Side楯無(R)
私は今生徒会室にいる。
目の前には私と瓜二つの少女、この世界の更識楯無がいてお話をしている。
「ふ~ん。そっちの世界の私たちってかなり違うわね」
「私としてはこっちの世界の虚ちゃんが誰とも付き合ってないことに驚いたけど、少し納得したわ。輝二君とは運命の出会いだったってわけね」
「それで、それで?もっと詳しく教えて」
「うん。春休みなんかね」
今は、虚ちゃん(R)について話してるわ。こっちの虚ちゃんは誰とも付き合っていないらしくて、私が「私たちの世界では虚ちゃんも本音ちゃんも付き合っているわよ」といったらこっちの私が食いついて来て、詳しく話しているの。
ちなみに虚ちゃんは生徒会室のソファーのひとつで顔を真っ赤にして、それでも興味があるのかチラチラこっちを見ている。本音ちゃんそんなお姉ちゃんをニコニコしながらみている。
「ふ~。虚ちゃん(R)についてはこんなところかな」
「うん。ありがとう。虚ちゃん(R)のコイバナは新鮮でおもしろかったわ」
そういって楯無ちゃんは『感謝感謝』という扇子を広げたので私も『それはどうも』という扇子を広げて見せた。
「それじゃあ~。質問いいですか~?」
「うん。いいわよ~」
話がひと段落したからか本音ちゃんが聞いてきた。
「それで何が聞きたいの?」
「うん~。かいちょ~は」
「うん?」
「かんちゃんとどうなんですか~」
「「!!」」
なんだか、こっちの私と虚ちゃんが反応したけどきにせず、
「目に入れても痛くないかわいい妹よ~。この前なんていっしょに買い物に行ったし」
「え?!」
うん?
「そ、その話詳しく聞かせて!」
ものすごく、くいついてきた。
その後、私は私の世界の簪ちゃんのことを詳しく教えた。
「そうなの」
「そうですか」
「そ~なんだ~」
三人ともなんかしんみりしちゃった。その様子から私はある仮説が思い浮かんだので
「もしかしてだけど」
楯無ちゃんのほうを見て
「簪ちゃんと仲悪い?」
「うっ」
当たったみたいね。
「えっとさ。良かったら相談に乗るわよ」
「ほんと?」
とても弱々しい声で聴いてくる楯無ちゃん。ちょっとかわいいと思ってしまった。
話を聞き終えた私は考える。この世界の私たち姉妹の関係は私たちにもありえたかもしれないものだった。
簪ちゃんに誇れる姉であろうと頑張って、そのせいで劣等感を持たれて、避けられるようになって、私のほうもどうすればいいのかわからずになかなか話せなくて溝はどんどん開いてしまった。
もし、デジタルワールドにいかなかったら、みんなと旅をしなかったら、きっと私たちもそうなっていたかもしれない。
「よし」
そこまで考えた私は、楯無ちゃんの手を握っていた。
「え?」
「簪ちゃんと仲直りするわよ!今から!」
「え、ええええ!?」
私の言葉に驚く楯無ちゃん。そんな楯無ちゃんを真剣に見ながら私は話す。
「私の世界でも簪ちゃんは一時、私との仲がギクシャクしていたことがあるの。でもね」
そこでいったん言葉を切る。みんなが私の次の言葉を待っているのを確認して、
「周りのみんながきっかけを作ってくれた。一緒になって仲直りできるように考えて、励ましてくれて、本当の気持ちを話す勇気をくれた」
だから、私は自分の気持ちを簪ちゃんに伝えることができた。
怖がっているだけじゃ何もできない。何も進まない。
私にもできたのだから、
「私たちが協力する。このままでいいなんて絶対にだめ。簪ちゃんの事好きなんでしょ?」
「うん」
「なら、がんばりましょう。大丈夫、無敵の生徒会長の私がついているんだから」
そう言って『おまかせあれ』と書かれた扇子を広げる。
そんな私を楯無ちゃんはしばらく呆然としながら見ていたけど、くすりと笑って、
「なにそれ、あはは」
「む~。笑うことないんじゃな~い?本当の事だぞ☆」
「あは、ごめんなさい。そして、ありがとう」
「いえいえ、どういたしまして」
さてと、それじゃあ、
「本音ちゃん。こっちの簪ちゃんは今どこ?」
「え?」
「は~い。授業も終わったからたぶん第二整備室で専用機を組み立てに行ってるかと~」
「うんうん。虚ちゃん、簪ちゃんの専用機の情報は」
「え?え?」
「はい。すぐに用意します。・・・できました」
さすが、世界が違っても仕事が早いわね。
「それじゃあ、いきましょう!」
そう言って私は楯無ちゃんの手を握る。逃がさないわよ。
「え?えええ!?ちょっちょっとま」
「待たないわよ~。私たちがここにいられるの時間は有限なの。だから、さっさと逝くわよ~」
「なんか字違う気がする!」
さあさあ目指すは第二整備室!レッツゴー!
