 

「……分かった」

 

「…………また戦いたい」

 

「…………………それは」

 

ジーッ

 

目で「さもなければ言うぞ」と脅されている気分になる

 

実際言うつもりは無いのだろうけど、こっちがお願いしているのだ

 

飲める条件は全て飲もう

 

「…………分かった」

 

 

 

 

 

と言う事で夜な夜な呂布とこうして鍛錬しているのである

 

まぁ勝負の結果は目に見えてるんだけど

 

「…………」

 

「……ふぅ」

 

お互いに距離を取り合う

 

手には二つの刀

 

「引き分けだな」

 

「……負け」

 

「引き分けだから」

 

一度、勝負がつくまでやりあった事があったが

 

明け方まで続き、その結果その日の仕事は苦行の遥か上を行った

 

俺は防戦一方であったが、呂布は俺を最後まで攻めきれなかった

 

そしてその悲劇を繰り返さないよう、この取り決めを呂布と交わしたのだ

 

底に穴を開けた桶に砂を入れる

 

その砂がこぼれる落ちる間に勝負がつけば良し

 

つかなければ引き分けという内容だ

 

「これで0勝10敗30引き分けか」

 

木に印をつける

 

ちなみに10敗は持ち帰った斬馬刀の結果である

 

その斬馬刀は……なんでもない、ちょっと半分の長さになっただけだから

 

とにかく刀を使えば呂布相手になんとか引き分けにまでは持って行けるまでは、力が付いていたみた

 

いだ

 

悲しいことに勝った事は無いのだけど

 

「………攻めきれない……恋より遅いのに」

 

「はは、なかなか速さがつかないんだよなぁ、お蔭で懐に入りきれない」

 

呂布に勝ちたいという気持ちは少なからずあるが、まぁアレだ

 

贅沢な望みと言うやつだろう

 

と言うのも今もギリギリなのである、後少し呂布が早くなればこの均衡も崩れ俺の負けが

 

さらに一つ増えるだろう

 

そもそも呂布の熾烈を極める攻めを

 

なんとか予備動作、筋肉の動きを通して予測し行動する

 

やっとここまでやって対等なのである

 

不平等ったらありゃしない……はぁ……

 

「……北郷」

 

「ん?」

 

「お腹……すいた……」

 

「じゃあ夜食にするか」

 

「……うん」

 

 

 

 

星空を見上げながら2人で夜食を食べる

 

今日の夜食はおにぎりである

 

「………おいしい」

 

「ありがと」

 

この時代に電子レンジといった便利なものは無い

 

なので少しどころかかなり冷たくなっているが、文句を言わず食べてくれる呂布

 

えぇ子や……

 

空を見上げる、そこには変わらず星々が輝いている

 

「なぁ呂布」

 

「……うん?」

 

「星が綺麗だな」

 

「……そう?」

 

「あぁ」

 

「……そう」

 

「……北郷」

 

「うん?」

 

「おかわり」

 

「……了解」

 

 

 

食う量を多くしたら呂布位強くなれるのだろうか

 

そんな事を考えながらも、こうして洛陽の夜は更けていく

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

が、戦いはそこまで迫って来ていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

後書き

 

続洛陽編!

 

もとい董卓編、後一回ぐらい董卓編が続くんじゃないかな?

 

 

 

 

 

 

 

匿名で構いませんので、感想改善点アドバイス誤字脱字等々ありましたらよろしくお願いします

それでは


 
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