No.488096

真・恋姫†無双 異伝 「伏龍は再び天高く舞う」外史動乱編ノ二

 
 お待たせしました!

 今回は陛下の崩御後に暗躍しようとする華琳達の動向と

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2012-09-24 20:16:36 投稿 / 全8ページ    総閲覧数:8427   閲覧ユーザー数:6269

 

 ~南皮にて~

 

「…というのが計画の全てよ」

 

 曹操は集まった家臣達に自分の計画を告げる。

 

「さすがは華琳様です!これなら如何に董卓や北郷といえども従わざるを

 

 得ないでしょうとも!!」

 

 真っ先にそう賛意を唱えるのは当然の事ながら夏侯惇であった。

 

「しかし華琳様、他の諸侯はどう出るのかわからないと…」

 

 そう難色を示すのは夏侯淵であった。

 

「何だと!秋蘭は華琳様の計画を信じられないというのか!?」

 

「そういうわけではないぞ姉者。しかしこういう事は単独で事を進めても

 

 失敗するのは目に見えている。どれだけ多くの諸侯を味方につけるかが

 

 重要なのだ」

 

 自分が示した難色に食って掛かってきた姉をなだめるように夏侯淵は説明を

 

 するとさすがにそれ以上は夏侯惇は言わなくなった。

 

「それについては問題無いわ…桂花」

 

「はっ、こちらに」

 

 曹操に促され、荀彧は一つの書簡を広げる。

 

「これは…既にこれだけの味方が?」

 

 それは曹操の計画に賛同した諸侯のいわば連判状のようなものであった。

 

「ええ、秋蘭にはずっと南皮の内政にかかりきりになってもらってたからちゃ

 

 んと話をするのは初めてになってしまったけど、桂花と姜維に手伝ってもら

 

 って、計画を進めてきたのよ」

 

「姜維に、ですか…?」

 

 ここで意外な人物の名が出てきたので夏侯淵は驚きを隠せない。

 

「そう、何せ私達が担ぐのは彼女の主君なのだから手伝ってもらうのは当然の事よ。

 

 彼女も喜んで手伝ってくれたわ」

 

「なるほど…あの者にとっては自分が成り上がる好機でもあるわけですね」

 

「そういう事よ」

 

「それで決行は何時に?」

 

「まずは洛陽からの使者が来てからよ。だけどその前に…誰かある!劉備と姜維に

 

 ここに来るよう伝えてきて!!」

 

 

 

「お呼びですか、華琳さん?」

 

 呼ばれてやって来た劉備が曹操に問いかける。ちなみに曹操と劉備は真名をお互い

 

 に真名を預け済である。

 

「ええ、実はあなたに折り入って話があるの」

 

 曹操は自分の計画を劉備に伝える。

 

「私が…皇帝に?本気ですか、華琳さん?」

 

「ええ、本気も本気。あなただって歴とした漢王室の末裔なのだから、十分に資格は

 

 あるわ。ねえ、姜維?」

 

「はい、曹操殿の言う通りです。私も補佐致します故、今こそ表舞台に返り咲く時です。

 

 劉備殿、ご決断を」

 

 姜維にもそう言われ、劉備の顔は戸惑いと悩みに満ちていた。

 

 それを感じ取った曹操は諭すように言う。

 

「桃香、悩む気持ちもわからないわけではないけれど、そんなに時間は無いわ。おそらく

 

 陛下もそう長くはないはず。陛下に後継者がいない以上、一刻も早く血筋に連なる者を

 

 後継に立てなければ、大陸は再び戦乱が訪れるわ。黄巾や連合の時より遥かに大きく、

 

 そして長い間ね。そして今、劉姓の者で最もそれに近いのは桃香、あなたなのよ」

 

「えっ…でも、劉璋さんや劉琦さんは…?」

 

「劉琦殿は病弱な上、今は北郷殿の保護下に置かれています。そして劉璋殿からは既に

 

 劉備殿支持の確約をもらっております」

 

 劉備の懸念を姜維がすぐに払拭する。

 

 劉備は目をつむり、考え込んでいた。そして、

 

「…もう一つだけお聞きします。私が皇帝になる事はこの大陸の民の為になるのです

 

 よね?」

 

「ええ、もちろん。民の為にも一刻も早く中央を安定させる必要があるのよ」

 

「わかりました。ならば、私は皇帝になります」

 

 劉備のその言葉を聞き、曹操と姜維は互いに目配せしながら喜色を示す。

 

(これで計画の第二段階は完了…ふふ、さすがにこれを覆す札は持ってないでしょう。

 

