No.454436

リリカルなのは×デビルサバイバー

bladeさん

2nd Day FIRST CONTACT

2012-07-17 00:17:39 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:1966   閲覧ユーザー数:1913

 眼前の状況を一言で表すのならば、それは"滑稽"、"幻想(ファンタジー) "と呼ばれる物に類するものだろう。

 なにせ、二人の少女が空を飛び、まるで絵本の中のキャラクターのような服を着ているのだから。

 しかして、これだけでは滑稽と称することは出来ないだろう。何故滑稽と称するか、それは二人の少女と一人の少年がそれぞれ違う立場で相対し、敵対しているからに他ならない。

 

 とはいえ、一方的に敵対視しているのは、金髪の少女とその犬だけで、白い少女は現在の状況に唯、困惑し。少年はその手に持つ青い宝石のような物を強く握り締めている。

 このような状況が出来て数分――。動きを見せたのは金髪の少女だった。

 

「それを渡して、私達には其れが必要なんだ」

 

 金髪の少女は、少年が持つ宝石を指さしながら言う。

 その少女の眼は強い意志を秘めており、惰性に生きるだけの者であれば、簡単に怯ませる事が出来るほどだ。

 

 その隣に居る朱き毛並みを持つ犬が、少女に便乗するかのように叫ぶ。

 

「そうそう! 其れはアンタが持ってても、仕様のないもんさ!」

 

 捉え様によっては、まるで人を馬鹿にするかのような台詞。

 それに気づき、ムッとした少年が、獣に向かい何かを言おうとするが、それを遮るように叫ぶ、中性的な声。

 

「渡しちゃ駄目だっ! それはとても危ないものなんだ。だから封印しないと!」

 

 それはフェレットだった。

 普通フェレットが喋っていれば驚くのが普通だが、犬も喋っているし、何よりその程度で驚くほど少年は"普通では無かった"。

 

「封印ならあたし達がやるさ! そらっ、さっさとよこしなよ!」

 

 少年は、フェレットと狼交互に見比べてから。

 

「そうだな、渡してもいい。……条件はあるけれど」

 

 と言った。

 渡す意志を見せたのは良い。しかし、条件を提示してきたことに、少々腹を立てているのか、語気を荒げながら犬は問いかける。

 

「条件って何さ?」

「その羽根を渡したやつを教えて欲しい」

 

 少年は少女の手にある、羽根を指さしながら言う。

 黒い少女は少々困惑の色を見せながら、羽根を痛めないようにギュッと握り締める。

 

「これを……? どうして?」

「何故答えなきゃならない。それとも、俺からも問いかけようか? アンタ達はコレを使って何をするのか? とね」

 

 暗に、追求するな。という意を少年は表す。

 しかし、あえて犬はその領域に踏み込む。その理由は唯一つ、心も身体も含め、主を護るために。

 

「そりゃそうだ。でも、一応聞かせてもらうよ。それを知って、あんたはどうするんだい?」

 

 少年はため息をつく。

 自身が話さなければ、話が先に進まない事に気づいたから。

 

「さて……ね。その羽根の元の主が、その羽根の真の意味を知っていて、もし悪用しようと言うのなら……」

 

 少しだけ、間をおいてから決意するように少年は言うのだ。金髪の少女にとって死刑宣告に等しい一言を。

 

「その羽根の持ち主を……殺す」

 

 この物騒な状況こそ、天音カイトと後のエースオブエース…高町なのは。執政官フェイト・T・ハラオウンが初めて出会った瞬間だった。

 

* * *

 

 またもや、街中で大穴ができた。そんな情報を得たのは、前回と同じく、テレビのニュースでだった。

 それもあって、学校の先生から「帰りはさっさと帰るように」という指示を受けることになる。

 そんな変わった状況で、変わらないこともある。それは、今現在のクラス内の雰囲気だった。

 

「(空気ワリィ…)」

 

 未だ機嫌が治っていない金髪の少女こと、アリサ・バニングスのイライラとした空気が教室に蔓延し混沌としたものにしていた。

 そんな重い雰囲気を気にする事無く、担任は話を進めていき最後に「以上」とだけ言って終了を告げた。中々性格のいい教師である。

 

 ガタンッ!

 

 勢い良くアリサが立ち上がり、かばんを持って一人教室から出ていく。この様子からも、機嫌が昨日から全く治っていない事がわかる。

 紫の髪の少女、月村すずかも慌てたように、高町なのはに頭を下げてからアリサを追っていく。

 教室後方からは、「なのはちゃん達が喧嘩してるなんて、珍しいよねー」と、友人同士で会話している。

 当の本人である高町なのはは、苦笑い気味に笑いながら、それでいて昨日とは違い全く憂いのない瞳で教室を出ていった。

 

 とはいえ、そんな事に気づいたからなんだというのか。

 カイトは昨日と同じく、カバンを持って一人で教室を出る。今日の目的を果たすために。

 

* * *

 

