皆さんこんにちは蒼です。今、目の前には華琳の他に二人の女がいる。
なんとか黒い方を宥めた華琳が疲れた様子で謝ってきた。
「ごめんなさい。蒼。よもやこんなことになるとは思ってなくて」
「いや、いいよ華琳。俺はあんまり気にしてない。ただ、次は気を付けとけよ。分かってると思うが俺ならともかく他の奴ならかなり失礼にあたるぜ」
「そうよかったわ。それと、助言は有り難く受け取るわ」
ん?またなんか黒い方が俺を睨んでる。
なんかさっきのあいつの華琳への態度とか見てたら、俺が華琳の真名を呼んでるのが気に食わないようだな。
「華琳様!何故男に真名を預けているのです?華琳様はあの時…「春蘭!彼、蒼はいいの。色々あってね。」くっ!しかし、これは華琳様は認めても、私は認めません」
「華琳様。これは私も反対です。彼はあの『私塾の落ちこぼれ』の李 雲犬でしょう。彼を手元においておくのは些か軽率かと」
……はぁ。色々言ってくれるよ。まあ、狙い通り無能の噂が出てるのはいい事なんだが、目の前で言われると少しへこむ。そう思っている間にも華琳たちは俺について話しているようだが、なんだか嫌な予感がする。経験上こういう予感は良く当たる。
「なら、彼が有能なのを証明出来ればいいわけね?」
「「はっ」」
「なら蒼。あなた春蘭と戦いなさい。春蘭もそれでいいわね。「はい!華琳様!」
ようやく話し合いが終わったのか……ってなんだよそれ!?
「って、ちょっと待て華琳。これはお前の将来の家来の顔見せだろ。それに前にも言ったが、俺は手札を見せたくないんだよ」
「けど、あなたはあの時言ったわよね?『お前はただ「戦え」と言え。なら俺は戦う。』と」
「お前はよく覚えてるなそんなこと。……わかった負けだよ負け。但し条件がある。この三人以外にだれも見せたくない。理由は前言った通りだ」
まったく、恥ずかしい台詞思い出させやがって。俺は条件付きの了承を出し。
華琳はその条件を飲み、俺達を中庭に連れていった。
そして、今目の前にはさっき俺を襲った剣を構える黒い方がいるわけで。対する俺はというと…。
「ほう、無手とはな、珍しい。」
はい。そうだよ。素手だよ。ステゴロだよ。だって槍はこんな事になるなんて分からず家に置いてあるし、すぐに終わらしたいし……。
けど、あの性格的に主武器が槍とか聞いたら手加減されたとか思われて怒るだろうな。無手でもそれなりの自負はあるんだが……
「まあ、こっちも色々あるんだよ。」
「そうか、ならば……。我が名は夏侯惇 元譲、華林様の剣だ。」
「おいおい。いいのかよ名乗りを上げて、そんなことされたら、俺は今の本気を出すぜ「問題ない。早く来い」
本来、名乗りを上げたってことはお互い死力を尽くして戦う。これはこの世界の戦場の常識だ。まぁ今回は力試しの意味合いが強いから生き死ににはならない(少なくともこちらとしては)筈だがそれでも己の力の限りを尽くすのは間違いない。それをあの夏侯惇は要求したのだ。
まったく、某槍兵の性格のせいか、面倒くさいのに楽しいと感じてしまう。止めれねーよこれは。
「ヒュウ♪いいね。この頃刺激が足りないと思ってたんだ。なら、我が名は李高 雲犬。今のところは華林に認められてる『落ちこぼれ』だ。せいぜい楽しませてくれ」
「二人共、いいわね。では、始め!」
華林の合図と同時に襲って来る剣を最小限の動きで躱し続ける。当たったらヤバそうだが、どこかのマザコン、シスコン、ロリコンで赤と金色が好きで裏切りに定評がある大佐は言っていた「当たらなければ問題ない」と。そんな馬鹿な事を考えながらも避ける。
まだ幼いからかまだ未熟だがあの夏侯惇だ。戦乱の世になれば猛将と呼ばれるぐらいの実力になるばずだ。しかし、予想通りとはいえ、女だったな。ただちょっと脳筋っぽいけど。
「フハハハハ!どうした!避けているだけではつまらんぞ!」
「ふぅん、んじゃ今からあんたに攻撃するからちゃんと対応しろよ?」
そう言いつつ隙を見て俺は距離を少しあけ身構える。あっちも此方の雰囲気が変わったのを感じたようで守りを固めてるようだが。
(ちょっとばかり甘いな)
俺は距離を一気に縮め、腹に掌手を叩き込み一時的に相手を動けないようにした後、今度は武器を取り除くため、両手首に一発ずつ拳を放ち、武器を落としたのか確認しないまま後ろに回り込み、首筋に手刀を入れ。気絶させそのまま抱き上げる。この間約一秒。我ながらなかなかいい動きだったと思う。
―side 秋蘭
なんなんだあの動きは。距離を詰めたと思った途端、反応できない速さで姉者の懐に入り込み僅か四発の打撃で姉者が倒されただと?
