No.511802

魏エンドアフター~天下一品武道会・終~

かにぱんさん

《゚Д゚》

2012-11-24 19:22:06 投稿 / 全4ページ    総閲覧数:9329   閲覧ユーザー数:6693

霞によって生死の境を彷徨った俺のせいで小休憩が入った、いやすこぶる申し訳ない……

 

華琳「まったく、決勝戦だというのに緊張感がないわね」

 

霞「せやで、今大会の一番の見せ所やのに何しとんの」

 

え?いや華琳はともかくお前がそれ言うの?共犯っていうか原因だよね?

理不尽な事が多い世の中だぜ……

 

真桜「そういや隊長、あれだけ激しい戦いしてきたんや。

   武器の手入れしたろか?まだ時間あるしな」

 

一刀「お、悪いな、お願いするよ」

 

あいよ、と片手をひらひらさせ、控え室へと戻っていく

 

雪蓮「それにしてもあの得物綺麗よね、それに細いのに頑丈だし。あの子が作ったの?」

 

一刀「あの武器は俺がいた世界のものなんだ。

   普通ならあんな激しい闘いしたらすぐに折れちゃうんだけど、真桜が強化してくれたからね」

 

雪蓮「へぇ~、あたしも何か作ってもらおうかしら……」

 

……どうでもいいがこの人はいつまでここにいるんだろう

 

秋蘭「それにしてもよくここまで強くなったものだ。

   我等とて3年間鍛錬を怠っていたわけではないというのに」

 

凪「そうですね、自分もその事に関してはとても驚いています」

 

……考えてみればそうだ、いくら3年間鍛錬したからといってこの世界の豪傑達に勝てるものだろうか?

明命や雪蓮、星だってずっと鍛錬はしていたはずだ、なのになんで……

 

風「?どうしました?お兄さん」

 

一刀「え、あぁいや、なんでもないよ、なんでも……」

 

稟「珍しく真面目な顔で何か考えていたようですが、珍しく真面目な顔で」

 

二回も言うな。

 

華琳「そんなことよりも雪蓮、貴女いつまでここにいるつもり?」

 

あ、やっぱり気になってたんだ

 

雪蓮「いつまでって、そりゃ一刀を呉につれて帰る許可をもらうまで?」

 

いや、俺に聞かれても

 

華琳「その話ならさっき断ったはずよ」

 

雪蓮「まぁまぁ、そこをなんとか、ね?」

 

華琳「だめ」

 

雪蓮「ちょっとでいいから!」

 

華琳「何を言おうがだめなものはだめ」

 

雪蓮「む~、覇王ともあろうものがなんて器の小ささよ、小さいのはその胸だけで──」

 

華琳「その宣戦布告、確かに受け取ったわ。雪蓮、ちょっと裏に来なさい」

 

雪蓮「上等ね。これで一刀を呉へつれて帰る事ができるわ」

 

華琳、雪蓮「ふふふふふふふ」

 

不気味な笑いを残し、二人の王は裏へと歩いていった。

……大丈夫か?あれ

 

風「お兄さん相変わらず人気者ですねー」

 

稟「先程の試合中にも相手を口説いていたようですが」

 

口説いてねぇわ。

戦いながら口説くってどんな高等技術だよ。

 

霞「ウチらじゃもの足りんのか?一刀……」

 

凪「そうなのですか?隊長……」

 

だあああほら!何か話が突っ走ってるから!

 

一刀「そ、そんなわけないだろ?霞も凪も俺の大事な子なんだから。

   それに俺は口説いてないし──」

 

風「まぁお兄さんはいるだけで女性が寄ってくる、

  そして寄ってきた獲物は離さないという食虫植物のようなものですから」

 

……それすっげぇ嫌なんですけど

 

桂花「栄養分は女性の身体なんじゃない?ためしに飯抜きにしてみましょうか」

 

なにその気持ち悪い生き物。

ていうか洒落にならんのでご飯ください。

 

沙和「今更だけど隊長のあの服どうしたの?前着てた奴とは違うけどそれも変なの」

 

さすがに20歳で制服は着れねぇっすよ。

ていうか変て

 

一刀「あの服は学校の制服なんだ、華琳が作ったろ?

俺の世界には学校がたくさんあって一目でどこの学校か見分けが付くように制服の着用が義務なんだ」

 

そんな話をしている中、さっきから裏のほうでものすごい轟音が響いているのはスルーだ

 

一刀「そうだ、流琉。帰ったらまた天界の料理の作り方教えるからさ、ご馳走してくれよ」

 

流琉「本当ですか!?いくらでもご馳走しますよ!」

 

季衣「あ!兄ちゃんずるい!僕も食べるよ!」

 

一刀「じゃあ一緒に食べような、流琉の料理はおいしいから楽しみだよ」

 

なでなで

 

流琉「あ、いえそんな……」

 

春蘭「その前に私と手合わせしてもらおう」

 

一刀「はい?」

 

え?今そんな話の流れだったっけ?ちょっと空気読んでみようか

 

春蘭「く……この私が決勝はおろか準決勝にも出れぬとは……!」

 

只単に悔しいだけっすか。

 

一刀「そういえば春蘭は真桜に武器作ってもらってないのか?」

 

春蘭「ん?あぁ、まぁ別に使い勝手に困っている事はないし、

   それに得物を変えたところで強くなるわけではないからな」

 

うん、なんとも春蘭らしい考えだ。

でも八つ当たりはやめてね

 

「「「一刀 (さん)~~~~!!」」」

 

聞き覚えのある声が三つ、振り返れば

 

一刀「天和!地和!人和!」

 

そういえば大会にいなかった三人が走り寄ってきた

 

一刀「どうしたんだ?そんなに慌てて、コンサートじゃなかったのか?」

 

天和「今回は一刀も参加するっていうから早く切り上げてきちゃった♪」

 

それはアイドルとしていいのだろうか

 

地和「今何回戦目!?」

 

一刀「えっと、もう決勝戦だけど」

 

えぇぇぇぇぇ……と座り込む、どうしたんだ?

 

人和「一刀さんの試合を見るために急いできたんだけど、

   次が決勝戦ならもう終わっちゃってるのかな」

 

地和「せっかくちぃ達が来てあげたのに!ば一刀!」

 

ドボォ!!!

