No.459738

ゲイムギョウ界の守護騎士

ゆきさん

ダンジョンで鍵の欠片を探す一行。パープルハートvsブラックハート!フードの集団の正体が明らかに!暴走する敵の力!
そして、覚醒が始まる!!

これからは本回と同じように長編で仕上げていきます。(他の作品も同様です)

2012-07-26 14:50:41 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1311   閲覧ユーザー数:1262

第20話 暴走と覚醒

 

アヴニールの件から一週間が経とうとしていた。

あの後、色々とあった結果、俺たちは今鍵の欠片があるダンジョンにいる。

 

軽く掻い摘んで説明すると、ハードブレイカー撃破後、期日の迫っていたクエストを急ぎで終わらせた俺達はブラックハートに遭遇した。もちろんのことダンジョンなのだから変身後の姿でだ。

 

「お兄ちゃんを返しなさーーい!!」とか言いながら攻撃を仕掛けてきたノワールさんをネプテューヌ達は何とか撃退して「今日こそは、あの新型を捕まえるよ!」とネプテューヌが言い、信じられないことにノワールを本当に捕まえてきたのだ。

 

変な言い訳(記憶喪失)をしたノワールは宿屋に連行され二日ぐらい滞在して最初に来たときとは明らかに違う何かを決意した凛とした表情で宿屋を後にした。

 

んで、招待がばれるのを構わずノワールは俺達に鍵の欠片の情報について教えてくれた。

その時だけはノワールは俺のことを「タイチ」と呼んだ。

 

「あれが、鍵の欠片を持ってそうだな」

 

ダンジョンの出口付近には下が蜘蛛で上が巨人の上半身みたいなのが引っ付いたのがいた。巨大な剣を片手で担ぐようにして構えていた。

 

「よし、やっちゃうよ!」

 

ネプテューヌの声を合図に皆が一斉に動き出した。ワントップは俺が務めることになっているので、すでに敵に向かって駆け出していた。

門番蟲は俺に向かって剣を横に薙ぐが――――

 

「遅せぇよ」

 

門番蟲の攻撃は虚空を薙いでいた。後ろを瞬時にとった俺は蜘蛛の尻の膨らんだ部分に容赦ない一撃を叩き込む。

同時に黒い雷撃が拳から発せられ追い討ちを行う。

 

「がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

雷撃により門番蟲は粉々に砕け散っていた。最後の体の一部が光を放ち、そこから鍵らしきものが出てきた。

 

「体内に取り込んでいたのか......もう帰るか」

 

「ちょ、ちょっと早いよ!「まあ、楽でいいじゃない」あ、あいちゃん、そんなこと言っちゃダメだよ!い、いつか天罰が落ちるよ!!」

 

っと、最近はこんな感じが多い。ネプテューヌは意外にも楽をするとかそういうのが嫌いらしい。

まあ、いつものことなので当然無視して目的の物を回収してその場から退散しようとし―――

 

「止まりなさい!」

 

後ろから追って来ていたノワールが姿を現した。(俺は最初から気づいていた)

 

「し、新型!?また邪魔をするの!?」

 

「そうよ。あなたを倒すまではね!!」

 

ノワールはそう言い放つと剣を両手で構えてネプテューヌを見据える。

ネプテューヌは意を察しったのか女神化を行いノワールと同じように剣を構える。

 

「あんたとの縁もこれで切れるってわけなら全力でいかせてもらうわ!!」

 

「ふん。あなた達みたいな普通の人は下がってもらえると嬉しいわ」

 

「そんなことはできないです~!パーティーは一心同体なんです!!」

 

「いいから下がりなさい!怪我じゃ済まないわよ!!」

 

「あ、自信がないんじゃないんですか?私達に勝てなくて」

 

「そ、そんなわけないわよ!い、いいわ。かかって来なさい!!」

 

顔を真っ赤にしながら怒鳴ったノワールはすぐに気持ちを切り替え、地を駆けた。

ネプテューヌもほぼ同時に地を駆ける。

 

キィン!!