「これにて終了っと。華琳。これでいいよな。」
「え、ええ。この勝負は蒼、貴方の勝ちよ。
それにしても槍だけじゃなく無手でも強かったのね。」
私は華林様の言葉に耳を疑った。つまりあの男は武器を使うにも関わらず無手で姉者を倒したということか。つまり……。
「李高殿。貴方は先程の立ち合いで手を抜い「てねーよ。俺は槍と無手両方を使うんだよ。まあ主に槍を使うが、その分無手が弱いということはないから安心しな。いくらなんでも名乗りを上げられたのに、ついでに習得した無手で挑みました。なんてのはさすがに失礼だし、夏侯惇相手についで程度の武じゃ負けてるよ」ふ、そうか。済まないな。では謝罪ついでに私の真名を預けよう。私は夏侯淵 妙才。真名は秋蘭だ宜しく頼む。それと先程の落ちこぼれと呼んだことも済まない。貴方「だ。俺の真名は蒼」分かった。蒼は華琳様に仕えるに値する人物だ。姉じゃは見ての通りだから後で聞いてもらえると助かる」
あのような武を華琳様も見抜いておられたのだろう。あの武は将来、豪傑と名乗るにふさわしいものだ。
私は弓を使うが今の蒼には当てられる自信がない。
華琳様が立つ時、そなたの武、期待させてもらうぞ。
―side out
その後のことはあまり思い出したくない。
簡単に説明するとあの後、夏侯惇が起きて、秋蘭が負けたことを説明し、渋々ながらも夏侯惇は真名を預けて来た。(春蘭というらしい。預けてきたときに唸られていたのは愛嬌なのだろう)
その後、春蘭が「もう一度勝負だ!」とか「秋蘭と二人でやれば勝てる」とか言われ華琳が止めるまで何度も戦った。(勿論勝ったが、かなり疲れた)
そして、疲れていたせいか、文官としてもそこそこ出来ると口を滑らせたおかげでどのくらい出来るか試された。
それが終わったらもう夜で、今は自宅に帰っている途中なのだが……。
「驚いたわ。まさかあなた文にも秀でていたのね」
隣に華琳がいる。嬉しいことは嬉しいが屋敷を出る時の春蘭と秋蘭の目が怖かった。
目で「テヲダシタラコロス」って語ってるんだから。(なんでそれが分かるのか等は無粋なのだろう)さすがにビビった。あいつらも華琳が好きなんだな。
「まあな、神童とか呼ばれてた時期もあったんだ。これも手札の一つだよ。だがあんまり期待はするなよ。自覚してるけど俺は武に偏ってるからな」
「それぐらいは分かってるわ。ふと疑問に思ったのだけれど、何故私に仕えようと思ったの?あなたが実力を出せば有力な諸侯に召し抱えられるわよ」
「ん?なんだおめー。自分の才と器に自信がねーのか」
「そんなんじゃないわよ。ただ、なんでかなー?って思っただけ。……別にどこかに行って欲しくないとかじゃないわよ」
なんか途中から聞こえなかったが、改めて考えてみるとおかしなもんだ。
最初は劉備に仕えるつもりが今は華琳に仕えてる。
ホント、人生はわからねーな。
「何、笑ってるのよ!」
「っと、スマンスマン。お前に仕える理由だよな。それは、お前に惚れたからだ。「なっ」お前の王の才に惚れた。「そうよね。まったくあんたは。」まあ他にもまだあるが、これが理由の一つだな。おい、何怒ってんだ?」
「う、うるさいわね!私はもう帰るわ!……一瞬期待した私が馬鹿みたいじゃない」
何故か怒りながら帰る華琳を見ながら。思う。
(もう一つの理由はまだ言えねえな。俺がもっとでかくなって言ってやる)
俺はある決心をしながら家路についた。
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