No.449823

超次元ゲイムネプテューヌ Original Generation Re:master 第25話

ME-GAさん

25話です。もう一ヶ月ほど投稿してなくて申し訳ないです…

2012-07-09 17:05:32 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1373   閲覧ユーザー数:1320

こんなことなら初めからテラに全て頼めばよかった話じゃね? みたいな無粋な質問にはノーコメントとさせていただく。

ともかくとして、一行はマジェコンヌと戦えるだけの戦力を確保したということでいいのだろうか。

そんな質問をイストワールに投げかける。

「なあ、女神様達も全員が協力してくれるって言うしまさかマジで神界に攻め込むつもりか?」

やはりというか、それだけ大掛かりなことをするのだから心の準備というかそれ相応の覚悟が必要となり、いきなりというのも心臓に悪いというかともかくアレなのである。

そんな疑問にイストワールはう~んと唸り、言いにくそうに口を開く。

「……こんなことをいってもなんですが、メガミさまがぜんいんそろってもマジェコンヌにかてるかどうかわかりません……」

「マジでか」

ここまで来ての衝撃の事実、という感じにテラは驚きすぎて普通の声を上げる。

しかし、ここまで彼女と対峙してきた一行には何となく分かった。

彼女には何か特殊な力があると、一筋縄でいかない相手だと言うことを。

でも、それだけで立ち止まるような彼らではない。

「っていうか、わざわざ女神様をプラネテューヌに呼び出すってのもおかしな話よね……」

アイエフは呆れるようにして額を抑え、溜息を漏らした。

どうせ大陸を巡ってモンスター退治をしなければいけないのだからそのついでに全員を回収してくればよかった話なのであるが時既に遅しである。

「テラー」

非常にテンションの高いような淑やかな声で己の名を呼ばれてテラはそちらの方を向く。

テラの視界にはその直後に綺麗な金髪と青空が広がり、そして背中に少しばかりの痛みが走る。

どうやら押し倒されたらしい。

「誰――って、ベール?」

「お久しぶりですわね、テラ」

すこぶる嬉しそうに満面の笑みでベールはそう言った。

「うん、久しぶりだな。ただもう少し欲を言うと俺の上から降りてくれないかな」

絶賛馬乗り状態中のベールにテラは苦笑いを浮かべながらそんな言葉を投げかけるも彼女は聞いていないか、テラの顔をのぞき込む。

「少し見ない間に変わったのではなくて?」

「聞いてねえ!」

テラはガーンとショックを受けた。

まあ、確かにテラが変わったと思えるのは事実であり、長い間行動を共にした三人もそれは感じていたことであったが。

「つーか、その……胸が当たってマス……」

「当ててますのよ」

「「「「わざと!?」」」」

目から鱗という感じにテラ以外の3人がそんな感じの声を上げた。

ちなみにテラは純粋にショックを受けただけであるが。

 