    

ぶへあ!?

 

お、お前最近肝臓(リバー)ブローの味をしめやがったな……

 

人和「まぁいいじゃないお姉ちゃん、せっかくだから決勝戦くらい──」

 

一刀「い、いや、決勝戦は俺だから……」

 

痛む腹をさすりながら答える

 

「「「……は?」」」

 

なんだその信じられないものを見たという目は

 

地和「あんた何寝ぼけてんの?自分が弱いからって妄想と現実をごっちゃにしちゃだめよ」

 

一刀「その物言いは非常に物申したくなるがまぎれも無い事実です」

 

地和「ね、ねぇちょっとこの人頭逝っちゃったの?」

 

なんて失礼なやつなんだ、親の顔が見てみたいわ

 

霞「ん?ほんまやで?一刀は決勝進出や。相手はあの呂布ちんや」

 

沙和「そうなの!前の隊長だと思ってたら大間違いなの!」

 

なんでお前がそんな嬉しそうに答えるんだ

そんな中じーっとこちらを見つめる視線

 

一刀「どうした?天和」

 

天和「……一刀、かっこよくなったね~」

 

……はい?

 

人和「そうね、何というかいい意味で雰囲気が変わったわ。

   あながち決勝戦というのも間違いないのかも」

 

だから間違いないっつーに……

 

地和「……あんた変な組織に改造でもされたの?」

 

心外だ、酷く心外だ。

 

真桜「終わったでたいちょ~。お、なんや三人もきたんか」

 

二本の刀を手渡す。

うむ、さすがは真桜。ばっちりだ

 

天和「へぇ~、それが一刀の武器?綺麗だね~」

 

人和「本当、少し赤みがかってるのも素敵」

 

地和「確かに綺麗だけど……そんな細いので闘えるの?」

 

真桜「なめたらあかんで、この細さと軽さを保ちつつ強度を上げたんや、そんじょそこらの一撃じゃ折れへんで」

 

一刀「でも決勝戦はあの呂布なんだよなぁ……」

 

真桜「……隊長、折ったら承知せぇへんで。絶交や」

 

え、さっきまでの自信は?というか絶交なの!?

 

一刀「お、折られないように頑張るよ」

 

どうやら勝敗よりも武器の安全を確保したほうがよさそうだ

っとそろそろか?司会者が壇上へ上がり観客へ一礼

 

「お待たせいたしました!!これより決勝戦を行いたいと思います!!!」

 

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!」

 

「ほわああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!」

 

一刀「……連れて来たのか?」

 

天和「人数は多いほうが盛り上がるし~」

 

地和「感謝しなさい、決勝戦にふさわしい舞台になるわよ」

 

人和「やめようって言ったのに……」

 

なるほど、早めに切り上げてファンが納得するとは思えない、皆ここに連れてきたって事か……

 

「さぁ決勝戦!!この栄光ある一戦を繰り広げるのは──」

 

「…………」

 

「…………」

 

おいもう相手わかってるから!

溜めなくて良いよ!

つか飽きたんじゃないのかよ!

 

「北郷一刀将軍対呂布将軍です!!!!!」

 

「うおおお「ほわああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!」

 

……さすが黄巾党、歓声を飲み込んだな

 

 

 

 

 

 

 

ねね「恋殿なら優勝は間違いないのです!あんなひょろっちいのに負けるはずないのです!」

 

星「ほぅ、ならば負けた私は虫けら同然か」

 

音々音「ひぃ!?れ、恋殿!相手は強敵ですぞ!気をつけてくだされ!」

 

愛紗「恋!北郷殿の速さには気をつけるんだぞ!」

 

星「うむ、私が闘った限りでは、まだ全力ではないように思える」

 

朱里「ふぇ!?あんなに激しい闘いだったのに!?」

 

紫苑「そうねぇ、あの子は自分のためには闘っていないから、そういう点で全力ではないわね」

 

翠「ま、恋なら平気だろ、そんな事関係なしに切り伏せて終わりそうだし」

 

雛里「切り伏せたら反則負けですよぅ」

 

桔梗「それに奴のあの氣もなかなかに厄介そうだ、気をつけるんだぞ」

 

蒲公英「あ~!あれすっごい綺麗だったよね!!思わず見惚れちゃったもん!」

 

焔耶「ふん、あんなもの只の見せ掛けだろう」

 

蒲公英「はぁ、これだから脳筋は困ったちゃんなのよねぇ」

 

焔耶「だから脳筋と言うな!!」

 

愛紗「とにかく気を抜くな!勝ったらまた饅頭を買ってやるぞ!点心も食べ放題だ!それと・・・」

 

星「まったく……お主は保護者か」

 

紫苑「ふふっ、恋ちゃんが可愛くてしょうがないのね」

 

愛紗「なっ!?そういうわけでは──」

 

恋「お饅頭も、食べ放題……?」

 

愛紗「あ、あぁ!好きなだけ買ってやるぞ!」

 

恋「♪」

 

すりすり

 

愛紗「はぁぁぁぁぁ~」

 

 

 

 

 

 

 

「それでは両者、壇上へおあがりください!!!」

 

 

 

 

一刀「じゃあ行ってくるよ」

 

魏一同「絶対優勝です(だぞ)(やで)!!!!」

 

 

 

 

恋「……行ってくる」

 

蜀一同「あぁ!!頑張るんだぞ!!」

 

 

 

 

 

 

両者が壇上へ上がり対峙する

 

呂布「……絶対勝つ」

 

うお、なんでこんなに睨まれてるんだ俺……何かしたか?

 

呂布「お饅頭」

 

饅頭?なんで饅頭?

 

一刀「と、とりあえずよろしく」

 

恋「ん」

 

 

 

 

 

「それでは始めて頂きましょう、れでぃ……ぅぁふぁい!!!!」

 

試合開始の合図と同時にバックステップで後ろに下がる

呂布は……俺相手じゃ余裕ってか、まだ戟を構えてすらいなかった

まだ彼女の力の強さや速さを把握していない状態で突っ込んでいくのは危険すぎるな

それになんだろう、試合が始まってからいきなり闘気、とでも言うのだろうか

今までの相手とは違う。

なんだろう、この絡み付いてくるような──

 

恋「──行く」

 

一刀「!!!」

 

短く言葉を言い捨てたと同時に目の前には戟

 

一刀「うお!?」

 

屈んで避けるが、なぎ払う動作を利用して頭上で回転させまた振り下ろしてくる

おいおい……!

