No.485836

咲-saki-月宮編  第23局 決意

白昼夢さん

---月宮高校麻雀部での城山華南と麻雀部の仲間達の紆余曲折ありながらもインターハイ優勝を目指していく、もうひとつの美少女麻雀物語---

2012-09-18 22:21:57 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:600   閲覧ユーザー数:592

---月宮女子控え室

 

『おつかれかなっち!とりあえずプラスだねっ!』

『ほいっ、とりあえず前半おつかれ、飲み物、ミルクティーでよかったよね?』

戻ってきた華南を出迎える、泉は華南の好きなミルクティーを終了前に買ってきていた、それを華南に渡す。

『ありがと泉姉、うん…確かにプラスだったけど、吾野の有栖川さんに、稼ぎ負けちゃった』

特段暗いというわけではないが、少し険しい顔でそういう華南、前半戦で華南は15600のプラスだったが、雛姫はその倍以上の33900点稼いでいる。

その差は更に開き、吾野と月宮の点差は72600点、普通に考えたら半荘で取り返すには厳しい点差だ。

『しかし吾野の人、たった一回の対局で城山さんに対応してきちゃいましたね…』

『そうねえー、流石去年の全中王者ってだけはあるのかしらねー、しかし雛姫ちゃんも可愛いわよねー、華南ちゃんとセットで見られるなんて素敵な対局だわー』

『部長…、華南とかばっか見ててほとんど対局内容見てないだろ…』

緊張感の全くない羽衣をみて溜息をつく泉。

『…でも、なんだか楽しいです、有栖川さん、とっても強くて…』

華南が突然そんなことを言う、さっきまでの険しい表情から一転して、優しい笑みを浮かべながら、そして続ける。

『こんな対局を…みんなと…もっと続けていたい、だから…この勝負、必ず、勝ちます』

言い切って皆と目を合わせる。そんな華南の表情を見て、4人も表情が柔らかくなる。

『そうだね…私も、楽しかった、だから、まだまだ打ちたいっ!』

『そうだよな、まだまだ過去形にするには惜しいよ』

グーにした手を突き出し、そういうりりあ、その通りだと頷きながらいう泉。

『私も…もっと戦って、強くなって、城山さんや先輩達に追いつきたい!』

『うふふ、そうね、私も華南ちゃんや皆と一緒に、全国に行きたいわ、だから』

『頑張れっ!かなっち!』『信じてるよ、華南』『城山さんなら…きっと大丈夫!』『華南ちゃん、いっぱい楽しんで、勝ちましょうね』

4人が笑顔で華南を送り出す。

『うん…いってきます!』

振り返り、華南は部屋を後にする。

(そうだ、負けないよ…みんなと、一緒だから!)

その表情は闘志に燃えているようだった。

 

第23局 決意

 

 

(城山華南…あれだけ打ちのめしても、まだ戦う意志があるなんて…)

控え室に戻る雛姫は、大将戦前半戦の対局を振り返り、そんな事を考えていた。

幾度となく待ちを完全に潰し、直撃で和了ってきた。でも、華南の表情には諦めの色が見えなかった。

『ヒナちゃんおかえりーいいカンジじゃん』

『やるじゃん雛姫、チームもそうだけど前半戦でダントツ1位の成績だね』

戻ってきた雛姫を出迎える、そして前半戦の戦績を賞賛する。

『有栖川、お前を大将にして正解だったと思う、流石だよ』

『そうだねー月宮の子がちょっとヤバい感じだったけど、後半からきっちり封殺したね』

『城山華南ですか、雀荘で賭け麻雀しにいくような人に負けたりしませんよ』

ちょっと不機嫌そうに雛姫がそう言った。

『あーあの子がそうだったんだー』

『両親が小さい頃亡くなったっらしいから、雀荘に行ってたのも、もしかしたら、それで仕方なくだったのかもねー』

『えっ…?両親が亡くなったってどういう…』

茜と來夢がそう言うと、思わず割って入る雛姫。

『ああね、解説の人も言ってたけど、あの月宮の大将の子、城山華恋っていうプロの娘なんだってさー』

『飛行機事故で父親と一緒に結構前に亡くなってるらしいんだけどね10年くらい前だったっけ』

その名前や事故の事は雛姫は知っていた、雛姫は小さい頃から麻雀が好きで、プロの対局などをよくテレビで見たりしていたからだ。

『そう、だったんですか…』

(赤星先輩とかの言うとおり、もしかしたら、親が居ないからお金の為に仕方なく、だったのかな…)

