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真・恋姫†無双 異伝 「伏龍は再び天高く舞う」外史編ノ十五


 拠点の話の第一弾です。

 今回は自分で考えたお話です。メインは北郷軍の縁の下の力持ち

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2012-06-10 08:40:57 投稿 / 全9ページ    総閲覧数:9745   閲覧ユーザー数:7418

 

「丁奉様、これはどうしたらいいでしょうか?」

 

「丁奉様~、この荷物は何処に置いておいたらいいですか~?」

 

「丁奉様~、この分は…」

 

 このように毎日、丁奉さんは文官や侍女の皆よりいろいろな相談を

 

 持ちかけられている。これだけ毎日だったらちょっと位、嫌そうな顔

 

 をしそうなものだが…。

 

「ああ、これですね。これはここをこうして…」

 

「この荷物は、三番の蔵の中へ…」

 

「この分は、私には手に負えないので諸葛亮殿か徐庶殿へ…」

 

 丁奉さんは一つ一つ丁寧に答えている。

 

 このようにいつも嫌な顔せずに応対してくれる丁奉さんは皆の人気者

 

 である。中性的な顔立ちともあいまって、侍女さん達の人気も高い。

 

 俺もあの位モテてみたい……いや待て、俺は朱里一筋ですから…本当です!

 

 それはともかく、仕事ぶりが真面目なので何だかんだと重宝な存在である。

 

 しかし、丁奉さんにあんな一面があったとは、あの日まで気が付かなかった

 

 のであった…。

 

 

 

「よし、一通り見回ったけど今日も異常無し!平和って素晴らしい」

 

 太守代理になった今でも俺は定期的に街の見回りをしている。やっぱり書面

 

 だけでは街の実状なんて分からない事が多いしね。

 

「さて、帰ろうかな…あれ?あそこにいるのって、丁奉さんじゃ…?何であの店

 

 に入るんだろう??」

 

 俺が見たのは丁奉さんがある店に入っていく姿だった。ただ、そこは女性物の

 

 服を取り扱っている店だったりする。

 

「誰かにプレゼントでもするんだろうか…?それにしては、何だか人目を気にし

 

 ている感じがしたけど…?」

 

 気になって、しばらく見ていたが出てくる気配が無い。どう考えても男である

 

 丁奉さんが女性物の店に長時間いる必要は無いように思うのだが。…えっ、

 

 実は女性なんじゃないかって?……それは無い!!何故、断言できるかという

 

 と丁奉さんとは何回も一緒に風呂に入った事があり、その時に確認済みだからだ。

 

 …気にはなるが、いつまでもここにいても仕方ないので帰ろうとした時、店の中

 

 から出てくる人がいた。買い物をした人だろうか、少し長身ではあるがなかなか

 

 の美人だ……あれ、何か見た事あるような人だな??でも、あんな美人なら会った

 

 事があれば忘れるはずは…。

 

 そう思って見ていると、向こうが俺に気付いたようだ。しかしその瞬間、その人は

 

 脱兎の如く逃げ出していった。…あれ、俺何かしたかな?

 

 少々気になる所ではあったが、わざわざ追いかける程の事でもないので俺はその

 

 まま城へと帰った。

 

 ・・・・・・・・

 

 城へ帰る一刀の背中を眺める人がいる。どうやら先程一刀が見かけた人のようだ。

 

「やっぱり、あれって北郷様…。もしかして見られたんだろうか?私だって気付か

 

 れたのかな…どうしよう」

 

 何とそれは女装した丁奉であった。何故彼がこんな格好をしているかは後で述べ

 

 るとして、今彼は主君にこの姿を見られたと思い込んでいる事に頭を悩ませている。

 

「ああ、北郷様は絶対に私の事を変態だと思ってる…。明日からどう顔をあわせれば

 

 いいんだ!」

 

 

 

 次の日、いつもの事ながら朝議という名の朝食が始まったのだが…さっきから

 

 丁奉さんが俺の事をチラチラ見ている。何かそれが恋する乙女が憧れの男子を

 