ちょっと勢いつけただけで地面にめり込むか?普通

 

恋「……速い」

 

とは言ってるものの明らかに呂布は本気ではない、さすがは天下の飛将軍とでもいうべきか。

ちなみに俺は結構本気で避けてたりする、やっぱ身ひとつでかわすのは無理か……

くそ、考えてる暇はないな……

武器折れたらどうしよ……

 

一刀「ハッ!!!」

 

楼蘭を居合い、重ねて桜炎を居合い。

ぜんぜん平気な顔して受けられた……

 

恋「速いけど……軽い」

 

恋は腰を据え、踏み込みと同時に一閃

 

一刀「うわッ──!?」

 

二刀で防御したにも関わらず、その衝撃に弾き飛ばされた

 

なんつー腕力してんだ……!

本気で刀が折れそうだ。

 

恋「ふっ!」

 

一気に間合いを詰め、戟をなぎ払い、振り上げ、切り下ろし、叩きつける

 

一刀「くッ……!」

 

速い上に力が尋常ではない、何より呂布独特のまるで獣のような不規則な動き

さらに腹部への正拳、上段への回し蹴り、脳天を狙った踵落とし

凪に勝るとも劣らない体術の数々、まさに本能で闘う野生の獣

受け流しながら避けるので精一杯、今までの子達とは何と言うか次元が違う。

 

 

 

 

 

ねね「やはり恋殿の前にはどんな奴もひれ伏す運命なのです!!」

 

愛紗「いやしかし、全て辛うじて捌いている」

 

星「あぁ、我々ならばあの連撃の中で一撃くらいは受けているかもしれん」

 

翠「だよなぁ、それに避けながらも隙を窺ってるようだし」

 

紫苑「……まだまだこれからね」

 

 

 

 

恋「──!!」

 

ノーモーションで繰り出された戟の一閃の軌道を刀で逸らし、地面に衝突。

……今度は何の勢いもつけずに地面が抉れたな。

 

恋「お前、避けてばっかり……来い」

 

と言われても全く攻撃できる隙が無いわけで……くそ!

 

一刀「ハァァ!!」

 

刀を鞘に収め、居合いで戟を弾き回し蹴り、肘鉄、回転斬り

 

恋「……ッ!」

 

一刀「ッらぁ!!!」

 

さらに回転斬りの反動を利用し胴、楼蘭を切り上げ桜炎を切り下ろす

 

恋「ッ……!」

 

そのまま地面に手をつき上段への後ろ蹴り、伸びきった足を思い切り肩目掛けて落とす。

しかし全てを受けられ、さらに一刀の視界から方天画戟が消えた。

 

一刀「え──うあぁぁッ!?」

 

視界の外から振るわれた方天画戟が腹部を捕らえる。

 

……マジか……この威力は……反則だろう……

 

ミシミシとアバラあたりから軋む音が聞こえる。

 

……折れたか?

 

一刀「ッ!?」

 

起き上がると同時に眼前には戟を振り下ろそうとする呂布。

 

一刀「くぁ……!」

 

その一撃を防御するも痛みに耐えられなくなり、

横へ転がり回避するも追い討ちをかけるようにそのまま横へ中段蹴り、なぎ払い、右フック

なんとか全てを受け流し、二刀を平行に構え回転斬り、振り下ろし、切り上げ、中段蹴り

 

一刀「はっ、はっ……ぅぁ!」

 

自分の攻撃ですら骨に響き、痛みで満足に呼吸もできない。

思い切り地面を蹴り間合いを抜け、体勢を整える

 

くそ……痛みで攻撃が繋がらない

ちょっと、ヤバイかも……

 

 

 

 

秋蘭「……?すこし北郷の動きが鈍くなったように見えるが」

 

華琳「おそらく、先程の腹部への一閃でしょう。

   あれだけまともに食らえば骨の一本や二本持っていかれるわ」

 

季衣「兄ちゃん、すっごい痛そうな顔してるね……」

 

凪「痛みのせいでしょうか、うまく攻撃が繋がっていません」

 

春蘭「ここからどう出るかだな」

 

 

 

 

 

呼吸も荒れてきたな。

折れてはいなくてもヒビくらいは入ってそうだ。

 

恋「ふっ!」

 

戟を担ぎ、一刀に突進。

助走をつけ回転し、その長さに遠心力を乗せたなぎ払い

 

一刀「──ッつぅ!!」

 

そのまま振り下ろす、がそれを斜め前へ出て回避。

回転し踵部分での蹴り、斜め上から二刀を振り下ろす

 

一刀「くッ……ぁあ!!!」

 

ミシミシと軋むような痛みを堪え、振り下ろした二刀を切り上げ、回し蹴り、乱れ突き

 

恋「ふッ……く!」

 

なんとか呂布を後退させることに成功、自分へのダメージもかなり大きいが仕方が無い

二刀を低く構え、地面に切っ先をつける。

そのまま呂布目掛け突進、刀を地面に押し付けながら氣を溜めて思い切り斬り上げた

 

恋「ッ!!」

 

予想外の衝撃だったのか、少し驚いたような顔をし、後退

 

恋「……ちょっと重かった」

 

あれでちょっとかよ……

かなり厳しいぞこれ……

 

先程の攻撃が少し鶏冠に触ったのか、恋はものすごい勢いで間合いを詰め、叩きつけ、回転斬り、乱れ突き

 

一刀「ぅ……ぁああ!!!」

 

思い切り弾き返すが、そこに力は無く、すでに戟を振りかぶりなぎ払おうとしている

 

一刀「うああッ!!」

 

その一撃を受けた瞬間、肋骨から嫌な音がした。

 

さっきの一閃はこれか……

つか、今確実にアバラ折れたぞ……

 

肺から空気が漏れ、苦痛となって吐き出た。

その場で腹をを抑え、蹲ってしまった

 

 

 

 

風「お兄さん……」

 

稟「どうやら今のを受けたときに完全に折れたようですね」

 

天和「一刀……痛そうだよぉ……」

 

地和「あの呂布相手にここまで闘えたんだからもういいでしょ!?棄権しないと骨が内臓に刺さるわよ!?」

 

人和「一刀さん……」

 

華琳「棄権するには自分がその意思表示をしなければいけないの、こちらの一存では決められないわ」

 

そう淡々と言い放つ華琳の顔は今にも走りよって行きそうな心配した表情になっている

 

(まさか、棄権の意思表示もできない程の痛みなの……?)