 北郷、今度こそあなた達を膝下にひれ伏させてみせるわ)

 

(これで劉備殿が皇帝になれれば、私も国を指図する立場になれるというもの。諸葛亮、

 

 今度こそ貴女を越えてみせる)

 

 曹操と姜維は自らの野望を改めて心に宿していたのであった。

 

 

 

 それと同じ頃、場所は司州と并州の境の辺り。

 

 一刀は亡き劉協に聞いたある人物がいるという所で向かっていた。

 

 共をしているのは道案内の輝里と護衛の流琉の二人のみである。

 

 本来であれば左将軍である一刀の移動には多くの護衛の兵が必要ではあるのだが、今回

 

 の行動は極秘に行う必要があり、何よりこれから会おうとする人物は大勢の人間が向か

 

 うと何処かへと姿を消してしまう事があった為(過去これで劉協はこの人物の行方を

 

 二度ほど見失った事があったそうである)このような少人数での行動となっている。

 

「しかしなかなか入り組んだ所にいるんだな。輝里の道案内が無かったら迷子になって

 

 いたところだ。なあ、流琉」

 

「はい、私もこのような道は初めて見ます。輝里さんは何回か来ていらっしゃるの

 

 ですか?」

 

 流琉に話しかけられた輝里だったが、まったくそれには答えず、というより洛陽を出て

 

 からほとんど話しかけもせずに黙々と道案内をするだけであった。しかも顔は目的地に

 

 近づく程に不機嫌になっていくばかりだった。

 

「輝里、何でずっとそう不機嫌な顔をしてるんだ?そんなに『李儒』って人の所に案内

 

 するのが嫌なのか?」

 

「…嫌といえば嫌ですけど。でも亡き陛下の最期の命とあれば断るわけにもいかない

 

 でしょう」

 

 それだけ言うと輝里は再び黙々と先を歩き続ける。

 

 そんな輝里の態度に、俺と流琉はため息をつくのみであった。

 

 

 

「二人とも、ここからは必ず私と同じ道を通ってください」

 

 不意に立ち止まった輝里がそう話しかける。

 

「えっ、ここまでずっとそうして来たんじゃ…」

 

 流琉がそう言いかけると、

 

「今まで以上にです。少しでも道をそれたり横の草むらに入ろうとすれば、しばらく

 

 …下手をすれば一生迷子のままになりますよ」

 

 輝里は改めて強くそう言い直す。

 

 確かに良く見ると、そこにはたくさんの石像が並べられており、異様な気配を漂わ

 

 せている。

 

「兄様、これって一体…」

 

 流琉は俺の袖に捕まり不安そうに辺りを見回す。

 

 そうか、もしかしてこれは…。

 

「…石兵八陣?」

 

 俺の呟きに輝里は驚いた顔を見せる。

 

「一刀さん、知ってるのですか?」

 

「俺も実物を見るのは初めてだけどね」

 

 そりゃ、俺の世界でこれは諸葛孔明が…とか言っても朱里以外に通じる話でもないし、

 

 ここは深い話はスルーしておこう。しかし普通に輝里が知っているところを見ると、

 

 ここではそれなりに知られた兵法のようだ。

 

「では尚の事、余計な道を行った場合の事はわかってますね」

 

「ああ…いいか流琉、今輝里が言った通り必ず輝里の通った道のみを進むようにな。ちょ

 

 っとでも道を間違えたら捜してあげる事も出来なくなるから」

 

「はい、兄様…あ、あの…」

 

 流琉は何か言いたそうにしながら手を出したり引っ込めたりしている。

 

「それじゃ迷子にならないように手を繋ごうか」

 

 俺はそのまま右手で流琉の左手を握る。

 

「あっ…はい…/////」

 

 流琉は顔を真っ赤にしながらも手を強く握り返してきた。

 

「…むう、それじゃ行きますよ!!」

 

 それを見ていた輝里は俺の左腕に自分の腕を絡ませ俺を引張り気味に進む。

 

「あの、輝里?これだとちょっと歩きにくいんだけど『迷子にならない為にです!!』

 

 …はい」

 

 

 

 

 そのまま進む事およそ四半刻程、

 

「一刀さん、あれです」

 

 輝里が指差した先に一軒の家が見えた。

 

「あそこか…」

 

 その家に近づこうとしたその時、

 

「どなたですかな?わざわざ石兵八陣を通り抜けてまでこのような所まで」

 

 出て来たのは一人の老人だった。

 

 ふむ…陛下から聞いた話から察するにこの方はおそらく…。

 

 俺が声をかけようとしたその時、老人の方が輝里の顔を見て何かを思い出したかのよう

 

 に声をかける。

 

「おや、確かあなたは徐庶殿でしたな。姫様~、徐庶殿が参られてますぞ~!」

 

 老人はそのまま中へと入っていった。そして、

 

「ほう、これは久しぶりじゃな。どうした?また道に迷ってここに来たか?」

 

 中から出て来たのは仮面を被った女性だった。という事はこの人が…?