 

刃と刃が交じり激しく火花が散る。

2人同時に剣を押し後ろに下がりノワールが再び突撃しようとしたところで―――ノワールの周囲におびただしいほどの銃弾が振りそそいだ。

銃弾の中に剛火球が混じっていたが、おそらくライカのものだろう。

 

「っち!」

 

「もらった!!」

 

煙で視界を取られたノワールにネプテューヌが瞬時に近づきノワールの腹部に裏拳を決め込んだ。

 

「がふっ!まだ!」

 

ノワール苦悶の顔をしながらも仕返しとばかりにネプテューヌの横っ腹に回し蹴りを放つ。

 

「っぐ!これしき!」

 

何とかその場に佇んだネプテューヌは剣を片手に握りなおし、剣で突きを放つ。

ノワールは何とか紙一重でそれを交わすと、こちらも握りなおしネプテューヌの攻撃とは比べ物にならない速さで突き、薙ぎ、切り上げ、切り下げを一瞬のうちに決め込んでいく。

 

「くうっ!「ネプ子!下がりなさい!!」うん」

 

一撃がヒットしたのか左腕を押さえ後ろに後退するネプテューヌ。

それを追おうとノワールが踏み込もうとするがアイエフが進行をを阻むようにカタールで対峙する。

 

「ホント、あなた達って飽きれるほど仲良しねっ!」

 

「一人のあなたには仲間の大切さってものが分からないわよね?」

 

お互い武器を構え睨み合いながらの会話。

アイエフは挑発と言わんばかりにあえて「一人」の部分を大きくしている。

対するノワールは挑発に乗ってしまっているのか、肩がプルプルと震えている。

 

「う、うるさい!!仲間なんて....私には....作れるわけがないんだから!!!」

 

泣いていた。頬を伝う大粒の涙が地面にポツリまたポツリと落ちていく。

その涙を見て俺はたまらず、大声でノワールに向けて叫んだ!

 

「ノワール!それはお前が女神だからか!?」

 

「お、お兄ちゃん.....そうよ!私は女神なんだから全部何もかも一人でやらなきゃいけないの!!誰かに頼るだなんてそんなことできるわけがない!!」

 

ノワールも涙を拭い俺に対し大声で叫んでくる。

 

「人に迷惑をかけたくないから?仲間を作らない?お前はそう言いたいのか?」

 

一歩ずつ確かにノワールに近づいていく。

 

「.....迷惑?―――違うわ!仲間なんて私の足を引っ張るだけの存在よ!!」

 

「.......」

 

「な、何よ。そんな風に睨まれても―――」

 

パチン!

 

「―――え?」

 

俺はノワールの頬をビンタした。すぐに訳も分からないと言った感じでノワールが驚愕の表情で俺を見た。

俺は構わずノワールの両肩を掴み―――

 

「ふざけるな―――それが理由か?」

 

「そ、そうよ」

 

「足を引っ張るだ?仲間がいないお前に何が分かるんだよ!!」

 

「っひ!」

 

ノワールは恐怖で俺から逃げ出そうとするが、がっちりと肩を掴んで俺は逃がそうとしない。

 

「勘違いも程々にしろ!仲間がいなきゃどうにもならないことなんて、この世界にはたくさんある!」

 

「そんなこ「現実を見ろ!これが仲間のいないお前の弱さだ!」

 

「負けたくないなら、支えあえる仲間を探す「違うのよ。そうじゃないの。私に仲間はいたわ」....」

 

「けど、その子達はみんな私から離れていった。聞いたわ「生真面目すぎて、うざい」って、陰口をたたいていたの」

 

「―――そうか「だから、仲間なんて―――」なら、俺が―――なってやる」

 

「お、お兄ちゃん?」

 

両肩を握るのではなく包み込むようにノワールを優しく抱きしめた。

 

「俺が、ノワールの仲間になってやる」

 

「あ.....」

 

「俺だけじゃないぜ?ネプテューヌ達だってそうだよな「ええ」「いいわ」「そうですー」「もちろん」ほらな」

 

いつの間にやら全員が武器をしまい俺とノワールの近くに立っていた。

 

「あなた、ノワールって言うのよね?さっき女神って言ってたけどもしかして、ブラックハート様なの」

 

「え、ええ」

 

少しだけ困った顔でそう頷くノワール。まあ、そうなるよな。

 

「で、何であんたは女神様と知り合いな訳?」

 

