No.484808

真・恋姫†無双 異伝 「伏龍は再び天高く舞う」外史動乱編ノ一


 長らくお待たせいたしまして申し訳ありませんでした。

 それではこれより第二部・外史動乱編の開幕です。

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2012-09-16 20:07:53 投稿 / 全8ページ    総閲覧数:9287   閲覧ユーザー数:6932

 

 反董卓連合との戦いが終わってから約一年、表向きは忙しいながらも

 

 平穏な日々が続いていた。

 

 しかしこの日、洛陽からもたらされた報告は俺達を驚愕させるに十分の

 

 内容だったのである。

 

「陛下が…危篤!?」

 

「はっ、陛下はかねてより体調を崩され療養中でありましたが、昨日容態

 

 が急変し、今は侍医達による懸命な治療が続けられているとの事です!」

 

 そんな馬鹿な…数ヶ月前にお会いした時はあんなに元気だったのに、危篤

 

 になるほどの病気になっているなんて…。

 

「ご主人様、すぐに洛陽に向かってください!私も残務を終わらせたらすぐに

 

 行きますから。輝里さん、あなたはご主人様についていってあげてください!」

 

 こうして俺は輝里を連れて洛陽へ向かったのであった。

 

 

 

「公孫賛様、北郷様が御到着です!」

 

「北郷か!思ったより早かったな!!」

 

 洛陽に到着した俺を出迎えたのは白蓮…公孫賛だった。

 

「白蓮、陛下の容態は?」

 

「今は何とか落ち着いているが…」

 

 俺と白蓮はそう話しながら陛下の寝室に向かう。

 

 ……えっ、何で公孫賛がここにいるのかって?話せば長くはなるのだが…。

 

 反董卓連合に与していた公孫賛軍は呂布軍によって壊滅し、公孫賛自身は何とか

 

 離脱には成功したものの重傷を負っていて回復するまでに二ヶ月を要し、そして

 

 何とか回復したものの、今更自分の領土でもない幽州に戻れるわけでもなく、仕方

 

 無しに洛陽の警備兵に仕官したのであった。本来なら連合にいた諸侯の一人である

 

 彼女が入れるはずは無いのだが、何故か誰にも咎められる事も無く普通に警備兵と

 

 なり、そして堅実な仕事ぶりから普通に警備隊長に出世していたのだが、そんな

 

 ある日、陛下により無実の罪を解かれ車騎将軍として復帰した盧植(公孫賛の師匠

 

 でもある)が普通に仕事をしていた彼女を見つけ、力量を知る彼の推挙により今や

 

 衛将軍へと出世していたのであった。

 

(連合に参加した罪については陛下より赦免が出ている)

 

 しかし衛将軍になったからといって彼女の貧乏くじ的なものが解消されたわけでも

 

 なく、いまだ謹慎中の袁紹ご一行の世話は押し付けられるわ、師匠の盧植は領土として

 

 賜った青州へと行ったきりになり、盧植がやるべき宮中の雑務の大半は彼女に押し付

 

 けられた格好になっているわで、彼女からぼやきとため息を聞かない日は無いとまで

 

 言われている。

 

 ちなみに彼女からは既に真名を預かっている(それは董卓・馬騰・孫策軍の面々からも

 

 であるが)。

 

 

 

「しかしどういう事だ?陛下のお体がお悪いなんて話は聞いてなかったぞ」

 

「それについては…陛下か月に聞いてくれ。私も詳しくは…」

 

 白蓮はそれだけ言うと後は無言になる。

 

 そして俺達は陛下の寝室へと到着した。

 

「あっ…一刀さん」

 

 陛下に付き添っていたらしい月が俺に気付き声をかけてくる。

 

「月、陛下は?」

 

「今は何とか落ち着いてお休みになられています」

 

「…陛下は何時から具合が悪かったんだ?」

 

「連合との戦いの時には既に…」

 

 月のその言葉に俺は驚く。

 

「なっ…もしかして華佗が冥琳の病気を治した時に言いかけていた事って…」

 

「はい、陛下のお体はあの時で華佗さんより余命半年と宣告されていました。ここまで

 

 もったのが不思議な位だと華佗さんも言っておられました」

 

 なんて事だ…何で俺は今の今まで気付かなかったんだ。俺は自分自身に対する失望を

 

 感じずにはいられなかった。

 

 その時、陛下付きの侍女が俺を呼ぶ。

 

「北郷様、陛下がお目覚めになられました。北郷様が来ている事を告げると、寝室に呼ぶ

 

 ようにとの仰せです。こちらへ…」

 

 それに従い、俺は中へと入った。

 

 

 

「よく来てくれました…一刀」

 

 俺が寝室に入ると陛下は首を俺の方へ向ける。もはや起き上がる力も無いという事か…。

 

「陛下…申し訳ございません」

 

「何を謝るのです?」

 

「陛下のお体の事にもっと早く気付くべきでしたのに…」

 

「ふふ、私の体の事は秘密にしてくれと私が月に頼んだのです。あなたが気に病む必要は

 

 ないのですよ」

 

 陛下はそう言って微笑む。しかしそれはまったくといっていい程に力がこもっていない

 

 ものであった。

 