 

皆が諦めの表情を見せる中、横で黙っていた凪が立ち上がり、叫んだ

 

凪「隊長ッ!!頑張ってください!!まだ終わっていません!!

  逆転の機会はあるはずです!!鍛錬の成果を見せてやりましょう!!」

 

真桜「凪……」

 

沙和「凪ちゃん……」

 

 

 

 

 

……凪、か?はは……無茶言うなよ……こちとら動くのもキツいんだ……

 

なんとか身体を起こそうとするが言う事を聞かない

 

恋「お前、弱い。終わらせる」

 

弱い、か。

 

…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ちょっと鶏冠に来たぞこの野郎

 

 

 

 

 

 

 

 

俺だって3年間ずっと修業に没頭していた、他でもない皆を守るために。

凪に無理を言ってまで付き合ってもらってたんだ、その結果をこうも見下げられると言うのは──

 

一刀「──いい事考えた」

 

そういって今まで蹲っていたのが嘘のように立ち上がった

 

一刀「ふぅ、ふぅ──氣ってのはなかなか便利なもんだな。応用次第ではかなり使える」

 

氣を骨が折れた部分に集中させ、痛みを和らげる

多少の痛みは残るものの、闘えないほどではない。

むしろまだまだいけそうだ

 

恋「……?気配、変わった」

 

一刀「はっ、はっ……俄然燃えてきた、絶対勝ってやる……!」

 

ドンッ!!

 

恋「ッ!!!」

 

瞬間、目の前に突然現れた双振りの刃が襲う。

胴から無理やり身体を捻り逆胴。

二刀を叩きつけ、飛び掛り刀から氣を撃つ

 

恋「は……くッ!」

 

一刀「はぁ、はぁ……見たかこんにゃろう……!」

 

初めて呂布が地面に膝をついた。

 

 

 

 

祭「ほう、面白い事をする」

 

冥琳「今の間合いを詰める動き、速さが尋常ではなかったが……」

 

明命「はい、目で追うのもやっとでした」

 

蓮華「今彼は何をしたの?」

 

祭「おそらく、両足に氣を送り外へ放出するように暴発させたのじゃろう、

  なかなか器用な真似をする」

 

穏「そんな事ができるんですかぁ?」

 

祭「わしにはできん、そもそもあんな所で氣が暴発しようものなら自分に跳ね返ってきてしまう」

 

思春「では、あの者が扱っているあれは氣ではないのですか?」

 

祭「うーむ……」

 

 

 

 

 

恋「……速い……重くなった」

 

むくりと起き上がる呂布の目は、今にも相手をかみ殺してしまいそうな猛獣の目。

 

恋「お前、強い……!」

 

戟を頭上で振り回し、飛び掛かる

全身のバネを使い、思い切り刀を振り上げ受け止め、戟に刀を滑らせ懐にもぐりこむ

 

一刀「ぉらあ!!!」

 

腹部へ目掛け刀の柄を叩きつけ、足払い、体勢が崩れたところへ掌低を放つ

 

恋「ふッ……ぁあ!!」

 

痛みを押し殺し、戟を振り下ろし、なぎ払い、正拳

 

一刀「はっ──くぁああ!!!」

 

正拳を食らうも後退はしない、その場で二刀を振り、応戦。

 

恋「ッ!!」

 

呂布の猛獣のような不規則且圧倒的力で相手に恐怖を植え付ける狂気の武。

一刀の淡い氣を散らせながら美しくも豪快、そして強い意志を感じさせる双刃の武。

互いが互いを捻じ伏せようとぶつかり合う。

二人を見るものはその気迫と恐怖に声を失う。

自分とは異質、異空間、異なる存在。

互いに一歩も引かず、一撃を受け流し、一撃を与える。

その光景は誰もが呼吸を忘れ、寒気がするほどに美しく、戦慄を覚えた。

 

 

 

 

 

凪「……隊長の氣が変です」

 

秋蘭「先程の温かい──とかいうやつか?」

 

凪「いえ、なんというか一撃を受ける事に鋭くなるといいますか」

 

真桜「どうゆうことや?それじゃよう伝わらんで」

 

凪「とにかく見ていてくれ、私にもわからないんだ」

 

 

 

一刀「ハアァァ!!!!」

 

恋「ふっ!」

 

どれだけ打ち合っただろう、腕は痙攣し、骨は軋み、身体が悲鳴をあげる

患部に氣を送り込む事により痛みを緩和していたが、それもそろそろ限界が近づいている。

 

 

 

 

でも

 

 

 

 

 

 

 

俺はこいつに

 

 

 

 

 

 

 

 

天下無双と言われたこの飛将軍に

 

 

 

 

 

 

 

 

……勝ちたいッ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

一刀「うおおあああッ!!」

 

恋「ッ!!!」

 

ただただ踊り狂う、得物のぶつかり合う轟音を旋律に変えて

この武の王を征したい、この勝負に勝ちたい

双振りの斬撃が牙を向く。

まるで一本桜の狂い咲きを目の当たりにしているかの如く、刀から氣が飛び散り吹き荒れる

 

一刀「ハァァァァ!!」

 

乱舞の勢いに回転を乗せ、全身全霊を込めた一閃を放った。

 

 

そこに広がる光景は天下の豪傑もが見惚れてしまうほどに壮絶だった。

全身の血が沸騰し、興奮を覚える壮絶な光景

吹き荒れる”氣”の花びら一つ一つが

業火となり自らと共に猛獣を包み込んだ

 

 

 

 

 

 

 