閑話休題。

ネプテューヌとコンパに引きはがされたベールが少し悲しそうな目をしていたがテラはともかく他の女神を捜そうとキョロキョロと辺り見回す。

そして、テラのジャケットの裾をクイクイと引っ張る感じに襲われて背後を振り向く。

「……ブランか」

「うん……」

こくんと静かに頷く少女、ブランは変わらずの無表情で答えた。

ブランはチラ、とベールを見てからボソリと呟いた。

「……テメエも来てたのか」

そんな一言が気に障ったか、背後にとてつもないオーラを露出させながらベールは低い声音で答える。

「あら、貴女が来るなんて意外でしたわ。てっきりその場のノリだけで二つ返事だったのかと思っていましたの」

バチバチと恐らく二人の視線から火花が飛び交い、一触即発という感じでその現場はある意味で騒然としていたかもしれない。

「だいたい、貴女のような不良娘ではテラの教育に支障を来す可能性大ですわ。即刻立ち去って貰える?」

教育ってなんか怖いな、と思いテラは身震いした。

「ああ!? それを言うならテメエだって邪魔だ! とっとと軟弱大陸で引き籠もってろ!!」

ブランは額に怒りマークを浮かべてベールに向かってそう怒鳴る。

「な! 私のことはいくら言われても構わないですわ! でも、リーンボックスのことまで悪く言われる筋合いはなくてよ!」

「うるせえ! テメエが治める大陸だってどうせテメエに似てアホだらけなんだろ!? アーホ!!」

おおよそただの悪口になってきている気がしないでもなかったが、ともかくとしてネプテューヌが割って入り、軽い力でへにゃっと二人の頬を押した。

「喧嘩は駄目だよー!」

「あぁン!? ネプテューヌか!? 邪魔すんじゃねえよ、ノロマ!」

「そうですわ! 私たちの戦いに首を突っ込まないで貰える!?」

同意はしてくれたけどいまいち仲が良い感じじゃないんだなー、とニブいテラはマイペースにそう思った。

これ以上相手をしていても疲れるだけなので三人のことはコンパとアイエフに任せてテラは最後のノワールを探す。

見覚えのあるツインテールがテラの視界に入り、テラは手を振って彼女の名を呼ぶ。

「おーい! ノワールー!」

「あ、テラ?」

ノワールは嬉しそうにテラの姿を発見して小走りで駆けてくる。

「ゴメン、待った?」

「ん……、そこまで待ったわけじゃないよ。まあ、確かにみんな揃ってるけど……」

テラは苦笑しつつ、背後で巻き起こる喧騒の声を指す。

 

「ノロマって何! ノロマってーっ!」

「そのままの意味だよ、バーカ!」

「それよりホワイト!? 私のことはまだ終わってませんわ!」

「みなさん落ち着いてくださいですーっ!」

「だぁー! もういったん落ち着けーーーっ!!」

 

ドタバタと暴れ回る一行を見てテラは大きな溜息を吐く。

それもさながら一行は注目の的である。

「相変わらずねー……」

そんな状況をノワールは冷や汗を垂らして呟く。

「……混ざるか?」

「いらんわっ!」

怒られた。

当然と言えば当然な事態であったがテラはマイペースなのでそんな考えには至らなかった。

 

 *

 

騒ぎを収めたテラに提案でとにかく他人の目の届かないところということで一度コンパ宅に一行は集合した。

とはいっても、看護学校寮なので7人+一冊では多少手狭であったが。

とりあえず家主のコンパが全員にお茶を回した。

「にが……」

「砂糖あるですよ?」

紅茶にうぇ……と苦い表情をしたブランがコンパが差し出したスティックシュガーを引ったくって5本くらいをびりっと破いてざらざらと注ぎ込んだ。

「メガミのみなさん、よくあつまってくれました」

イストワールが話題を修正するようにそう切り出す。

そんな彼女を訝しむような目付きで見つめるノワール、ベール、ブランの三人。

「「「……ていうか誰?」」」

そして三人で口を揃えてそう尋ねた。

やはり女神様、息もぴったりだなーとテラは妙なところで感心した。

「その人がイストワールよ」

アイエフがそう答えて三人はまじまじとイストワールを見る。

「……なんか意外」

「もっと凄そうな人なのかと思っていましたわ」

「……期待はずれ」

なんか自分のどうしようもないところで酷いことを言われている気がする、とイストワールは泣きたい気持ちになった。というか涙目である。

 