「ところで一刀、あなたを呼んだのはあなたにお願いしたい事があるからです。間違い

 

 なく私からあなたへの最後のお願いになるで…ゴホッ、ゴホッ!!」

 

「陛下、最後だなんて言わないでください!」

 

「残念ながら私はここまでのようです。でもこのままでは間違いなく私が守ろうとした

 

 ものは崩壊してしまう。それを防ぐ為にもあなたに頼みたい事があるのです。あなた

 

 ならあの人をきっと呼び戻せる…そう信じています」

 

 陛下は一息ついてから再び話し始める。

 

「私では無理でした…この一年、あの手この手でお願いしてみたのですが。でもあの人

 

 でなければ…いえ、あの人こそ私が守ったこの漢を治めるにふさわしいのです」

 

 陛下のその言葉に俺はある名前が浮かんだが、まさかという気持ちもあり、陛下に改

 

 めて聞かずにはいられなかった。

 

「陛下…その人って、一体」

 

「その人こそ…」

 

 ・・・・・・

 

 陛下の告げた名前は、俺の想像していた通りのものだった。

 

「やはり…」

 

「ふふ、あなたはやはりあの人の存在を知っていたのですね」

 

「いえ、その、知っていたとかそういうのではなく…」

 

「いいのです。あなたが天の御遣いである事は聞いています。その天の知識であれば、

 

 知っている事もあるとは思っていました。ならばこそ、これが如何に重要な事かは

 

 わかっていますね」

 

 

 

 確かにこれは漢にとって最重要事項である事は間違いないだろう。しかし…。

 

「陛下、何故あの方はそのような…?」

 

「あの人はその位、自分自身の身分と流れる血を嫌っておられるのです。だけどこれは

 

 もう個人の問題ではありません。そしてあなたなら…お願いします。これは私の遺言

 

 と思っていただいても…ゴホッ、ゴホッ!!グッ、ガハッ!!!」

 

 陛下は激しく吐血し、その吐いた血が寝台や壁を赤黒く染める。

 

「陛下!しっかりしてください!!今貴女に死なれたら…」

 

「残念ながら私はここまでのようです…最後の頼み、お願いします。大丈夫、あなたなら

 

 きっとあの人も…だって私はあなたの事が…だからあの人も間違いなくあなたを…」

 

 陛下はその言葉を最後に意識を失う。

 

「陛下!陛下!!しっかりしてください!!誰か、誰かいないか!!」

 

 俺の叫びを聞いて侍医達が駆けつけ、再び懸命な治療が始まったのだが…。

 

 ・・・・・・・

 

「陛下におかれましては、先程崩御されましてございます」

 

 侍医長より告げられたのは最悪な結果であった。

 

 後漢第十三代皇帝・劉協、崩御。これはこの一年平穏を保っていた大陸に再び動乱をもた

 

 らす事となる兆しであった。

 

 

 

「ご主人様…」

 

「朱里、また動乱が始まる」

 

「はい、そして私達はそれと戦って再びこの外史に平穏をもたらさなければなりません。私は

 

 その為とあなたの為に持っている知識と知恵の全てを使うつもりです」

 

「ああ、俺も頑張らないとな。頼りにしているよ、朱里」

 

「はい!」

 

 ・・・・・・・

 

 俺は部屋に戻ると輝里を呼ぶ。

 

「お呼びですか、一刀さん」

 

「輝里に聞きたい事があってね。陛下が君ならわかるだろうって言ってたのでね」

 

「…陛下が?私に?」

 

「ああ、君は『李儒』という人の居場所を知ってるよね?」

 

「…はい!?何で、陛下が…しかもよりによってあの人の…?」

 

 輝里は驚きと共に少し不機嫌そうな顔になる。何だか聞きたくない名前を聞いたかのようだ。 

 

 これは前途多難そうだ…。

 

 

 

 

 

 ~南皮にて~

 

「お呼びですか、曹操殿」

 

 この地を治める曹操の客将となっていた劉備の軍師である姜維が曹操に呼ばれて執務室へと

 

 やって来た。

 

「ええ、あなたにお願いしたい事があってね」

 

「…私で出来る事であればどんな事でも」

 

「ありがとう。間違いなく劉備にもあなたにも悪くはない話よ」

 

(洛陽にいる間者からの報告ではどうやらそろそろのようだしね…ふふふ、今度こそは)

 

 曹操は一人笑みをこぼしていた。

 

 

 

       

 

 

                                 続く(予定です)

 

 

 

 

 

 

 

 

 あとがき的なもの

 

 mokiti1976-2010です。

 

 今回より第二部・外史動乱編の開幕です。

 

 いきなりで申し訳ありませんが多分次回以降の投稿はかなり不定期に

 

 なっていくと思いますので、ご勘弁の程をよろしくお願いします。

 

 当然、早めにいける時はそうさせていただきますので。

 

 一応、次回は華琳さん陣営の動向と陛下が亡くなる前に一刀に頼んだ

 

 あの方の登場の予定です。

 

 

 それでは次回外史動乱編ノ二でお会いいたしましょう。

 

 

 

 

 追伸 何故『李儒』と輝里が知り合いなのか、何故それを陛下が知っている

 

    のかは次回以降に語らせていただきます。

 

 


 
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