No.505334

SAO~黒を冠する戦士たち~ 第百二十五技 終息する事件

本郷 刃さん

第百二十五話です。
今回で「圏内事件編」は終了です。長めになっております。

どうぞ・・・。

2012-11-07 09:54:38 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:11077   閲覧ユーザー数:10050

 

 

 

 

 

 

 

第百二十五技 終息する事件

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

キリトSide

 

オレンジのカーソルが見えなくなったところで俺はシュミットに≪解毒結晶≫を使い、麻痺を解除した。

 

「ふぅ……ありがとな、二人とも。詳しく話せないのに」

 

「いえ、奴らに牽制することも出来ましたし…」

 

「……気にするな。それでは、私達は先に帰らせてもらう」

 

俺が礼を述べると、ヴァルとハジメは一言ずつ喋ってから帰っていった。

 

「三人も、無事で良かった」

 

「ありがとうございます、キリトさん」

 

「……後でお詫びにいくつもりでしたのに、助けていただいて…」

 

「礼を言う。だが、なぜここに…?」

 

「それは今から説明しますよ」

 

三人の安否にホッとすると、カインズ氏、ヨルコさん、シュミットが礼を述べてきた。

 

そして俺はシュミットの疑問に答えるために気付いた事を全て説明した。

 

 

 

「そ…んな……」

 

「彼が…グリムロックが、僕達を……」

 

「あいつが、全ての黒幕……」

 

ヨルコさんは声を震わせ、カインズ氏とシュミットは呆然と呟いた。

 

三人とも呆然自失と言っていい状態だ。こうなっても仕方のないことだろう。

 

「で、でも、リーダーとグリムロックさんはいつも一緒で、あんなに仲が良くて…」

 

「リーダーの方はそうだったかもしれない。けれど、グリムロックはどうかな?

 もしかしたらなにかを抱えていたかもしれない。

 でなければこんな事にはなっていないんじゃないか?」

 

ヨルコさんの言葉を遮り、俺は言い放った。それを聞いた三人はどこか納得した様子だ。

 

「まぁ、詳しい事は本人に聞けばいいさ…」

 

俺はそう言ってその方向を見た。そこにはアスナと長身で丸眼鏡を着けた男性が現れた。グリムロックだ。

 

「久しぶりだね、みんな」

 

現れた男にヨルコさんは問い詰めていく。

 

しかし、彼は今回の一件の見届けるためにきたと言った。

 

アスナは《隠蔽(ハイディング)》していた彼を看破(リビール)して見つけたそうだ。

 

さらに彼はストレージに指輪は出なかったと言った。リーダーが指輪を装備していたのだと言い張ったのだ。

 

これに皆が言葉に詰まるが、俺は一つ気になっている事を聞いた。

 

「一つアンタに聞きたいんだが、グリセルダさんが殺された時、アンタと彼女のストレージは共通化されていたはずだ。

 その時にアンタのストレージ、または足元にレア指輪は間違いなく出なかったんだな?」

 

「勿論、出なかったとも」

 

俺はそれを聞いて、彼を追い詰めるべく言葉にした。

 

「指輪は片手にそれぞれ一つずつしか装備できない。

 一つはアンタとの結婚指輪なのは間違いないはず。

 なら、もう一つは装備していなかったのか。ヨルコさん、どうかな?」

 

俺の質問に彼女はハッとした表情になり、すぐさま怒りの表情を露わにして言った。

 

リーダーはレア指輪を装備していない、と。

 

リーダーは右手にギルドリーダーの証である印章(シギル)を、左手には結婚指輪をつけ、

外す事は絶対にありえないと言ったそうだ。

 

そして、その二つの指輪はリーダーが殺された現場に残されており、

リーダーを知っていた人物が見つけてヨルコさんに届けたという。

 

「その二つの指輪は、今ここにあるわ!」

 

彼女はグリセルダさんの墓の側の地面を掘ると一つの箱を取り出した。

 

それは≪永久保存トリンケット≫という『耐久値無限』の保存箱だ。

 

大した大きさではない箱だが、そこから出されたのは二つの指輪。つまり印章と結婚指輪だ。

 

それを見たグリムロックは諦めた様子で語り出した。

 