 見るが如きだったので、周りからは…。

 

「なあ、あの二人どう見ても怪しないか?」

 

「あわわ、まさか二人はそういう仲に…」

 

「なっ!まさか一刀さんと丁奉さんに限って…でも、ゴクリ」

 

「あらあら、これはこれは…」

 

「?…諸葛亮様、皆一体何を…」

 

「はわわ、何でもないんでしゅ!…でも、まさかご主人様に限って……昨日の晩

 

 だってちゃんとヌイておいたのに…でも、やっぱりそれとこれとは別物…」

 

 完全に俺達を見る目が怪しすぎるんですけど…。

 

 そして朝議が終わった途端に…。

 

「北郷様!二人だけでお話がありますのでこちらへ!!」

 

 丁奉さんはそう言うと俺の腕を引っ張って走り出した。

 

「ちょっ、丁奉さん。そんなにあわてなくても…」

 

 俺の抗議の声も空しくそのまま引っ張られる。

 

 それを見ていた他の面々はというと…。

 

「あわわ!やっぱり怪しいでしゅ!!」

 

「まさかあの二人とは…これは盲点ね」

 

「これは…新作のネタに使えるかも……」

 

「これは一体…?ご主人様はそっちの気は無いはずなのに…」

 

「これは追いかける価値有りや!早速突撃!!」

 

 全員様々な反応なれど興味深々ではあった。…約一名を除いて。

 

「あの~、皆様一体何がどうされたので…って行ってしまった。とりあえず

 

 街の見回りに行ってこよう。何か記憶が戻る切欠でも掴めれば良いが…」

 

 

 

 連れて来られたのは丁奉さんの部屋であった。

 

 きちんといろいろな物が整理整頓されている。しかし、何か違和感が…

 

 そうか、部屋の調度品の数々が何というか女の子っぽい物ばかりだからだ。

 

「へえ~、丁奉さんってこういう物が好きなんだ」

 

「そうです。だから昨日はあのような格好を…」

 

「あのようなって何が?」

 

「とぼけないでください!昨日見たんでしょう、私が女装して歩いていた

 

 ところを!」

 

 …女装した丁奉さん?別に俺はそんな物は…ってもしかして?

 

「…あの時、女性物の服屋から出て来た長身美人!!あれって丁奉さん

 

 だったの!?」

 

「えっ、もしかして北郷様はあれが私だって気付いていたわけでは…」

 

「うん、何処かで見た事あるな~って位には思ってたけど」

 

 俺の言葉を聞いた丁奉さんはその場にがっくりと膝を落とす。

 

「そんな~、ただの早とちりだったなんて…しかも、自分で変な趣味を

 

 明かしてしまったし」

 

 変な趣味…確かに普通女装はまともな趣味ではないけど。

 

「いつもあんな格好をしているの?」

 

「時々という位です。あのお店のご主人とは子供の頃からの知り合いなので

 

 あそこで着替えているんです」

 

「でも、何故あのような格好を?」

 

「それは…」

 

「それは?」

 

「…笑わないですか?」

 

「笑わない」

 

「私は、昔から可愛い物が好きなんです。調度品や小物だけでなく、服も

 

 女性が着ているような物が」

 

 

 

 それから丁奉さんが語ったところによると、子供の頃から女性が好む物

 

 に興味があったのだが、父親が厳格な人でそういう物に興味を示す度に

 

 こっ酷く殴られていたらしい。しかし、その興味は尽きる事は無く、人に

 

 隠れてそういう物を見たり、隠し持っていたりしそうだ。そして父親の

 

 死後、歯止めが利かなくなったらしい。特に女装願望を抑えきる事が出来

 

 なくなり、昨日のように時々あのお店で女装しては街を歩くようになった

 

 との事だった。

 

「こんなの男としておかしいのはわかってるんです。でも、やめようとする

 

 度にさらに抑えが利かなくなって…」

 

 これはかなりの重症だな。

 

「じゃあ、いっその事その趣味を皆にバラしてしまうというのは?」

 