一刀「うああッ──!?」

 

恋「あああ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

春蘭「な、何だ今のは!?」

 

秋蘭「真紅の花吹雪──」

 

凪「すごい……」

 

 

 

 

 

 

 

両者共「氣」の暴発に耐え切れず、端まで飛ばされる。

しかし未だ戦意を失ってはいない

 

同時に地面を蹴り互いの距離を詰め、得物が重なり合う

とうに二人の体力は限界を超えている、しかし今目の前にいるこの強敵を倒したい

只この闘いが楽しい、終わらせたくない。

その想いが二人を突き動かしている

二刀を使い、相手の隙を作ろうと乱れ突く

その神速の突きを自らの武で叩き落す

 

一刀「ハァァ!!!」

 

斜めに切り下ろし、双振りの刀を平行に叩きつける

 

恋「──ハッ!!」

 

頭上で戟を回転させ勢いを増し、応戦する

 

両者が押されるように後退する。

もはや踏みとどまる事もままならない、互いに次が最後の一撃だと悟る

起き上がり、呼吸を整え精神を統一する。

 

両者同時に踏み込み、最後の──自身の持つ最高の一撃を持って相手を制す

 

一刀、恋「ハァァァァァッ!!!」

 

楼蘭、桜炎から放たれる、真紅の氣を纏い真っ二つに切裂かれる空間。

方天画戟から放たれる、狂気と力に満ちた武神の一撃

それぞれの最高潮に達した武がぶつかり合い、轟音が響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

呂布は戟が破損し壇上の端まで吹き飛ばされ

一刀は楼蘭が砕け、場外まで吹き飛ばされていた

 

 

 

 

 

「勝者!!!呂布将軍です!!!!!!!!!」

 

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

 

「ほわああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

 

霞「だぁぁぁぁぁ!!!!おっしいところまでいったんやけどなぁ……」

 

凪「ええ……でもすごい闘いでした!これほどまでに見事な闘いは見た事がありません!」

 

沙和「そうなの!あの飛将軍相手に後一歩のところまで来れたのはすごいの!!」

 

風「今一歩及ばないなんて、中途半端なところがお兄さんらしいですねー」

 

稟「……私には褒めているようには聞こえませんよ、風」

 

季衣「兄ちゃん怪我してるのにあんなに動いて平気なのかな……」

 

流琉「そうです!何よりも兄さまの身体が心配です!」

 

秋蘭「あれだけの強打だ。むしろ綺麗に折れたのではないか?」

 

春蘭「武人ならばあれくらいどうということはない、気合だ!」

 

桂花「どうせならあのまま死んでくれないかしら、居ても迷惑なだけだし」

 

華琳「ふふっ、確かに負けてしまったけど。一刀の力が見れた事だし良しとしましょう」

 

(ここまで強くなってるなんてね……頑張ったのね、一刀)

 

 

 

 

 

 

いってぇ……

もう全身痛くて動けないっす、誰か助けて──くれないよなぁ……ん?

 

場外の端で仰向けに転がっていると、不意に影が顔の辺りを覆う。

逆光ですぐには確認できなかったが

 

一刀「?呂布?どうしたんだ?」

 

俺の顔を覗き込むようにしてじっと顔を見つめている呂布。

……えっと、なんだろう?

 

恋「……ん」

 

いや、ん、とか言われてもわからないんだけど──って、おお?

気遣ってくれたのか、呂布が俺を立たせるために肩を貸してくれた

 

一刀「ありがとう、ごめんね。君も疲れてるのに……いやぁどうにも身体が動かなくて──」

 

恋「……いい」

 

そう短く告げ、魏の控え席へ向かう

 

一刀「優しいんだね、本当、ありがとう」

 

うりうりと頭を撫でる

 

恋「…………」

 

俺が撫でた部分を触り、こちらを見つめてくる

……あ、やべ、つい皆にやってるから癖でこの子の頭も撫でちゃったけど……

 

一刀「あ、ごめん、嫌だった?つい癖で──」

 

そういうとフルフルと頭を振り、無言で控え席へと運んでくれた。

やべ……機嫌悪くしちゃったな……

 

凪「隊長!大丈夫ですか!?」

 

沙和「隊長いたそうなの~!」

 

真桜「無茶しすぎやで隊長!骨折れとんのにあんな激しく動くバカがいるかい!」

 

一刀「あ、あぁ大丈夫だよ、それより楼蘭が折れちまった。本当にごめん」

 

真桜「アホか。そんなんどうでもええねん、今度はもっと頑丈なの作ったるさかい」

 

一刀「ははっ、ありがとう」

 

頭を撫でる──と、それを見つめる呂布

 

恋「…………」

 

無言でこちらに歩み寄り、ズイっと頭を差し出す

 

え、え~っと。

これは、何?撫でろと?

よくわからないまま呂布の頭をわしゃわしゃと撫でる

 

恋「……♪」

 

な、なんだこの小動物を相手にしているかのような保護欲は……!

 

恋「もっと」

 

わしゃわしゃ

 

恋「……♪」

 

撫でてやると満足したのかてててっと蜀の控え席へと戻っていった

あぶないあぶない、危うく俺が陥落してしまうところだったぜ。

 

風「あの猛獣相手にも種馬の力を発揮するなんて。

  お兄さんは本当にどうしようもないチ○コ野郎ですねー」

 

……不機嫌な風に罵声を浴びせられる。

チ○コ野郎て。

どんな罵倒だ。

 

霞「恋にまで手ぇ出すなんてな、一刀くらいやで?そんな命知らず」

 

一刀「まだ手出してないよ!」

 

華琳「まだ、ねぇ。ではこれから出す予定があると?」

 

秋蘭「北郷……」

 

春蘭「貴様ぁ!!我々だけでは飽き足らず他国の女にまで手を出すつもりか!!!」

 

一刀「そ、そんなわけないだろ!?いえ!そんなわけございません!!