はあー、さすがはアイエフさん。痛いとこを的確に突いてこられる。

 

「まあ、色々あってな」

 

適当にそっぽを向いて焦らす。

 

「後でしっかりと聞いてあげるんだから」

 

「今日はとても楽しみですー」

 

「ですね」

 

「ら、ライバルが増えたわね」

 

ネプテューヌ以外は笑顔になり、その場の緊張していた空気が一気に解けた。

ノワールも自然と笑顔になっていく。俺は体を離し、その場に似つくわないため息を漏らした。

 

「どうやら、敵に見つかったようだな」

 

「やっと、見つけた」

 

「魔王も一緒か。まあ、女神だけ殺すのが今回の目的だしな」

 

ダンジョンの奥底から現れたのは二人のフードだった。片方はネプテューヌと同じぐらいの背。もう片方は俺と同じぐらいの背。

これだけなら、ただの怪しい二人組みな訳だが、小さいほうは冷気を纏い、大きいほうは風を纏っている。

フードを取った二人はこちらに少しずつ歩み寄ってくる。

 

「な、何なのよ。あいつら?」

 

アイエフが強張った顔で俺に言う。

 

「いわゆる、最強って言う奴かな」

 

「お兄様、彼らは罪人に違いありません。それも『ナンバーズ』です」

 

いつの間にやら横に立っていたライカが他の皆に聞こえないぐらい小さな声で呟いた。

罪人。罪を犯した者達は地獄でそう呼ばれている。

罪人には特殊な能力を持ったものが多数おり、その中でも面倒な奴らが『ナンバーズ』と呼ばれる一京を軽く越す人数の中に立つ最強の五人だ。

『ナンバーズ』をあらわすのは頬に小さく刻まれている数字である。男の右頬にはⅣの文字が、少女の右頬にはⅤの文字が刻まれていた。

 

「やっぱりな。どうりで強いと思った」

 

他の4人はきょとんとした感じで聞いているが、まあ今は説明してもしょうがないのでこのままにしておこう。

 

「お前は『七つの大罪<カサルティリオ>』。いや、名前があったんだっけな。ライカ「No.Ⅳ。私語は必要がない」相変わらず、お堅いことで」

 

「魔王の相手はあなたに任せる。私は女神を抹殺する」

 

「俺一人であんな怪物と殺り合える自信は微塵もねえけど、Ⅴが殺るよりはましだな」

 

二人は確認を終了したのか、それぞれの手に武器を生み出していく。

 

「風剣ウインドレス。最初っから切り札を使わせてもらうぜ」

 

男が手にした剣は両刃の剣。刀身が蛇のようにうねっており綺麗な緑に白が混じった神秘的な剣である。

 

「氷弓フリージング。こちらも切り札を使わせてもらう」

 

少女が手にしたのは巨大な弓。明るい水色と暗い青に雪のように美しい白。

きれいな装飾が施されており、その大きさは少女の体をゆうに越す2m近くあった。

 

「んじゃ、こっちも行かせてもらうぜ―――魔王化―――!」

 

 

 

瞬時に変身し終えた私は剣を引き抜き、二人に対峙する。

 

「初の共闘戦だね。皆、行くよ!」

 

皆が武器を再び構え、少女のほうに対峙する。

 

「行くわよ、ノワール!」

 

「ええ。さっさと終わらせるわ!」

 

二人の女神は同時に駆け出した。共通の敵に向かって!

 

 

ダンジョン出口付近では凄まじい戦闘が始まり一時間が経過しようとしていた。

状況は『ナンバーズ』の優勢であった。紅葉は肩で息をしながらも、向かってくる絶え間のない風の刃を炎の壁で受け止める。

ネプテューヌ達は完全に追い込まれた状態にあり、ライカが何とか攻撃を防いでるに過ぎなかった。

 

この状況が生み出されたのは、『ナンバーズ』の体に虚空から現れた黒い何かが入り込んだからだ。

この黒い何かは紛れもなく『畏怖の念』であった。だが、紅葉もそのことにはまったくもっと気付いていない。

『畏怖の念』に取り付かれた者は理性を失い、悪の力をその身に纏う。

彼ら『ナンバーズ』も取り付かれ、力を暴走させている。

 

「何で、騎士の姿をしているの?」

 