数分、部屋の隅っこで体育座りでめそめそとしていたイストワールが復帰し、コホンと嫌な気持ちを追い出すように咳払いをして話を切り出した。

「それで、コンゴのモクテキですがシンカイへのミチをひらきマジェコンヌのもとへむかうのですが――」

「その前に大陸を回らないとね!」

そんな言葉を遮られてイストワールは再度泣きそうになった。

「何故に?」

テラは神界に行けばいいじゃないかと思っていたのでそんな答えが出てきて少し驚いた。

「だって約束しちゃったし。大陸巡ってモンスターを倒して回るって」

「……まあ、約束したと思うけど」

アレって結構本気だったんだ……とテラもアイエフも苦笑する。

が、女神様達がモンスターのことで大変困っていることも事実だったのでどうも無視できない事柄でもあった。

「だって、女神様が留守の間にモンスターさんが暴れてたら大変です!」

「た、確かに……」

コンパにもっともなことを言われてテラが感心する。

「まあ、そういう問題云々は置いておいてもモンスター被害は放っておける事じゃないわね。早急になんとかしたい事態だわ」

「……その元凶がマジェコンヌじゃない?」

ネプテューヌの言葉に一同は押し黙る。

「と、とにかく、困ってるヤツを放っておけないし、モンスターが居なくなることでマジェコンヌに何か新しい動きがあるかもしれないし! 経験も詰めるし、悪い事じゃないぞ!」

と、半ば無理矢理に軌道修正をしたことで一同の間に「まいいか」的な雰囲気が流れる。

別にここで今、マジェコンヌの元に攻め込んでもいいのだが何というか、イマイチ決心が付かないというのが現状であったのだが……。

 

 

☆ ☆ ☆

 

 

ともかく後の問題より目先の問題と、

一同の前にとある問題が立ちはだかった。

「……少ない」

テラは冷蔵庫の中身を見て呆然とした。

料理経験のある、まあ一応全員あるにはあるのだがネプテューヌには任せられないし、女神様にさせるのもアレだし、テラ、アイエフ、コンパで話し合った結果テラに決まったのだが、食材を取り出そうと思ったところで冷蔵庫の中はもぬけの殻であった。

「あ、そういえばしばらく家を空けてたので忘れてたです」

コンパはこつんと自分の頭を可愛らしく拳骨で小突いた。

仮に冷蔵庫の中に食材があっても長らく空けているので賞味期限を過ぎている可能性大であるのだが。

「む……時間もあるし、買い出しにでも行ってくるか」

テラが腕時計に目を移しながらそう呟く。

それを聞きつけたネプテューヌがはいはいと元気よく挙手する。

「私も行きたいー。連れて行ってー!」

「はいはい……。じゃ、二人で行くか」

「……私も行く」

ブランが小さな声でそう答えた。

「……じゃあ、三人で行くか。みんなはちょっと待っててくれ」

テラは残りのメンバーにそう告げて、ネプテューヌとブランの二人を引き連れてコンパ宅を後にした。

 

 

……。

安売りのされているデパートなんかを見て回りそこそこお買い得の値で食材を手に入れることが出来た。

ここら辺がだいぶ所帯染みているような感じがしないでもなかったが、パーティも増えたし節約しなければ……という感じでもあった。

ともかく。

人もいるし、たまには豪勢にしたいと思いこうしてたくさんの食材を買い込んだのだが、

何というかテラ一人では持ちきれなかったので傍らの二人にも手伝って貰っている。

「悪いな。俺一人で持たなきゃいけないのに」

「もー、言いっこなしだよテラさん?」

「これくらい当然……」

そんな二人の言葉にテラは頬が火照る。

こんな何気ない日常も、彼女たちと居れば楽しいのだと思いながら、一歩、また一歩と帰り道を歩く。

 

 

――もう何度目だろう、とテラは思う。

こうした何気ない行動のひとつひとつも、懐かしく思えてしまうのである。

特に、ネプテューヌと一緒にいたときは。

それだけでない。

ノワールと食事をしたときも。

ベールと話をしたときも。

ブランと共に買い食いをしたときも。

 

そんな全てが、懐かしく、儚く、思えた。

 

 

遥か遠い昔、

己も記憶にないような――

 

いや、『記憶が無い頃の自分』が懐かしんでいるように思えたのだった――。

 

 †

 

――そうだ。

俺は、いつもこうしていたじゃないか。

 

何気ない日常を、それでも楽しいと思えていたじゃないか。

……『家族』といることが。

 

……『家族』?