   私こと北郷一刀は魏の方々のみを愛すると心に決めておりますゆえ!」

 

桂花「白々しいわね。

   どうせ天の世界に戻った時も向こうじゃ犬のように女の尻を追いかけてたに違いないわ」

 

場をかき乱すのはやめてください

 

雪蓮「さてと、じゃ一刀、帰りましょ♪」

 

そう言って俺の手を取り歩き出そうと──

 

華琳「あら、さっきの続きがしたいと、そういうことかしら?」

 

したところで閻魔様からお声が掛かる

 

雪蓮「あぁら、まだ懲りないの?この貧乳ちゃんは」

 

華琳「さぁ裏へ行きましょう、みっちりとその身体に教え込んであげるわ」

 

雪蓮「ふん、上等ね。今度こそ一刀を連れ帰っても良いと言わせてやるわ」

 

二人が裏へと去っていく。

……実はかなり仲良いだろう、お前ら。

 

その後の敗者復活戦に出られなかった俺はそのまま負傷退場。

武人ならば自分の身体くらい自分で守るのが当たり前とは春蘭の言葉。

ちなみに今大会の1位が呂布、2位が霞(幻の二位が俺)で3位が関羽さん。

そして華琳の閉会の言葉、ところどころ服に激戦の後が残っているのは気のせいだろう。

こうして第3回天下一品武道会は幕を閉じた──

 

結局俺って中途半端なんだな……泣けるわ。

 

 

そしてその夜、もちろんの事皆さんはおとなしく自国に帰るわけも無く兵を交えた大宴会

ちなみに俺は医者に絶対安静、飲酒禁止令が出されているが、まぁ明日からにしよう

だってこんな楽しそうな宴会を開いてる中一人寝台に横たわってるなんてそれ何て拷問って話だ。

そんなふうに思いながら酒をちびちび仰っていると

 

恋「…………」

 

またしてもじぃぃぃっとこちらを見つめる視線。

うーむ、どうにもやりづらい。

そんなに俺は珍しい顔をしているのだろうか。

そんな不安に駆られ、顔をペタペタと触っていると、てててっとこちらに小走りでやってくる

 

一刀「……どうしたの?」

 

恋「…………」

 

一刀「えーっとぉ……呂布?」

 

恋「……恋」

 

一刀「え?」

 

恋「恋でいい」

 

一刀「いや、それは君の真名だろ?そんな簡単に人に預けちゃ──」

 

恋「……」

 

な、なんだこの悲願するような眼差しは!うわやめてくれ俺には破壊力が強すぎる!

 

一刀「恋……これでいいか?」

 

恋「……♪」

 

真名って大事な名前なんでしょ?

俺最初に風の真名を呼んじゃったとき殺されかけた記憶があるんですけど。

何か最近は真名の大盤振る舞いが過ぎる気がするぞ。

 

恋「ん」

 

ぐはぁやめてくれ!そんな猫みたいに頭を手に押し付けないでくれ!

思わず

 

なでなで

 

恋「……♪」

 

な?こうなるだろ?いや男ならだれでもこうなるって、ならなかった奴は帰れ。

あまりにも保護欲を刺激するので恋を撫でていると

 

「ふらいんぐちんきゅーきぃぃっく!!!!!」

 

ぐほぁ!!?

 

音々音「何を恋殿に軽々しく触れてやがりますか!

    ちょっといい勝負したからって調子に乗るなです!!」

 

一刀「…………」

 

音々音「黙ってないで何とか言いやがれです!!この変態野郎め!!」

 

一刀「…………」

 

風「お兄さ~ん──ぉお!?お兄さんが泡吹いて倒れているのですよ」

 

音々音「──え?」

 

恋「……息、してない」

 

音々音「な、なななななんですと!?こ、こら変態!!あれくらいで死に腐るなです!」

 

風「なるほどーお兄さんの息の根を止めたのは音々ちゃんでしたかー」

 

いつもののんびりな口調。

しかしそれが逆に恐怖を煽る。

 

音々音「ひぃ!?そ、それは大きな誤解なのですよ!?こ、これは只のお遊びでして!!

    ほ、ほらお前!!さっさと起きやがれです!!」

 

ドボォ!!!   

 

はぐぁ!!?

 

一刀「はっ!!……何かものすごく遠くへ行く夢を見ていた気がする」

 

うーん、あれはどこだろう。

すごく綺麗な川だったなぁ。

 

音々音「まったくあれしきの攻撃で死に掛けるなど鍛え方がなって「ガン!!」あいたぁ!?」

 

恋「ちんきゅ、謝る」

 

音々音「し、しかし恋殿!この変態野郎は恋殿の大切な大切な純潔を──」

 

狙ってねぇよ

 

恋「悪いことしたら謝る」

 

音々音「ぅぅ、ごめんなさいです……」

 

一刀「あ、あぁ気にしてないよ、大丈夫だから」

 

なでなで

 

ねね「撫でるなです~!!!!」

 

ぶんぶんと腕を振り回すのでそのまま頭を抑え距離を保つ。

 

一刀「はいはいごめんよ、あ、それと恋」

 

恋「……?」

 

一刀「君が真名を預けてくれたんだ、俺も教えて上げられたらいいんだけど俺には真名がないんだ

   でも親しい人たちからは一刀って呼ばれてるからそう呼んでくれよ」

 

恋「……一刀」

 

音々音「な、なんですと!?真名を預けたというのは本当ですか恋殿!?」

 

恋「ちんきゅ、うるさい」

 

音々音「そんなぁ~、恋殿ぉ~」

 

そんな微笑えましい光景を見ていると

 

風「お兄さん、お兄さん」

 

風が服の袖をくいくいと引っ張っている

 

一刀「ん?どうした?」

 

風「ちょっとここに座ってもらえますか?」

 

?よくわからないがどうやらそこの木の根元に座ればいいらしい、

ということなので根元に胡坐をかく

 

風「はいはいではではー」

 

……え?背凭れのついた椅子がほしかっただけ?まぁいつもの事だしいいけど

どうやら俺の上はとても座り心地が良いらしい、季衣と華琳のお墨付きだから間違いない

 

「ふふっ、どうやら先を越されてしまったようだな」

 

声の聞こえたほうに振り返ると酒を持った秋蘭

 

一刀「秋蘭も座りたかったの?」

 

秋蘭「まぁそれはまた別の機会にするとしよう」

 

そういって俺の横に腰掛けた

 