紅葉は対峙している風の鎧を纏った『騎士』を見る。

暴走したはずなのに的確な攻撃と俊敏な動き。

理性を失ってここまで出来るのが既におかしいのである。

だが、そんなことをゆっくりと考える余裕は今の彼女にはなかった。

 

『ウインドレス。真名開放開始』

 

風の騎士が右に持っていた剣を勢いよく地面に突き立てた。

それと同時に緑色の魔法陣が切っ先を中心にひとつ、またひとつと展開されていく。

 

「それだけはさせるわけにはいかない!」

 

対する紅葉は剣に魔力を集中させる。周りには小さな紅い光が浮かび上がっていく。

剣からは炎がメラメラと渦を巻き、刀身に絡みつくような状態になっている。

 

紅葉は剣を肩で担ぎ、空へと飛び上がる。

紅い光は消えたと思うと、紅葉が最高点に達した瞬間に先程より激しい光となり紅葉の周りに現れた。

 

「天地を穿つ炎槍<サウザンド・ストライク>!!」

 

技名を叫ぶと周りの光はマグマの噴火のような勢いで一斉に地面―――風の騎士に向かい放出された。

それと同時に剣を振るう。渦を巻いていた炎は紅い巨大な斬刃となり、こちらも騎士に向かって行った。

 

『真名開放。天空を切り裂く剣<ティアブレイド>』

 

騎士は風で出来た剣を引き抜くと、それを紅葉に向かい横に薙いだ。

すると風が吹き荒れ、騎士の周りに剣の形を模した風が一瞬で形成される。

形成された剣は次々と紅き槍に向かい、衝突していく。

斬刃も同様に巨大な風の斬刃に衝突し消える。衝突のたびに物凄い衝撃波がダンジョンに吹き荒れる。

増え続ける剣に対し、消え失せていく槍。

 

「っく!」

 

紅葉は苦しそうに、頭を抑える。一瞬の集中切れで総ての光源が消え去った。

無慈悲な剣の嵐が次々と紅葉に襲い掛かっていく。

 

激しい頭痛に意識を持っていかれそうになるが、紅葉は何とか意識を保っている。

彼女は今まさに、自分に剣の嵐が迫っていることなんて微塵も気にする余裕はなかった。

 

「う―――あぐっ!ごふっ!」

 

そして紅葉は為す術無く無数の剣をその身に一つも余すことなく受けた。

誰が見ても状況は、最悪であった。紅葉は空中に留まったまま、頭を垂らし動かない。

 

 

『大地を凍がす天弓<スノウストーム>』

 

外側が水膜で出来て、内側が氷の鎧を纏っている騎士が半分が水と半分が氷で出来た弓をネプテューヌ達に向かい弓を引く。

空間を貫いて突如として現れた幾つもの氷水の矢は流星の様な勢いでネプテューヌ達に襲い掛かる。

 

「う、そんな.....」

 

「こ、こんなところで......」

 

「も、もうダメです.....」

 

「ま、負けるわけには....」

 

「み、皆さん!っく....」

 

五人は身体の至る所に擦り傷の様な傷がある。

擦り傷から氷が薄く膜のように広がっていく。

それはあっという間に四人の身体を包み込んでしまった。

しかし、ライカだけは擦り傷をしただけで何も起こりはしない。

 

ライカは四人に駆け寄ると地面に肩膝をつき、両手に炎を灯す。

 

「煉獄の炎よ、我が命に変え罪を浄化せよ!」

 

両手の炎が、空間を覆い尽くすように満遍なく広がっていく。

彼女達を包んでいた薄い氷の膜は、すぐに溶けていく。

ネプテューヌ達だけではなく、離れていた紅葉の身体も炎に包まれていく。

 

 

心奏世界

 

「ここは.....っ!ライカ!!」

 

紅葉は古風のドレスを靡かせながら、横たわっていたライカを抱き上げた。

生気をほとんど失った彼女は髪の色が何故か赤から黒に変わっていた。

 

「ライカ!ライカ!」

 

「お、お兄様....成功したんですね」

 

「成功?―――ま、まさか!?」

 

「はい、そのまさかです。お兄様をここで死なせるわけにはいきませんから」

 

ライカは紅葉に支えられながら地面に立つ。

 