Side out
Side一夏
「というわけなのよ」
義姉さんの説明が終わり、まあ納得した。ちなみに簪と楯無さんは
「・・・」
「・・・」
いろいろ気まずそうにしている。
当初は姉が二人も入ってきたことに混乱していたが何とか落ち着いて話を聞いてくれたのだ。
「じゃあさっそく簪ちゃんのIS作りましょうか」
義姉さんがそう言うと
「!・・・や・・やめて!」
簪は大声で止めた。
「こ、この子は・・・わた・・しが造らないといけない。だ・・から・・余計なことはしないで!」
そういって簪は整備室を出て行ってしまった。
「う~ん。これは想像以上に深いコンプレックスね」
いや、多分苦手としている姉が二人もいたからだと思う。
「しょうがない。時間もあまりないし何とかしてみるわ。それじゃね~」
そういって、出て行ってしまった。自由だな。そして、
「(ズーン)」orz
「しっかりしてください!会長!」
へんじ が ない ただのしかばねのようだ
「会長ー!!」
(どうしようこのへこんだ会長さん)
思わず
Side out
Side簪
整備室から飛び出した後わたしはシャワールームに来ていた。
さっきの話はいろいろ突拍子もないものだけど辻褄が合っているし、何よりもう一人のあの人の雰囲気は本物だった。
でも、わからない。
なんでもう一人のあの人は手伝おうとするの?
私はあの人にとって取るに足らない存在。
いつもみんなが言う。
私は出がらし。出来損ない。
そんな自分を変えたくて一人で専用機を作っているのに、うまくいかない。
やっぱりわたしは、
ムギュ
(へ?)
ムギュムギュ
視線をさっきから変な感触がするところ、自分の胸に向けてみると
ムギュムギュムギュ
白い手が私の胸をもんでいた。
「ッ!きゃああああああ!!?!」
必死に振りほどこうともがくけど振りほどけず、誰がやっているのか後ろを振り向いてみると、
「ヤッホ~。簪ちゃん」
あの人がいた。途端に私は顔が青ざめていくのがわかる。
「ん?ああ、大丈夫よ。私はこの世界のお姉ちゃんじゃないわよ」
そう言って離れていった。
「やっぱり変装とかした方がいいかな?ややこしいし」
「な、なんで」
「ん?」
「なんでいるんですか?!」
私らしくもなく怒鳴ってしまった。
「ん~。そりゃ簪ちゃんが気になってね」
微笑みながらそう返された。そして、一度真剣な顔をして、
「簪ちゃん。一人で専用機を造ろうとしているんでしょう?」
「・・・」
「無理よ」
「!」
はっきりと言い切られた。その言葉に私はふらついた。
そんなあたしに向かってもう一人のあの人は表情一つ変えない。
それが私には何もできない出来損ないを見ているように思えて、泣きそうになって、目の前にいるもう一人のあの人に殴りかかろうとして、
「私にも無理だもん」
その言葉で体が止まった
え?
今なんて言ったの?
私にも無理?
そんなはずない。だって姉さんは一人で専用機を組み上げたって。
「私は専用機を持っていないけど、こっちの私だって一人で組み上げたわけじゃあないのよ?虚ちゃんや薫子ちゃんに手伝ってもらったりしていたようだし、もともと、七割くらい出来ていた機体を使えるように仕上げただけだし」
その言葉に呆然とする。そんなこと私は全く知らなかった。
「そもそも、ISを一人で組み上げられる人なんて私も二人くらいしか知らないし」
そういったあともう一人のあの人は、
「簪ちゃん。あなたがどう思っているのか私は知っているわ」
「え?」
「私の世界の簪ちゃんもね、昔あなた同じことを考えていたの。そして私はそのことに気が付いていたけど、どうすればいいのかわからなかった」
「どう・・・すれば?」
「だって、何よりも大切な妹を守るためにがんばって訓練や勉強していたのに、そのせいでつらい思いさせちゃったのよ?本当に何もわからなかった」
「え?たい・・せつな・・・いもう・・と?」
「うん。私は簪ちゃんのことが何よりも大切。だから、あの子が更識家の仕事にかかわることがないように、同時にあの子が周りに誇れるようなお姉ちゃんであるように努力したわ」
う・・・そ。
「嘘じゃないわ」
私の顔から分かったのだろう心の声に答えを返される。
「だから、あの子に嫌われることがつらくて、でも何とかしようとして余計に傷つけてしまうかもしれないと思うと怖くて何もできなかった。
そのまま、私たちはある事件に遭遇した。それは世界の誰にも知られることのない、でもとてもつらく、激しい戦いの始まりだった。
その中で私は、なんとか簪ちゃんを守ろうとした。その結果がこれよ」
そういって背中を私に見せた。
「っ!?」