対局をしていた時の華南の表情を思い出す、真剣な表情、どんな状況でも、なんど和了を自分に潰されても、諦めない姿勢…、ただ贅沢の為に雀荘に行っていたような人には見えない、雛姫もなんとなくそんな気がしていた。

『まー雛姫が気にする事じゃないよ、確かに幼い頃に両親が亡くなってしまったのはかわいそうだけど、それはそれ、これはこれ』

『わ、分かってますよ、当然、全力で行くのが礼儀ですから、っと、そろそろ対局室に戻りますね』

『まぁ有栖川の事だから大丈夫だと思うが、一応、油断せずにな』

『はい、いってきます』

それだけ言って、雛姫は対局室に向かう。

 

『あっ…』

対局室に向かう雛姫は、向かいから同じく対局室に向かってこちらに歩いてくる華南を見つけた。

(もしかしたら…誤解だったのかもしれない…失礼な態度を取ってしまったし、やっぱり謝るべきでしょうか…)

足を止めてそうこう考えてるうちに、華南は先に対局室に入ってしまった。

はっとして、後を追って対局室に入る雛姫。

卓の近くで立っている華南、他の2校の選手はまだ来ていないようだ、ふと華南は雛姫に気づき。

『先…どうぞ』

場決めの牌を先に引くように雛姫に促す。

『あ…はい』

何かを言おうとしていた様子だったが、とりあえず促されるまま卓に並んだ裏向きの牌から一枚を取る、雛姫の選んだ牌は東だった。

残った三枚から華南も一枚を選びひっくり返す、こちらも前半戦と変わらず南だ。

丁度華南と雛姫が自分の席についた位に後の二人もやってきた、穂波が西、千尋が北、完全に前半戦と同じ配置になった。

 

 

東家 1年 有栖川 雛姫 (吾野)

南家 1年 城山 華南 (月宮女子)

西家 2年 坂上 穂波 (名細)

北家 1年 藤金 千尋 (越谷女子)

 

 

『さて…いよいよ長かった埼玉県地区大会も、残すはいよいよ決勝、大将戦後半戦を残すのみとなりました!現在のトップは吾野高校、有栖川選手、部長で副将である双柳選手からリードした状態でバトンを受け取り、そのリードを更に広げて前半戦を終了しました!2着の月宮高校、城山選手も健闘しましたがその点差は72600点、残された時間を考えると中々に厳しい点差です、名門越谷女子、名細高校は10万点差以上ここで意地を見せる事が出来るでしょうか!』

『場決めもたった今終了したみたいです、席順は前半と全くでしたね』

息つぎもせずに言い切る松浦を横目で見てちょっとすごいなあと思った和。

『泣いても笑ってもこれが最後の半荘です!それでは大将戦後半戦、スタートです!!』

 

東一局 親・有栖川 雛姫

 

『自漠、ピンヅモのみ、400・700』

7順目、華南がダマでピンフを自漠和了りした。

(えっ)

(この点差でそれを立直しないのっ!?)

(吾野警戒だったのかな…それにしても安い和了りだけど…大丈夫なのだろうか)

全員が華南を見やる、華南は気にした様子も無さそうだ。

 

『こ、後半戦最初の和了りは城山選手!打点は低いもののトップの吾野の親を流しました!』

『しかし残り回数が限られてるだけにこの和了りはちょっと不安ですね』

 

東二局 親・城山 華南

 

『自漠、自漠のみで700オールです』

9順、今度はダマでツモのみの手をまたも和了する華南。

(ダマならば…いつ鳴けばいいか分からないという訳ですか…!しかしそんな細い打点じゃ追いつけない筈…!)

ふと華南の表情を伺う雛姫。その表情は。

この対局をとても楽んでいる様に、見えたのだった。


 
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