 

家族って誰だっけ?

長らく共に過ごした大切な人だった気がする。

 

 

大切な人なら忘れないはずなのに。

忘れられないはずなのに。

 

どうして俺は忘れていたんだろう?

何か、重要なことがあった気がする。

 

 

 

――ああ、コンパの家が見える。

どんどん近付いてくる。

 

 

 

 

……『記憶』と共に。

 

大切な使命を背負っていたはず。

とても辛い……。

 

そう、辛い使命、宿命。

背負っていたはず。背負わされていたはず。

 

 

 

 

『――お前は民の絶望を受け止める存在だ! そのような軟弱な力で実現できるはずがないだろう!? 立て! 立つんだ!』

 

そうだ……。

 

『何故出来ない!? お前に意志がないからか! お前がやろうとしないからだ!』

 

そうだ……。

 

『貴様は、そうだったな……』

 

そうだった……。

 

俺が、何も出来ないのは生まれたときからだったんだ。

何もかも。

甘えて、逃げて、突き放して、失望させて、恨んで、憎んで、泣いて――失ったんだ。

 

見放されて、失くしたんだ……。

 

 

許せなかったんだ。

俺を見放したみんなが……。

 

俺を分かってくれなかったマジェコンヌが……。

 

何も言ってくれないイストワールが……。

 

 

 

全てを隠し、そして騙した――『あの人』が……。

 

 

 

 

 

「どうして、分からなかったんだろう……」

 

 †

 

 

 

 

 

 

 

「どうして、分からなかったんだろう……」

コンパの部屋のドアの前で、テラはそう聞こえるくらいの音量で呟いた。

何も映さない、淡泊な声で。

「え?」

「……何?」

二人は、そんな彼を振り返り、そう訊ねた。

「……」

しかし、聞こえていないのか、はたまたは聞いていないのか、テラは答えなかった。

ブツブツと独り言を漏らし、そして空気が振動し、テラの背後からどす黒いオーラと共に振動波が押し寄せる。

 

『そうだ……、全部思い出した……』

 

テラは、何も映さない、真黒の瞳で虚ろげに二人の少女を見据えた。

ただ、その表情に怒りを浮かべ、ポロポロと涙を零しながら、ギリリと奥歯を噛みしめて。

『みんなまやかしだったんだ。みんな、俺を騙してたんだな……』

テラはそう呟きながら、二人に迫る。

 

その姿は、今までと同じ姿を映しながら――。

見慣れたジャケットは黒きアーマーへと変貌し、

黒く、艶やかな頭髪は煌めく銀へ、

薄く、しかし煌びやかだった茶色の瞳は藍色へと変色し、

周辺には、プロセッサと呼ばれる『女神の証』が浮遊し、防御装置のようにテラの全身を覆うようにして配置された。

 

「ッ!?」

「テ――ッ!」

 

 

 

 

 

 

 

ゴォン!!

轟音が轟き、二人の少女が武器を構えて部屋の中に転がり込んできた。

それを見たコンパ、アイエフ、ノワール、ベールの4人はビクリと身を震わせる。

「な、なんですか!?」

「ちょ、アンタら何で変身してるの!?」

ただ事ではない状態の二人にアイエフはそう問い掛けるがネプテューヌとブランは切羽詰まった表情で各々の武器を構える。

「……化け物が出やがった」

「化け……? モンスターじゃないの?」

ノワールは妙と思い、そう問い返すがネプテューヌは答える。

「違う……! アレは……!」

 

ガツン!

と金属音が響き、テラ『だった者』は憎悪の念に表情を歪めながら、右手に握る巨大な大剣を振るった。

大剣はカーペットの敷かれた部屋の床に刺さり、ビリビリと揺るがしている。

『ネプもノワもベールもブランもみんな、俺を騙してたんだ! だから、俺は――!』

泣きそうな声でテラは叫んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

『殺してやるっ!!!』

 

 

 

 

全ては、遠い過去の元――。

 

 

 


 
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