 カイトは海鳴市の中心部へ行くために、臨海公園を歩いていた。臨海公園はかなり広い敷地で構成されおり、学園から海鳴市中心部へと移動するには、臨海公園を突っ切るのが一番楽なのだ。

 ちなみに臨海公園には多数のカップルや、家族連れ。子供も多数来るほどの人気の場所でもある。

 そしてその子供の中には、カイトも知っている者達がいた。先程機嫌悪く去っていったアリサ・バニングスと、月村すずかの両名だ。ベンチに座り、何やら話し合っている。

 二人の姿をちらっと見た後カイトは気にする素振りも見せず、二人の目の前を歩いて行く。

 

「ちょっと待ちなさいよ!」

 

 不意にアリサが声を上げる。

 明らかにカイトの方を見て言っているのだが、既にカイトはアリサ達の方を見ておらず、自分のことと思っていないのか、止まることなく歩いて行く。

 

「って、止まりなさいよ! 聞こえてないの!?」

「アリサちゃん…。聞こえてないんじゃなくて、自分を呼び止めてるって思ってないんじゃないのかな? ほら、天音くんとあまり会話もしたことないし」

「あ、そっか。なら名前呼ばなきゃいけないのか。あー……聞こえてるんでしょ! 天音くん!」

 

 苗字を呼ばれ、ようやくカイトは止まり、声がした方――アリサ達の方を向き、足を運ぶ。

 

「何だ?」

「何だ? じゃないでしょ、先生に言われてたじゃない。中心部は避けて、さっさと帰れって」

「あぁ、その事……。別にどうでもいいだろ」

 

 クルッと後ろを向いて、カイトは再び歩き出そうとした。しかしアリサは再びカイトを呼び止めた。

 

「いやいや! だから危ないっての!」

「そうですよ! もしかしたら『テロ』かもしれない。って言われてますし」

「ふー……」

 

 二人がカイトを呼び止めるのは、親切心からくるものなのだろう。その優しい心は人として大事なものかもしれないが、カイトにとっては煩わしい物であった。

 

「……爆発? か知らんが、穴が開いたのは夜なんだろ? だったら真昼間から行っても、問題ないだろ」

 

 そう言ってカイトは再び歩き出そうとする。が、またもやアリサがカイトの服を止める。

 

「だ~か~ら~! 危ないって言ってんでしょ!」

「うっさいな! 別に危なかろうが、アンタには関係無いだろっ」

 

 次第に二人のテンションは、ヒートアップしていく。二人は気づいていないことだが、こんな大声で言い合えば目立つことこの上ない。すずかもその事に気づいており、慌てて二人をたしなめ始める。

 

「二人共! 皆見てるよ!」

「へ?」

「お?」

 

 すずかの言葉を聞き、二人は周りを見る。そして二人して頭を下げた。二人が頭を下げたのを見て、興味がなくなったのだろう、二人を見ていた人たちは、自分の行動をし始めた。

 

「あ~……。ごめん、月村。騒がしくして」

「うん、あたしも……。ごめん、すずか」

「ううん、いいの」

 

 すずかから許しをもらったが、未だ冷めてない頭をクールダウンさせるために、体を伸ばし始めた。

 アリサも同様に立ち上がり、体を動かす。理由はカイトと同じだろう。

 「ふぅ…」と、息を吐いてから、アリサはカイトに頭を下げた。

 

「天音くんもごめん。いきなり呼び止めて、怒鳴っちゃたりして」

「いや、別にいいよ。心配してくれたのに、それを無下にしようとしたのは、俺だ。こちらこそすまない」

 

 カイトもアリサに頭を下げた。

 だがアリサは慌てた感じに、弁解し始める。

 

「天音くんが謝ることなんてないのよ! 唯……その、私がちょっとイライラしてて…多分それで天音くんにあたっちゃったのよ……。だから、天音くんが謝ることなんて無い。むしろ謝らなきゃいけないのはこっちだから!」

「イライラ……。あぁー、高町さんか」

 

 イライラの原因を当てられ、アリサは少々顔をひきつらせる。

 

「うっ……。分かっちゃう? やっぱり」

 

 カイトは頷く。

 

「というか、クラス全体で分かってるんじゃないか?」

「やっぱり、天音くんもそう思いますか?」

 

 「うん」と、すずかにカイトは返事をする。

 

「あの険悪な空気に気づかない奴は、よほどの馬鹿か頭のネジがちょっとズレた天才ぐらいのものだぞ」

「……うわ。何それあたし最悪じゃない」

 

 空気を悪くしていた原因が自分であることに、今更ながら罪悪感を覚えているのだろう、アリサは頭を抱えながら言っている。

 

「まぁなんだ。それに気づいたらなら、早く仲直りしろよ」

「仲直り……ねぇ?」

 

 考えこみ始めたアリサを見てから、カイトは歩き出した。

 

「んじゃ、そういう事で俺は行くから」

 

 と、中心部へと足を向けようとする…が。

 