秋蘭「身体の具合はどうだ?まだ痛むか?」

 

一刀「骨が折れてるのにあれだけ激しく動いたからね、まぁでもすぐ治るよ」

 

秋蘭「そうか」

 

そういって持ってきた酒を杯に注ぎ仰ぐ

 

秋蘭「北郷のその力はなんなのだろうな、凪によれば氣ではないようだが──」

 

風「お兄さんは珍種なのですか?」

 

……何かその言い方嫌なんですけど。

 

一刀「俺が珍種なんじゃなくて俺の氣が珍種なのね、そこ間違わないように」

 

風「おやおやこれは失礼しました、お兄さんはやはり珍種だったのですね」

 

絶対わざとなので敢えて突っ込まないことにする

 

秋蘭「感情の起伏によって変化する氣など聞いたこともないそうだ」

 

一刀「え?雪蓮の時とはまた違かったの?」

 

秋蘭「途中までは同じだったよ、しかしあれは北郷の感情なのだろうか。

   突然お前の氣が真紅に染まったのだ」

 

……よくわかんないな。

でも初めて闘いが楽しいと感じた気がする。

 

秋蘭「ふふっ、まったく。本当におもしろい男だな、お前は」

 

そういってまた酒を仰ぐ

 

秋蘭「さて、私は華琳さまのもとへ戻るとしよう」

 

一刀「あぁ、今度ゆっくり飲もうな」

 

秋蘭「楽しみにしているよ、一刀」

 

そういい残し、その場を去って行った

 

「か~ず~と♪」 

 

ムニッ!

 

うほっ!とても魅惑的な感触が──

 

「な~に鼻の下伸ばしてんのよ変態」

 

「まったく……相変わらずですね」

 

またも不意に声を掛けられ、そちらを向けば三人の歌姫さま

 

一刀「伸ばしてない……と思う。

   あぁあとせっかく見に来てくれたのにごめんな、微妙な結果になっちゃったよ」

 

地和「まったくよ、見に来て損した気分だわ」

 

人和「もう少し素直になればいいのに……一刀さんはとても頑張っていました。

   まさかあれほど腕を上げているなんておもわなかったわ」

 

天和「そうだよ~、一刀はやっぱりお姉ちゃんの物なんだよねぇ~」

 

いや誰もそんな話してないし……ていうか酒くさっ!

 

「にいさま!!」

 

「兄ちゃん!!」

 

一刀「流琉、季衣。どうした?」

 

流琉「はい!先ほど教えていただいた天界の料理ができたので試食をしてもらおうと──」

 

季衣「すっごいおいしそうだよね!!これなんて言うの?」

 

一刀「ん、おおできたのか、それはシチューって言って、

   おいしい上に栄養分も満遍なく摂取できるっていうトンデモ料理だ」

 

ちなみに原料は細かいところは違うが流琉ならそこらへんも上手くやっているだろう

ということで試食をしてみることに──うん、すんげぇ旨い、流石は流琉。

俺の世界のものよりも美味しいかもしれない

 

一刀「すごく美味しいよ、よくあんな少ない情報でここまで作れたね」

 

そう、俺も別にシチューを1から作るわけではない、パックの後ろに書いてある物を提示し

ここにないものはこれがいいんじゃない?程度の助言をしただけ

 

流琉「本当ですか!?よかったです!」

 

一刀「華琳にも食べさせてあげるといいよ、絶対美味しいって言うから」

 

流琉「はい!早速行って来ます!」

 

器用にシチューの入った鍋を抱え、走り去った

 

一刀「なぁ、風」

 

突然あのフード野郎が言っていた事を思い出した

 

風「はいはい?」

 

ここに帰ってきた理由、まだ役目が終わっていないかららしい

しかしこの一月過ごしてきて特別異常がないのでこれまでのことを聞いてみる

 

一刀「俺が消えた後の3年間、何かおかしな事はあったか?」

 

頭を撫でつつ

 

風「ん~、おかしなことと言いますと?」

 

一刀「よくわからないんだけどさ、いや、何もないならそれでいいんだよ」

 

そう、何も無く平和に過ごせるならそれに越した事は無い

 

風「そうですねー、おかしな事、という程のものではないと思いますが

  お兄さんが帰ってくる少し前、五胡の集団と一緒に気持ちの悪い集団に襲撃されましたねぇ」

 

一刀「気持ちの悪い?なんだそれ?」

 

風「はいー、全身を白い装束で包んだ方達です。

  しかし規模は小さいので気にする必要はないと思いますよー?」

 

白装束、ねぇ、黄巾党みたいな感じだろうか

 

風「それにお兄さんが帰ってきてからのこの一月、

  一度も襲撃の報告はありませんので大丈夫だと思いますよ」

 

ふむ……まぁとりあえず頭の隅にでも置いておこう。

今は何もわからないみたいだし

 

???「あ、あの!北郷様でございますか!?」

 

ん?聞いた事ない声だな、誰だろう──と振り返るとやはりそこには見知らぬ女性。

歳は俺とあまり変わらなそうでその長い綺麗な黒髪を後ろで一つに結っている。

ようするにポニーテールだ

 

一刀「えっと、どちらさん?」

 

するとその子は背筋を伸ばし

 

???「はっ!姓は徐、名は晃、字は公明であります!」

 

ん、徐晃……え、徐晃?徐晃って官途の戦いとか赤壁の戦いとかで活躍してた武将じゃないか!

古参の武将なのにいなかったからてっきりこの世界にはいないものだと……

 

徐晃「あ、あの、北郷様?」

 

一刀「え?あ、あぁうん徐晃さんね、うん。どうかしたの?」

 

徐晃「はっ!先程の大会での試合、とてもお見事でございました!