この二人は「ある力」を二人で分けて使っているため完全な変身へと移行しきれていなかった(ライカは常に未完全な変身をしている)。

だからこそ、この最悪な状況を打開するためにライカは紅葉に自分の力を総て流し込んだのだ。

 

周りを見て、一息ついたのだろうか。

ライカは静かに口を開く―――がそれを紅葉の口が塞いだ。

 

「ん―――にゅちゅ―――お、お兄様?」

 

「勘違いしてるようで悪いが、俺は誰かを犠牲にしてまで力を欲していない」

 

炎が蜃気楼のように霞むとそこにはいつの間にかタイチがいた。

刹那、ライカの髪の色が普段よりも紅く、それこそ本物の炎―――否、髪が炎となり燃え上がっていた。

リボンは解れ、ツインテールの髪の炎はロングへアーと変わった。

姿形は女神達と同様のレオタードの物。プロセッサユニットは総てが赤で統一されていた。

頭部にはティアラ。背部は紅葉と似ていて組み合わせた四対の剣で出来ていた。

脚部にはヒールらしき物を身につけていた。どれもが美しい炎を優しく放っている。

 

つまり、タイチは自分に流し込まれた炎の力をキスによって総てライカに戻したのだ。

 

「俺は―――死んでない。お前らのためにも死ぬわけにいかないんでな」

 

「お兄様.....「早く、行って来い!」え?」

 

タイチは空間を無理矢理こじ開けると、ライカをそこに放り投げた。

ライカが名を叫ぶのはすぐに聞こえなくなり、彼は再びセカイを見渡した。

 

「行って来いか。頑張れよ―――地獄神<スカーレット・ハート>」

 

燃えるセカイをその瞳に映し、魔騎士は一人歩き出していった。

 

 

ライカはダンジョン内をせわしく周りを見回すが、タイチはどこにもいなかった。

もしかしたら先に抜け出したのかもしれない。少なくとも、お兄様が消えるはずがない。

そんな薄い望みに希望を託し、彼女は今やるべきことに立ち向かう。

 

ライカは手にした剣の切っ先を眼前の騎士達に向ける。

 

「真名開放」

 

開放の儀式を創めると途端に剣にヒビが奔り、そこから紅い光が漏れ出した。

 

「煉獄を司る剣よ」

 

瞬間ガラスの割れたような音がした。ライカの手元には紅い刀身の片刃の剣が現れた。

 

「制裁を下す戦剣<カサルティリオ>!!」

 

真名を叫ぶと剣が蠢動し、刀身の周りを炎が凄まじい勢いで嵐のように纏わりつく。

さらにライカの周りに紅球がいくつも浮かび上がっていく。その数は紅葉の比にならない!

 

『ティアブレイド』『スノウストーム』

 

風の騎士は剣を横になぎ払い、氷水の騎士は弓を穿つ。

対象はライカと反対の位置にいる気を失っている5人。

 

「っち!」

 

ライカはネプテューヌの元まで一瞬で距離を殺し、迫る嵐剣と流弓に向かって剣を一振りする。

すると炎の波が紅い剣閃に導かれるように現れ、いとも簡単に騎士の全力の攻撃を飲み込んだ。

 

「お兄様。使わせてもらいます」

 

ライカは剣を腰にあて居合い切りの構えに入った。剣には先程―――否!それ以上の炎が嵐のように吹き荒れていた。

ライカがつい数秒前までいたところには一つ一つの紅球が形を変え、近未来の形を象った幾つもの砲が空に浮いていた。

 

「総てを消し裂く戦剣<サウザンドブレイド>!!」

 

腰に当てていた剣を抜刀すると、切っ先が一瞬だけ煌き、刹那の時にさも恐ろしい炎の長刀を創り上げる。

抜刀したそれは騎士の外装を見事に消滅、蒸発させる。

 

「断罪者がここに命ずる!」

 

長刀と化した剣を天に掲げ、叫ぶ!浮遊していた砲は空間に溶けるように消える―――だが、それだけでは終わらない!

 

「裁きを下す!際限なき滅亡の砲<エクスターメギド>!!」

 

騎士の周りに先程の無限の砲が出現し―――無慈悲な砲撃が発せられた。


 
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