「えっ…えええっ!?だ、だってそんな事したら皆に私の事変態だって思われ

 

 てしまいますよ!」

 

「そうやって内に内にと行ってしまうのがいけないんだと俺は思う。一度

 

 人に見せて本当に皆からおかしいと指摘されれば止めれる切欠になるんじゃ

 

 ないかな?」

 

「そ、そうですか…?北郷様がそこまで言うのなら…」

 

「ちょうど皆もここにいるようだしね」

 

「…えっ!?」

 

 俺が部屋の戸を開けると…。

 

「はわわ!」

 

「あわわ!」

 

「い、いや~これはな、二人の事が気になってん。べ、別に関係が怪しい思った

 

 わけやないんやけどな」

 

「そ、そうです!別に一刀さんと丁奉さんをネタにしようなんてこれっぽっちも

 

 思っては…」

 

「最初から北郷さんには気付かれていたようですね」

 

 皆が勢ぞろい…岳飛はいないようだが。

 

「もしかして全て聞いてました?」

 

「「「「「ごめんなさい」」」」」

 

「は、ははは…はあ~っ」

 

 丁奉さんは盛大に溜息をついた。

 

 

 

 そして玉座の間にて、皆の前で丁奉さんの女装のお披露目会が行われる事に

 

 なった。

 

「でも何故、天和達までここに…?」

 

「何言ってるのよ!こういう面白い事から仲間外れにしようったって、そうは

 

 いかないわよ!!」

 

「そうそう、前々から丁奉さんの肌は化粧のノリが良さそうだなって思ってたの♪」

 

「私はこれが新しい企画にならないかと思いまして」

 

 企画?…つまり芸を披露するあの施設で女装コンテストでもやろうと言うのだろ

 

 うか??…しかしそんなのに参加者がいるのかが疑問だが。

 

「それでは丁奉さん、どうぞ」

 

 水鏡先生の合図と共に丁奉さんが現れたのだが…。

 

「う、嘘…綺麗過ぎる…」

 

「あわわ、何だかいろいろと負けたような気分でしゅ」

 

「まさかここまでとは…予想外過ぎるで」

 

「…本当に丁奉様なんですか?」

 

「「「すご~い」」」

 

「はわわ~、凄すぎでしゅ」

 

 皆が感嘆する程、丁奉さんの女装姿は綺麗だった。

 

「えっ…変じゃないですか?こんな格好してるのに」

 

「変な事あらへんよ。よう似合うとるし」

 

 霞の言葉に皆が頷く。

 

「ほ、本当ですか?」

 

 予想外の賛辞に丁奉さんは驚きを隠せない。

 

「むしろ、いつもそんな格好でおったらええやん」

 

「えええっ!…でも、さすがに仕事中にこれは…」

 

 丁奉さんはそう言って俺を見る。…やばっ、ちょっとドキッとした。

 

「ええ~っと、仕事に支障をきたさなければ俺としては別に問題は無い

 

 かと思うけど…」

 

 そう言って俺は朱里を見る。

 

「ご主人様の言われる通り、仕事に支障が無ければ大丈夫です。これから

 

 もそれを続けるかどうかは丁奉さんのご判断で」

 

「あ、ありがとうございます!…良かった、この趣味がバレたら皆から

 

 変態扱いされて二度と口を聞いてもらえないんじゃないかとばかり

 

 思ってたんで…本当にありがとうございます!!」

 

 丁奉さんはそう言うと深々と頭を下げた。しかし勢い余ったのか前に

 

 つんのめって倒れそうになっている。

 

「危ない、丁奉さん!」

 

 俺は丁奉さんを支えようとしたが、一緒に倒れこんでしまった。

 

 

 

「いてて、大丈夫か?丁奉さん…」

 

「はい、何とか…」

 

 目を開けて状況を確認すると、俺が丁奉さんの上に覆いかぶさっている

 

 ような体勢になっていた。それを傍から見ると…。

 

「はわわ!ご主人様と丁奉さんが絡み合ってましゅ!」

 

「あわわ!しゅごしゅぎでしゅ!」(凄すぎですと言っている)

 

「ゴクリ…こんな近くに最高の題材があったなんて…」

 

「あらあら、これは良い物を」

 

「あの~、皆様何を仰られているのですか?」

 

「岳飛は知らなくてもいいんや。そのままええ子でおってくれたら」

 

「「「これは使える」」」

 

 一部の者以外完全に色めきだっていた。って言うか題材って何?一体何が

 

 何に使えるの!?