絶句した。その綺麗な背中には巨大な爪で引き裂かれたような三本の斬り傷痕があった。
Side out
Side悠輝
俺が生徒会室に行くと誰もいなかった。
そのまま、勘に任せて歩いていたら第二整備室に誰かいたようなので入ってみると
「(ズーーーン)」orz
「「「・・・・・・・」」」
部屋の隅で楯無がへこみ、それを一夏(R)、虚、本音が気まずそうに視ていた。
「とりあえず、説明よろしく」
――三人による説明中――
「よくわかった。まあ、予想道理だな」
「予想道理とはどういうことですか?」
虚が俺の呟きに聞き返す。
「
俺が断言すると楯無たちは不思議そうな顔をした。
「まあ、お前たちならデジモンの事も知っているし話してもいいだろう」
俺が話し始めたのは四年前、俺、一夏(R)、楯無(R)、簪(R)、虚(R)、本音(R)でデジタルワールドを旅したときの出来事だった。
そのころの簪(R)はこっちの簪と同じように楯無(R)に対してのコンプレックスを抱えており、旅の途中でもそのことを気にしていた。
そして、楯無(R)がルナモンを完全体に進化させた後、自分も進化させなくてはいけないという思いにとらわれてしまった。
その結果、簪(R)のガブモンXはX抗体を暴走させ、黒いワ―ガルルモンXに闇黒進化してしまった。
暴走を始めたワ―ガルルモンXはついにテイマーでもある簪に襲い掛かった。
そのとき楯無(R)は簪(R)をかばい背中に重傷を負った。
その後、みんなで暴走を止めて楯無(R)の治療をして何とか一命を取り留めた。
そして、簪(R)は楯無(R)になんで助けたのか問いかけ、楯無(R)は「あなたを守るために今まで頑張ってきたんだもの」と答えたんだ。
そこから、二人は今までのことをお互いに話し、分かり合えたんだ。
「楯無(R)がこっちの自分たちの関係を何とかしようとするのは、もっと早くに分かり合えることができれば自分たちのように、取り返しのつかないことになりかけることもないと思っているからだ。そのためなら、多少強引な手段を取ってでもそのほうが何倍も良いからな」
話し終えると、一夏(R)以外の三人はこの話を聞いたことで、納得のいった顔をしていた
「ま、もうちょっとあいつに任せてみようぜ」
Side out
Side簪
夜、部屋に戻った私はベットに飛び込んだ。
もう一人のあの人の話は、今まで私が思っていたこと、いや思い込んでいたことを大きく変えた。
もう一つの世界の私はあの人と勝手に壁を作って、危うくあの人を殺しかけた。
もし、私もこのままなら、いつか私もあの人、お姉ちゃんを?
そんなの
「・・いや・・だ・よ」
頭の中に浮かんでくるのは昔の、二人でいっしょに遊んだ、忘れていたはずの思い出。
『簪ちゃん!』
『いっしょに砂遊びしよ』
『うん!』
『うわー!簪ちゃん砂のお城つくるのじょうず』
『お姉ちゃんはもうちょっとゆっくりやった方がいいよ』
『う~ん。うん。わかったわ!こんなかんじ?』
『うん。そんなかんじ』
『ありがとう!簪ちゃん』
『わわ。お姉ちゃん。いきなり抱きつくとよごれるよ』
『あはは。気にしない気にしない』
『ぷ、あはは』
もし、お姉ちゃんがいなくなって、あの笑顔が見られなくなったら、
ズキ
そう考えただけで私は胸のあたりが少し痛くなった。
ああ、そうか私、本当はお姉ちゃんに
認めてもらって一緒にいたいんだ。
お姉ちゃんが次期、当主になるための勉強を始めたときあまり遊ばなくなった。
自分には出来ないことができるお姉ちゃんを見て、凄いと思ったけど、同時に私には眩しすぎた。
その隣にいるためには自分も同じようにならないといけないと思い始め、努力もした。
でも、私には無理だと思ってしまった。
そして、いつしか、あきらめて、お姉ちゃんから離れてしまった。
お姉ちゃんは悪くない。私が勝手に思い込んでいたんだ。
(明日、話してみようかな)
そう思いながら、私は目を閉じた。
Side out
その夜、IS学園上空にわずかな時空の揺らぎが生じた。
あまりに小さく、短い時間だったためDアークも反応しなかった。
だが、
(感じる。強い。強い奴らの気配)
その揺らぎの向こうから、強大な何かがこの世界に近づいて来ていた。
次回予告
一人の少女が小さな勇気を示す
それに応える一夏たち
しかし、そこに闇黒の影がやってくる
あとがき
大学のテストや実家への帰省でだいぶ遅れました。
今回は原作の更識姉妹の仲なおりへの道とデジタルワールドでの冒険の一幕、かなり難しかったです。
次回はなるべく早く投稿できるよう頑張ります。
|
Tweet |
|
|
1
|
0
|
追加するフォルダを選択
遅くなって申し訳ありません。十九話です。