「だ・か・ら! 危ないって言ってるでしょ! イライラをぶつけちゃったのは、本当だけど危ないって注意してるのも本当なの!」

「ぐぅ……(これは、今日中心部へと行くのは、諦めたほうがいいか)」

 

 カイトは諦めたように、ため息をつく。

 

「分かったよ。中心部に行くのは、やめる。その代わり…じゃないけど、お前も早く高町さんと仲直りしろよ」

「そりゃ、あたしだって仲直りしたいけど……でもさっ! 悩んでることがあるなら、言って欲しいじゃん! 友達なんだから……。でも言ってくれないって事は、人に言えないこと…? む~~!」

 

 ブツブツ…と。アリサは下を向いて独り言を言っている。

 カイトは視線をすずかの方へと向けると、その視線に気づいたすずかが。

 

「アリサちゃん、素直じゃないから……」

 

 と、苦笑い気味に説明した。

 カイトは未だ頭を抱えているアリサを見てから。

 

「素直じゃない……? いや、物凄い素直だと思うけれど?」

「あはは……。アリサちゃん優しいもん」

「優しいねぇ…」

 

 確かにそうかもしれない。アリサの様子を見ながら、そう思うと、携帯を取り出し、現在の時刻を見る。そろそろ帰らないと、暗くなってしまうだろう。

 

「それじゃ、俺はそろそろ帰るとする……?」

 

 異変。というのは、突然訪れるものだ。

 カイトが感じたのは、魔力とどこかで感じたことのある気配。だがそれすらも一瞬で消え去る。まるで、なかったコトにするように。

 

『…おい。今の気配――』

「(あぁ。あの気配…天使のものだった)」

『行くしかないんじゃないか? 折角掴んだ天使の手がかりってやつだ』

「(分かってる)」

 

 気配がした方、臨海公園森林部に目を向けながら、カイトは言う。

 

「それじゃ俺もう帰るよ」

「……え? もうこんな時間なの? すずか、あたしたちも帰りましょうか?」

 

 アリサも携帯で、現在の時刻を確認すると、同意を求めるために、すずかに言った。

 

「うん。そうだね」

 

 すずかも携帯電話で時間を確認後、ベンチから立ち上がながら返事をする。

 

「それじゃ、二人共また明日」

「また明日ー」

「はい、また」

 

 二人と別れると、カイトは先程の気配がした場所へと向かう。その手にCOMPを持ちながら……。

 

* * *

 

「あれって……!」

 

 手探り状態で歩き続けること数分。カイトは二人の人間を見ることになる。

 一人は白い装束を身に纏う少女。

 一人は黒い装束を身に纏う少女。

 ある意味で対極の色を持つ、二人の少女をカイトは見ていた。

 そんな少女二人を見ていたカイトを見つけたのは、一匹のフェレットだ。

 

「なんでこんな所に人が! 結界は張ったはずなのに!」

 

 フェレットの声で、初めて気づいたのか、二人の少女もカイトの方を見る。

 

「え……っ!? 天音くん!?」

 

 特に大きな反応を示したのは、白い少女こと、アリサ達の悩みの元となっている高町なのはだ。

 そして驚いたのは、なのはだけではない。

 

「高町さん? なんでだ?」

 

 カイトもまた驚いており、現在の状況を頭の中で纏めようとしたその時だった。カイトの頭上から青い宝石が落ちてきたのは。

 

「……なんだこれ」

 

 カイトはその宝石を手に取る。

 眼前の宝石が何であるかは分からない。だが、巨大な魔力を持っている何らかの、マジックアイテムだということは、なんとなく分かった。

 宝石がカイトの手に渡ったのを見た黒い少女は慌てたように、カイトの方に移動しようとした。だが、その時だった。黒い少女から、一枚の白い羽根が落ちそうになったのは。

 その白い羽根を慌てたように、キャッチしホットした表情を浮かべている少女を見ながら、カイトは笑っていた。

 

『おいっ!!』

「あぁ……分かってる!」

 

 自身の目的の手がかりを目の前にし、笑いを堪えることができない。

 そして冒頭の"殺す"。という台詞に繋がるのだった。

 

* * *

 

「ころ……す。ころす……殺す?」

 

 少女は呆然と一つの単語を繰り返し言う。それだけ、その言葉を信じることができない…いや、認める事ができないのだろう。

 

「させない……」

 

 だからこそ、眼前の……自分の敵である、カイトを睨みつけ、とても低い――ドス黒い感情を持った、その声で少女は叫ぶ。

 

「『母さん』は殺させないっ!」

「母さん?」

 

 疑問に思うまもなく、黒い少女の一線がカイトに襲いかかろうとし、それを迎撃するために、カイトが右手をだしたその時だ。

 

「ストップだ!!」

 

 一人の少年が、黒い少女の一撃を、その手に持った棒で受け止めていた。

 

「僕は時空管理局執務官クロノ・ハラオウン! 話を聞かせてもらう!」

 

 少々背の低い少年……クロノ・ハラオウンの声がその場に響き渡るのだった。

ルビを追加。中々に便利ですねこれ。


 
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