   私は新兵のため貴方をお話でしか聞いた事がありませんでしたが、とても素晴らしい武です!」

 

一刀「ありがとう。あとそんなに畏まらなくても良いよ」

 

徐晃「い、いえしかし──」

 

一刀「そんなに畏まられたら俺まで緊張しちゃうからさ、ね?」

 

そう言って笑顔を向けるとしぶしぶ頷いてくれた

 

一刀「新兵って言ってたけどどれくらいに入ったの?」

 

徐晃「一月ほど前です、曹操様の志に惚れ、入隊させていただきました。

   民に優しく国を想い、率先して民の意見を聞き、いろいろな事をなさってくださいました」

 

へぇ……結構意外だな。

華琳の場合意見とか無視するかと思ってたし──ってそれはないか、

以前も街の皆を気遣っていた記憶がある

というかこの子が来たのは俺が帰ってきた頃と丁度時期が重なるのか

 

一刀「そっか、じゃあこれからよろしくね、徐晃さん」

 

徐晃「は、はい!!!よろしくお願いします!それでは私はこれにて失礼いたします!」

 

そう言って元気に走り去っていった。

うん、かわいい

 

風「今日初めて会った子をもう陥落するなんてお兄さんも節操がないですねー」

 

……俺普通に挨拶しただけだと思うんだけど。

そんな事を思いつつ宴会場を見渡す、凪が黄蓋さんに酒を飲まされ、目をまわしている──ご愁傷様。

真桜はその横で折れた楼蘭とにらめっこ、何か発明の兆しが見えるのだろうか。

沙和は──新調した服を明命や呂蒙ちゃんに見せびらかしている。

二人とも沙和からファッションを学んでいるようだ

 

「おや、北郷殿ではありませんか」

 

前から歩いてきたのは酒とメンマの山を抱えた星と

 

「あらあら、御使い様。こんなところにいらしたのですか?」

 

少しだけ出来上がった様子の黄忠さん。

……何か視線が……

 

星「ほう、風がここまでべったりになっているところを見ると──

  ふむ、やはり私の目に狂いはなかったようだ」

 

紫苑「そうねぇ。こんなに良い殿方がいらっしゃるなんて、羨ましいわねぇ」

 

そういってとろ~んとした視線を浴びせてくる黄忠さん。

なんだろう、身の危険を感じる

と、その後ろにもう一人いるようだけど……

 

星「あぁ、この者は以前私が兵の鍛錬を見ているときになかなかの腕前でしてな

  そこで引き抜いた者です」

 

「姓は姜、名は維、字は伯約と申します」

 

姜維──あれ?どっかで聞いた事あるけど……忘れちゃった♪てへっ。

 

姜維と名乗るその子は淡い栗色の髪、極端に長いサイドの髪が印象的だった

そして凛とした雰囲気を持ち、とても礼儀正しい

 

一刀「俺は姓が北郷、名が一刀、字と真名はないんだ。好きに呼んでくれていいよ」

 

風「ぉお、お兄さんもう受け入れ態勢ばっちりですか、なかなかやりますね」

 

その誤解を招くような言い回しはぜひやめていただきたい。

あ、ほらね?少し遠ざかっちゃったよ、。

……涙がちょちょぎれるねぇ。

 

星「ふふっ、安心して良いぞ。この殿方は気は多いようだが一途に愛してくれるようだからな」

 

……褒められてるのだろうか

 

紫苑「そうよ?それに一人の女しか愛せないような甲斐性では私の相手は務まりませんよ?」

 

誰が誰の相手をするのでしょうか。

というか誰もそんな話はしていない。

俺は素直に自己紹介をしただけなんだけど……

 

星「お気になさるな、少しばかり人見知りが激しいだけなので」

 

そういう姜維ちゃんは黄忠さんの背中に隠れこちらを凝視。

な、なんだろう……

 

姜維「先程の大会でのご活躍、お見事でした」

 

そう言ってぺこりとお辞儀、また隠れる。

うん、歩み寄ろうとはしてくれているみたいだ、よかった

っと、そろそろお暇しようかな、軽く酔いが回ってきたみたいだし

 

一刀「風、ごめんね、ちょっとどいてくれる?」

 

風「むー、仕方が無いですね」

 

しぶしぶと了承してくれる、そして俺はそのまま少し離れた場所へ移動し、腰掛ける

何かこっちに帰ってきてから落ち着いた日が無かったような気がする。

とりあえず大きなイベントも終わったしゆっくりできるのかな?

と、思いながら月を眺める、五胡に白装束の集団か。

……厄介なことにならなければいいけど

 

今回の俺の役目が何なのかはわからない、この2つの集団から世界を守ること?

いや、俺はそんなどこぞのヒーローのような真似はできない、だとしたら何だろう。

そしてその役目を終えたら俺はまた消えてしまうのだろうか

そもそも五胡と白装束の目的はなんだ?

襲撃を受けたとは言っていたが小規模且損害はないようだった

 

一刀「ああぁあぁ!!ぜんっぜんわからん!!」

 

……正直どうでもよかった、俺はこの世界に、皆のそばに居られるならそれでいいんだ。

月夜の下、今一度誓う。

皆を守る、笑顔を守る、二度と皆を置いて消えたりはしない

 

どうか、守らせてくれよ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

???「役目を終えたお前は消える、それは決定だ──しかし」

 

深くフードを被った者は遠くから一刀を見つめ呟く

 

???「今回は我等が居る、できるかぎりのことはしよう。なぁ、貂蝉」

 

貂蝉と呼ばれた大男は答える

 

貂蝉「あたりまえよん、もう二度とあの子達にあんな辛い思いをさせないわ。

   そのために私は傍観者をやめたんだもの」

 

???「うむ、それにしてもお主がそれほどにこの外史……

    いや、あの者達を救おうとする理由はなんだ?」

 

???「……理由なんてないよ。只ね、私はこの悲しい外史を何度も見続けた。

    その中で彼が帰還を果たした只一つのこの外史。

    この幸福な世界を守ってみたくなったんだ。

    私にも人の心というものはあるからね」

 

貂蝉「ふーん、……ま、それじゃ、私は行くわん、またね、介象ちゃん♪」

 

そういい残し、筋肉達磨は「ぶるぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」と雄たけびを上げ文字通り飛んでいった

 

???「うむ、ではワシも行くとしよう、さらばだ」

 

こちらの筋肉達磨も文字通り飛んでいった

 

???「……いい奴なんだけどなぁ。なんとかなんないかなぁ、あれ」

 

介象と呼ばれた者はそう不満を言い残し、霧のように姿を消した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ぶるぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!

 

一刀「うおぉ!?、な、なんだ!?」


 
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