 

「あ、あの~…北郷様?どいてくれると助かるんですけど…」

 

 俺の下にいる丁奉さんが声をあげる。

 

「ああっと、ごめん、ごめん」

 

 俺は、よけようとして丁奉さんの方を見るが…何というか、こうして間近

 

 で見ても女性にしか見えない位綺麗だ。切れ長で大き目の眼にほっそりと

 

 した体型、それに思った以上に白くてきめ細かい肌をしていて…ゴクリ…

 

 じゃなくて!何興奮してんだ、俺!!そっちの趣味は無い!絶対無い!!

 

「ええっと、そういうわけだから人に迷惑をかけない限りは趣味に関して

 

 どうこう言うつもりはないから。好きにすればいいよ」

 

 俺は慌ててよけて丁奉さんを助け起こしながら、その場を取り繕うように

 

 声をかける。

 

「はい、ありがとうございます!!」

 

 丁奉さんはそう言って心からの笑顔を見せた。…本当に女性だって言われ

 

 ても信じてしまいそうな程に。

 

「これで次のネタは…でももう一押し何か欲しいわね。朱里、雛里、作戦

 

 会議よ!」

 

「「はいでしゅ!!」」

 

 輝里は朱里と雛里を連れて一目散に駆け出して行った。…ネタって何?

 

 作戦って何!?

 

 

 

 こうして丁奉さんの女装癖は皆の知るところとなったわけだが…。

 

「丁奉さん、何故に今日はメイド服?」

 

「あ、あの、侍女さん達が着ているの見てて、一度でいいから着てみたいって

 

 思ってたんです。そうしたら、侍女長さんが一着貸してくれて…」

 

「それで着ていると」

 

 …そういえば侍女長さんは輝里と仲が良かったような。まさかね…。

 

 ・・・・・・・・

 

~輝里の部屋にて~

 

「バッチリよ!丁奉さんは侍女長さんから借りためいど服を着て一刀さんの

 

 所へ行っていたわ!!」

 

「はわわ!さすがは輝里さんでしゅ!!…ごめんなさい、ご主人様。でも芸術の

 

 為なんでしゅ」

 

「あわわ、それじゃ輝里ちゃん…」

 

「そうよ!次の庫見家に出すネタはこれで決まりよ!!気合入れていくわよ、

 

 朱里、雛里!!!」

 

「「はいでしゅ!!!」」

 

 こうして一人の人間の心の解放は新たな腐の礎となっていくのであった…。

 

 めでたくもあり、めでたくもなし。

 

 

 

                        続く(一応、腐以外で)

 

 

 

 

 あとがき的なもの

 

 mokiti1976-2010です。

 

 今回は拠点第一弾という事で、今まで地味に活躍していた丁奉さんに

 

 スポットを当ててみました。一応断っておきますが、丁奉さんは女装

 

 や可愛い物が好きなだけで男色の気があるわけではありませんので

 

 悪しからず。

 

 次回はリクエストのあった中からの話を予定しています。

 

 

 それでは次回、外史編の十六にてお会いいたしましょう。

 

 

 

 

 

 追伸 一刀の城では侍女さん達は全員メイド服着用を義務付けられています。

 

    そして作中一刀が「侍女達にモテてみたい」という発言をしていました

 

    が、一刀がモテないわけではなく、侍女達の中で「北郷様に言い寄った

 

    女性は諸葛亮様に呪い殺される」という噂がまことしやかに広まって

 

    いるので怖くて必要以上に近寄らないだけだったりします。

 

 


 
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