第九十七技 其は憤怒の化身
シリカSide
「なんで、ねぇ。それは脱獄したからよ」
「なっ!?」
ロザリアさんの言葉にあたしは絶句した、ありえない。
あの脱獄不可能と言われている『黒鉄宮』の牢屋から出てきたなんて…。
「どうやって、って顔してるわよ。折角だから教えてあげる。私達を出してくれたのは……『
「そんな…あの人達が、また……」
あたしはさらに驚いた。でも彼等ならやってもおかしくないとも思った。
そう理解したらもう一つ疑問がでてきた。
「どうして……あたしを攫ったんですか…?」
「それはね…復讐のためなのよ! シリカ、あんたは唯の餌。獲物を釣るためのね」
「復讐……餌…獲物…? ま、さか……ヴァル君を……?」
あたしが呆然として口にすると、彼女はその顔を
「そ、あんたを餌にあの餓鬼を誘い出して、あんたを盾にしてあいつを殺す!
その後であんたも殺したら、私達の復讐は完了…。
大人しく黒鉄宮に戻ればこのゲームが終わるまでは安全でいられる。そういうことよ…」
「あ……や…」
あたしが捕まったということは、彼女達の計画は成功したようなものだ。
「ちなみにここは迷宮区の安全エリアだからもしもの時はここから出て、モンスターに殺させればいいしねぇ」
それじゃあ、もしここにヴァル君が来てしまったら。
ヴァル君だからあたしを助けようとするかもしれない。だけど、あたしを盾にして彼女達は……。
「ごめんなさい……ヴァル君…」
あたしがそう呟いた、次の瞬間。
―――ドガァーーーーーンッ!!!
「「「「「なっ!?」」」」」
迷宮の壁に振動と衝撃が走った。ありえない、こんな振動と衝撃が起こるなんて。
そして、安全エリアの入り口から入ってきたのは……、
「……………」
「ヴァ、ル…くん…?」
あまりにも冷たく、感情のない顔をした………ヴァル君でした。
シリカSide Out
ヴァルSide
見つけた、僕の大切な人。
命を
後悔で胸が苦しくなる。だけど……まだ守れる!
「まだ連絡をいれてないのに……なんでここが…!?」
「ピナが教えてくれたんです。シリカとはぐれたピナが、シリカを連れていく貴方達の行先を教えてくれたからです」
僕はロザリアの疑問に一応だけど答えた。
「チッ………ふふふ。だけど、残念ね…。この子は私達の手元にある」
彼女がそう言うと、一人の男がシリカの腕を掴んで無理矢理羽交い絞めにした。
「この子がいればあんたは私達に手がだせない。一人できたのは失敗だったわね」
「ヴァル君! 来ちゃダメ!」
シリカは必死に抵抗しているけれど、引きはがせないでいる。
『タイタンズハンド』のメンバー達が僕を囲む。一人で来たのが失敗……ねぇ。
「いえ、失敗ではありません…。やはり一人できて正解でした……」
「なんだって……?」
怒りが……抑えきれない。怒りだけじゃない。憎しみまでもが僕を支配しようとする。
いや、もう支配されているんだ。僕の中の本質が、『憤怒』の『覇気』が内から現れる。
こんな姿、キリトさん達には見られたくない。
「な……なん…なんだい……? あんたは…?」
ロザリアが怯えている。彼女だけではない。他の人達も怯えているのが手に取るようにわかる。
「なに、ですか? その質問に答えるのには、時間が掛かるのでやめておきましょう。
第一……今から死ぬ人達に説明なんてしても、何の意味もありませんからね」
「「「「「っ!?」」」」」
僕の言い放った言葉によって全員が驚愕に固まる。これじゃあ前と一緒じゃないか。
「……………っ!」
僕は《神速》を使ってシリカと、彼女を羽交い絞めにしている男の前に一瞬で移動した。
―――ザシュンッ!
直後、『神龍偃月刀』で高速の二連閃を振るい男の両腕を切り落とした。
「う、うわあぁぁぁぁぁ!!!」
腕を失った男は当然ながらシリカを解放する事になり、僕は右手でシリカの頭を自分の胸に押さえつけながら抱き締めた。
そして左手に持つ『神龍偃月刀』で男を切り裂いた。
「あ……あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
―――パキャァァァァァン!
HPバーが0になった男はポリゴン化して消滅した。全員が怯えている。
シリカも見えていなかったけど、男の叫び声と消失の音で何が起きたのかわかったんだと思う。
彼女の体が震えている。だけど、僕はきっと止めてあげられない。
むしろ恐怖心を増加させてしまうだろう。僕は彼女を離すと後ろに下がるように背中を押した。
ごめんね、シリカ。これが終わったら、僕はもう君の前には現れないから、だから…。
「………貴方達は、全員僕が殺します。『黒衣衆』が一人【黒き閃光】………、
『
ヴァルSide Out
To be continued……
後書きです。
「ヴァル、キレる」というのにふさわしいですねw
次回はヴァルによる死刑執行タイムです。意外とみなさん楽しみにしているみたいですねw
どんなことになるかは、見てからのお楽しみで。
では次回で・・・。
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第九十七話です。
『タイタンズハンド』の目的とは・・・。
どうぞ・・・。