No.460113

東方西行寺兄録 其の二『冥界』

春風さん

東方西行寺兄録の其の二です。

2012-07-27 01:35:02 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:2091   閲覧ユーザー数:2002

魔理沙が冥界に向かう頃、先程に霊夢の前に姿を現し幽々子の事を話した幽々子の兄こと幽希は辺り一面が森に囲まれた場所『魔法の森』の中の湖の水が流れる森の畔に居る。その場所に座り霊夢が言った冥界にはどうやって行くのかを考えながら1人真剣な表情をして流れる湖を見てる。

 

そして先程から幽希は探していた物があった。博麗神社に行く迄には確かに持っていた筈の幽々子の絵を。いくら探しても無いので先程の神社に落としたのだろうと考える幽希。そしてその絵は霊夢が拾い今は魔理沙が持っているとは絶対に幽希は分からないであろう。

 

「神社に落としてしまったのか。戻って先程の巫女さんに聞いてみよう」

 

進んで来た方へと戻る。その時、何処からか女性の声が聞こえ幽希はその場に止まり周りの方に目線を向かせる。ふと幽希が立つ前の景色に縦に一直線の線が走りその場所の景色が開いた。そこには1人の女性、そしてその中に見える不思議な空間を見ながら幽希はその女性に話しかける。

 

「まさかこんな森の中に人が現れるとは思ってもいませんでした。それで貴方は誰ですか?」

 

僅かな笑い声を幽希に聞かせてその女性はその空間に背を寄り掛からせる感じに座り幽希に言われた質問について言う。

 

「私は八雲紫。そして今貴方が見てるこの空間は私の能力で作り出したスキマと言う物。そして何故、私がここに姿を現したかは貴方が冥界に行きたいと悩んでいるのを見たからよ」

 

「私は西行寺幽希と言います。ところで聞きたい事があるのだが何故私が冥界に行きたいと言うのを知っていたんですか?。私は未だ一言も冥界の事は言ってませんよ」

 

「さぁなんでかしらね」

 

持っている扇子を顔の前に持って来て紫は一言だけ笑みを溢す。

 

何か不思議な力を感じる人だなと思いながら幽希は紫の事を見てる。幻想郷と呼ばれるこの世界にはこう言った人が数多く存在してるのだろうかと一緒に考える幽希。

 

「境界の力が外された時からずっと貴方の事を見させてもらったわ。それとあの博麗大結界を一時とは言え止めたのもね」

 

幽希の表情は徐々に真剣なものへと変わっていく。

 

「紫さんと言いましたね。見ていたのなら分かっていても可笑しくはないですね。私が巫女と話をしていた事や私が幽々子の兄だと言う事も」

 

「その前に教えてくれる?どうやってあの結界を止めたの。あれを止められるとしたら境界を自由に行き来する力を持つ者だけよ」

 

「簡単な事です。私は人であって人じゃない。亡霊とかした姿だからです」

 

「だから結界も無意味と言う訳ね」

 

幽希は頷く。紫は幽々子とは似ない幽希をじっと見つめながら兄だと言っている事に少し疑問を抱く。その逆に興味もかなりある紫。

 

「それじゃ先程の話しに戻るわね。幽々子が冥界に居て1000年以上の時が経った今になって何故貴方は彼女に会いたくなったの?」

 

「それは私だけの話しでは真実を語る事は出来ません。私が幽々子に会った時にその事をお話します」

 

それを聞いて紫はその事についてそれ以上何も言わなかった。ただ優しく微笑み紫はスキマの奥へと入って行く。そしてスキマを閉じる前に紫は幽希に一言だけ呟いた。

 

「冥界はこれより遥か上空。地上が逆転する場所に存在するわ。‥‥‥幽々子が貴方を覚えていれば良いわね」

 

幽希が頷くのを見て紫はスキマを閉じた。そして幽希は空を見る。この遥か上空の先にある冥界に我が妹の幽々子が居るのだろうと思うと嬉しさが隠しきれない。

 

しかし幽希は自分に嬉しさがあって良いのかと考えてしまう。それは自らが止める事の出来なかった過ちの事に理由がある。

 

「今度は同じ過ちは繰り返さない。そして再び見せてくれ。昔の時に見せてくれたあの嬉しい表情を」

 

雲1つ無い空を見ながら幽希は一言だけ呟いた。

 

 

 

 

冥界の白玉楼では既に夕食を済ませて眠りについていた幽々子は誰かが自分を呼んでいる声が聞こえたので目を覚ました。妖夢を呼ぼうとした幽々子だったが絵の人物を捜しに行って居ない事に気付き幽々子は直ぐに玄関の方へと歩いて行く。

 

玄関に居たのは魔理沙。急いで来たのか息を切らしている。

 

「そんなに急いでどうしたのかしら?」

 

「兄さんの忘れ物を届けに来たぜ」

 

「兄さん?妖夢の事でも言ってるのかしら?」

 

「何を言ってるんだ。西行寺幽希、お前の兄さんだろう」

 

「‥‥‥」

 

幽々子は真剣な表情になり黙りこんでしまった。それを見る魔理沙は何か気に障る事でも言ってしまったのかと思い、ここは余り触れてはいけない気がして魔理沙は幽々子の手を触りゆっくりと持っている絵を幽々子に渡した。

 

「とりあえず渡したぜ。じゃあ私は帰るぜ」

 

「‥‥‥」

 

魔理沙は玄関を出て猛スピードで飛んでいった。そして1人だけとなった幽々子は魔理沙が渡した絵を見る。

 

「……!?これはっ!」

 

 

 

 

紫に言われた通りに冥界に到着し姿を現した幽希は遥か長い道のりを眺めながら一歩一歩とその道を歩いている。そして少し歩いていると階段の先の所に1人の人物、妖夢が立っているのが見える。

 

妖夢は真っ先に気配に気付き持っている剣に手を持っていくそして振り向いた時に妖夢は驚いた。

 

「‥‥あ、貴方は」

 

「私は幽希と言う物です。ここは冥界で間違えは無いですよね?ところで貴方は」

 

「魂魄妖夢。この冥界の先の白玉楼の庭師をしている」

 

「妖夢さんは私の事を知ってる様に見えた。何でかな?」

 

妖夢が持っている幽希が描かれた絵を幽希に渡した。それを幽希が受け取って見る。

 

「‥‥これは私だな。一体何処でこれを?」

 

「西行妖の書物の中に」

 

「‥‥そうか、そんな所にあったのか」

 

妖夢に絵を返す幽希。絵を受け取った妖夢は幽希に幽々子の場所に一緒に来てもらう様に言う。

 

「私の主、幽々子さまの所に来て下さい。詳しい話しはそれからでも」

 

幽希は頷く。そして妖夢の後に続く様に歩き白玉楼の建物の方へと歩いて行く。これから幽希にとって予想もつかない事がおきるとも知らずに。

 

 

 

 

「‥まさか、夢で見た人は私の‥‥‥」

 

持っている紙をギュッと抱き締め幽々子は妖夢の帰りを待つのであった。


 
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