 

「お久しぶりです、李儒殿。今回は道に迷ったわけではなく、こちらの方が…」

 

 輝里が俺を紹介しようとしたその時、

 

「ほう、男連れか。ならばあの男同士の不毛な睦みあいの書物を見るなどという非生産的

 

 な趣味はやめたのじゃな。それは何よりじゃな」

 

 

 

 

 李儒さんがそう言ったその瞬間、輝里からプチッと何かがキレる音がした。そして…。

 

「…やめてませんけど。それにあの時も申しましたけど、男同士の恋愛の何処がいけない

 

 と!?禁断の道だからこそ燃えるものがあるんだと何度も申しましたでしょうが!!」

 

「非生産的かつ不毛なものに燃えるなどという神経は妾には未来永劫わからぬわ!!大体、

 

 そのような本に夢中になってたから、この山中で迷子になりかけたのではないのか?」

 

「そ、それをここで言わなくても…それにそれとこれとは別の事です!!あなたこそ、そも

 

 そもこんな山奥にいるから心が枯れ果てているだけなのではないのですか!?」

 

 その瞬間、李儒さんからもプチッとキレる音がしたかと思うと、

 

「ほう、よくぞ申した。妾が枯れ果ててるとな。まあ、もし枯れ果ててたとしても燃える

 

 方向が間違ってる何処かの徐庶よりは遥かに健全的じゃからの~。べ・つ・に!痛くも

 

 痒くもないがの~。それよりそこの少女、何時までもこのような不毛な趣味の者の近く

 

 にいるとそなたの心も穢れる故、早く離れた方が良いぞ」

 

 流琉に向かってそう言葉をかける。すると、

 

「何ですってぇ~!!」

 

「何じゃ!!やると申すか!!!」

 

 輝里は怒りだし、李儒さんも退く気配を見せない。

 

「に、兄様、一体どうしたら…」

 

 流琉はすっかり怯えて俺の後ろに隠れている。

 

 …これが輝里が不機嫌になっていた理由か。前にここに迷い込んだ時に李儒さんに八百一

 

 趣味を馬鹿にされてキレたのか。

 

 

 

 しかしこのまま二人の喧嘩を眺めていても先に進まないし…。

 

「ご尊顔を拝し奉り、恐悦至極にございます!!」

 

 俺は李儒さんの方へ向かい礼をとり、いつも以上の大声で話しかける。

 

「えっ、一刀さん…一体何を?」

 

「何じゃ?どうしたのじゃ?」

 

 二人は訝しげにこちらを向く。俺は気にせずそのまま、

 

「私は左将軍並びに荊州南郷・南陽郡の太守を務めます北郷一刀と申します。ご健勝にて何

 

 よりにてございます『劉弁殿下』」

 

 その瞬間、その場に緊張感が走る。そして李儒さんは、

 

「そうか、そなたがあの北郷か。妾の事は、ゆ…妹から聞いたか?」

 

 そう言うと彼女は仮面を外す。するとその下からは亡き陛下と瓜二つの顔が現れたのであった。

 

「如何にも、妾が劉弁じゃ。それと知って来たという事は、洛陽で何かあったという事か?

 

 ただ、もし妾に洛陽に戻れなどという事を言いに来たのなら聞く耳などないがな」

 

 これは本当に前途多難そうだな…一体陛下は俺に何を期待したんだ?

 

 

 

 

 

 

                   続く(ようにしないと劉弁様にしばかれてしまうのです)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あとがき的なもの

 

 

 mokiti1976-2010です。

 

 今回は曹操陣営の動きと新キャラの登場の話でした。

 

 今回登場した「劉弁」のキャラは狭乃 狼様よりお借りしております。

 

 許可をくださりました狭乃 狼様、ありがとうございます。彼女の活躍は

 

 まだまだこれからですので温かく見守っていてくださると幸いです。

 

 次回は劉弁様への説得などをお送りする予定です。

 

 

 それでは次回、外史動乱編ノ三にてお会いいたしましょう。

 

 

 

 

 追伸 劉弁様と一緒に出て来たお爺さんの正体は次回に書かせていただく

 

    予定です。

 


 
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