彼とグリセルダさんは現実でも夫婦だったという。

 

仲が良く、喧嘩もしたことがないというほどで、彼女は一切の不満のない奥さんだった。

 

だがこのゲームに囚われた時、彼はこの世界に怯え、彼女は勇敢にも歩み出した。

 

彼女の変わった姿に、彼は恐怖を抱いたという。

 

いつか解放された時に、彼女に別れを切り出されるのではないかと。

 

だからこそ、彼女が自分の妻である内に彼女を永遠の思い出にした、と。

 

それを聞いて、アスナは確固たる意志で言った。それは愛情ではなく所有欲だと。

 

俺も続けて言い放った。

 

「グリムロック。グリセルダさんは一度でもアンタに離婚しようと言ったか?

 言わなかっただろ。それが、彼女がアンタを愛していたという十分な証拠だよ」

 

グリムロックは項垂れながら地面に手をついた。彼の処分は三人に任せる事になった。

 

シュミットは彼に必ず罪を償わせると言った。

 

「ああ、そうだ。カインズさん、ヨルコさん……」

 

「「っ!?」」

 

俺は二人の間に、剣で高速の突きを繰り出した。

 

「キリト君っ!?」

 

アスナはあまりのことに驚いているが俺は続ける。

 

「今回の一件で、何千人というプレイヤー達が恐怖を覚えた。

 安全な場所が、安全ではないという…。それをよく覚えていてくれ」

 

ヨルコさんとカインズさんは申し訳なさそうに俺に頭を下げてきた。

 

後日、改めて謝罪と礼をしにくると言って、四人は街へと戻っていった。

 

そこでアスナが俺に聞いてきた。

 

「キリト君。仮に、自分が誰かと結婚して、相手の隠れた一面を見つけたら……君ならどうする?」

 

そんな風に訊ねてきたアスナに、俺は少しだけ間を開けてから答えた。

 

「嬉しい…かな、やっぱり」

 

「え?」

 

「知っていた一面で好きになって、新しく知った一面でもっと好きになることができるから。

 だから、好きな人の事をたくさん知りたくなる…」

 

気障っぽいかなと思いつつも、俺は自分の考えを口にした。

 

アスナを見てみると頬を微かに紅く染めてこちらを見ていた。

 

俺は笑みを浮かべながら視線をずらした。

 

その時、この世界ではまずありえないものを目にした。

 

アスナも何かを感じ取り、その方向を見て驚愕している。

 

そこに居たのは……軽鎧に身を包み、片手剣と盾を身に着けた美しい女性がいた。

 

彼女がそうなのだろうと、すぐに理解できた。

 

「俺達が……必ずこの死の遊戯(デスゲーム)を終わらせる。だから、任せてくれ…」

 

俺の言葉を聞いた彼女は、微笑むとその姿を消した。

 

「今のって……」

 

「残留思念……人の想いは、時に科学では推し量る事の出来ないものを残す」

 

アスナはしばらく考え込んだ様子を見せてから俺の方を向いた。

 

「ねぇ、キリト君。フレンド登録しようよ。君、友達少なそうだし」

 

「失敬だな、これでも二十人は登録してるよ」

 

「嘘!? 意外なんだけど」

 

本当に失礼な奴だな。まぁ、他の人からみればそう思うかもしれないけど。

 

「本当だよ。黒衣衆はもちろん、仲の良いギルドリーダー達、

 他のソロとか情報屋、中層にも何人か登録している奴らがいるんだ」

 

「そうなんだ~」

 

何故か感心されている。なんにせよ好きな子からのお誘いなら、受けるしかないな。

 

「ま、嬉しいお誘いだからありがたく受けさせてもらうよ」

 

「ぁ、うん///」

 

俺はアスナからのフレンド登録申請を受諾した。『圏内事件』並びに『指輪事件』は終息へと相成った。

 

キリトSide Out

 

 

 

To be continued……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

後書きです。

 

はい、「圏内事件編」終了です。

 

一気に終わりまで持っていっちゃいました、これ以上引っ張るのが難しかったもので。

 

次回で一度元の時系列に戻りますが、またすぐに新たなストーリーに入ります。

 

それでは・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 
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